4 船舶からの大気汚染防止
MARPOL附属書VIの発効
4.1 当委員会は、2003年6月20日の時点で、世界商船船腹量の総トン数の50%を優に超える11ヶ国が、MARPOL 73/78の附属書VIを批准しており、発効要件を満足するには、あと4ヶ国による批准だけが必要なことを銘記した。
4.2 当委員会は、キプロス、イタリア、日本、オランダ及びスペインによってなされた、当該各国が、MARPOL 73/78の1997年議定書の批准国内手続きが最終的段階に達しており、本年末までに附属書VI批准のための文書の寄託が可能となるという声明を歓迎した。このことは、当該附属書が、2003年末までに発効要件を満足し、その12ヶ月後に発効することを意味している。
IMO及びUNFCCC両事務局間の協力
4.3 当委員会は、先の会期において、事務局に対し、両事務局間の密接な協力促進のため、大気汚染作業部会の専門家会員の参加を伴った、IMO及びUNFCCC(国連気候変動枠組み条約)両事務局間の非公式会合を開始するよう指示したことを想起した。
4.4 当委員会は、IMOにおいて3003年3月6日に開催された当該非公式会合の結果(MEPC 49/4/2)を銘記した。当委員会は、当該報告書についての皮切りの審議の後、大気汚染作業部会に対し、各代表団から表明されたコメント及び見解を考慮して、当該報告書を詳細に検討するよう指示した。
4.5 当委員会は、当該非公式会合の作業、特にUNFCCC及びIPCC両事務局の積極的役割について、謝意を表明した。
船舶からの温室効果ガス排出、総会決議案及び中間期通信部会報告書
4.6 当委員会は、前会期において、船舶からの温室効果ガス排出の削減についてのIMO方針及び履行に係る総会決議案のさらなる作成に関するいかなる行動に先立って、UNFCCCへの京都議定書第2.2条に関連する温室効果ガスに関する政策的事項を解決すべきということが、いくつかの代表団の支持の下に中国により提起され決定されたことを想起した。
4.7 また、当委員会は、前会期において、国際海運に関する限り、すべての船舶については、同じ制度の下に運航されるべきであり、また、“船舶の優遇措置はない。”という、MARPOL 73/78及び他のIMO条約で法文化されているコンセプトがこの場合にも適用されるべきという、大気汚染作業部会見解が銘記されたことも想起した。
4.8 当委員会は、事務局からの、6月4〜13日の間ドイツのボンにおいて開催された第18会期科学及び技術面に係る補助組織(SBSTA)の結果の情報を銘記した。SBSTAにおいては、国際航空及び海運の輸送に用いられる燃料を起因とする排気に関する問題が検討された。当委員会は、特に以下の事項について銘記した。
.1 SBSTAが、国際海運輸送からの排気に関する方法論的作業について、また、進行中のこの件に関するIMO実施作業についてのIMO提供情報を歓迎した。
.2 SBSTAが、IMOとSBSTA事務局との協力、特に方法論的事項に関する非公式会合を組織化したことに対し、謝意を表明したこと。
.3 SBSTAが、IMOにおいて2003年3月6日にIMOで開催された非公式会合の結果に関する情報を銘記したこと。
.4 SBSTAが、UNFCCC事務局と協議して、IMOに対し、第20会期SBSTA(2004年6月)に先んじた専門家会合の組織化を要請したこと。専門家会合の目的は、UNFCCC及びその京都議定書の関連規定の下の国家温室効果ガス目録作成ガイドラインの改正についての、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)により進行中の作業への1つのインプットとして、国際海運輸送からの排気の推定及び報告の方法論改善のための選択肢を取り扱うことにあること。
4.9 当委員会は、総会決議案の適用に関連する様々な面に関する英国提出文書MEPC 49/4/4及びノルウェー提出文書MEPC 49/4/6で提供されている見解を審議して、船舶からの温室効果ガス排出の削減についてのIMO方針及び履行に係る総会決議案については、温室効果ガス排出の削減は京都議定書の附属書I諸国の責任下にある述べている京都議定書の規定に基づくのではなく、すべての船舶に適用可能な共通政策に基づくべきことで合意した。
4.10 当委員会は、大気汚染作業部会に対し、今会期MEPCでの承認を目指し、各代表団のコメントを考慮して、総会決議案を再吟味するよう指示した。
船舶からの温室効果ガス排出に関する中間期通信部会報告書
4.11 当委員会は、MEPC 48が、ノルウェー主導の下に中間期通信部会を設置し、文書MEPC 48/21の付属13に記載の、当該部会への付託事項を承認したことを想起した。
4.12 当委員会は、通信部会の調整者Sveinung Oftedal氏(ノルウェー)提供の情報を銘記して、船舶からの温室効果ガスに関する通信部会報告書(MEPC 49/4)について、総体的に承認した。
4.13 当委員会は、当該通信部会報告書について審議し、以下の各代表団コメントを銘記して、大気汚染作業部会に対し、各代表団コメントを考慮に入れて、当該報告書を再吟味するよう指示した。
.1 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)における、ガイドライン及び優れた実用指針に概説されている船舶からのGHGの算出及び報告のための基本的方法論は、良くできているようであり、目下のところ利用可能な最善のアプローチである。GHG排出傾向の監視のための、矛盾のない透明な総計計算確立には、すべての国々が当該ガイドラインに従って報告することが必要となる。IPCCインベントリー専門調査会が、IPCCガイドライン改正に取り掛かるところであり、このプロセスが、見積り準備のための、方法論並びにデータの品質性及び有効性のさらなる向上に機会を与えることになる。受領されたコメントに基づいて、船舶からの排出に関連する地域における当該方法論についても向上させることを確保するこのプロセスにおいては、国家政府代表が関わることが重要と考慮される。
.2 CO2排出の数量化及び索引化に関しては、機能条件書における総排出削減のための索引及び全般的目標の間に明確な関連性があるべきである。
.3 通信部会により特定された3選択肢(A〜C)については、さらに検討すべきである。
.4 加盟諸国に対し、IMOの枠組み外の方法論を強化かつ向上する観点から、IPCC主導のIPCCガイドライン改正作業に参画するよう奨励する。
.5 冷却ガス排出削減のための可能性のあるメカニズムについての提案については、MEPCにおいてさらに検討されるべきである。
4.14 当委員会は、ドイツ提出文書 MEPC 49/4/3及びMEPC 49/INF.19に記載の、CO2索引化の選択肢に関する提案を検討し、ドイツが、将来の索引システムについては、運用実績に基づいたデザイン基準及び修正価値に基づくべきこと、すなわち、トン及びマイル当たりの排出に基づいた索引システムを提案していることを銘記した。
4.15 当委員会は、エネルギー効率の良いデザイン及び運用両方を促進することになる、運用要素及びデザイン要素に対する標準化の組み合わせに基づいた索引システムに関するノルウェー提案を検討した。ノルウェーは、このような索引システムは、簡易化された索引システムで用いられる、排出データ、また、船舶タイプ独自の指標の確立という両要求への返答となる旨を提起していた。
4.16 当委員会は、大気汚染作業部会に対し、両提案について、代表団からのコメントを考慮に入れて、かつ、索引化方法論の選択、また、異なった船舶タイプを代表するデザイン計算及び運用要素の方法論がガイドライン又はコードの中で確立されるような索引化アプローチのための適切なメカニズムのさらなる評価についての活動を含む、索引化アプローチ進展のためのより詳細な作業計画作成を目指して、詳細に検討するよう指示した。
船上使用のため供給される燃料油中の硫黄分の世界的平均
4.17 当委員会は、MEPC 43が、決議MEPC 82(43)、船上使用のため供給される燃料油中硫黄分の世界的平均の監視のためのガイドラインを採択し、また、オランダ先導の下の監視プロジェクトを設立したことを想起した。当該監視結果に基づいて、MEPC 48は、1999〜2001年の監視を踏まえて、燃料油中の硫黄分の周期的平均を2.7%、また、ガイドライン第5項に引用される参照値を2.7%とした。
4.18 前回のMEPCは、現在のプロジェクトのシステムのための資金調達が2003年末までとなっていることを銘記した。また、今会期においては、監視システム続行のための資金調達を審議することで合意された。
4.19 当委員会は、オランダ提出文書(MEPC 49/4/1)について審議し、採取されたすべてのサンプルの内のほぼ70%が、2〜3.5% m/mの硫黄分であったことを銘記した。採取されたすべてのサンプルの内のほぼ50%が、2〜3% m/mの硫黄分であった。当該サンプルの1%だけが、4% m/mより高い硫黄分であった。採取されたサンプルに基づいて、2000〜2002年をカバーする3年間の周期的平均を2.67% m/mとすることができる。
4.20 さらに、当委員会は、監視プロジェクト続行の資金調達のため、以下の2選択肢を提起した。
.1 IMOによる費用負担
.2 自発的加盟国による費用負担
4.21 当委員会は、資金利用の可能性を条件として、オランダが監視活動の続行を準備することになることを銘記して、IMO予算からの資金拠出探求の理事会への申し入れに先立って、2004年3月のMEPC 51において、加盟国及び事務局に対し、当該プロジェクト続行のための資金調達の自発的仕組みについて、さらなる可能性を探求するよう依頼することで合意した。
船上Nox測定及び監視
4.22 当委員会は、MEPC 41が、DE小委員会に対し、船上Nox測定及び監視のためのガイドラインを作成するよう指示したことを想起して、DE 46が準備した、当該ガイドライン案及び付帯するMEPC決議案(文書DE 46/32の付属2)について審議した。
4.23 当委員会は、船上NOx証明ガイドライン案への措置及び手順の変更提案に関する韓国提出文書(MEPC 49/10/8)について審議して、当該提案を銘記したが、現段階においては、ガイドライン案にいかなる変更も加えないことで合意した。
4.24 当委員会は、決議MEPC 103(49)により、付属5に記載の、船上Nox測定手順ガイドライン‐直接測定及び監視方法を採択した。
4.25 当委員会は、様々な種類の燃料油を用いる商業航海条件下での持続的NOx監視に関する研究についての日本提供情報(MEPC 49/INF.10)を銘記した。
MARPOL附属書VIへのHSSC導入
4.26 当委員会は、MEPC 41が、FSI小委員会に対し、MARPOL 73/78附属書VIへのHarmonized System of Survey and Certification System(HSSC)導入問題について検討するよう指示したことを想起して、FSI 11が作成した、文書FSI 11/23の第16.7〜16.9項及び付属8に記載の、附属書VI改正案について審議した。
4.27 当委員会は、MARPOL附属書VIが、今会期に提供された批准の進捗状況に関する情報を考慮すると、2004年末以前に発効することを銘記して、付属6に記載の、MARPOL附属書VIへのHSSC導入に関する当該附属書の改正案を承認した。改正案については、附属書VIの発効要件が満たされた場合に、当該附属書が実施された時点での最も早い機会における採択のため、回章に付されるべきである。
MARPOL 73/78附属書VI遵守決定のための燃料油サンプリング・ガイドライン
4.28 当委員会は、シンガポール内の海運及び給油界への給油品質達成の信用を与えることが期待されている、“給油バージ/タンカーによる、シンガポール給油作業基準コード(SS CP 60)”に関するシンガポール提供情報を銘記した。
大気汚染作業部会の設置
4.29 当委員会は、岡村 敏 氏(日本)部会長の下に大気汚染作業部会を再設置し、以下の作業付託事項とすることで合意した。
.1 総会提出に向けた今会期MEPCによる承認のための最終文案を作成することを目指して、会員提出文書及びプレナリーでのコメントを考慮に入れて、総会決議案を見直すこと。
.2 加盟国提出文書、プレナリー審議結果及びIMO/UNFCCC両事務局間の非公式メール交換の結果(MEPC 49/4/2)考慮に入れて、中間期通信部会の報告書を検討すること。
.3 今後のMEPC作業を検討すること。
.4 2003年7月17日の午後、当委員会に部会の結果を報告すること。
作業部会報告書
4.30 当委員会は、作業部会報告書(MEPC 49/WP.13)を受け取って、下記の措置を講じた。
4.31 当委員会は、付属4に添付の、船舶からの温室効果ガス排出の削減についてのIMO方針及び履行に係る総会決議案を承認して、事務局に対し、当該案の採択を目指し、第23回総会に提出するよう指示した。
4.32 当委員会は、以下の中国声明を銘記した。
.1 中国代表団は、UNFCCC及びその京都議定書については、温室効果ガス排出の地球規模の制限又は削減に関する基本的国際法規であるという、中国の立場を繰り返した。これらの法規は、先進国及び発展途上国が、共通ながらも差別的責任を有しているという原則を確立しており、先進国に対し、率先して排出削減責任を負うよう要求している。それゆえ、中国代表団は、船舶からの温室効果ガス排出の削減に関するIMO検討については、UNFCCC及び京都議定書において確立された枠組み及び基本的原則を遵守すべきであるという意見であった。
.2 船舶からの温室効果ガス排出の削減についてのIMO方針及び履行に係る総会決議案については、UNFCCC及び京都議定書の基本的原則と矛盾しているので、中国は、この決議案を第23回総会に提出するというMEPC 49の承認に同意できない。さらなる見直しが必要である。
.3 さらに、中国は、IMOが、UNFCCCの締約国協議会(COP)に対し、この件に関する意見を求めるべきことを提起した。
4.33 当委員会は、ノルウェー主導の下の、船舶からのCHG排出に関する中間期通信部会報告書を承認した。
4.34 当委員会は、IMO/UNFCCC両事務局間の非公式会合の結果が、船舶からのGHG排出の削減または制限に関するIMO作業に重要なインプットを提供していることを銘記した。
4.35 当委員会は、SBSTA 18からの、IMOのUNFCCC事務局との協議ための、SBSTA 20に先立った1回の専門家会合又はワークショップの組織化要請を銘記して、事務局に対し、できれば2004年1月中に、1回の非公式専門家会合を創始するよう指示した。
4.36 当委員会は、会員に対しIPCCからの招聘を受入れるよう、また、“国家温室効果ガス目録のための改正1996年IPCCガイドライン”の改正に参画するよう強調して、2003年9月16日にジュネーブで開催されるScoping Meetingが作業を開始することになる旨銘記した。
4.37 当委員会は、作業部会による、総会決議案の運用項1で特定されている、GHG排出基線の制定、船舶GHG効率表現の方法論、GHG排出索引化ガイドライン、また、技術的、運用的及び市場を基盤とした解決策の評価に関する予備的議論について銘記した。
4.38 当委員会は、IMOのGHG排出索引化の枠組み作成進捗のため、ノルウェー主導の下の中間期通信部会の設置で合意し、付属8に記載の付託事項を承認した。
4.39 当委員会は、温室効果ガス排出問題の進捗に関する改正作業計画(MEPC 49/WP.13、付属2)を承認した。
4.40 当委員会は、IMOのGHG排出索引化の枠組み作成進捗のため、MEPC 50の間の大気汚染作業部会の再招集で合意した。
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