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シンガポールのコスト削減や強制的な廃棄手順を避けた深刻なバンカー問題
 業界筋の話によると、シンガポールの汚染船舶用燃料(バンカー)問題は、当初の予想より深刻なようである。
 過去3ヶ月にわたり、異常に多くの船舶が、燃料を取り除くためのデバンカー装置を要求しているとのことである。
 「ビジネスタイムズ」は、シンガポールで一度燃料を補給した船舶が、燃料を取り除かなければならなくなったというケースが最近急増していると記された文書も入手している。
 業界筋によると、商業的な解決方法に至っているため、ほとんどがシンガポール海事港湾庁(MPA)に苦情を申し出ていないとのことである。このため、デバンカーの理由について、調査は行われていない。
 アメリカの石油評価試験所Visma Lab社はシンガポールのバンカー燃料に関する報告書を発表し、シンガポールで補給されたバンカーに有毒廃棄物が混じっていたとした。コスト削減や強制的な廃棄手順を避けたことがその理由である。
 過去数週間にわたり、主にシンガポールで、汚染された、または粗悪なバンカーの影響で多くの船舶が機器の故障に見舞われていると報告書には記されていた。
 同試験所は汚染の出所について明らかにしていないものの、信頼のおける筋からの情報では、このようなケミカルを地元の業者から入手するのは困難なため、海外から持ち込まれたのではないかとのことである。
 汚染された燃料を検査したところ、危険な有毒物質及びエンジンに損傷を与える工業用洗浄溶剤が検出された。
 このような石油溶剤は、試験所による通常の検査では検出されず、バンカーとの混じりやすいため、「手違いまたは利益を上げるために混ざられたのではないか」と報告書では述べられている。
 これらの汚染した燃料が普通にシンガポールで売られていたのかは明らかではないが、最近になるまで発見されていなかった。
 シンガポール海事港湾庁(MPA)は、燃料タンカー業者を免許停止にして依頼、捜査を進めている。
(2001年1月4日ビジネスタイムズ、シッピングタイムズ)
 
シンガポール 公認バンカー供給業者のリスト作成へ
 シンガポール海事港湾庁(MPA)とシンガポール海運協会(SSA)は、不当なバンカーの汚染問題を受け、バンカー供給業者の公認システムを計画している。
 また、MPAは現在責任者の追及とバンカー汚染源の追跡を行っていることを明らかにした。
 MPAによると、バンカー供給業者の公認システムには、品質と信頼性を高め、不正行為を防止するための減点システムが含まれるとのことである。
 MPAは、当地におけるバンカーの汚染問題を深刻に受け止めており、汚染されたバンカーのサンプルも入手済みで、環境省等とともに調査を進めていくとしている。
(2002年1月7日シッピングタイムズ)
 
交通大臣会議に関する現地報道
 交通問題を話し合う大臣会合が、東京で開催され、米国、欧州各国、オーストラリア、韓国、シンガポールなど計20カ国が参加した。
 2日間にわたる会合では、「海上安全の強化と海洋汚染の防止のためのサブスタンダード船の排除」を目指した行動計画が確立された。
 海洋汚染に関するセッションでは、シンガポールのヨー運輸大臣が議長を務めた。
サブスタンダード船が多くの問題を引き起こしていることは、IMO(国際海事機構)も認めているが、現存する条約が十分に施行されていないことから、いまだにサブスタンダード船の横行により航行、人命財産の安全面が脅かされているのが現状である。
 「寄港国の対応を強化することで、サブスタンダード船の影響を緩和することは可能だとわかっているが、旗国の強固な対応とともに船主と運航者の責任ある対応が得られれば、より有効にサブスタンダード船を排除できるはずである」というIMO及び欧州委員会の支持を得たステートメントが発表された。
 参加国は、旗国、寄港国、海事産業の利害を考慮に入れた、新たなサブスタンダード船使用取り締まり対策を立案することに合意した。
 船級協会の役割が再認識され、船級協会が旗国に代わって行う検査を「適当な監査及び監督を通じて、監視することの重要性が強調された。
 参加国はIMOに行動計画を提出することに合意し、ILO(国際労働機構)などほかの国際機構との協力を呼びかけた。このほか、サブスタンダード船の取り締まり及び使用排除を目指した国際条約がきちんと施行されるよう促進することに合意した。
 今回の会合では、都市の交通問題についても話し合いが持たれ、扇大臣が議長を務め、低公害車の開発について論議された。
(2002年1月17日シッピング・タイムズ)
 
ジョホール・ハブ構想、着実に進行
 ジョホールを輸送のハブに――。昨年10月、2002年度予算案を発表した時のマレーシア・マハティール首相の演説内容が、着々と実行に移されつつある。マレーシア政府は21日、○ジョホール州のタンジュンプルパス港(PTP)拡張○同州のスルタン・イスマイル空港(スナイ空港)とクアラルンプール国際空港(KLIA)、PTP港、ジョホール港の貨物取扱業務を統合――など3つのプロジェクト内容を明らかにした。
 PTPを拡張することにより、政府は「6つの波止場を増やすことができる」(マハティール首相)としており、同港と内陸を結ぶ鉄道整備との相乗効果で取扱量を大幅に増加させることができるとみて、約8億リンギを投じKLIAとジョホール州の海運、空運の拠点を2006年までに統合させる計画を発表した。
 この計画には、世界クラスの貨物施設の建造、鉄道・道路の建設、スナイ空港の貨物取扱量を現状の7,000トンから10万トンにまで拡大させる(2008年をめど)、などの案が含まれている。
 同計画を受け、スナイ空港を運営するスナイ・エアポート・ターミナル・サービスは独ホキテフ・エアポートの航空部門との契約に合意した。
 一方、ジョホール州政府は同州の土地1,600ヘクタールあまりを石油化学コンビナートを建設するための用地として提供するという内容で、シーポート・ターミナルと基本合意した。同コンビナートには発電所や給油所も設けられる予定で、PTPの機能拡大の補助が大きな目的とされている。
 ジョホール州に石炭火力発電所を建設する計画については、電力大手テナガ・ナショナルとSKSベンチャーズがすでに合意に達している。
 この日、ジョホール州の出入国管理所を訪れたマハティール首相は、都市開発を手掛けるGBS社から、コーズウェイに代わる新橋の建設と出入国管理所を新設する構想(サザン・ゲートウェイ・プロジェクト)の説明を受け、大筋で合意。「政府は早急に結論を出す。このプロジェクトはすべて有益だ」とコメントした。
 ジョホール州とシンガポールを結ぶ新たなプロジェクトは、深刻化しているコーズウェイの渋滞を緩和させることを目的に、マレーシアの国土に高さ25メートルの高速道路を建設するというもの。この道路をコーズウェイのシンガポールとの国境地点まで結んだ後、既存のマレーシア側のコーズウェイは取り壊す予定となっている。
 国境を結ぶ道路の建設について、シンガポール政府との交渉の必要性を問われたマハティール首相は、「これはシンガポールには関与しない。マレーシア側の問題だ」とし、マレーシア国内で工事を行うのに、シンガポール政府に許可を得る必要はない、との見解を示した。
 港の拡張、ジョホール州近辺の環状道路を含む高速道路の整備に加え、政府はマレー鉄道の複線化に着手していることから、マハティール首相はジョホール州を近隣諸国の輸送拠点とする構想に自信をのぞかせている。鉄道の複線化が進み、マレー鉄道に電車を走らせれば、クアラルンプールからシンガポールまでの移動時間は2時間30分程度となる(マハティール首相)ことから、「PTPは近隣国のハブになる」と強調している。
(2002年1月23日NNA)
 
米向け船舶貨物の保安強化へ
 米政府は、テロ対策の一環として、米国向け船舶貨物に対する保安強化を各国に要請する見通しだ。特に核兵器製造に使用される恐れのある関連部品の持ち込みに対する調査を強化するのが狙い。
 同保安強化策は、米国関税局のロバート・ボナー長官がこのほど米政府に提案したもの。世界10大港を抱える各国政府と協力し、世界レベルでコンテナ輸送の保安を強化するよう示唆した。対象港は、シンガポールのほか、香港、中国・上海、台湾・高雄、韓国・釜山、東京、オランダ、ロッテルダムなど。世界10大港の米向け貨物取扱量は、世界全体のおよそ半分、このうちシンガポールは5%を占めている。
 同長官は、X線検査のほか保安に適した梱包機材の開発・管理を充実させることや、米国からの専門調査団派遣などを通じて保安対策を徹底するよう要請した。また、昨年9月のテロ事件が航空業界に与えた衝撃を考慮し、テロの脅威が海運業界に及ぶ可能性も熟慮するべきだとしている。
(2002年1月23日NNA)
 
エバーグリーン 海運ハブをシンガポールからマレーシアに移転
 台湾船社エバーグリーンは、現在利用しているシンガポール港に替え、近接するマレーシアのタンジュン・プルパス港(PTP)の利用を開始する。
 エバーグリーンの広報担当者によると、同社の張榮發会長はすでにPTPをトランシップハブとすると決定したとのこと。エバーグリーンの決断の背景には、PTPの格段に低いコストがあったとみられる。
 PTPへの移転で、エバーグリーンは年間1億台湾ドルの経費削減が見込まれるとみられているが、契約の詳細はまだ明らかにされていない。
2000年にシンガポール港湾公社(PSA)が年間取り扱った貨物の5%をエバーグリーンが占めていたと言われている。
 PSAのスポークスマンは、「顧客との契約についてコメントはしないし、できない」としている。
 エバーグリーンのPTP移転計画は、昨年10月に浮上した。
 PSAは今月初めにエバーグリーンと直接話し合いを持ったと伝えられていた。エバーグリーンとPSAのターミナル契約は8月で期限が切れる。
 PTP側からのコメントは得られなかったが、マレーシアのマハティール首相は、あるインタビューで「マレーシアはPTPだけでなく、他の港も拡大していくつもりである。その戦略的な地理条件はシンガポールと変わらないのだから、我々が貿易・海運ハブになれないわけがない」と述べている。
 シンガポールにとっては、2000年にマースク・シーランドがPTPに移転して以来、2年間で二度目の大打撃となる。
(2002年1月17日ストレートタイムズ)







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