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ケミカル流出のための地域防除計画
 ケミカル産業界は、地域のケミカル災害に対応するための緊急対応センターを設置した。
 先月から始まった計画は、現在第一期の段階で、アジアケミカル輸送緊急センター(Asctec)に登録している企業は、今後災害管理会社SGS Alertから流出防除援助を受けることが可能になる。年間登録費用は、1,000〜20,000シンガポールドル(レベル1対応)。来年の早い時期には計画は第二期に入り、その頃にはSGS Alertが企業に代わって災害対応を行う予定である。
 シンガポールケミカル産業協議会(SCIS)率いるAsctec登録会社10社は、今後展開を続け、最終的には主要ケミカル産業にかかわるアジアの国全てをカバーしたいとしている。
 ケミカル流出は運搬時にトラックからドラム缶が転がり落ちるというケースが多いが、海上での事故も増加の傾向にあるとSCISの会長は述べている。
(2001年6月19日ストレートタイムズ)
 
ITF、Heng San号事件についての調査を求める
 ITF(船舶・港湾荷役、河岸荷役国際労働者連合)は、シンガポール海事港湾庁(MPA)に対し、乗組員4名が犠牲になったシンガポール船籍Heng San号沈没事件にかかる乗組員の退船時期の遅れについての調査を公式に求めた。
 ITFがこのような調査を求めることは稀なことであるが、これについてITF側は、「この事件はH号の船長が商業的なことを理由に救助を断ったと疑われる特殊なケースだ。当初から同船の状況は深刻で退船時期を失した。最初の援助措置を断り、港へ向かおうとしたのは商業的なプレッシャーがあったと考えられる」と説明している。ITFは旗国のシンガポールに対し徹底した調査を行うよう期待している。
 INTERTANKO(国際独立タンカー船主協会)も、事件に対し関心を示しており、状況を見ながら詳細な報告を待ちたいとしている。
 MPAは、救助されたH号の乗組員38名が運ばれたアラブ首長国連邦のFujairahに職員を派遣した。MPAは、職員を派遣した理由として、乗組員の世話と「事件の調査の一環として面接を行うこと」の両方を挙げている。
 公式には、行方不明者の捜索は現在も続いているとされているが、インドのある情報筋によると、捜索活動は大幅に縮小されている模様。
 H号の救助に向かった船によると、12日の時点ではH号は救助は必要でないとし、翌日船体が2つに裂けた段階になって初めて救助を求めたという。
(2001年6月19日ストレートタイムズ)
 
沈没船からの汚染報道を運航会社が否定
 5月28日にマレーシアのウンダン島付近で油タンカーRowan号と衝突・沈没したSingapura Timur号(1,369gt、パナマ船籍)から漏れたビチューメンとディーゼルがタール汚染を引き起こしているという報道について、シンガポールに拠点を置くS号の運航会社は、日本サルベージによって流出の予想される穴は全て塞がれたとしてこの報道を否定している。
 現在、S号の船首は海面に出ている状態である。法律及び責任に関する話し合いが現在も進行中のため、S号の引き揚げにはまだ時間がかかる模様である。
 事故当時S号の船内にいた乗組員全員(12名)は救助されたが、貨物のアスファルト1,000トンは船内に残ったままになっている。
 事故原因について、現在調査が進められている。
(2001年6月20日シッピングタイムズ)
 
転覆したケミカルタンカーEndah Lestari号から残留貨物が瀬取りされる
 保険会社の発表によると、転覆したケミカルタンカーEndah Lestari号から残留貨物が全て瀬取りされた。
 瀬取り作業は6月22日金曜日午後1時に行われ、E号から約608メートルトンのフェノールが別のケミカルタンカーSuhaila号に移された。現在E号はジョホール州のパシルプテから100メートルのところにあり、これからKasel Salvageが引上げ作業を行うところである。引き揚げ作業は10日間かかると思われる。
 E号は6月13日に転覆し、貨物のフェノールの一部が流出した。これによって多くの魚や貝類が死滅した。シンガポールとマレーシアの当局は、現在も周辺海域での釣りや遊泳を禁止している。
(2001年6月25日シッピングタイムズ)
 
マレーシア ジョホール州パシクダンの造船所で爆発事故 工員9名が死亡
事故発生日時:2001年6月20日(水)朝
状況:事故発生当時、MSE(Malaysian Shipyard Engineering)の工員9名(マレーシア人8名、マレーシア永住権保持者1名)は油タンカー「New Renown」(リベリア船籍、240,830DWT、1976年建造、香港に拠点を置くAssociated Maritime所有)の貨物タンクから液体を移すためのパイプの溶接修理を行っていたところであった。10時に火災警報が鳴った数分後に造船所の緊急対応隊が駆けつけた時には、すでに工員は死亡していた。工員は横15メートル、高さ20メートルの貨物タンクの中に安全服を着用したまま、やけどの後もなく、大の字になって倒れていたという。
 MSEは、造船所に安全面で問題はなかったとしている。
 マレーシア運輸省が詳しい事故調査を行う予定である。
(2001年6月26日シッピングタイムズ)
 
ケミカル流出対応計画、アジアでの訓練が求められる
 ICOPE(国際ケミカル及び油汚染会議・展覧会)が2001年9月3日から5日までシンガポールで開催される。これに伴い、シンガポール海事港湾庁(MPA)がシェルと合同で9月5日に年に一度のケミカル流出訓練を行う予定である。ICOPEの参加者は、この訓練に出席することができる。
(2001年7月24日マリタイムアジア)
 
シンガポールがITOPFを批判
 先日当地で行われたIOPCE会議の席で、シンガポールはITOPF(国際タンカーオーナー汚染連合)が汚染問題について各国に助言するという役割を批判し、別の機関に掛け合った方がよいと忠告した。たとえ当局がそれまでの知識に照らし最良の方法として判断しても、ITOPFが反対すれば補償が得られないからである。
 1997年10月に発生したエボイコス号とオラピン・グローバル号の衝突事故では28,000トンの油が流出した。シンガポール海事港湾庁(MPA)は、ITOPFと事故の対応方法の違いから意見が分かれ、汚染補償処理に4年の月日を要した。
 このほかにも、MPAは昨年のナツナシー号事故でも、特にケミカル分散剤の使用についてITOPFと意見が食い違った。MPAのマーク・ヘー港湾・海運局長代理は、ITOPFの役割は助言することであって、最終的な判断は海事港湾庁に委ねられるべきだと述べている。
(2001年9月4日ロイズリスト)
 
ITOPF 偏った意見を出したり、費用削減したりといった圧力は受けていない
 先日当地で行われたIOCPCE会議の席で、シンガポール海事港湾庁(MPA)がITOPF(国際タンカーオーナー汚染連合)を批判し、別の機関に掛け合った方がよいと言及したと9月5日のロイズリストに掲載された。これに対し、ITOPF側がロイズリストに投書し反論した。
 MPAは、ITOPFはその収入の大半をPIクラブの会費が占め、船主や保険会社を優遇する立場にあると批判している。しかし、ITOPFとその技術者らは、油濁防除作業やその他の対応に関する豊富な経験を持ち、過去23年にわたって技術的な面でIOPCFの中心的なアドバイザーを務め、同時に船主や保険会社にも仕えてきた。ITOPFがこの特殊な役割を果たせるのは、海上油流出に効果的な対応に関する客観的な技術上のアドバイスを与えるとともに、補償請求が可能な範囲を始めとする国際補償条約の統一的な適用を助けるということを唯一の使命としているためである。
 補償請求が可能な範囲については、ITOPFではなく基金の加盟国によって定められたものである。
 PIクラブは、統一的な条約解釈を重要視しており、ITOPFは偏った意見を出したり、費用削減したりといった圧力は受けていない。
 実際、ITOPFの職員がそのようなことをする動機はない。
 MPAの指摘の通り、ITOPFの役割は助言をすることに過ぎず、ITOPFの助言に従うかどうかは油防除を行う当局が決めることである。PIクラブとIOPCファンドに対して当局がその対応を正当だと理由付けられるのであれば、助言を無視したからといって、当局が補償を得るのが困難になることはない。
 PIクラブとIOPCファンドは、今後もITOPFを主要な技術的アドバイザーとして続投させるつもりであり、このことは他の独立した専門家の世界的なネットワークから支持されている。
(2001年9月19日ロイズリスト)
 
ITF、Heng San号事件の報告書の公開をシンガポールに求める
 ITF(International Transport Workers' Federation)は、シンガポールに対し、Heng San号事故の詳細な報告書の作成と最終報告書の公開を要求した。
 シンガポール籍船Heng San号は、今年6月にインド沖で爆発・炎上した。現場付近を航行していた船舶が救助しようとしたが、H号の船長及び乗組員は、商業なプレッシャーから船内に残って航海を続けることを選んだ。
 MPAのスポークスマンによると、同庁が現在IMOに提出する報告書を作成していることは確認されたが、完成予定日及び報告書が公開されるかどうかについては明らかになっていないとのことである。
(2001年10月1日シッピングタイムズ)
 
シンガポール 来年新ケミカル研究所を設立
 昨年ケミカル産業がシンガポールにもたらしたビジネスは、317億ドルに上り、急成長をみせている。これを受け、来年には新たなケミカル研究所が設立される予定である。
 新たに設置されるケミカル・サイエンス研究所は、シンガポールのケミカルハブであるジュロン島に建設される予定である。
 シンガポール大学が現在運営している2つのケミカル研究センターが、新ケミカル・サイエンス研究所に吸収されるほか、少なくとも国内5ヵ所の研究所と連携していく予定。
(2001年12月19日ストレートタイムズ)
 
シンガポールでケミカル流出事故が2件発生
1. Duyen Phat 01号
事故発生日時:
2002年1月5日深夜
事故発生地点:
ジュロン港
事故船詳細:
貨物船Duyen Phat 01号、ベトナム船籍、756gt
ビチューメンの入ったドラム缶、鉄鋼製品、救急車積載
状況:
D号は転覆し、貨物の一部が海上に投げ出された。このため、バース付近が通航止めになった。セムコ・サルベージがサルベージ作業にあたり、海上に落ちたビチューメンの入ったドラム缶40個を回収した。
 シンガポール海事港湾庁(MPA)の声明は以下のとおり。「MPAから巡視艇2隻と汚染防止航空機1機が現場に出動。警察沿岸警備隊からも船1隻が現場に派遣された。油の流出はなく、乗組員にもけがはなかった。事故のあったバース付近の交通に影響が出ており、隣接したバースについても航行安全が保証されるまで使用中止になっている。MPAは現在現場海域の水路調査を行っている」
 ジュロン港が発表した声明によると、荷積み作業はD号の代理店(Imkov Shipping)が契約している港湾労働者及びクレーンによって行われたものであるとのこと。
 MPAは現在ジュロン港と代理店とともに事故の調査にあたっている。
2. Eastern Tera号
事故発生日時:
2002年1月5日朝
事故発生地点:
シンガポール海域
事故船詳細:
タンカーEastern Tera号、パナマ船籍
状況:
荷積み作業中のE号からスチレンモノマー1,000リットルが流出。MPAの声明によると、沿岸警備隊から2隻、MPAから4隻の船が出動し、スチレンモノマーは2時間程で取り除かれた。この事故によるけが人は出ていない。MPAは、事故後の周辺大気の状態は安全範囲内であるとしている。
(2002年1月7日シッピングタイムズ)
 
タイ湾でケミカルタンカーが座礁 油20万リットルが流出
事故発生日時:
2002年1月15日(火)
事故発生地点:
タイ・チョンブリ県(バンコクから南東に70km)沖
事故船名及び詳細:
Eastern Fortitude号、ケミカルタンカー、パナマ船籍
状況:
該船は岩に座礁し、20万リットルの油が海上に流出した。現在タイ海軍の職員や市民ボランティアが油防除にあたっているが、作業は難航している。港の関係者によると、油膜は幅60メートル、長さは4キロあり、油防除には10日以上かかるとのこと。油膜はラヨーン県の方に東に向かって流れており、これまでに40キロの距離を進んできた。別の港関係者によると、該船の船長が最初の2日間油の流出を報告せず隠していたことが、過去5年間で最悪の油濁を招いたとしている。昨日(22日)には旅行者で賑わうメー・ランプーン・ビーチに油膜が到達しており、油膜はリゾート島であるサメット島沖15キロのところまで近づいている。該船の保険会社であるロンドンのブリタニアは、油防除作業費や環境汚染被害を含めた今回の油流出事故で発生した損害にかかる補償金を支払うとしている。
(2002年1月23日シッピング・タイムズ、ロイズリスト)







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