日本財団 図書館


2 MARPOL73/78改正の検討及び採択
 
2.1 当委員会は、Prestige号事故の後に、shingle-hullタンカーのphase-out時期、shingle-hullタンカーによるHeavy Grades Oil(HGO)輸送の禁止及びCAS(Condition Assesment Scheme)適用拡大のさらなる促進を提起している、欧州連合加盟15ヶ国と欧州委員会がMEPC 49(2003年7月14日〜18日)に提出したMARPOL附属書Iの改正提案を想起した。
 
2.2 当委員会は、MARPOL条約第16条(2)(a)の規定に従い、2003年4月10日付事務局長回覧状No. 2458により、附属書の改正提案が回章に付されたことをさらに想起した。
 
2.3 当委員会は、MEPC 49が当改正提案(MEPC 49/16/1)を検討し、幅広い審議のあと、既存shingle-hullタンカーのphase-out 及びHGOを輸送する際のタンカー要件に対処するMARPOL附属書Iの改正第13G規則の条文案及び第13H規則新設案を作成したことを銘記した。また、当委員会は、CASの必然的改正の条文案を作成した。当改正提案の基本条文は、MEPC 50による審議のため文書MEPC 50/2に呈示されている。
 
2.4 当委員会は、事前に14通の提案文書を受け取った。:MEPC 50/2(事務局), MEPC 50/2/1(日本), MEPC 50/2/2(インド), MEPC50/2/3(ロシア), MEPC 50/2/4(英国), MEPC 50/2/5(日本), MEPC 50/2/6(日本), MEPC 50/2/7(日本), MEPC 50/2/8(日本), MEPC 50/2/9(国際船級協会連合), MEPC 50/2/10(ブラジル), MEPC 50/2/11(国際独立タンカー船主協会), MEPC 50/INF.2(事務局), MEPC 50/INF.3(ブラジル)及びMEPC 50/INF.4(事務局)
 
2.5 MEPC 49の決定に従い、当委員会は、当審議のベースとして提案文書MEPC 50/2を使うとき、すべての具申及び影響評価に関する技術グループの改正提案の第2と第3の報告書を考慮に入れた。
 
2.6 当委員会は、プレナリーにおける審議できる時間が短いこと及び改正提案の重要性を認識し、当委員会は短い時間内に多数の重要事項に関する結論を出し、改正提案を最終化する起案グループへの明確なガイダンスを提供するためにMARPOL附属書Iの改正提案及び当委員会の議長によって整理された、CASに関する多数の重要事項(MEPC 50/WP.1)を審議の焦点を絞ることで合意した。
 
2.7 また、当委員会は、第13G規則の改正提案及び第13H規則新設のための代替え条文を提供している、日本が提出した妥協提案(MEPC 50/WP.2)を勘案することに合意した。
 
2.8 日本代表団は、(a) shingle-hullタンカーのphase-outのさらなる促進に関する提案、shingle-hullタンカーによるHGO輸送の禁止及びCAS適用の拡大を原則支持すること: (b) HGO輸送を直ちに禁止することは、いくつかの国のHGO貿易に深刻な問題をあたえることを勘案する必要な審議をすること:及び (c) すべての加盟国のために合意できる解決を達成するためにIMOにおいて、すべての努力がされるべきであることを強く望んでいると述べた。
 
2.9 当委員会は、最初に第13G規則の改正提案、次に第13H規則新設の提案、そしてCASのしかるべき改正について審議することを決定した。
 
3 2003年12月1日月曜日の審議
 
第13G規則の改正提案−カテゴリー2及びカテゴリー3の油タンカーphase-out
 
3.1 当委員会は、文書MEPC 50/WP.1(提案文書MEPC 50/2附属1関連)において整理された、下記の問題について議論の焦点を絞った。
 
.1 paragraph (5)(iv) の括弧付き;船齢25年をdouble bottom又はdouble side船phase-outのための期限、若しくは2015年又は船齢25年のいずれか早い時期とすべきか。
 
.2 paragraph [(7)]: 括弧を取り外すべきか、もしそうであるならば、当委員会は、船齢20,23又は25の3つの選択肢のうちいずれを折衷するのか。
 
.3 paragraph (8)[(b)] 入港拒否のための規定:括弧を削除すべきか。
 
.4 第13G(3)(b) と第13G(1)(c) 規則の改正提案に2つの短い文を追加する国際船級協会連合(IACS)の提案を当委員会は受け入れるのか。
 
3.2 審議を次に述べる、当委員会は、
 
.1 継続的運航の許可を他のどのような期限にも関わらず、船齢25年のカテゴリー2及び3の油タンカーの継続運航が既に許可されている、2002年9月1日に発効した現行第13G(5)(a)(iv) 規則を認識し、主管庁が第13G(5)(i),(ii)及び(iii)規則に述べる条件を満たす油タンカーに対して、25年後の基準日までの運航を容認できるという趣旨の括弧つきparagraph (5)(iv)の文書を削除することに合意した。
 
.2 paragraph (7) の括弧を削除することに合意し、船齢[20]年のオプションを削除することを決定した。然し乍ら、第13G規則のparagraph(4) において指定された時期を超えるカテゴリー2又はカテゴリー3の運航継続についての、[23]又は[25]年後の基準日で残る2つのオプション、或いは2015年のいずれか早い時期に関しては決定に至ることができなかった。
 
.3 寄港国の管轄権下の港又は沖合のターミナルへのparagraph(7) の規定に従って運航している油タンカーの入港拒否に関連するparagraph (8)(b)の括弧を削除することに合意し、またその上、paragraph (5)(iv)に従って運航している油タンカーに言及することを含める合意をした。然し乍ら、後者のケースにおいて、同権利は2015年の船舶の引渡し応答日から効力を生ずる。
 
.4 第13G(3)(b)規則に関する統一解釈作成で、文書MEPC 50/2/9(IACS)に提出された提案について合意し、そして、
 
 次に、当委員会は、double bottom tank又は区画の垂直保護距離の測定に関連する第13G(1)(c)規則に “at centerline”の語句を含めることについてさらに合意した。
 
新設第13H規則の提案−shingle-hullタンカーによるHeavy Grade Oil(HGO)の輸送
 
3.3 当委員会は、MEPC 50/WP.1(提案文書MEPC 50/2附属書1関連)に整理されている以下の重要事項に審議の焦点を絞った。
 
.1 提案された第13H(1)[(a)] 規則“heavy crude oil”の定義規定の括弧を削除すべきか
 
.2 HGOの定義
 
.3 shingle-hullによるHGO輸送の禁止の実施時期
 
.4 shingle-hullによるHGO輸送の禁止に関する免除及び緩和規定
 
“heavy crude oil”の定義
 
3.4 いくつかの代表団が、原油に関する比重による定義について、パラメータのための最低基準値を945 kg/m3 に引き上げない限り、HGOとして限定する必要がないという見解、さもなければ、低い数値の設定により原油貿易は危機にさらされるだろうと述べた。
 
3.5 多くの代表団が、特定の航路のための特定の免除によって問題に対処できるとする一方、現存のdouble-hullタンカーの船団が原油の需要に十分に対処できることを指摘する意見を述べた。
 
3.6 いくつかの代表団が、比重及び/又は原油及び燃料油の双方を包括する運動学的粘性によるHGOに対する単一の定義によって当問題が解決できることを述べた。
 
3.7 当委員会は、2003年12月1日月曜日に当問題を決議できず、当委員会の議長によって召集される作業部会に当問題を委託することに合意した。
 
“heavy fuel oil”の定義
 
3.8 当問題の審議の間、多数の代表団が、合意されるどのような定義でも、海洋環境へ最も損害を与えている出来事であることが証明されている、タンカーNakhokda号、Erika号及びPrestige号によって運ばれた貨物を包括すべきであることを強調した。この点において、Nakhokda号のfuel oil cargoが959 kg/m3 の比重及び137 nm2/s の粘度であったこと、そしてもし それが“and”で接続されていたならばHGOの定義に含められていないだろうことを銘記した。
 
3.9 代表団の大多数は、15℃において900 kg/m3 よりも高い比重、又は50℃における粘度が180 nm2/s よりも高いことをheavy fuel oilの定義として支持した。
 
3.10 たとえheavy crude oilが削除されても、他の代表団が、fuel oilだけのために同じ用語についての定義を支持し得る間に、当委員会が、heavy crude oilの定義は必要ではなかったと決定すべき場合には、いくつかの代表団が、HGOの単一の定義のための同じ数値として受け入れることができるだろうと述べた。
 
3.11 当委員会は、2003年12月1日月曜日に当問題について決議できず、当問題を作業部会に委託することに合意した。
 
shingle-hullによるHGO輸送の禁止の実施時期
 
3.12 当審議の過程において、当委員会は、文書MEPC 50/WP.2(日本)に主に従った。
 
3.13 当委員会は、5,000 DWT以上の油タンカーについては2005年及び600 DWT以上で5,000 DWT未満の油タンカーについては2008年の実施時期に合意した。
 
shingle-hullによるHGO輸送の禁止に関する免除及び緩和規定
 
3.14 当委員会は、double bottom又は第13F規則の規定に全く適応しない、double-hull構造の船舶の運航継続を提案している新しい第13H規則(MEPC 50/WP.2)のparagraph [(5)] の合意に達することができなかった。
 
3.15 幅広い審議の後、当委員会は、文書MEPC 50/WP.2 提案されている新設第13H規則のparagraph (6)(a) 規定のCAS適合を条件として、5,000 DWT以上の油タンカーについて、2015年又は船齢25年のいずれか早い時期まで運航を継続できるとする提案について合意に達することができなかった。
 
3.16 多くの代表団が、当問題の審議において、世界的な問題への世界的な解釈の規定の合意に達するには、一般規則の地域又は国内における免除の効果的な実施が、世界の一定の部分だけに制限されるのを是認することによって達成できないだろうと強調した。同様に、13H規則以外の規定に従って運航継続を許されている油タンカーに対して、港又はターミナルに入ることの拒否を正当に扱う問題の適切な解決策とは考えられない。
 
3.17 当委員会は、文書MEPC 50/2/3で港内輸送のHGO運搬船のための提案されている免除に、国内航路に従事している600 DWT以上5,000DWT未満の油タンカーを含めるロシア提案を審議した。国内航海と旗国、港及び沿岸国の定義と関連する多くの問題は、外国籍の油タンカーを他国の水域で運航している場合には港又は沿岸国の同意を求める必要があることを含んで議論された。
 
米国代表団による声明
 
3.18 米国代表団が、新設第13H規則の提案が米国国内法と相反することを、予備的な法律決定が示したことを当委員会に通知した。当決定を考慮して、米国は、もし以下の手続き上の懸念に取り組まれるならば、その規則に関係する適切な審議をすることができるだろう。
 
.1 HGOに関する規則は第13G規則改正から完全に分けられるべきである。
 
.2 第13F及び第13G規則に言及されないべきである。
 
.3 改正の採択のためのMEPC決議に包括できる適当な取り決めを作ることは、各国がそれぞれの規則を個別に審議することを可能にするだろう。
 
3.19 米国代表団は、いかに結末への過程を容易にしたとしても、手続き上の障害の除去次第では、批准が実質的に保証されないことを強調した。
 
国際油汚染防止(IOPP)証書の必然的改正
 
3.20 当委員会は、提案された第13G規則改正及び新設第13H規則に照らして、国際油汚染防止証書付録(B 書式)の必然的改正の案文を提供している文書MEPC 50/2/6(日本)を銘記し、当文書を起案グループに付託することに合意した。
 
船舶リサイクリングのMEPC決議
 
3.21 また、当委員会は、shingle-hullタンカーの phase-outが促進されることは、リサイクリングヤードに送られるタンカーの数に相当の増加が必然的に伴う所定の事実であり、船舶リサイクリングに関するMARPOL附属書Iの改正提案の円滑な実施のための、MEPC決議を提供している文書MEPC 50/2/5(日本)を銘記した。当委員会は、提案されたMEPC決議の文章の最終化を起案部会に要求することを合意した。
 
MARPOL附属書Iの早期の実施
 
3.22 当委員会は、MARPOL附属書Iの改正提案の早期で効果的な実施を要求しているMEPC決議の採択を2005年4月5日の改正条約発効より前に提案している文書MEPC 50/WP.6(カナダ、キプロス及びデンマーク)を銘記した。
 
3.23 当委員会は、2003年12月4日木曜日のプレナリーにおいて、当決議の最終の採択決定が取り入れられるという理解に基づき、MEPC決議案の文章を起案部会に付託することに合意した。
 
CASの重大な改正
 
CASの非公式連絡部会
 
3.24 当委員会は、MEPC 50の前の利用できる限られた時間内に作業を進展させるために、中間期に非公式連絡部会を主催する英国の申し出をMEPC 49が受け入れたことを想起した。重要な問題は、文書MEPC 50/WP.1, paragraphs 3.1 〜3.5に記載された、非公式連絡部会の報告書(MEPC 50/2/4)に整理されている。
 
3.25 当委員会は、文書MEPC 50/2/4の提出以来、CASの改正案に関する多くのコメントや提案が上げられていること及び未解決の問題を解決するために、2003年11月27及び28日に非公式連絡会による援助のもとに起案部会が招集されたことを銘記した。
 
3.26 当委員会は、文書MEPC 50/WP.3に含まれている、非公式連絡会の起案部会の報告書を審議し、そして起案部会によるさらなる吟味のために改正の改訂本文を一般的に是認した。
 
第13G(6)規則の条文案
 
3.27 当委員会、CAS改正提案に従って、寿命延長のための状態よりはむしろ、SOLAS下の検査強化プログラム(ESP)に類似した、第13G (6)規則に従ったCASが通常の検査要求とみなされるべきことを考慮に入れると、第13G (6)規則の条文は、文書MEPC 50/WP.3のparagraph 6 に提案されているように修正されるべきという起案部会の要求に合意した。
 
検査制度の調和
 
3.28 バハマ代表団は、CAS要件適用の拡大のための現在の提案に従って、"once in lifetime"の課題として、もともと作成された当初のCAS概念と対比すると、実際にはCASが繰り返される周期的な検査に相当すると述べた。バハマ代表団は、CAS拡大が検査哲学の変化を導入し、この好機においてCAS改正提案が、実際にはSOLASの一部としての検査制度に変えるという意見を述べた。したがって、当委員会は、検査制度に不要な重複や矛盾をさける必要を考慮に入れて、さらに詳細な審議のためにCASの改正提案を海上安全委員会(MSC)に付託すべきであることを提案した。
 
3.29 パナマ代表団は、バハマ代表団が述べた見解を支持する時に、提案された新しいCASスキームが厳しい検査及び管理の重荷を負わせ、人的力量と関連する専門知識の不足によって困難に直面するかもしれないと意見した。同代表団は、船舶の構造条件の検査要件が現存する2つの別の条約に存在し、同じ問題を2つの別の委員会で審議されている状況を避ける必要があることを強調した。
 
3.30 当委員会は、上記の懸念に言及し、第13G規則の改正提案にCAS改正提案が不可欠であることを想起し、船齢15年以上のカテゴリー2及びカテゴリー3のタンカーについて2005年からCAS適用の拡大を可能にするために、当改正提案の今会期での採択のために審議されるべきことを合意した。
 
3.31 CAS改正がESPについて影響を与えることに関して、当委員会は、検査制度の調和を目的としてさらなる作業を進めるべきであることに合意し、その点で、当委員会が、A774(18)決議書によって採択された、ばら積み貨物船と油タンカーの検査の際の点検の強化プログラムに関するガイドラインのCASの導入と編入に関連性のある規定と要素を、海上安全委員会に審議することを勧告する、当ガイドラインの再吟味の際に修正されたMEPC.94(46)決議書paragraph 5の効力発生を想起した。
 
CASに関する将来の作業
 
3.32 CASに関する将来の作業について、日本代表団は、整備不良のために油タンカーの重大な船体破損を最小化又は排除するためにCASの規定をさらに促進する必要があることに言及し、さらに、その点で日本が文書MEPC 50/2/8 に概説されているような適切な提案をMEPC 51へ提出する意向を当委員会に通知した。
 
起案部会の設立
 
3.33 当委員会は、上記すべての問題を審議し、下記の付託事項をもって起案部会を設立した。
 
 すべての関連する文書、コメント、提案、プレナリーでの決定及び当委員会の議長によって招集された作業部会の結果を考慮に入れる。
 
.1 第13G規則、新設第13H規則及びMARPOL附属書Iの国際油汚染防止証書付録のB書式の必然的補完提案の最終化とその採択に関するMEPC決議案の準備
 
.2 第13G規則改正及び新設第13H規則の最終化後に必要ないかなる変更も組み込むために、MEPC 50/WP.3 附属書に含まれているCAS改正の案文を再吟味
 
.3 船舶リサイクリングに関するMEPC決議の最終化
 
.4 MARPOL附属書I改正の早期適用に関するMEPC決議の再吟味
 
.5 2003年12月4日木曜日のプレナリーに完全な報告書を提供







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION