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IMB第三四半期海賊報告書発表:海賊行為は減少したが、誘拐が増加
 昨年に比べ、全世界の海賊事件は減少したが、国際海事局(IMB)は、マラッカ海峡における誘拐事件の増加に懸念を示している。
 IMBの最新報告書によると、2001年1月から9月までの海賊事件の発生件数は、昨年同時期の294件から253件に減った。
 しかし、IMB海賊情報センターのノエル・チュン所長は、まだ報告されていないケースがあることから、実際はこれより増える可能性があると述べている。
 海賊の温床と言われるインドネシア海域及びマラッカ海峡では、インドネシア海域で昨年の90件から71件、マラッカ海峡で昨年の32件から14件と海賊事件が大幅に減少した。これはマレーシアなどがパトロールを強化した成果だと言える。
 しかし、海賊事件が減る一方、マラッカ海峡北部では身代金目当てで乗組員を誘拐する事件が発生している。身代金がそれほど高額でないため、お金で解決して事件を報告しない船主が多いのが現状である。
(2001年10月19日マリタイムアジア)
 
BIMCO 凶暴化する海賊への4つの対策案を提案
 先週、バルト海国際海運協議会(BIMCO)が、国連のアナン事務局長に海賊対策を講じるよう求めた。
 BIMCOの要求は、偶然にもIMBの第三四半期海賊及び海上強盗に関する報告書の発表と重なった。報告書では、昨年同時期の294件から253件によりも海賊事件の発生件数が減少しているように見えるが、実際には1月から9月までの間だけですでに9名の乗組員が殺害されており(昨年は1名)、事件は凶暴化している。また、乗組員を人質にとり、身代金を要求するといった厄介な傾向もみられる。
 BIMCOは、国連及びその専門機関であるIMOに対し、以下の4つの海賊対策を講じるよう求めている。
1. 各国が当局の職員を十分に配備し、法的な海賊取り締まりの権限と装備を与えること。あたりまえのことのように思われるが、実際ほとんどの国で海賊パトロールに必要な資源が不足している。
2. 各国が、このような特定の犯罪に関する国内法を制定し、犯人に適切な処罰を与えること。
3. 沿岸国、旗国、海運産業界が海賊に立ち向かうため協力すること。現在アジアでこういった取り組みが進行している。
4. 出入港する船舶、停泊している船舶や港に横付けしている船舶等全てのターミナル付近の船舶に対するパトロールを実施すること。同時に、関係者以外の港エリアへの進入を禁止すること。
(2001年10月24日シッピングタイムズ)
 
IMB インドネシア政府に海賊の起訴を求める
 IMB(国際海事局)は、インドネシア政府に対し、今年初めに逮捕されたInabukwa号とSelayang号の海賊の起訴を公式に要求した。海賊は、現在のところまだ起訴されておらず、IMBは海賊の刑罰が軽減されるのではないかと懸念している。
 IMBのムクンダン局長は、海賊の黒幕がインドネシア当局に逮捕され、禁錮7年の宣告を受けたが、後に禁錮4年に軽減されたことを過去の例として挙げた。
 現在、Inabukwa号とSelayang号の海賊17名が、インドネシアによって拘留されている。
 ムクンダン局長は、「インドネシアが海賊を起訴しなければ、これまで実施してきた海賊対策が全て無駄になる。しかし、海賊を起訴すれば、海賊に対して容赦しないという姿勢を見せるほか、国際海運産業に対してもインドネシアが領海内の船舶や船員の安全確保に取り組んでいることを知らせることができる」と述べている。
(2001年10月25日ロイズリスト)
 
インドネシア海賊対策センターへの冷ややかな反応
 2001年10月24日、インドネシア海軍、シンガポール海軍、シンガポール警察沿岸警備隊が、海賊対策合同演習を実施した。シンガポール海軍からRSS Resilience1隻、シンガポール沿岸警備隊から巡視艇1隻が、この合同演習に参加した。
 この席で、バタム海賊対策センターの司令官モハマド・ザイナル少佐は、海賊対策センターの取り組みについて以下のように述べた。
 「今年後半、パレンバンのバンカ島に新たな海賊対策センターが設置される予定である。すでに、バタムとメダンに近いベラワンに海賊対策センターが設置されている。我々は公海での強盗撲滅に取り組んでいる。海賊対策センターが設置されてから、マラッカ海峡での海賊事件の報告はない。迅速に対応できるよう、被害船の乗組員が直ちに事件を報告することを望んでいる。シンガポール海軍、シンガポール警察沿岸警備隊とインドネシア海軍の協力関係は良好で、いかなる海賊や密輸をも取り締まるつもりである。バタムには特殊部隊があり、偵察航空機や高速艇も備えている。今後はシンガポール当局との協力関係を一層深めていきたい」
 しかし、実際のところ、世界の海事当局は地域海域の海賊対策パトロールが十分に実施されているのか懐疑的である。
(2001年10月27日ストレートタイムズ)
 
日本海上保安庁 フィリピン沿岸警備隊と合同海賊対策訓練を実施
 2001年10月31日、日本海上保安庁は、フィリピン沿岸警備隊とマニラ湾で海賊及びテロ行為対策を強化するための合同訓練を開催した。訓練では、フィリピン沿岸警備隊の後援を受け、日本海上保安庁の部隊がハイジャックされた船に突入するという想定で行われた。
(2001年11月2日ストレートタイムズ)
 
船主「アジア各国政府は合同で海賊と戦わねばならない」
 先週土曜日(11月3日)、マレーシアのクアラルンプールで開かれたアセアン船主協会連合会の通常総会で、アジアの船主グループは、アジア各国政府に対して海賊及び海上強盗に対して断固たる措置をとるよう要求した。
 アセアン船主協会連合会(FASA)及びアジア船主協会・航行安全環境委員会(SNEC)は、アセアン各国に対し、海上航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(ローマ条約)を批准するよう求めた。
 アセアン加盟国でローマ条約を批准している国はないのが現状で、実際にローマ条約を批准しているのは全世界でも、中国、日本、オーストラリア、インドのみである。
 主な議題になっていたこの問題には、シンガポール、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、ミャンマーの各船主協会が深い関心を示した。
 FASAは声明で以下のように述べている。
 「最近のテロ事件を受けて、そしてアセアン海域での海賊及び武装強盗への対策を強化するため、FASAは全てのアセアン加盟国に対し、ローマ条約の批准を求めたい。
会議では、アセアン海域、特にマラッカ・シンガポール海峡では、マレーシア、インドネシア、シンガポールが協力し調整パトロールをしているにもかかわらず、依然として増加する海賊行為に懸念が示された。このようなことから、FASAはアセアン加盟国政府に対し、海峡を通航する船舶を守るため、海賊を撲滅・抑圧するための監視を強化することで各国間の協力関係を高めるよう求めた。FASAは、IMOによる海賊及び武装強盗の捜査に関する国際的なコードの制定を支持している」
 また、SNECもアジアの全ての国に対し、海賊及び武装強盗に対処するため地域協力を強化するよう訴えたほか、各国政府に対し一日も早くローマ条約を国内法として取り入れるよう求めた。また、同委員会は、先にアメリカでのテロ事件に対して懸念を示し、貨物船がテロリスト・グループとつながった海賊やハイジャック犯のターゲットになる可能性もあるとした。SNECは、IMOに対して今後も船員のための船内セキュリティに関するモデル・コースを作成するよう求めた。
(2001年11月6日シッピングタイムズ)
 
インドネシアとフィリピンが合同海上パトロール実施へ
 フィリピンのアロヨ大統領は、インドネシアのジャカルタを公式訪問し、メガワティ大統領と会談した。この席で、両大統領は海賊の蔓延する両国の間の海域を合同パトロールすることに合意した。メガワティ大統領は、近いうちに、密輸と海賊で悪名高いフィリピン南部とインドネシア中央から北部の間の海域を両国の海軍が合同パトロールする予定だと述べた。
(2001年11月12日ロイズリスト)
 
シンガポール ローマ条約加盟に取り組む
 先日シッピングタイムズに掲載されたローマ条約関連記事に対して、運輸情報通信省から以下のような返答があった。
 11月6日付けシッピングタイムズに掲載された「船主:アジア各国政府は合同で海賊と戦わねばならない」という見出しの、アセアン船主協会連合会(FASA)はアセアン各国に対し、海上航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(ローマ条約)を批准するよう求めた記事について、海事国家そして責任ある国際海事界のメンバーとして、シンガポールは海賊及び海上強盗行為を重大視している。我が国での海上強盗対策は成果を上げており、1991年以来、シンガポール海域内で海上強盗事件は発生していない。
 しかし、我が国の海域で事件は発生していないものの、地域の海賊事件増加に対するFASAの懸念を我々も共有している。FASAが指摘したとおり、ローマ条約は、政府が船舶に対する海賊行為及び海上強盗に対処する際に役に立つものだと認識している。
 これに関し、2001年7月25日、ヨー・チョートン運輸情報通信相は国会でシンガポールはローマ条約に加盟することを決定したと述べた。現在、条約加盟に必要な法律の制定に取り組んでいるところである。
(2001年11月15日シッピングタイムズ)
 
東南アジアのシーレーン、テロリストの標的になる可能性も
 11月21日から23日まで、シンガポールにおいて保安関連の会議「セキュリティ・アジア」が開催された。
 この席で、ロンドンに拠点を置く保安コンサルタント会社トライデントのティム・スパイサー氏は、東南アジアのシーレーンは攻撃されやすいため、テロリストの標的にされる可能性があると述べた。
 同氏によると、地域には以下のような要因が交じり合っているとのことである。
◆地域での活動的なテロ集団の存在
◆密集した海上交通
◆攻撃されやすいシーレーン
◆地域の貿易・通商の海運への依存(特に石油製品の輸送)
 IMB(国際海事局)からの報告によると、昨年全世界で発生した海賊事件469件の半数が、インドネシア海域とマラッカ海峡で発生しており、スパイサー氏は東南アジア海域で海上テロが増加する傾向がある。アルカイーダが世界的に活動しているほか、アブサヤフに関連したテロリスト集団も存在することから、この地域は攻撃を受けやすいと述べている。
 また、同氏はテロ集団同士の結びつきについて懸念しており、情報や意見交換も行われているのではないかとしている。
 例えば、オサマ・ビンラディンのアルカイーダが、昨年10月にイエメンでアメリカのコール艦を襲撃した時に使用されたボートは、スリランカのテロ集団タミールタイガーが使っていたものに類似していた。
 「テロ集団が意見を交換していることは明らかである」とスパイサー氏は述べている。
 タミール・タイガーには、シー・タイガーと呼ばれる部隊があり、通航船舶を襲撃するための高度な技術を持つと言われている。
 東南アジア海域におけるテロ脅威に立ち向かうためには、保安上の脅威及びテロリストの手口に関する最大限の情報を海事業者に提供する必要がある。情報は、各国政府と民間企業の両方から提供されるべきである。対敵諜報活動には、対テロリスト計画に関する機密情報の保護、乗組員に対する調査などが含まれる。
 他の危機管理としては、テロ対策の開発、訓練された保安要員の配置、保安検査の実施等が考えられる。テロ対策には、政府と民間企業の密接な協力が求められている。
 また、海賊対策のために商船、特に無防備である油タンカーの乗組員を武装させることについて、スパイサー氏は海賊の凶暴性をエスカレートさせるだけで、乗組員を訓練させたり、24時間体制で保安要員を配置したりするのは時間・金銭面で問題があると批判した。このほか、もし海賊に発砲する場合にはどの国の法律のもと実行するのかなど問題が出てくる。
 ただ、湾岸戦争の際には油タンカーに保安要員が配置されたように、戦争の起こっている地域については、保安要員の配置は認められるのではないか。たとえば、最近核廃棄物を積んだイギリスのタンカー2隻に武装した保安要員が配置されたが、これは政府の承認を得て行われたものであった。
(2001年11月23日ストレートタイムズ)
 
マレーシアとインドネシアの海軍が海賊対策で協力
 マレーシア海軍とインドネシア海軍は、昨日(11月28日)からマラッカ海峡で10日間にわたる合同演習を開始した。
 マレーシア海軍関係者によると、合同演習には高官16名と職員120名が参加、両国から各2隻のフリゲート艦が派遣される。合同演習の目的は、海賊に精神的なプレッシャーを与えることである。
 また、インドネシア政府は、マレーシア政府との保安協力に積極的で、このような合同演習を年間2回から4回に増やすべきだとしている。
(2001年11月29日ストレートタイムズ、Today)
 
アメリカ マラッカ海峡を通航する主要物資調達船を護衛
 テロリストによる攻撃を未然に防ぐため、アメリカ海軍はマラッカ海峡を通過してアフガニスタンに向かう主要物資調達船を護衛している。
 主要物資調達船の護衛は、シンガポール、マレーシア、インドネシアの支持を受け、約1ヶ月前から開始された。
アメリカ海軍関係者によると、「現在の取り決めでは、重要な船が通航する場合、アメリカ海軍がフリゲート艦を派遣して護衛にあたるほか、3カ国との間に敷かれた通航保護システムを経由して、重要な船が通航することを3カ国に知らせる。マレーシア、シンガポール、インドネシアはそういった船を捕捉し、特別な注意を払っている」とのこと。
 東南アジアは、これまでも「通行・育成基地」に適しているとアルカイーダに関連したテロリストから重要視されてきた。
 西側及びアジアの諜報機関の情報によると、東南アジアでは、インドネシアとフィリピンに次いでマレーシアで、イスラム過激派が多く活動しているとのこと。これは、イスラム教徒が多いことと世界的な不景気で失業者が増加していることが要因になっている。
アメリカ海軍の関係者は、我々が懸念しているのは、いつアルカイーダがアフガニスタンから追放されるのか、どこに活動の拠点を移すのか、どこで再組成するつもりなのかということだと述べている。
(2001年12月4日ストレートタイムズ)







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