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7. 中央アジア・コーカサス地域別特設:交通政策研修
 この研修は、平成5年度に地域別特設「運輸交通」研修として技術研修員をわが国に受け入れ、平成10年度からは、コーカサス地域を加え、地域別特設「鉄道コース」と「道路コース」の2コースで、それぞれ運輸省鉄道局と建設省道路局(現「国土交通省」以下同じ。)が実施してきた。今回省庁再編で国土交通省となったことに合わせて鉄道と道路に物流を加え、地域別特設「中央アジア・コーカサス地域別特設:交通政策研修」となったものである。
 
【平成12年度】
 研修員を鉄道と道路の2グループに分け、運輸行政と物流研修は合同で実施した。研修員は、運輸事業の民営化と付帯事業に強い関心を示した。民営化については、政府の関与のあり方、一般人の株の保有状況、株主総会等に多くの議論が集中した。物流グループは、「物流と交通計画」の講議の後、東京貨物ターミナルと京浜トラックターミナルを見学した。鉄道グループは私鉄鉄道会社、バス会社等を訪問し、質疑応答等を行った。道路グループは東京湾アクアライン等を見学した。この研修には、7ヶ国、11名の研修員が参加した。
 
【平成13年度】
 主に鉄道輸送について研修を行った。研修員は、大手民鉄の関係会社を訪問し、関係者から民営鉄道会社の実績、財務状況、付帯事業、民営方針、レジャー観光事業等について説明を受けた。研修員は、特に鉄道事業と並行した多角経営について、政府介入の有無、免許、許認可、そして運賃・料金設定への基本的な考え方等に強い関心を示した。また、研修員には、自国の交通機関の民営化を考えるうえで、運賃と料金は大きな問題のように見られた。わが国では、上限を設定し、それを越えない範囲での運賃や料金は、届け出ることでよく、上限はその会社の経営状況や財務状況を十分に検討したうえで決められるとの説明が理解できないようであった。この研修には、7ヶ国から14名の参加があった。
 
【平成14年度】
 中央アジア・コーカサス地域における運輸交通分野の政策立案や実施にたずさわっている行政官を対象に研修を行った。
 14年度は、より広くより高い視野での見識が深められる研修となるように、13年度の研修項目に、航空・港湾分野の政策・施設整備に関する講義と現地視察、山梨リニア実験視察等を追加したため、昨年度と比べて研修期間が2週間延びた。
・ 研修員が応募時に提出したカントリーレポートの発表会を開催し、自国の運輸交通の現状と政策等の問題点について、他の研修員、日本側関係者との討議が行われた。
・ 日本の道路、鉄道、空港、港湾に関わる運輸交通政策全般に関わる講義、ODAの実務についての講義及び運輸プロジェクトの費用対効果分析、物流交通計画、ロジスティックに関する講義が行われた。
・ 東京においては、警視庁交通管制センター、東京航空交通管制部、東京・横浜港の港湾関係者、鉄道事業者等を訪問し、地方都市においては、名古屋の基幹バス、ガイドウェイバス、広島市の路面電車、新交通システム、福岡市のバスターミナル等各都市の特徴ある交通システムを運営している事業者を訪問し、事業概要の説明を受けるとともに、施設見学を行った。この研修には、6ヶ国から11名の参加があった。
 
交通政策研修(平成14年度)
 
 このセミナーの歴史は長く、観光部門の研修としてはもっとも重要な研修と位置づけられている。1965年に「観光振興」セミナー(1965年〜1989年)として発足し、以降1990年より「総合観光」セミナー(1990年〜1999年)、2000年よりマーケティングとプロモーションに一層特化した「観光振興とマーケティング」セミナーとして継続して実施されてきた。
 平成14年度は、観光振興を経済発展の重要施策とする開発途上国の政府機関などで観光開発・振興にたずさわっている中堅クラスの担当官を対象に11ヶ国と1地域から15名の参加を得て実施された。
 このセミナーの目的達成のため、日本観光事情全般を講義・視察を通じ良く理解させるとともに実業でのマーケティング及びプロモーション活動の紹介を重点的に行った。また、帰国後研修員が講義・視察内容を各国・地域の観光振興策に反映できるようテーマを設定し研修員より成果を発表させた。
 
【講義】
日本の観光全般理解
・日本の観光行政
・日本人の海外旅行市場
・JNTO、JATAの役割
・ホテルの人材育成、その他。
日本における観光マーケティングとプロモーション
・日本人海外観光客の特性
・地方自治体での観光振興策
・旅行会社・航空会社のマーケティング・プロモーション
・外国政府観光局(日本事務所)の活動、その他
持続的観光開発
・地方自治体での文化観光資源保存、景観保全
・環境に配慮した観光開発の実例
・日本のエコツーリズム、その他。
研修旅行先及び視察先
・熱海、初島、箱根、京都、大阪、東京(サンライズツアー)
・日本ホテルスクール、国立民族学博物館、大阪城他。
 
「観光振興とマーケティング」セミナー閉講式にて研修生代表による答辞
 
 
研修修了後の懇談会
 
 この研修は、元々「総合観光セミナー」より環境に特化したセミナーとして設置されたもので、現行の「観光振興とマーケティング」セミナーと並び重要な研修である。東京での研修内容は、日本人海外旅行者の特性、外国政府観光局日本事務所の活動などについてであった。平成14年度に実施されたこの研修には、10ヶ国から11名が参加した。
 
 ウズベキスタンは、サマルカンド、ブハラ、ヒヴァ等シルクロードを代表する史跡を有し、その資源を活用した観光産業に産業構造多様化の一翼を担うべく大きな期待が寄せられている。しかし、ホテル等の観光関連施設を含むインフラの不備、サービス精神の欠如など観光産業全体として国際水準から立ち遅れている状況であった。
 こうした状況を背景として、国際協力事業団大阪国際センターが同国で観光振興にたずさわっている人材の育成を目的にこの研修を設けたものである。
 
 平成14年度、研修員は、東京で「観光振興」について概要を学んだ後、関西(主として奈良県)で文化遺産の視察、観光客誘致策、土産物や料理など観光周辺産業視察等の「実地研修」を受けた。
 東京での研修内容は次のとおり。
・日本の観光行政
・ウズベキスタン観光についての所見
・日本の旅行業界
・地方の観光開発
・外国政府観光局の活動
・ウズベキスタンに対するJICA協力
 この研修には、旅行会社幹部、観光専門学校教師、ホテル幹部等10名が参加した。
 
 イランは東西文明交流の要衝に位置し、古代より有力な文明が興隆して世界的にも有数な歴史的観光資源に恵まれた国であるが、1979年イスラム革命以降、国際観光には門戸を閉ざしていた。しかし、1997年にハタミ大統領が登場して以来、国際観光振興を経済社会の発展推進役の一つとして位置づけ、イラン・ツアー観光機構を設立するなど国際観光に積極姿勢を取り始めた。
 しかしながら、革命以降20年に亘る鎖国状況が観光のハード・ソフト両面に与えたダメージは大きく、早期の復旧が望まれていた。このような状況を背景に、1998年イラン外相の訪日の際に、日本・イラン観光交流について協力要請がなされた。
 このコースはこのような要請をベースに開設され、主としてイランの観光行政にたずさわっている中堅行政官を対象として、日本での実例を中心に講義と視察を通じて総合的に観光に関する研修を行った。
 平成14年度に実施された研修内容は次のとおり。
 
日本の観光事業の理解
・観光行政(組織・法律・政策)
・外国人観光客誘致体制
・日本のホテルの現状
・観光分野の人材育成、その他。
観光開発と環境
・国立公園の管理と自然保護
・京都の町並みと景観保全、その他。
イラン現地調査経験者の観光開発・振興の助言
・イラン観光振興と日本の国際協力
・イラン観光についての所見
マーケティングとプロモーション
・日本での観光ビジネス
・国際観光振興会(JNTO)のマーケティング事例紹介
・パッケージツアーの造成、その他。
視察・研修旅行
・箱根、熱海、初島、奈良、京都、大阪
 この研修には、ホテル幹部、旅行会社幹部等8名が参加した。
 
「イラン観光振興」セミナー
於 奈良・正倉院前







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