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2 海事保安の促進(NAV49議題12関連)
2-1 7月1日全体会議での審議
 ロングレンジ・トラッキング(LRT)に関し、機能要件をWG2で、総会決議A.917の改正案及びSOLAS条約の改正案の作成をDG2で検討する点につき、サイプラスからWGとDGの作業の調和について疑問ありとの意見があったが、議長から双方で協調しながら作業を行うこととすることで了解された。
 
2-2 2日DGでの議論の結果
(1)総会決議A.917の改正については、セクション21に「保安事件の発生が差し迫っている」という表現を挿入するとともに、強制船舶通報システムが導入されている海域を航行する船舶がAISシステムをスイッチオフする場合には、船長は船舶の安全と保安に影響を与えない限り、関係当局にその理由とともに通報しなければならない旨の新たな規定を、現行のセクション21の3行目と入れ替える旨合意し、右を総会決議案としてANNEX1にまとめた。
(2)SOLAS条約改正案については、沿岸国が確保すべきLRTのカバレッジについては、条約には規定せず、沿岸国に委ねる点、及びLRTでは日時、船位、IMO番号が入手可能となる点について修正を加え、SOLAS改正案としてANNEX2にまとめた。
 
2-3 2日WG2における検討
 LRTの機能要件を検討したWGは次の点で合意した。
(1)IALAは、提案文書に基づき、AISが持っている機能を使用してLRTの一つとして位置づけるべきと述べた。これに関し、独は、LRTとして活用する選択肢を複数持つことは有効と主張、結局、WGはIALAの提案を支持した。
(2)WNTIから、LRTのスイッチ・オフに関する規定につき、MSC77で了解され既にMSC77/WP15で反映されるも、右趣旨につき再度説明があった。更に、性能要件に当該スイッチ・オフの要件を挿入する旨の提案がありWGは右を了承された。(NAV49/WP.4/Add.1, ANNEX5)
(3)沿岸国が確保するLRTのカバレッジについては、UNCLOSにより締約国が沿岸200海里までのEEZに管轄権を付与していることから、LRTのカバレッジを200海里とすることは妥当との意見があり、WGは右を支持した。
 
2-4 3日全体会議
 DGが作成した総会決議案及びSOLAS改正案を審議したところ、サイプラスから、SOLAS改正案に関し、搭載要件に関し、A3海域を航行する全てのとする点、LTによる情報をSOLAS締約国でなくIMOメンバー国が利用可能とする点などの妥当性に疑問があるとした。更にWG2で検討したLTの機能要件との整合性が取れていないとの指摘もあったことから、結局、議長の指示により、再度、DGとWG2の関係者で本件を検討することとなった。
 
2-5 3日DG及びWG2の関係者との会議
(1)各国等の発言の要点は次のとおり。
・適用船舶は、妥当な範囲で限定的なものとすべき(ノルウェー)
・LRTの適応海域からAISのカバレッジを除くべき(サイプラス)
・LRTの定義自体がはっきりしていない(英)
・UNCLOSに基づく200海里はどうか(独)
・A3海域航行船舶の大部分は衛星通信を持っており、新たな機器の搭載が最小限ですむためA3に限定すべき(米)
・A2海域航行船舶もカバーすべき(ノルウェー)
・LRTは船舶のセキュリティ向上のためではなく、入港国のセキュリティのためであることから、搭載について様々な意見が出てくる(ICS)
・MSC77の場で既に中身は検討済み(WNTI)
・LRTのシステムはセキュリティ・アラートのシステムと協調を図るべき(ICS)
・2004年7月以降のことであり、搭載要件については今の段階で確定しなくてもいいのではないか(ノルウェー)
(2)サイプラスから、本件の大筋についてはMSC77で検討済みのところ、NAV49としては、SOLAS改正案を詳細に検討するよりも、本件について現時点におけるNAVの懸念なり希望なりを取りまとめたペーパーをCOMSAR8に提案することが適当との提案があり、結局、以下の趣旨のペーパーを作成しDGの報告とすることが合意された。
 
2-6 4日プレナリーでの審議
(1)WGからの報告(NAV49/WP.4/Add1, para6、NAV49/WP7/Add1)
イ サイプラスからWGの作業として、スイッチ・オフした場合に、自動的にスイッチ・オフの事実を送信する機能について検討したか否かの質問があり、WG議長から右は議論していない旨、また本件はCOMSAR案件との見方を示した。
ロ スイッチ・オフSWOFFの条件に関し、旗国が、自国の保安に脅威を与える可能性がある場合には、旗国が船にSWOFFを指示する機能を考慮し、機能要件に盛込むべきとした。
(2)DGからの報告
 DGから、昨日のDGでの検討をまとめたNAV49/WP3/Add1の提出があった。右は、NAV49としての本件に関し今後検討を必要とする事項6つを掲げ、COMSAR8、MSC78、及びコレスポンデンス・グループに送ることを提案、右は了承された。
 
(参考)
 
長距離識別・追尾システム(LT)の要検討事項
 
 SOLAS条約11章の2に挿入する新規規則案について、NAV49が今後の要件等事項を取り纏めたところ次のとおり。
 
1 同規則にLTの目的に関する記述を盛り込むか。
2 現存船に対する段階的な適応はあるのか?
3 専らAISのカバレッジを航行する船舶に例外規定の適用はあるか?
4 規則に機能要件を盛り込むか?
5 本システムが機能しなかった場合の規定を盛り込むか?
6 LTシステムで得られる情報の受信と配信を締約国の義務とするか権利とするかについての規定を盛り込むか?
 
3 バイナリー・メッセージ:BMの適用ガイダンス(NAV49議題18関連)
3-1 NAV48
 会議はBMの適用ガイダンスに関するSNサーキュラーを承認した。
 
3-2 右サーキュラーの骨子は次のとおり。
(1)今後4年間の試行期間を設け、4つのシステム関連メッセージと以下の7つのBMに限定して使用し、その有効性を検証する。その間、この7つのメッセージは変更しない。
イ 気象・水路データー
ロ 危険貨物情報
ハ 水路閉鎖情報
ニ 潮汐情報
ホ 追加的な静的情報及び航海情報
へ 乗船者数情報
ト 擬似AISターゲット情報
(2)試行期間中、新たなBMは2種類に限り認める。
(3)この試行期間で、すべてのSOLAS船がAISを搭載し、また非SOLAS船のAIS搭載も期待でき、IMOとしてBMの有益性、実用性、及びAIS周波数の負荷が検証できる。
(4)検証結果が良好であれば、BMはその後も使用される。新たなBMが必要な場合には、運用上の必要性及びフォーマットと内容案をNAVに提供し検討される。
 
3-3 バイナリー・メッセージの今後(所感)
(1)表示すべき内容が確定したことにより、PC画面上のAIS情報表示ソフトの開発が加速されるであろう。
(2)ただし現行SOLASでは、BMの表示機能は機能要件にないため、表示に必要なハードとソフトを有する者しかBMによる情報を受信できず、BMを通じてのサービスを提供する側のサービスの公共性、及びサービスとしての有効性に疑問が生じる可能性がある。
(3)同時に、陸上のカーナビのように、広く汎用性があり充実した機能を持つと普及が進むこともあり、どれだけ航海者に魅力的なサービスを提供できるかに、BM、ひいてはAISの存続がかかっていると言える。







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