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IMB2001年上半期海賊報告書発表 不景気のため海賊が蔓延る
 昨日IMBが2001年上半期海賊報告書を発表した。インドネシアの経済の減速と海上パトロールの欠落から、今年上半期の海賊事件は増加している。
 今年上半期に全世界で165件の海賊事件が発生したが、このうちの85%が東南アジアで発生しており、東南アジアは引き続き海賊天国になっているとIMBは述べた。
 昨年(2000年)同時期には全世界で161件、一昨年(1999年)同時期には115件の海賊事件が発生しており、海賊事件の発生件数は若干の増加をみせた。
 IMBは以下のように述べている。
 「海賊事件の根源にインドネシアの存在があることは周知の事実である。経済減退と海上パトロールの欠落が、海賊の脅威を悪化させている」
 しかし、インドネシアでは海賊事件が減少した。昨年の同時期には56件あった海賊事件が、今年は44件に減っている。
 反対に、マレーシアでは海賊事件が2倍に増えた。昨年上半期には7件あった事件が、マレーシア海軍のパトロール強化にもかかわらず今年は13件に増えている。
 フィリピンでは、身代金を目的とした誘拐事件が絶えず発生しており、今年はこれまでに4件の海賊事件が報告されている。(昨年同時期は1件のみ)
 また、昨年の上半期は、海賊襲撃による死者は0、負傷者は13名だったのに対して、今年上半期では3名の乗組員が殺され、19名が負傷している。
 報告書によれば、ある国が共同パトロールの意向を示しているのに対して、一方では海賊の温床になっている国が一元的に進めるのが一番の海賊対策であるとの意見もあり、これらの意見の相違により海賊対策が阻まれているとしている。
(2001年8月3日ストレートタイムズ)
 
Inabukwa号インドネシアに返還
 インドネシア籍船Inabukwa号は、積荷の錫インゴットを降ろし、インドネシアへ曳航されるとのことである。
 I号は、今年3月15日にシンガポール沖南東280メートルのところでハイジャックされた。23名の乗組員は無人島に置き去りにされ、I号はフィリピンで沿岸警備隊のポートステートコントロールの際に発見された。I号は、7月に台風に遭い、船底と機関室が浸水、プロペラが損傷し、フィリピン北部のCurrimao港で座礁していた。
 I号の船主であるインドネシア国営会社Pelayaranによると、I号の積荷であるインゴット(200万USドル相当)は別の船に載せられるとのことで、I号はジャカルタで修理される予定である。
(2001年8月17日シッピングタイムズ)
 
マラッカ海峡で通航船がアチェのゲリラに襲撃される 乗組員6名が人質に
被害船及びその詳細:
Ocean Silver号、小型船(詳細不明)、ホンデュラス船籍
乗組員12名、Tanoto Guan Hai(シンガポール)所有
状況:
分離独立を求めるアチェのゲリラ組織(自由アチェ運動)が、マラッカ海峡を通行中の船舶を襲撃した。救出は難航し、ゲリラ戦士2名とインドネシア国軍兵士1名が銃弾を受けて死亡した。現在もO号の乗組員12名のうち6名が人質になっている。
 マラッカ海峡を通航する船舶は、自由アチェ運動から許可を得なければならないと同グループのスポークスマンがマスコミに発表していたが、インドネシア国軍はこれに対し、多くの船舶が通航する海峡を通行止めにするような力を自由アチェ運動は有していないとしていた。また、同国軍はパトロールを2倍に増やすとも述べていた。ところが、今回このような事件が発生し、事態を軽くみてはならないことがわかった。
 国際海運集会所(ICS)の安全顧問であるブライアン・パーキンソン氏は、以下のように述べている。
 「同海峡において犯罪活動としてではなく、革命活動として船舶が襲われた初めてのケースである。新たな進展であり、今後監視を続けて当局に知らせる必要がある」
 自由アチェ運動は、アチェにあるExxon Mobil社のガス田を連続して襲撃し、ガス田を今年4ヶ月間にわたり閉鎖に追い込んでおり、陸上でも有力であることを見せつけている。
 IMB(国際海事局)は事態を重く受け取り、同局のウェブサイトには以下のような警告が出されている。
 「船舶は非常事態を除き、マラッカ海峡のインドネシア沿岸沖に停泊しないよう忠告されている。特にアチェ沿岸は非常に危険である。インドネシアの港、Belawan、Dumai、Merak、Samarinda、Tanjong Priokに寄港した船舶から停泊中に襲撃を受けたとの報告が多くあった。最近では、何隻かの船舶がインドネシア海域でハイジャックされている。ハイジャック事件が多発していることから、船舶所有者は衛星追跡システムを船舶に設置するよう忠告されている」
(2001年9月6日ロイズリスト)
 
日本が海賊取り締まりに関する援助を表明
 今月4日から5日間の日程で日本を訪問しているトニー・タン副首相兼国防相は5日、中谷防衛庁長官との昼食会において、シンガポール近海の南シナ海での海賊問題が議題に上り、「日本政府はこの問題を重視しており、シンガポールを含む関係諸国に協力する用意があることを明らかにした。日本政府は南シナ海における安全確保のためシンガポールばかりでなく他国との協力関係についても関心を持っている」と語った。
 近隣海域での海賊取り締まりに関してシンガポールは、すでにマレーシア、インドネシアといった近隣諸国と協力している。
 今回の防衛トップ会談で両国は、防衛分野での幅広い協力関係を再確認し、IT・通信のほか、海軍を中心とした二国間または多国間の共同活動を進めることで合意した。
 同相はまた、中谷長官にシンガポールへの訪問を促したことも明らかにした。
(2001年9月6日ストレートタイムズ)
 
個人レベルでの海賊撲滅運動
 ペトロシップ社のベテランマネージャーであるアラン・チャン氏は、1998年に同社が運航していたペトロ・レンジャー号がハイジャックされた経験を持つ。事件後、チャン氏は危険海域の調整パトロールの実施を求めてきた。国連に対して、領有権等の問題の解決に向け導くよう提案した。チャン氏は自身の活動を「個人レベルでの海賊撲滅運動」と呼び、「この業界に何年も携わってきた者として、何かしなければならないと思った」と語る。
 まだ具体的なスケジュールは決まっていないが、「年末までにマレーシア、シンガポール、インドネシアの意思決定者と会い、提案を発表したいと思っている」。
 また、海賊問題に深い関心を持つ日本の団体、すなわち日本財団や日本海上保安庁に働きかけたいとしている。
 6月にクアラルンプールで開催された第四回ICC-IMB海賊及び幽霊船に関する会議の席で、チャン氏は沿岸三国のほか日本の乗組員を乗せた国連が指名した船舶による共同パトロールを提案した。
 運用資金をどうするかについて、チャン氏は船主、保険会社、その他関係団体から公平な仕組みのもと装備一式に必要な費用を援助してもらえばよいと提案している。
 この提案は過激なアプローチであるとしながら、チャン氏は海賊を野放しにしてはならないと述べ、一国で海賊を取り締まるのは領海線の問題などから困難であり、現在のところ海賊対策は効果的に実施されていないと語った。
 チャン氏の提案は、IMBの高レベルでの協力を求めるという姿勢と一致している。しかし、IMBのムクンダン局長は、領海線の緩和は関係各国が近い将来、外部からの圧力の全くない状況で話し合われなければならないものだとしている。
(2001年9月17日スター)
 
海賊に襲われたマレーシアのタグボートをインドネシア当局が発見
事件発生日時:
2001年9月18日2345
事件発生位置:
インドネシア海域のSubi Besar島沖
被害船の詳細:
タグボート Mayang Sari号、289gt
空のバージ Daiho88号、シンガポール籍船
状況:
タグボートMayang Sari号は9月14日、空のバージDaiho88号を曳航して、東マレーシアのコタキナバルからインドネシアのバタム島に向けて出航した。18日2345、インドネシア海域のSubi Besar島沖で、12人から17人の銃で武装した海賊がM号に乗り込んできた。海賊は乗組員10人を縛り目隠しをした。乗組員は25日まで人質にとられた。25日の夜、海賊はバタム島付近の湿地で乗組員を解放し、乗組員はその後数時間歩き回って、やっと人里に辿り着いた。船長を除く乗組員全員は、事件の状況を警察に話すことを恐れて帰宅してしまった。M号の船主がIMBに通報し、IMBは27日に特別警報を出し、インドネシア当局にも連絡した。IMB海賊情報センターのノエル・チュン所長によると、タグボートのような小さな船は隠れるのが容易なため、発見は困難だと思われたが、インドネシア当局は24時間以内にカリマンタンでM号を発見し、拿捕した。当局が拿捕した時には、タグボートは空の状態だった。IMBは、M号の捜索に衛星追跡システムを利用した。
(2001年10月3日ロイズリスト)
 
日本が増加する海賊行為に措置
 日本外務省は、アジア各国と海賊対策の調整について話し合うため、今日(10月4日)から海賊対策会議を開催する。
 最近では、東南アジア海域で海賊が船舶やボートをハイジャックして、身代金を要求するケースが増加している。
 非営利団体である日本財団の山田吉彦氏は、「最近まで、海賊が商船を襲って、身代金を要求するケースはほとんどみられなかった。地域の政治が不安定な中、反政府ゲリラがこのような活動の背後に存在することは明らかである」と述べた。
 日本は、17の国家及び地域(中国、韓国、台湾、インド、アセアン加盟諸国)から政府関係者と船主をこの2日間の会議に招待した。
 IMBによると、今年上半期には165件の海賊事件が発生し、昨年同時期の161件を凌いだ。165件中90件が、東南アジア海域で発生した。
 4月には、日本の石油関連会社とインドネシア国営会社の共同ベンチャー会社の職員2名を載せた客船が、インドネシア・スマトラ沖で武装した海賊にハイジャックされた。
 6月には、ボルネオ北部沖でトロール漁船や木材運搬船が武装した海賊に襲われる事件が、1日に6件も発生した。
 同じ頃、インドネシア船籍のタンカーがマラッカ海峡で襲われ、船長と乗組員が誘拐された。ハイジャックに関与した容疑者が、その後身代金を要求してきた。日本からの報告によると、このようなケースに関しては身代金が支払われたようであるが、詳細については明らかにされていない。
 日本財団は、1998年9月のテンユウ号事件以降、地域の海賊対策で指揮をとろうと努めている。テンユウ号事件では、日本船主のテンユウ号がハイジャックされ、外国人乗組員は殺害されたとみられている。
(2001年10月4日ロイズリスト)
 
東京での海賊対策会議、アジア公海での海賊対策を探る
 世界的に海賊事件が増加していることを受け、昨日から東京において2日間の海賊対策会議が開催されている。
 この会議には、海賊の温床であるインドネシアのほか、シンガポール、マレーシアなども参加し、今後の海賊対策が話し合われた。
 開会の挨拶で、日本外務省の杉浦正健副大臣は、「各国がこのような犯罪を抑圧するため、それぞれ責任を負うべきであるが、このような犯罪は国境を越えることがあることから、国境を越えた各国間の緊密な協力及び調整も強化されるべきである」と述べた。
 昨年(2000年)、全世界で469件の海賊事件が発生し、前年(1999年)に比べ56%増加、1991年に報告のあった数の4倍にも上った。2000年には乗組員約72名が殺害され、99名が負傷した。99年には、3名が殺害され、24名が負傷している。
(2001年10月5日シッピングタイムズ)
 
最近の海賊の傾向:海賊から誘拐犯へ
 最近マラッカ海峡の海賊が、人質の解放に身代金を要求するケースが増加していることから、海運関係者は警戒を高めている。
 過去2ヶ月の間にこのような事件が2件発生しており、IMB海賊情報センターは、このほかにも復讐を恐れて報告をしていないケースが多くあるはずだと話している。
 IMBは最新の報告書のなかで、自由アチェ運動の分離主義者のグループが事件に関わっている可能性があるとしている。
 IMBは第三四半期報告書で、「海賊対策は、乗組員を誘拐し身代金を要求するという新たな風潮に脅かされている」と述べている。
 今年1月から9月までに全世界で253件の海賊事件が発生し、インドネシア、マレーシア、マラッカ海峡で発生した事件の数はその40パーセントにも上っている。
 最近発生した2件の詳細は以下のとおり。
●6月末にインドネシア船籍のタンカーTirta NiagaIV号の船長と二等航海士が誘拐され、身代金が要求された。2日後、船体に続いて航海士が解放された。しかし、船長は現在も拘束されたままである。
●2ヵ月後、ホンデュラス船籍のタグボートOcean Silver号が、武装した海賊にハイジャックされた。タグボートはアチェに向かわされ、乗組員のうち6名が解放され、残りの6名が人質にとられて身代金が要求された。彼らが解放されたのかどうかは報告されていない。
 国際海事専門家は、資金不足とインドネシアの政治・経済の混乱から海賊対策が妨げられていると述べている。
 IMBの報告書には、分離主義者に海峡を閉鎖する力はないというインドネシア軍の発言が載せられている。
 しかし、インドネシアでは今年1月から9月までに71件の海賊事件が発生している。これは全世界で同時期に発生した事件253件の28パーセントを占めている。
 同時期にマレーシアでは15件、マラッカ海峡では14件の事件が起こっており、インド(22件)、バングラディッシュ(19件)、ナイジェリア(12件)でも海賊事件が増加している。
(2001年10月16日ストレートタイムズ)







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