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8.14 当委員会は、西ヨーロッパをPSSAとして指定する提案に関する文書を検討して、以下の点を提起した。
 
.1 いくつかの代表団が、提案されている大規模な海域について、また、PSSA指定を求める他の同様な大海域の先駆けとなることに関し懸念を表明した。この懸念への返答において、提案諸国は、提案海域と同様な規模として、Great Barrier Rief PSSAが先駆けとして既に規定されていると述べた。
 
.2 多数の代表団が、先駆け的提案については、無害通航及び航行の自由に対し危険となると述べ、これに関連して、single-hullの国際海峡の通航禁止は、国際法に対する違反となることが指摘された。
 
.3 いくつかの代表団が、APM(関連保護政策)提案については、single-hullタンカーがさらに危険な水域に弾き出されることになるので、航海の安全上が逆効果となるという懸念を表明した。これに関連して、ノルウェー代表団が、APMについては、ノルウェー沿岸に近いバルト海域から、重質油輸送single-hullタンカーを移動させる効果を持つことになる旨を指摘した。当委員会は、表明された懸念を考慮して、この提案の他国に与える影響について、入念に検討すべきことで合意した。
 
.4 APMs提案に法的根拠があるかどうかに関する懸念が表明された。若干数の代表団が、法律委員会での検討のため、当該提案を法律委員会に送ることを提言した。当委員会は、この点に関し、APMs提案の法的根拠については、さらなる調査が必要であることを認識する一方で、ロシアに対し、関心のある代表団と共に、MEPCが法律委員会に送ることを決定した場合に、法律委員会に提出できる問題点を抽出するよう要請した。
 
.5 若干数の代表団が、当該方策の履行方法について、明瞭となっていないことを指摘した。この返答として、提案国が、情報が既に利用可能であると述べた。
 
.6 提案されているAPMの、避難港への影響についての懸念が表明された。この件に関し、提案各国は、提案APMについては、船舶が避難港に来ることを妨げるものではないことを確認した。
 
.7 議長が、double hull定義についての検討が必要であることを指摘した。
 
.8 若干数代表団が、提案の審議については、当委員会が文書MEPC 49/16/1を審議した後まで延期すべきと述べた。
 
8.15 当委員会は、各コメントを拝聴して、PSSAが決議A.927(22)の標準を満足しているかどうかを吟味するための非公式技術部会を設置した。
 
非公式技術部会への指示
 
8.16 非公式技術部会は、以下の事項を指示された。
 
.1 既存のGreat Barrier Reef PSAに、トレス海峡地域を加えて拡張するという提案が、決議A.927(22)の標準を満足しているかどうかについて、MEPC 48で策定されたPSAs再吟味様式を利用して調査すること。
 
.2 既存の西ヨーロッパ水域PSAが、決議A.927(22)の標準を満足しているかどうかについて、MEPC 48で策定されたPSAs再吟味様式を利用して調査すること。
 
.3 2003年7月17日の木曜日に、非公式技術部会結果報告書をプレナリーに提出すること。
 
バルト海の脆弱性
 
8.17 当委員会は、文書MEPC 49/8/3に記載の、バルト海の脆弱性に関する情報を銘記した。
 
8.18 この件に関し、当委員会は、2003年6月に会合されたHELCOM閣僚会議が、その宣言書の中で、EU加盟及び加盟申請諸国が、既存PSSAsからの経験に基づいて、バルト海内のPSSAs指定の可能性について慎重に検討したことを銘記した。また、当委員会は、フィンランド及びスウェーデンが、MEPC 51又はMEPC52に提出するバルト海諸区域のPSSAs指定のための共同申請書の綿密な仕上げ開始のための本年9月開催の会合に、関係HELCOM締約諸国を招請していることも銘記した。
 
非公式技術部会報告書
 
8.19 非公式技術部会長Jim Osborne氏(カナダ)が、当該部会報告書(MEPC 49/WP 10)の紹介において、Great Barrier Reef PSAにトレス海峡地域を加えて拡張するという提案が、決議A.927(22)に記載のいくつもの標準を満たしているので、当委員会に対し、PSSAとしてのこの水域の指定を原則的に承認し、かつ、強制水先APMの検討をNAV 50に委託することを勧告することで、当部会が満場一致で合意したことを報告した。
 
8.20 また、部会長は、西ヨーロッパPSSA提案が、決議A.927(22)に記載の、いくつもの生態学、文化・経済及び科学・教育的な標準を満たしていること、また、国際海運による傷害に脆弱であることで合意したことも報告している。当部会は、提案の48時間強制通報システムについては、既存IMO方策であることを銘記した。とはいえ、当部会は、提案APMsが当該区域の脆弱性に対応しているかどうかについては、single hull禁止の適用に疑問があるので、結論に達することができなかった。
 
8.21 当委員会は、当部会が、西ヨーロッパPSSA提案の見直し実施において、以下の点をコメントしていることを銘記した。
 
.1 当部会は、沿岸国としてのノルウェー及びデンマーク、また、当該水域における油の主要運送者としてのロシアが、当該提案により影響を受けることを認識した。当部会は、ノルウェーにより表明された、当該水域、特にShetland Isles東部があまりにも広く、それにより、重油輸送single-hullタンカーがノルウェーに向かって押し出され、ノルウェー沿岸域の危険性を増大させることになるという懸念を銘記した。提案者が、Shetland Isles東部の東方線を経度0度までとして、当該水域のサイズを減少させることを提議した。もう一つのサイズに関連したコメントは、提案水域内の敏感区域数に関係するものであり、非常に大きなPSSAよりも、いくつかのより小さいPSSAs提案について検討すべきというものであった。
 
.2 当部会は、当該水域が、深冷水サンゴという点でたぐいまれな水域であることを認識した。とはいえ、当部会は、提案のPSSAs及びAPMsが、このたぐいまれな特徴、すなわち提案PSSAを越えて広がるサンゴそのものを保護するものではないことを銘記した。
 
.3 当部会は、提案PSSA全体については、代表性標準、放卵・繁殖標準及び自然性標準が満たされていないとはいえ、提案PSSAの一定の部分においては、これらの標準が満たされていることで合意した。
 
.4 提案PSSAが、かなりの数の別個の生物地理学的区域に加えて、いくつかの重複した生物学的単位を包含していることが認識されている。
 
.5 当部会は、追加情報の提供を受けて、提案のPSSAが、研究の観点から重要であり、また、変更評価に利用可能な生物学的情報の適切な基線となっていることで合意した。
 
.6 重油燃料輸送single hullタンカー数の限度について、また、自船燃料として重油を運搬している他の船舶からのかなりの危険性が、依然として存在しているのかどうかについて、問題が生じている。single hullタンカー禁止のため提案されている保護方策については、single hullタンカーによるばら積み重油輸送を禁止するためのものであり、また、提案されているAPMについては、空船状態の船舶には適用されないことが明確となっている。
 
.7 若干数の参加者については、提案PSSA内の、single hullタンカーによるばら積み重油輸送禁止実施のためにIMOの条約を改正する必要はないという意見であった。この見解を持つ参加者は、MARPOL 73/78、SOLAS又はUNCLOS第211(6)条に依存するのではなく、その代わりに総会決議A.927(22)に依存していた。多くの参加者が、決議A.927(22)が、提案方策履行のための法的根拠を提供しているとは考えられないと述べた。
 
.8 安全性及び効率性問題が処理されていることで合意された。しかしながら、提案PSSAを迂回した重油輸送に付随するコスト増問題については、十分に対処されていないと考えられていた。さらに、提案PSSAの外側を通航しなければならない船舶への危険性増加問題もあり、しかも、提案PSSA至近水域における流出も当該PSSAに影響してしまう。当該水域の外側を通航する船舶についても、救助能力範囲内とすることができる旨銘記された。提案書国は、この懸念に同意せず、これから先も適切なSAR対応を提供できるものと考えていた。
 
8.22 当部会長は、このような複雑かつ広大な水域の見直しには、より総合的な技術的見直しを必要とし、既存のPSSA見直し形式は、このような水域の見直しに適していないことを強調した。同氏は、当該見直し形式をさらに改善する必要があり、また、複雑な提案への今後の評価にはより以上の時間を割くべきであり、しかも、今会期の部会に50人を超える参加者があったことを考慮すると、今後のMEPC会期においては、効率性の面から、より小規模のグループを設置すべきことを提起して締めくくった。
 
8.23 当委員会議長のコメントを聞いて、フランス代表団が、以下の事項を述べた。
 
.1 “PSSA提案 6ヶ国を代表して、フランスは、非公式技術部会の作業を受けて、今会期におけるPSSAの原則的指定で合意し、また、関連報告方策をNAV小委員会に送るのに、申し分のない合理的理由があるものと確信できた。
 
.2 当該6ヶ国は出された所見及び異論を聞いて、重油輸送に関連する保護方策については、6ヶ国自身においても検討するつもりである。我々も規則13G及び13Hに関する作業部会に参加しており、この部会の結果が今後の議論及び合意のためのよき基礎となるものと考えている。我々は、これらの議論については、この12月の重油輸送に関する国際規則採択時に最終化されることを強く望んでいる。
 
.3 このことに基づいて、我々は、この方策を撤回し、このPSSAのための関連保護方策に関する総合的アプローチを伴って、MEPCに戻って来る用意がある。”
 
8.24 当委員会は、非公式技術部会報告書を審議して、西ヨーロッパPSSA提案に関し以下の点を提起した。
 
.1 single-hullタンカー禁止に関するAPMの撤回の情報を受けて、発言した30の代表団が、原則的に西ヨーロッパをPSSAとして指定すること、また、48時間報告APMをNAV 50での検討に委託することへの支持を表明した。キプロス代表団が、提案諸国が適切なSARを保障すること、また、東端線をShetland Isles沖から経度0度に縮小することを条件として、原則的に指定することに同意した。
 
.2 発言した15の代表団が、西ヨーロッパをPSSAとして指定することを支持しなかったか、又は問題の進め方に異なった見解を持っていた。
 
.3 ロシア代表団が、当該提案を支持し難いことを表明して、このような地理学的に広大な水域をPSSAとして指定する法的根拠があるのかどうかについての問題を提起した。この件に関して、同代表団は、サイズ問題については、特に敏感な海域の特定及び指定ガイドラインに適切に反映されていない非常に重要な要素であるので、ガイドラインの中で対処されるべきものであることを表明した。また、国連生物多様性条約については、重要な国際法規であり、脆弱な生物資源が集中している区域における特別保護区域ネットワーク指定のための法的枠組みを、各国に提供していると述べた。この件に関し、どう代表団は、国連生物多様性条約第8条が、広範囲な海域ではない個々の保護区域の指定について明示していることを報告した。このような広大なPSSAが設置されたなら、結果として、船舶運航に係る特別制限ひいては禁止行為、すなわちUNCLOS改正に結びつくような議論を招くことになる。
 
.4 いくつかの代表団が、ロシアにより表明された、提起されている法的事項及び当該水域の広大性に関する懸念を支持していた。水域の広大性に関しては、若干数の代表団が、当該水域内に、より小規模のいくつかのPSSAsを設置するという案の方が、より適切なものとなると認識していた。
 
.5 オブザーバーのICSが、PSSAの採用には、関係諸国に一定の義務、とりわけて徳性についての義務を伴わせることを思い出させた。一例として、PSSAの指定に従って、特別に敏感と評価された生態系の区域においては、一定の活動形態が不適切なものとなり得る。
 
.6 英国が、この課題は、区域を最良に保護するための保護方策範囲が必要であるという問題を提起しており、この件については、さらに調査すべきであると報告した。
 
.7 当委員会は、Great Barrier Reef PSSAが問題の海域と同規模であることを銘記する一方で、Great Barrier Reef PSSAが単一の生物学的機能生態系であるという点で異なっていることも銘記した。
 
.8 英国代表団が、西ヨーロッパPSSAのためのさらなるIMO保護方策を、NAV 50による検討のために提出予定であると述べた。
 
8.25 当委員会は、各コメントを銘記して、以下の事項で合意した。
 
.1 既存のGreat Barrier Reef PSAにトレス海峡地域を加えて拡張することで原則的に承認し、NAV 50に対し、強制水先制度の拡張についての検討を要請した。当委員会は、PSSAとしてのこの海域を原則的に承認することにおいて、UNCLOS第236条と一致させて、国家主権による免責特権を有する船舶に対しては、APMが適用されないことになることを銘記した。
 
.2 当委員会は、大多数の支持に鑑みて、東端線をShetland Isles沖から経度0度に縮小することを条件として、西ヨーロッパ水域をPSSAとして原則的に承認した。
 
.3 48時間強制報告方策について、NAV 50の検討に付託した。
 
8.26 ロシアが提起した法的問題(第8.23.3項)に関して、当委員会議長は、当委員会に対し、見込まれている2004年10月のMEPC通常会期での最終的指定のための西ヨーロッパ水域PSSAのMEPC審議以前に、法律委員会が2回会合することを報告した。それゆえに、ロシア及び関心のある他の代表団は、文書提出により法律委員会の見解を求めているわけである。この措置を通じて、当委員会は、2004年の当該海域PSSA指定の決定時に、法律委員会議論の結果報告を受けることになる。
 
8.27 当委員会は、第8.22項に反映されている非公式技術部会長コメントを銘記して、PSSA見直し手順についての見込みのある改善策を探査することで合意した。当委員会は、この点を考慮して、関心のある代表団に対し、この趣旨に関する提案を提出するよう要請した。
 
謝意
 
8.28 当委員会は、Jim Osborne(カナダ)氏にとって、今会期が引退前の最後のMEPCへの参加となることを銘記して、非公式PSSAs技術部会の部会長を務められたこと、また、多年にわたるMEPC作業への貢献に対し、感謝の意を表明した。







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