3 船舶リサイクリング
3.1 当委員会は、MEPC 47において、リサイクリング開始前の船舶における準備並びにリサイクリング事項についてのILO及びバーゼル条約との調整的役割を含め、IMOが重要な役割を担うことで一般的に合意されたことを想起した。また、当委員会は、MEPC 47が、とりあえずは、総会決議により採択されるべき勧告的ガイドラインの作成で合意していることも想起した。
3.2 さらに、当委員会は、MEPC 48が、通信部会報告書(MEPC 48/3)及び作業部会報告書(MEPC 48/WP.12、MEPC 48/WP.12/Add.1)を検討し、船舶リサイクリングに係るIMOガイドライン案に関する作業続行のため、さらなる作成又は検討が必要な未解決事項に重点を置いた、船舶リサイクリング中間期通信部会の再設置で合意し、また、BLG、DE、及びFSI各小委員会に対し、IMOガイドラインの関連する章への入力の提供を要請したことも想起した。
3.3 また、当委員会は、採択のために第23回総会に提出するには、今会期でガイドライン案及び付随する総会決議の最終化が必要になることも銘記した。これを受けて、MEPC 48ですでに合意されている作業部会の再設置で合意された。
通信部会報告書
3.4 通信部会報告書(MEPC 49/3/1)の紹介において、同部会調整者Capt. Moin Ahmed(バングラデシュ)は、付属2で、提案されている船舶リサイクリングに係る中間期の間に受け取ったすべてのコメントを考慮に入れるよう努力した、さらなるIMOガイドライン案が記載されていることを述べた。また、同氏は、かなりの進捗があったとはいえ、当該報告書の付属1に概説されているような、通信では解決困難な、MEPCでのさらなる議論が必要な問題がまだ残っているとも述べた一方で、当該報告書の付属1の付録1に列挙されている他の事項については、主として立案事項に関連しているので、今会期に解決可能であるとも述べていた。
3.5 また、通信部会調整者当は、当委員会がプレナリー審議に先立って今会期での設置で合意されていた、編集上の改良に関する非公式起案部会において、多くの問題点についての有意義な進展があったことも述べた。
3.6 当委員会は、通信部会報告書に関する関連コメント文書を紹介した後に、当該報告書の付属1で挙げられている当委員会の助言を必要としている事項について審議することで合意した。
3.7 当委員会は、この件に関し、通信部会報告書へのコメントを提供している、インド(MEPC 49/3/3)、日本(MEPC 49/3/5)及びグリーンピース・インターナショナル(MEPC 49/3/2及びMEPC 49/3/4)の文書を審議した。
3.8 インド代表団が、インド文書(MEPC 49/3/3)の紹介において、IMOガイドライン案のさらなる作成への多くのコメント及び指摘を、特に、危険物質、“リサイクリング向け最終航海のための準備”、リサイクリング予定船舶に対する寄港国管制定常業務、また、リサイクリングのための引渡日からの合理的期間に対する海事留置権請求をカバーする保険の延長に関するphase-out計画について提案していた。また、インドは、ガイドラインについては、登録船舶所有者による登録リサイクリング・ヤードのみへの船舶販売に制限することを明確にする必要があることを強調し、船舶所有者の責任を強制要件として対処することを提案した。さらに、インドは、船舶リサイクリングにとって、“浜に乗り上げさせる方法”は実用的かつ経済的であり、安全、健康及び環境保護面のすべての要件を厳守する条件で、容認されるべきことを強調した。
3.9 日本(MEPC 49/3/5)が、船舶リサイクリングIMOガイドラインの暫定的性格を銘記して、当該ガイドライン採択を支持し、リサイクリングに係るIMOの政策目標については、円滑なリサイクリングを保証し、かつ、関連する環境及び職業上の安全への危険性を減少させることにあるという意見であった。日本は、ガイドラインについては、とりあえずは、旗国及び寄港国による施行及び履行に係る事項(主として“削除証明書”、事前通知コンセプト及び承諾メカニズム)は先送りして、実用的かつ効率的方法に焦点を絞った簡潔なものとすべきことを提案した。さらに、日本は、当委員会によるガイドライン採択後、船舶リサイクリングの実施状況を評価し、自主ベースガイドラインの履行が満足できるように機能しないことが当該評価により示唆された場合には、船舶リサイクリングの施行及び履行メカニズムを検討することも提案した。
3.10 グリーンピース・インターナショナルからのオブザーバーが、文書MEPC 49/3/2及びMEPC 49/3/4の紹介において、バーゼル条約の要件及びその要件に従って策定された方針及び指針については、船舶リサイクルIMOガイドライン案に十分に反映されていないという見解を表明し、船舶リサイクリングのための強制要件の必要性が迫っているというグリーンピースの見解を立証する、船舶の解体に関する事例の要約を提示した。
IMOガイドライン案における主な未解決事項の審議
3.11 通信部会調整者が、IMOガイドライン案について、部会報告書の付属1に概説されているような、通信による解決が困難な主要な懸念領域を紹介し、また、第3項で引用されている非公式起案部会での検討結果について、口頭で紹介した。当委員会は、ガイドライン案の中の主な未解決事項を審議し、以下のような措置を講じた。
基本方針
3.12 当委員会は、ガイドラインの序論における、ガイドラインの目的を簡潔に概説している“基本方針”について再吟味し、序論のこの段落が、ガイドライン案の実際の文章に含まれている主な方針を適切にカバーしていることで合意した。
グリーン・パスポート
3.13 当委員会は、グリーン・パスポートには、船舶建造に用いられる潜在的危険物質又は他のすべての物質のどちらの目録を含むべきかについて審議して、船舶、船舶設備及びシステムの建造に用いられる潜在的危険物質のみを、この文書で列挙することで合意した。
リサイクリング施設
3.14 当委員会は、ガイドライン案に従って、船舶所有者が、リサイクリング施設の選択において、問題となっている業務慣例及び施設を検討することを銘記し、リサイクリング国の所轄官庁が当該官庁管轄下で運用されている施設の能力を評価し、当該評価の結果を海運界に利用可能とする必要があることで合意した。
船舶リサイクリング報告システム
3.15 当委員会は、危険廃棄物の国境を越えた移動にについての情報の動きに関するバーゼル条約の規定と並行して、ガイドライン案の第5.2、6.1、6.1.2及び6.9.3項が実行可能な手続きを概説しており、それによって、リサイクリング予定船舶の動きに対応した“通知及び承諾”システムが設立されることを銘記した。
3.16 また、当委員会は、日本が文書MEPC 49/3/5において、事前通知及び承諾メカニズムのコンセプトについては、とりあえずは先送りし、ガイドラインから関連箇所の削除を提案したことも銘記した。
3.17 バハマ代表団が、発言者の大多数の支持を受けて日本提案に同意し、IMOは、リサイクリングのため引き渡される船舶については、廃棄物として定義するのではなく、若干の汚染物質を含む資源として定義することになるので、船舶がその運航生涯の最後に向かう船舶を考慮しているIMO及びバーゼル条約に考え方の違いがあるのではないかと述べた。
3.18 ドイツが、若干数の代表団の支持を受けて、“船舶リサイクリング報告システム”問題については、将来のIMO検討に委ねるべきと述べ、船舶リサイクリングに関する情報交換問題のさらなる議論が有益となると提起した。また、IMO及びバーゼルの条約の下の船舶に関する既存の法律制度についても、IMO及びバーゼル条約両者の下のさらなる検討が必要な区域が存在していることも指摘された(バーゼル条約の、船舶が公海において廃棄物になった場合の不適用、船舶が一国の区域内で廃棄物となった場合の適用法規の重複など)。ドイツは、これらの問題が、IMOガイドラインの採択を遅らせるべきではないという見解を表明した。
3.19 結果として、当委員会は、とりあえずは“船舶リサイクリング報告システム”問題を先送りし、将来再検討することを決定して、ガイドライン案から関連部分を削除することで合意した。一方、船舶リサイクリングに関する情報交換問題については、“幽霊船”問題回避の必要性のためのFSI 11勧告を考慮して、さらなる検討を加えることで合意した。
曳航の利点
3.20 当委員会は、リサイクリング・ヤードへの船舶曳航に付随する危険性に関して表明された懸念を銘記し、この運用についてはケースバイケースで検討し、ガイドライン案の関連箇所については、それに応じて見直すことで合意した。
用語法
3.21 当委員会は、MEPC 47において、IMOが、とりあえずは、総会決議により採択されるべき勧告的ガイドラインを策定することで合意された(MEPC 47/20の第3.12項)一方で、MEPC 48において、強制要件検討前には自主的指針アプローチで対処するという見解が確認されたこと(MEPC 48/21の第3.14項)を想起した。
3.22 当委員会は、これらの点を銘記して、文章全体にわたって用いられる用語法を、ガイドラインの勧告的性格に沿って調整することで合意した。
最後の船舶所有者
3.23 当委員会は、最後の船舶所有者の役割及び責任についても、通信部会で合意に達することができなかった事項であったこと、また、一代表団から、登録船舶所有者による登録船舶リサイクリング・ヤードへの売却のみに制限することを、ガイドライン案において明確化すべきという提案があったことを銘記した。
3.24 さらに、当委員会は、ガイドライン案における“船舶所有者”の定義に従って、この用語にも、船舶のリサイクリング・ヤードへの売却までの限定期間における当該船舶の所有権を有する者を含むことを銘記して、最後の船舶所有者が、現金購入者又は一時的所有者のどちらであろうとも、また、当該所有権が短期間のものであっても責任を担うべきことで合意した。
3.25 当委員会は、登録されていない船舶の場合の“船舶所有者”の定義に関するインドの懸念を銘記して、CLC条約の第I(3)条にある“所有者”の定義を、船舶リサイクリングのガイドライン案におけるものとして検討することで合意した。
将来の作業予定
“リサイクリング準備完了”条件の設置のための標準
3.26 当委員会は、ガイドライン案が、旗国に対し、船舶における“リサイクリング準備完了”の宣言のよりどころとなる標準の設定を求めていること、また、このガイドラインの関連節に記載されている基本標準が、船舶におけるリサイクリング準備作業の完了となることを銘記して、後日、これら標準の均一かつ一貫した標準適用を確保する調和様式について、さらに必要なのかどうかを検討すべきことで合意した。
3.27 インドが、“リサイクリング準備完了”標準の作成ばかりでなく、“リサイクリング向け最終航海準備完了”標準の必要性についても、さらに検討するよう提起した。
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