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インドネシア政府 海賊対策での団結を呼びかける
 昨日、ジャカルタで開催中の第2回東アジア海賊対策専門家会合の席で、インドネシアのAgum Gumelar運輸通信大臣は声明を発表し、同国海域及び国際海上交通路であるマラッカ海峡での海賊撲滅には地域協力が唯一の方法であると公けに認め、以下のように述べた。
 「アジアにおける海賊及び海上強盗は警戒が必要なレベルに達しており、このような犯罪を根絶するには(地域協力以外)ほかに方法がない。このため、インドネシアは各国と互いに協力せねばならないという考えを他国と同様に共有している」
 インドネシアは世界的な海賊の多発地域になっており、(昨年)全世界で発生した海賊事件335件中91件が同国海域で起こった。
 また、インドネシア海域外のマラッカ海峡で起こった海賊事件についても、その多くがインドネシアを拠点にしたものだと見られている。
 同大臣は、インドネシアは海賊対策を強化したものの、2001年も海賊問題は続いたと認めた。
 IMB(国際海事局)に通報された事件の多くが、インドネシアの境界海域で発生しているとの言及があった。
「海賊行為のような越境犯罪は、国によって異なった法制度が関与してくるため、特殊な方法で対処する必要がある」と同大臣は述べた。
 3日間にわたる今回の会合には、16カ国の代表が参加している。このような会合がインドネシアで開催されるのは初めてのことで、インドネシアの海賊問題への取り組みに対する標石になるのではないかと期待されている。
 今回、インドネシアは初めて日本と海賊対策訓練を実施する。
 インドネシア運輸通信大臣による声明の内容は、日本財団寺島紘士常務理事によっても繰り返された。
「基本的な問題が未解決であるため、地域協力と我々の打ち出した海賊対策を継続していくことが重要である」と寺島氏は述べた。
 この協力というのは、特に各国の間の調整パトロール、そして将来的には共同パトロールを目指したものである。日本海上保安庁は、同庁の中古巡視艇の提供をインドネシアに申し出ている。
「我々は、日本の退役巡視艇をアジアの友人達に提供することに積極的である」と日本海上保安庁・須之内康幸次長は述べている。
 インドネシアでは、海軍、海上警察、海運総局の間の調整が取れていないとの声もあり、海賊対策に取り組む前に関係省庁内の再調整が必要だと言われている。
 各国が協力する際に発生する国家主権の問題は、沿岸国の間で未だ大きな問題であるが、寺島氏は、海賊はこの盲点を利用して、当局の手から逃れていると警告している。
「各国にとって海上境界線は大変重要なものであるが、検問所もなく、自由に行き来できるため、海賊や犯罪者は海上境界線を利用している。実際、海賊はある国の当局に追跡された場合、別の国の領海に逃げ込むため、追跡を断念せざるを得ない。海賊は、法的な取り決めを逆手にとって、逃走を続けているのである」
(2002年3月6日ロイズリスト)
 
海賊対策専門家会合で地域の海賊対策、一歩前進
 昨日より3日間にわたる海賊対策専門家会合がインドネシアのジャカルタで開催され、アジア16カ国から代表が参加した。この会合により地域の海賊対策は前進をみせ、会合はその標石になると期待されている。
 本会合は、インドネシア政府が非営利団体である日本財団の支援の下に実施したもので、現在も蔓延する海賊問題への対策に関する地域的合意に達するための重要な一歩だとみられている。
 日本財団の寺島紘士常務理事は、会合において実現を期待するものとして、各国の有効な法の執行を核とした海賊問題への取り組みを支えるための地域協力が必要であると示した。
 この過程で、各国の主権問題は尊重されるべきであると寺島氏は述べている。
 「海賊行為は地域の人々の社会・経済を脅かす存在となっていることから、我々は海賊を取り締まり、罰するために地域で協力するという政治的意思を明確に表明しなければならない」と寺島氏は述べた。
 また、同氏は、2000年に東京で開催された地域会合から始まった地域協力の具体化の強化を主張した。この地域協力には、情報交換のほか共同訓練、調整パトロールの運用があり、なかでも調整パトロールは将来的には共同パトロールとなるのが好ましいとしている。
 「さらに、各国の対応能力を高めるような基本的な協力に焦点を当てることも重要である。具体的に述べると、ソフトとハードの両面から、たとえば職員の教育・訓練、巡視艇の増加や監視施設の設置などで、能力向上を図る」と同氏は述べた。
 日本側の関係者によると、本会合は隠れた目標である地域協定締結の標石になると期待されているとのことである。
 主権問題及び沿岸国と利用者の負担分担問題が、合意を手間取らせる主な障害になっているとみられている。
 インドネシアが今回初めてこのような会合を実施したことは、肯定的に捉えられている。これはインドネシアが海賊対策において重要な役割を担っていることが理由である。
 昨年全世界で発生した海賊事件335件のうち91件がインドネシアで発生した。その割合は全体の27%を占めた。
 会合の開会に際して、インドネシアのAgum Gumelar運輸通信大臣は、世界最大の群島国家である同国にとって、パトロールする海域は790万平方キロメートルに及び、「港と海の両方で海上安全や法律の施行を確保することは大変困難な作業である」とした。
 同大臣は、インドネシアは海賊対策のため最善の努力を尽くしているが、船舶への海賊及び海上強盗行為は現在も続いていると述べた。
 多くの海賊事件がインドネシア海域周辺で発生しているが、「海賊行為のような越境犯罪は、国によって異なった法制度が関与してくるため、特殊な方法で対処する必要がある。このため、インドネシアは各国と互いに協力せねばならないという考えを他国と同様に共有している」と同大臣は述べた。
(2002年3月6日シッピング・タイムズ)
 
日本が海賊対策に巡視艇を提供
 日本は、アジア海域での海賊及び海上強盗の防止のため、アジア各国に退役巡視艇を提供すると申し出ている。アジア海域での海賊の脅威に立ち向かうためには、確固とした意志が必要だということを示すため、先日行われた海賊対策専門家会合では、今年後半に開催が予定されている政府間専門家ワーキンググループで海賊問題を取り上げることに合意した。
 先日ジャカルタで開催された海賊対策アジア地域専門家会合によると、東京で開催予定の政府間専門家ワーキンググループでは、アジア地域間の高レベルな協力が模索されるとのことである。
(2002年3月12日マリタイムアジア)
 
アセアン、海賊対策タスクフォースの設置へ
 アセアンが海賊対策タスクフォースを設置することから、地域の海賊問題への取り組みは高まっている。
 「シッピング・タイムズ」の調査によると、最近バリで開催された越境犯罪に関するアセアン専門家会合で、8つのタスクフォースの1つとして、海賊及び海上強盗タスクフォースが設置された。
 タスクフォースは、薬物の不正取引、マネー・ロンダリング、テロ行為、武器の密輸、人身売買等の問題に焦点を当てるため、創設された。
 アセアン事務局に近い筋からの情報では、海賊対策のための6つの協力分野(情報交換、法律上の事柄、法の執行に関する事柄、訓練、組織の強化、域外協力)が検討されている。
 これらの提議は、承認を得るため、4月にクアラルンプールで開催が予定されている第二回アセアン越境犯罪対策高級事務レベル会合で提出される。
 「シッピング・タイムズ」の調査によると、情報交換案は、マレーシアが強く推しているアセアン海賊通報運用センター設置の第一歩とみられる。
 このアセアンの動きは、日本が先頭を切って行ってきた、地域協力を目指した海賊対策の取り組みに加わったことになる。日本の取り組みは現在も続いており、先週はジャカルタでインドネシア主催の第2回海賊対策専門家会合を実施している。
 海賊の温床であるインドネシアがこのような会合を開催するのは、画期的であると考えられている。会合は3日間にわたり、17カ国の代表が参加した。ある出席者は、「ついにインドネシア政府は、海賊が直接・間接的に経済に損害を与えていることを認めたのではないか」と話している。
 会合の狙いは、海賊対策の状況と地域協力の評価、地域海事当局とのネットワークの構築で、インドネシアと日本の海賊対策合同訓練も実施された。
 また、日本、オランダ、アメリカが、退役巡視艇のインドネシアへの提供を申し出ている。
 今回の会合は、2000年11月にクアラルンプールで開催された第1回専門家会合に次ぐもので、日本政府、日本海上保安庁、非営利団体日本財団が2000年4月から開始してきた取り組みの一環である。
 今回インドネシアで開催された会合は、実動レベルでの会合であったが、今年10月には外務省高官による政策レベルの会合が開催される予定である。
 この動きは、日本がIMOの支持の下に積極的に押し進めてきたアジア全体の協力に関する正式な協定に一歩近づいたとみられている。
 二者による取り組みが相補的であるかどうかについて、前出の出席者は、「多様な取り組みによって、さまざまな形の多国間協力が進められている。日本側は海賊対策を進めるための地域協力協定を締結したいと考えており、アセアンの取り組みもこれに一致すると思われる。課題は重複を避け、シナジー効果を出すことである」としている。
(2002年3月13日シッピング・タイムズ)
 
マレーシア 海賊情報センター本部設置を申し出る
 マレーシアは、現在提案されている地域海賊情報センター本部の設置を申し出た。これにより、マレーシアはアジアの海賊対策で先頭を切ることになる。
 海賊情報センター本部設置への取り組みは、先日ジャカルタで開催された海賊及び海上強盗に関するアジア地域専門家会合で、マレーシアMECCが明らかにしたものである。センターの役割は、地域各国の政府と法執行機関管轄内における海賊及び海上強盗の情報の収集・分析、データ提供などの活動の中心になることである。センターの設置による関係各所間の調整の迅速化・効率化が、期待されている。
 この動きは、日本政府から強く提唱され、支持を得ている。関係する国々は以下の通り。ブルネイ、カンボジア、中国、香港、インド、インドネシア、日本、ラオス、シンガポール、スリランカ、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア。
 情報の収集・提供のほか、クアラルンプールに拠点を置くIMB(国際海事局)海賊通報センターと情報交換や各国からの海賊関係活動の詳細の入手で提携する予定である。その後、データはインターネットで法の執行機関や調整機関に転送される。
 地域情報センターの設置は、関係各国が締結する予定のアジア海賊対策協力協定に含まれている。
 地域における情報交換の重要性は、昨年10月に開催された海賊及び海上強盗対策会合の席で初めて話し合われた。この案はおおむね専門家の同意を得たが、センターの設置は各国政府の決定に委ねられていた。
 出席者は、より深い調査を実施し、次回フィリピンで開催される会合にその結果を提出するよう求めた。マレーシアがこの調査のリーダーを務める予定である。
 情報ネットワークの一部であるセンター設置のほかに、ジャカルタでの会合では各国の活動の中心となる機関が必要であるとの判断が下された。これは、各国がデータの受取り・提供の中心となる法執行機関を1つまたは複数選ぶということである。領海内または領海外で海賊行為の通報があった場合、これらの活動の中心となる機関は直ちに地域センターに連絡しなければならない。
 IMBのアビヤンカ副局長は、この動きを海賊対策の肯定的な進展ととらえ、今後3ヶ月内にコンセプトがより明確になるだろうと述べている。
「このネットワークは、地域各国に情報共有に必要な正式な手段をもたらし、法の執行をより効果的にするだろう」とアビヤンカ氏は述べ、全ての国々が地域内で発生した海賊事件について通知されるべきであると付け加えた。
 アジア海賊対策地域協力協定の草案は、3つの柱からなっている。3つの柱とは、協力関係を容易にするための情報ネットワークの構築、海賊及び海上強盗を取り締まるための枠組み、各国の海賊取り締まり能力を強化するための協力である。
(2002年3月18日スター)







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