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(6)レダー・リフレクターに関する性能要件の改正(議題8関連)
(1)プレナリーでの議題
 NAV48において、性能基準改正のための予備実験結果の報告がされた後、更なる実験が海上及び実験室において行われ、結果の解析によって詳細な性能基準改正案が作成され、小委員会に提案された旨の説明があった。
(2)ワーキンググループでの検討
イ 改正の経過
 従来のレーダーレフレクターは強制要件ではなかったが、新SOLAS第5章及び10章に規定され強制要件となった。これに伴い、実験結果、技術の動向を踏まえて、次のような改正が提案された。
A 対象船舶を100トンから150トンに拡大する。(条約改正に伴う変更)
B パッシブレフレクターに加えて、アクチブレフレクターも選択肢の一つとする。
C Xバンドの規定に加えて、Sバンドの規定を設ける。
D 新たに指定性能レベルという最低基準を導入し、このレベルでのレーダー反射面積をXバンドで2.5m2から7.5m2に変更し、Sバンドでは0.5m2とする。
ロ 審議内容
A 小型船舶においては、レフレクターのサイズ及び高さの条件が厳しいものになる可能性があるとの指摘が、ISAF(国際帆走協会)からあった。
B 改正性能基準の施行期日が、2005年7月となっていることについて、型式承認基準作成の作業やメーカーの工程上の問題などがあり、早すぎるという意見が多く出された。
(3)プレナリーでの検討
 ワーキンググループからの報告に基づき審議の結果、性能基準改正案は、語句の修正を除き原案通り承認され、MSC78において決議採択の運びとなった。
(4)対処方針について
イ RTEの有効性について
 RTEはアクティブであるので極めて有効であるがNAV48で我が国はシンギングによる電波干渉について解明するよう疑義を呈しておいたところ、今回は幾多の実験においてその懸念は払拭されたことが明らかにされた
ロ 反射器の大型化による設置の困難性について
 反射器が大型になることによって小型船舶やヨットなどはその懸念が考えられないことも無く、会議においてもISAF(国際帆走協会)からこの性能基準の一部を保留するとの発言があり、ワーキングペーパーにも盛り込まれた。
ハ International Waters and Adjacent Areaの意味について
 この語句は、SOLAS第5章に採用されているものである。
(5)今後検討を要する事項
イ 施行期日が[1 July 2005]となっているがISOの試験基準の制定(これは国際的な型式承認試験の基準となるので)やメーカーの実用化対策などを考慮して、次回MSCで[ ]を外すとき、実施期日に注意する必要がある。特にこの件に関するISO事務局は日本船舶標準協会であるので、試験基準成立の時期を照合する必要があると思われる。
ロ [1 July 2005]以前に備え付けられているレフレクターについては従来の決議
 A.384(X)を満足していれば良いことになっている
(7)レーダー設備に関する性能基準の見直し(議題9関連)
(1)プレナリーでの議題確認
 提案国ドイツより、現在の舶用レーダーには3つのIMO性能基準があり、それぞれに若干の違いあること、さらにAISの導入によりレーダー画面上にAISの情報を表示する必要性がでてきたことによる見直しと、電子海図(ECDIS)表示を考慮にいれた、性能基準の統合を図る目的で、統一した性能基準を作成する旨の提案趣旨説明があった。
 検討案はANNEX1に添付され、本案件は、今次NAV49および次回NAV50で性能基準をまとめ上げることで承認された。
(2)TWGでの検討
 文書NAV49/9に従い検討した結果、重要な内容をさらに検討する必要がありNAV50に提示できるように継続して検討することとした。
 この作業は、特に船員の意向を汲み取り2004年に完結することとし、ノールウェーをリーダーとするコレスポンデンスグループを結成することとした。
 問題は主に;
イ 関連物標のレーダークロスセクション(RCS)の確認
ロ 運用操作と設計の調和の考慮
ハ レーダー表示と表示シンボルの対地対水安定の更なる検討
ニ S-バンドで運用するRACONの使用
ホ 性能コスト効果
(3)プレナリーでの検討
 優先順位を下げてNAV49以降継続検討となった。
 日本はCGに参加し、追ってノールウェーから実施の通知があることとなっている。
 
【概要】
Introduction(序説)
 MSCはNAV小委員会に対し下記の検討を含むレーダーの性能基準の調査に着手するよう指示した。
1 最小探知距離と距離識別
2 捜索救助用トランスポンダ(SART)とレーダービーコン(RACON)の探知
3 不規則伝達とクラッタ条件下での性能を含む物標探知
4 探知確率と誤警報率
5 舶用レーダーへの干渉の障害と許容できる危険
6 固定及び浮揚物標の障害警告の対応
7 最大探知距離
 この提案文書は、上記の性能及びその他の関連の局面を考慮に入れた、レーダー及び付属するプロットと追跡援助の性能基準の改正提案である。
Proposed revision of the Performance Standards(性能基準の修正提案)
・提案のレーダーの性能基準案はAnnexに示される。これら修正性能基準は以下の現存基準に取って代わる
1 MSC.64(67)レーダー装置の性能基準
2 A.823(19)ARPAの性能基準
3 A.820(19)高速船の航海レーダー装置の性能基準
 すべての船舶にレーダー搭載要件の適用を受けるこれら3つの既存の文書の必要条件を一つの包括的な文書の中に結合する。
 修正は又、決議A.917とSN/Circ.217に含まれる情報を考慮する。
・これらの修正された基準は、レーダーシステム性能のすべて、及び下記を含めて統合する:
1 ユーザー調査が反映されるように、作業負担を軽減する事を含むユーザーのニーズの変化に言及する。
2 ユーザーに役立ち、そして海上安全を高める新技術を取り入れる。
3 より高度な、特に、物標探知が難しい条件と、動きが速い物標に関する探知性能のユーザーニーズを認識する。
4 現在の、AISの利用と表示のIMOガイドラインを含むレーダーとプロッティングのIMO基準を結合して、調和させる。
5 新しい提案の、“航海関連情報の提示と表示”のIMO性能基準を表示と提示方法の面のカバーと調和のために取り入れる。
6 システムインテグレーション(INS/IBS)と互換性がある装置に拡張する。
7 ITUの要求の周波数幅と発射要件を考慮する。
・これらの基準は、単独レーダー、AISあるいは海図の表示と結合するレーダー、あるいはINSの一部として適用される。
(8)ITU関連(議題10関連)
(1)プレナリーでの議題確認
 ジュネーブの会議に出席した、事務局より概要の報告があった。
イ U-AISのITUM1371の新しい規定がIMO性能基準MSC74(69) Anex3に抵触しない範囲で協力する。
ロ ITU-Rは、サーキュラーレターを出し、AISの周波数の切替周波数が、使用出来るものと使用できない範囲を示した。
ハ AISデータリンクについて、ITU-R M1371を基準に、クラスAとクラスBに記述を分けて準備している。
 IMOとしては、今後ITU-Rとの連携を保つことを確認し、特段の論議はなかった。
(2)TWGでの検討
 事務局よりの報告で、特段の論議はなかったが、9GHz帯は舶用レーダー及びSARトランスポンダに非常に重要であることを認識した。
 この案件は2006年に完結する。
(3)プレナリーでの検討
 適宜推奨、意見、連絡文書等ITUに提出することとなった。
 
【概要】
 9,000-9,200MHz及び9,300-9,500MHz帯で運用される無線航行および無線測位業務の技術と運用の両立性に関する第8研究グループで採用された新たな課題を提供するものである。
 ANNEXに、ITU-Rの新たな課題として考慮すべきことを示している。
 この研究結果はITU勧告に含められるべきであり2006年までに完結されるべきである。
 
(9)海事保安の促進(議題12関連)
(1)ロングレンジ・トラッキング(LRT)に関し、WGにおいて機能要件の検討を行ない、スイッチオフする機能を有するとともに、沿岸国が200海里内を航行する船舶の情報を入手できる機能を有することとされた。
(2)DGにおいては、LRTに関するSOLAS条約改正案のドラフティングを行なったが、ドラフティングの前に、本件改正に係る検討事項をNAVとして取り纏め、右をCOMSAR8、MSC78及びコレスポンデンス・グループに回章し検討に付すことで合意された。
(10)全世界的無線航行システム(議題13関連)
(1)プレナリーにおいて、EC提案文書(NAV49/13)を考慮するとともに、ガリレオ・ミッションのシステム・デザインが変更されたことにより、国際海運業界の期待に完全に対応するサービスの提供ができることとなったことをノートした。
(2)プレナリーにおいて、米国提案文書(NAV49/13/1)を検討し、本件はNAVの作業ではなく、米国に対しMSC78に本件を送るよう要請した。
(3)プレナリーにおいて、ロシア提案文書(NAV49/INF5)をノートした。
(11)海難解析(議題14関連)
 本件議題に関する提出文書はなく、特段の審議はなかった。
(12)ばら積み貨物船の早期退船の指針(議題15関連)
 本件議題に関する提出文書はなく、特段の審議はなかった。
(13)作業計画及びNAV50の仮議題
(1)プレナリーにおいて、NAV/WP2に基づき検討がなされた。サイプラスから、作業計画及びNAV50に新たに挿入されたAISバイナリー・メッセージのレビューについては、第一にMSCの作業計画での承認を必要とすることから、右を削除すべきとの発言があり、了承された。
(2)議長から、とりあえずのNAV50の開催日は2004年7月5日から9日である旨紹介があった。
(14)2004年の議長及び副議長の選出
 現議長のオランダのMr. Polederman及び現副議長のロシアのDr. V.I.Pereskinが共に再選出された。
(15)その他の議題(議題18関連)
(1)AISバイナリー・メッセージ
 AISの情報はバイナリー・メッセージにすることにより、伝達の確度を上げ、予め用意したフォーマットを使用することにより伝達すべき情報の作成が簡単に行える等の利点がある。ただこの為には、専用のコンピューター・ソフトが必要であり、野放しにしておくと、多種類の情報がバイナリーで送れるようなソフトが開発され、AISの割当て電波の過負荷が起こり、本来の目的である船舶の識別・トラッキングが行えなくなる可能性がある。これに鑑み小委員会は、バイナリー・メッセージの使用を試験的に今後の4年間は7種類に限って認めることとし、バイナリー・メッセージ使用のガイダンスに関するSNサーキュラーを作成した。
(2)群島水域の通航路の採択、指定等に関する航路指定の一般原則に関する解釈
 (paragraph 3.13 of section H (IMO publication "Ships' Routing))
 本件は、インドネシアの制定している群島水域における通航路(arch pelagic sea lanes)の指定に関連して、MSC77からの指示(MSC77/26, paragraph 25.43)により、NAV49において、IMOにおける航路指定手続の明確化を図るために、標記規定の解釈を検討したものであるが、WG.1においては、右規定を明確化するとともに曖昧さを除去するために、当該規定の改正案(NAV49/WP.1 ANNEX13)を策定の上、承認した。4日のプレナリーにおいて、改正案を検討したところ、さらに明確な規定の必要性が指摘されたことから、再度ドラフティングを行い、結局、NAV49/J/6, ANNEX2を作成、プレナリーで再度検討を経て承認された。
(3)錨泊中における継続的な航海当直の維持(STW34 (STW34/14, paragraph 4.38)関連)
イ 錨泊中の当直体制強化問題を検討中のSTWから、船長に対する適切なガイダンスの作成を可能とするべく、NAVに対して錨泊中の継続当直を決定する条件について助言が求められていたことから、同助言内容についてWG1での審議に付された。
ロ 1日WG1において、議長は各国からのコメントを求め、わが国からは本件はあくまで船長判断に委ねるべき旨発言した。その後、独を議長とするインフォーマルなDGで助言案が検討されたが、わが国の主張通り、当直体制の最終決定は船長判断に委ねられるべきであり、詳細要件まで踏み込むべきでないことが各国間で確認され、当直体制検討において勘案されるべき条件がごく簡潔にノートとして取り纏められた。
 2日WG1では、当該ノートを審議し、右はあくまで強制力を伴わないSTWへの助言に過ぎないことが確認された上で、WGは右を承認した。
ハ 4日のプレナリーにおいて、WG1の報告として提案され、特段の審議なく了承された。
(16)委員会への報告(議題19関連)
 NAV49で審議された事項をMSCへの報告として取りまとめ了承された。







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