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15 技術協力計画
 
15.1 当委員会は、MEPC 48において、事務局作成の、2004〜2005年統合技術協力計画(ITCP)への、最新化された主題優先事項及びMEPCの寄与が承認されたことを想起した。これらについては、2004〜2005年の全般的ITCPの海洋環境関連構成要素作成のための基盤を形成するものである。また、当委員会は、2002〜2003年のITCPと比較した新たな優先事項における主たる変更が、主として、船舶からの大気汚染、船舶リサイクリング、有害防汚システム制御に関する国際条約、特別海域及び特に敏感な海域(PSSAs)の特定及び保護に関するガイドライン、並びにバラスト水制御及び管理方策ついての内容に関連するものであったことについても銘記した。IMOの協力部は、MEPCを含んだ技術協力委員会(TC)からの寄与に基づいて、2004〜2005年のためのITCPを作成した。2004〜2005年のITCPは、TC 53で承認された。
 
15.2 当委員会は、事務局作成の文書MEPC 49/INF.14が、2000〜2001年及び2002〜2003年のITCPに関連したものであり、2001年1月〜2002年12月における、各地域をベースとした計画に対する活動に関する現状報告書について記載していることを銘記した。重要な成果には、海洋環境保護に関するセミナー/ワークショップ/訓練コースにおける、MARPOL及びOPRC、MARPOL及びOPRC履行のための戦略的行動計画のような開発途上地域行動を通じた地域協力の促進及び強化、地域の油汚染緊急対応計画並びに港湾運営のための環境管理ガイドラインを含む、関係者への訓練が含まれている。
 
15.3 また、当委員会は、ROPME/MEMAC文書MEPC 49/INF.11が、MEPC 48以降、海洋環境保護地域機関/Marine Emergency Mutual Aid Center (ROPME/MEMAC)により、ROPME海域(RSA)における海洋環境保護に関して実施された主な活動についての要約を含んでいることも銘記した。 これらについては、MARPOL 73/78の批准及び履行、受入施設及びOPRC 90条約の規定並びにそれらへの関係事項に関連している。当該報告書は、地球規模バラスト水管理計画及び戦争関連難破船に関する事項も取り上げており、また、ROPME/MEMACの役割、責任及び会員資格についての情報も提供している。
 
15.4 さらに、当委員会は、事務局文書MEPC 49/INF.12が、Regional Marine Pollution Emergency Response Center for the Mediterranean(REMPEC)後援の下に、2000年8月〜2003年8月の期間に実施された活動に関する情報を提供していることも銘記した。これらについては、情報の収集及び普及における当該センターの主要な役割、また、緊急時における会員諸国への支援の準備、対応及び調整のための国家及び亜地域の進展に関する情報が含まれている。また、当該センターの他の機関との協力並びにバルセロナ条約への新たな予防及び緊急事態議定書の採択及び批准ついても、情報提供されている。
 
15.5 その上、事務局文書MEPC 49/INF.13が、GEF/UNDP/IMO東アジア海洋環境管理パートナーシップ(PEMSEA)後援の下に、2001年1月〜2002年12月の期間に実施された活動に関する情報を提供している。当該情報については、1999〜2005年のPEMSEAの目的の策定に焦点を絞っており、また、PEMSEA参加諸国も示している。
 
15.6 諸文書へのコメントにおいて、エクアドル代表団が、本年早期の国家海上安全及び海洋環境に関するセミナーの組織化へIMOの助力について、同国の謝意を表明した。また、当該代表団は、2003年10月のある時期に、IMOの助力を得て、第2回目のセミナーを引き続いて主催することを表明した。
 
15.7 当委員会は、提供された諸情報について銘記した。
 
16 MARPOL 73/78及び関連法規の解釈及び改正
 
MARPOL 附属書1改正提案
 
背景
 
16.1 当委員会は、バハマ籍油タンカーPrestigeが、2002年11月19日に、スペインのCape Finisterre沖において沈没したことを想起した。当該船舶の沈没は、スペイン、フランス及びポルトガルの海岸に深刻な汚染を引き起こした。当該事故により、いかなる死亡又は傷害も生じなかったことが特筆される。
 
16.2 Prestigeについては、1976年3月1日に引き渡された81,589 DWTのsingle-hull油タンカーである。同船沈没時には、CBT(クリーン・バラスト・タンク)状態で運航されていた。現行附属書Iの第13G(4)規則で規定の予定に従えば、同船は、2005年3月1日にphase outされることになっていた。
 
16.3 当該事故の原因については調査続行中であり、今日まで、確固たる結論を得るまでに至っていない。
 
改正提案に関する専門家グループの結果
 
16.4 当委員会は、当該事故により、15のEU(欧州連合)加盟国及びEC(欧州委員会)が、MARPOL附属書Iの文書MEPC 49/16/1に記載の改正についての提案をしていることを銘記した。
 
16.5 さらに、当委員会は、MEPCが、当該改正提案を審議し、かつ、関連情報の背景に対し適切な措置を講ずることができるように、事務局長が、2000年のErika事故をきっかけに組織された当該提案のImpact Assecement(影響評価)に関する非公式専門家グループを再設置するよう指導していることも銘記した。当該専門家グループの結果については、文書MEPC 49/INF.34及びAdd.1記載されている。一方、専門家グループの再設置に関する情報については、事務局長文書MEPC 49/16/2で提供されている。
 
16.6 当委員会は、専門家グループによる改正提案検討の結果を考慮に入れることで合意した。
 
特別MEPC会期及び提案改正
 
16.7 当委員会は、第90会期理事会において、MEPCの当該会期開催の必要性についての決定を条件として、12月総会の間に特別MEPC会期の開催で合意されていることを想起した。
 
16.8 当委員会は、当該改正提案については、2003年4月10日付事務局長回覧状No.2458により、MARPOL条約第16条に従って、改正回章の強制6ヶ月間隔条件を満たして回章に付されていることを銘記した。当該改正については、2003年12月の特別MEPCで採択された場合、MARPOL条約第16条の関連規定に従った最も早い実行可能な年月日となる2005年4月に発効することになる。
 
Prestige損失調査に関する文書
 
16.9 当委員会は、Prestige損失調査に関し、2つの文書(バハマ文書MEPC 49/16/4及び欧州船級協会-AWAS文書MEPC 49/16/8)が提出されていることを銘記した。これらの文書は、とりわけて、MSCへの付託事項となる、構造条件、船舶修繕手法、コーティングの質、材料寸法及び他の若干数の問題点についてコメントしている。
 
16.10 当委員会は、両文書を、MARPOL附属書Iへの改正提案の討議時に考慮に入れ、また、MSCに対し、安全性の見地からこれら両文書を審議するよう要請することで合意した。
 
改正提案の紹介
 
16.11 イタリア代表団が、文書MEPC 49/16/1の紹介において、他の欧州連合加盟14ヶ国を代表して、IMOに対し、MARPOL条約改正という手段による海洋環境保護向上に関連する問題の取り扱いの機会を、早急に提供してくれたことに感謝の意を表明した。イタリア代表団は、IMOこそが、国際海運に影響する安全及び汚染防止基準を審議かつ採択するための適切な議論の場であることを強調した。
 
16.12 イタリア代表団は、当該提案に対する他の代表団のコメントを歓迎して、欧州連合が、より良い海洋環境保護及び高品質海運促進のための新たな方策策定を目指した地球規模戦略を提示するよう決定した旨を述べた。欧州連合主たる3要素にについて強調したものは、次のとおりである。
 
.1 タンカーのためのdouble-hull又は同等デザイン要件のphasing-in加速
 
.2 CAS(Condition Assesment Scheme)適用の拡大
 
.3 single-hull油タンカーによるHeavy Grades Oil(HGO)輸送の禁止
 
16.13 イタリア代表団は、欧州連合提案が、1990年米国油汚染法の要件と調和したものであることを強調した。それゆえ、当該提案が、適切なものと判断され、MEPCで採択された場合には、世界中で適用可能な国際的統一枠組みとなる。
 
16.14 イタリア代表団は、single-hull油タンカーによるHGO運搬禁止提案に関しては、最悪の船舶で最悪の油製品が運搬されているという異常事態が明らかになっていると述べた。欧州連合提案の背景にある理論的根拠は、最悪汚染物質については、利用可能な最も安全な船舶で運搬すべきということにある。イタリア代表団は、当該改正提案について検討する作業部会の設置を提案した。
 
16.15 欧州委員会のオブザーバーが、国際海運への地球規模基準の適用の必要性が欧州連合により認識されていることを強調する一方で、IMO事務局長に対し、同局長の首尾一貫した当該提案審議に関するアプローチについて謝意を表明し、IMOの関与を歓迎した。
 
16.16 欧州委員会のオブザーバーは、MEPCに対し、single-hullタンカーの前倒しphasing-outのため、前広な措置を講ずるよう強調し、また、IMOが1992年に既に措置を講じており、その折にdouble-hullタンカーの1996年以降のphase-inを決定していることを強調した。欧州委員会代表者の見解に鑑みて、IMOによる肯定的反応が、強い信号を世界に発信することになる。
 
16.17 日本代表団が、文書MEPC 49/16/10の紹介において、古いsingle-hull油タンカーのphase-out促進を原則的に支持する一方で、次の点に関するEU諸国提案についてのコメントを述べた。
 
.1 高齢タンカーのphase-out、たとえば20歳以上のタンカーについては最優先的に、また、相対的に若いタンカー、たとえば20歳未満については、2015年まで運航続行が許可されるべきである。
 
.2 single-hull油タンカーによるheavy grade oilの運搬禁止のための適切な過度期、特に5,000 DWT未満のタンカーについては、たとえば2015年までの過度期を設けるべきである。
 
プレナリーにおける全般的議論
 
16.18 欧州連合提案の全般的議論において、当委員会は、専門家グループ報告書(MEPC 49/INF.34)及び専門家グループの重油副グループ報告書(MEPC 49/INF.34/Add.1)が昼食時に紹介されており、それらのプレナリーでの公式紹介の必要性がないことを銘記した。
 
16.19 当委員会は、欧州連合提案の議論については、現段階では以下の点に焦点を絞ることで合意した。
 
.1 文書MEPC 49/16/1に記載の改正提案に対する全般的コメント
 
.2 次の具体的事項に関する議論
 
.1 Category 1、Category 2及びCategory 3タンカーのphasing-out年月日の前倒し
 
.2 Heavy Grades油運搬の禁止
 
.3 作業部会設置の要否
 
16.20 計30の代表団が、以下の議論に加わった。インド、日本、ブラジル、BIMCO及びINTERTANKOの諸代表団が、欧州提案へのコメントを提供する個々の文書を紹介した。
 
16.21 議論の要約については、以下のとおりである。
 
.1 多くの代表団が、当委員会の決定を条件とした12月の特別MEPC会期開催を含め、また、非公式専門家グループの再活性化における事務局長の主導権について謝意を表明した。
 
.2 いくつかの代表団が、IMOに提案を提出した欧州連合の措置を歓迎し、欧州連合提案への原則的支持を表明した。
 
.3 代表団の大多数が、Category 1タンカーのphasing-outを2007年から2005年に前倒ししても、造船及び船舶リサイクリング分野を含む業界に大きな問題を引き起こさないという見解を表明した。
 
.4 代表団の大多数が、提案が受け入れられ、Category 1及びCategory 2タンカーのphase-outを前倒したら、2010年に著しく高いピークを形成してしまうことに懸念を表明した。若干数の代表団が、14歳という若い年齢の船舶の退役については受け入れ難いと述べた。
 
.5 CAS(Condition Assesment Scheme)のdouble-hullタンカー及び15歳以上のすべてのタンカーへの拡大については、若干数の代表団が、その実施について若干異なったアプローチを提示しているとはいえ、多くの代表団にとって建設的進展とみなされている。
 
.6 若干数の代表団が、20歳又は2015年の早い方の時期にsingle-hull船を強制的にphasing-outすることにより、当該提案により2012年に形成される高いピークを平準化するという日本提案への支持を表明した。このことは、Nakhokda、Erika及びPrestigeが25歳以上であった事実を認識したものである。
 
.7 いくつかの代表団が、最近の事故の多くは、加熱貨物タンクに隣接したバラストタンク付近の構造上の欠陥に関連したものであり、まさにIMOが取り扱うべき問題であるという事実を強調した。
 
.8 single-hullタンカーによるHGO(Heavy Grades Oil)輸送の禁止については、大筋で多くの代表団に支持された。しかしながら、その適用の程度及び範囲に関して、600〜5,000 DWTの小型タンカーへの、2008年又は2015年までのこの方策実施除外の必要性をも含め、異論が表明された。
 
.9 いくつかの代表団が、早期のphase-outが特定の国々のタンカー船隊への影響を与えるようになることを含め、当該提案が特定地域に与える影響の可能性についての懸念を表明した。
 
.10 また、ほんの少数の代表団が、HGOの定義に対する懸念を表明した。これらの代表団は、比重及び運動学的粘性については、いくつかの中南米諸国で生産される重質原油を許可よう調整されるべきという意見を持っていた。HGO定義のための比重及び運動学的粘性の見地から、より調整された組み合わせについての慎重な調査が、Expert Group Impact Studyが予見している困難性の一部の解決に役立つことになる。
 
.11 いくつかの代表団が、MARPOL附属書I第13G規則を、その採択のわずか2年後に、かつ、その発効から1年も経過しないうちに改正するという提案に同意しなかった。これらの代表団の見解においては、油輸送業界は、2年間毎に変更されない、安定した規制環境を伴った公平かつ一様な活動の場を必要としている。
 
.12 参加者の圧倒的多数は、プレナリーで惹起された点を含むこの複雑な問題を検討する作業部会を設置することで合意した。
 
.13 当委員会は、MSCが、新船からの船舶のための検査基準の設定におけるIMOのより深い関りを審議することで合意しているにもかかわらず、double-hullタンカー又は15歳以上のタンカーへのCAS(Condition Assesment Scheme)拡大の可能性の検討を除外していることを銘記した。すべての船舶のための基準は、IMOにとって長期間作業であり、一度新たな検査制度が決定されると、CASへの適応のための時間を要することになるか、あるいは、選択されたより包括的な制度適用の履行を中止することになる。
 
16.22 スペイン代表団が、文書MEPC 49/16/1を支持して、2000年にスペインが提出したタンカー安全の強化に関する文書MEPC 45/7/5におけるMARPOL附属書I第13G規則への改正提案が、受け入れられていたならば、タンカーPrestige事故が決して起きていなかったことを、当委員会に思い起こさせた。スペインは、それ以来、スペイン水域において、同様な特性を持つ3隻のタンカー(Castor、Kristal及びPrestige)が、人命死傷及び深刻な汚染を伴った事故を生じている。この事実は、文書MEPC 49/16/1で提出されている新たな改正提案の採択を正当化するものである。







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