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(3)避難場所(議題5関連)
(1)30日プレナリーにおける審議
イ 豪から提出ペーパーに基づく説明が行われた。
ロ 西提出のペーパーNAV49/5/1は、MSC77開催前に提出されたものであったため、概要次の通りの説明があった。
・このガイドライン制定にIMOが取り組む契機となった事故の一つの当事国としてこの問題の解決に向けて真剣に取り組んできている。
・しかしながら、自分達の主張がなかなか理解されず、今までこの件で提出した10の意見が全て認められていないことは、大変残念である。
・現在のガイドライン案が、船の責任と補償の部分に触れないままで今年の総会に提出され、制定されることは危険だと感じている。現状においては、支援を要する船舶が沿岸国にまったく受け入れられていないわけではなく、たとえばスペインでは年間300隻ほどに避難水域を提供しており、受け入れを拒否した船は年間1隻ほどである。今回のガイドラインができても、この状態は変わる可能性はほとんどない。なぜなら、拒否された船は受け入れられない危険な船であったから。沿岸国は海に面しているというだけで、危険な船を受け入れる必要があるのか。船の自由通航権は、沿岸国の貴重な動植物の生態、人々の生活を犠牲にしてまで尊重すべきか。
・いずれにせよ、スペインは今までこの問題の解決に向けて真剣に努力をしており、今のガイドライン案にもその成果が一部ではあるが取り入れられている。今後も問題の解決に向けて努力を続けるつもりである。
(2)7月1日プレナリーでの審議
 昨日の豪・西の提出意見に対し、次のとおり審議が行われた後、DGが設置された。
イ 新規提案の採択
A パナマは、本件はMSC77で議論済みであり、本NAVでは新たな提案は受けられないと主張し、右をサイプラス、デンマーク、イタリア、ギリシャ、ポーランドが支持した。これに対し、わが国、アルゼンチン、NZ、バングラデシュ、トルコが豪提案を支持する旨表明した。
B 議長はMSC77からNAV49への指示文書に立ち返り、過去の議論だけでなく、NAV49に新たに提出された案も含めて、今回のNAV49で議論するように書いてあることを提示・確認し、入り口論で豪州提案が拒否されることは回避された。
C ただし、議長は、本ガイドラインの最終稿を編集するため、全体会議終了後に設置予定のDGでは、右はWGではなく内容を議論する場ではなく、必要な議論はすべてプレナリーの場で行い、DGはそこでの決定事項に基づいてそれをガイドライン案に反映させる機能を有するのみとの方針で進めることを提案し了承された
ロ 豪提案について
 豪提案の、現在ある国際条約の全ての該当部分をガイドライン本文に引用することは難しいことから、現在付録としてついている国際条約の一覧にその役割を持たせることとし、特に役立つと思われる部分については付録の脚注に抜粋して書き込むことが合意された。
ハ 西提案について
A MSC77では、2.2.1、2.3.1、2.6.1の3箇所に対する修正提案のみNAV49の場で審議することとされたことを確認し、各項目審議の結果、それぞれDGの場で次の修正を検討することとされた。
B 2.2.1については、西提案の全体が否決された現在、修正の必要はないとされたが、米より「船が予定通り航海を続ける」という想定は残す意義があると指摘があり、了承された。
C 2.3.1について、代理人の指定は、受け入れの前提条件ではなく、3.1.2.1に掲げられる受け入れの可否を検討するときの条件の一つであることから、修正を却下する代わりに「(受け入れられる)沿岸国の中に」という言葉を3.1.2.1の代理人の選出という条件項目に加えることとされた。
D 2.6.1については、船長に沿岸国が指示を出す点が問題となり、議論に収拾がつかなくなったため、議長判断で、船長は沿岸国の指示を考慮しなければならない、と表現を弱める提案を軸に、DGで最適な表現を検討することとされた。
(3)DGにおける審議
 本会議で確認された方針に基づき、内容については一切議論しない形で、変更を検討すべき点について修正方法、修正語句を審議し、修正案をNAV49/WP5として取りまとめた。
 審議の主要な論点は次のとおり。
イ 豪提案の反映方法について議論があり、国連海洋法条約の条項番号までの細かいことは脚注に記載しないこととなった。豪は欠席したため、特に議論が紛糾することもなく合意された。よって国際法上、支援を要する船舶に対して沿岸国が避難水域を提供する義務は存在しないこと、および豪州提案にあった、SAR条約の参考部分が脚注に示されることとなった。
ロ 西提案の2.2.1については、本会議での合意に基づき、予定通り航海を続ける場合との項目が追加された。
 同提案2.3.1については、3.1.2.1の代理人の選出の項目に「沿岸国の中に」という表現が追加された。
 同提案2.6.1については、船長に沿岸国が指示を出す、という表現が問題となり、船長は沿岸国の指示を考慮しなければならない、という弱めの表現を軸に、削除すべきと強く押すパナマをはじめとするグループと、沿岸国の領海内ではその国の法律には従わなくてはならないのは事実とする英国をはじめとするグループの間で、修正表現について激しい議論がなされた。最終的には、3章の該当部分を参照する方法で、沿岸国の受け入れ許可・拒否にともなう船への指示および要件等が出た際には、船側はそれに従うことを勧告する、と記載することで決着した。
ハ 豪提案NAV48/19 ANNEX12,13からの主な修正点は次のとおり。
A 内容に関する修正点:
(i)豪州提案を反映し、総論に、国際法上の沿岸国と船の関係の記述が追加された。具体的には、すでに付録としてつけてある国際条約の一覧について、総論の中で紹介されるとともに、その付録について、脚注に、豪州提案のうち次の2点が明記することとされた。
・国際法上、支援を要する船舶に対して沿岸国が避難水域を提供する義務は存在しないこと
・SAR条約11条の規定の紹介。
(ii)沿岸国に対するガイドライン(第3章)での沿岸国と船(船長または船社)の権利行使関係と、船長に対するガイドライン(第2章)での関係の記述の整合が取られた。具体的には、第2章の船側の対応を記述する部分に、第3章の沿岸国の受け入れ許可・拒否にともなう船への指示および要件等が出た際、船側はそれに従い、また対応することが勧告された。
(iii)その他、他の会議の決定事項が反映された。
 総会決議案に、LEGにおいて今後沿岸国に生ずる費用と補償に関するガイドラインを検討するよう要求する、という文章が追加された。ガイドラインの目的に、このガイドラインは避難水域の提供または拒否に伴い生ずる責任と損害補償について取り扱わない旨が記述された。
 リスク評価を行う際の考慮事項として、現状の5つに加え、船体の船倉、機械および貨物の保全についての考慮が追加された。MASについて、MRCCがその役割を担うことが望ましい旨がガイドライン全般にわたって記述された。
B 主な形式上および表現上の修正点は次のとおり。
(i)目次に付録まで記述されるよう修正された。
(ii)代名詞の男性形、女性形が排除された。
(iii)ガイドラインの対象となる船舶の表現について、遭難、という言葉を使わず、支援を必要とする、という表現で統一された。
(iv)船主(owner)の表現が、SOLAS条約にならって船社(company)に修正された。
(v)付録1と2が登場順に並べ替えられ、原案の1が2に、2が1になった。
(vi)MASについてはモデル監査スキームと同じ頭文字であることから、MASという略称を使うことについて、本会議の了解を得ることとされた。
(4)3日プレナリーでの審議
 DGが提出した本件ガイドライン最終案について、議長から修正点の全てを確認する方針が示され、総会決議案を含め審議、以下の議論の後、必要な修正を加えた上で承認された。
イ 総会決議案
A 避難水域のガイドラインの決議案についてパナマから、豪提案の中に記載されていた、「古くから確立された船が避泊する権利」について、最終ガイドライン案に反映されていないことから、総会決議案に入れるよう提案があり、昼休みを挟んだ長い議論の結果、船と沿岸国のバランスをとることが必要であり、また、権利という言葉は避けるべきである、と合意され、次の文章を決議案の3段落目の後に挿入することとなった。
「支援を必要とする船舶の特権と、沿岸国がその沿岸を守るための特権とのバランスをとる必要を理解し、」
B MASのガイドラインの総会決議案にはMSCとMEPCの双方を考慮して、と記述されているのに、避難水域のガイドラインの総会決議案にはMSCのみを考慮するとなっていることについて、避難水域のガイドラインも一度MEPCで検討されたことがあることから、MEPCも追加するよう修正された。
C MASのガイドラインの決議案中、1.1のthe relevantはrequiredに修正された。
ロ 避難水域のガイドライン案
A 次の事項が修正されることとなった。
・1.3.3のmustを削除。
・付録2の2.1の漁業の項目中、problem vesselという表現をship in need of assistanceに修正。
B 次の事項を法律委員会に確認することとした。
・法律委員会より指示のあった文章を挿入した場所について
・2.6.2のpracticalという語の意味するところが曖昧で、法的に問題を生じさせないかという点について
C 次の表現については事務局預かりとなった。
・1.1.2のpurely theoretical or doctrinalという表現について
・付録2の2.1の漁業の項目中、offshoreという語がどこにかかるかわからない点
・付録1で、SOLAS条約だけ「改正」「特に5章」と明記してある点
・発効前のOPRC条約の議定書などを付録1に含めるかという点
ハ MASのガイドライン案については、次の点が修正された。
 1.1および1.2の修正案(MAS機能をMRCCが担うことが望ましいという表現を加えた。)については、却下。ただし、1.2の最後の文章は修正案どおり削除。
(5)4日プレナリーの審議
 会議議事録案(WP7)に関して審議され、次の点が修正・確認された。
イ 議事録5.1.5および5.2.1で、沿岸国と船の権利のバランスを取るため、船の権利についているultimateという言葉を削除することが豪より提起され、了承された。
ロ 昨日のプレナリーで法律委員会に照会することとされた、ガイドライン案の2.6.2について((4)(ロ)(b)参照)、ガイドラインの特定の段落の表現について照会することは、ガイドライン全体をLEGで一から審議される道を開くので好ましくない、として、照会事項に入れないことが全体で合意された。
(4)錨、係留及び曳航装置(議題6関連)
 係留装置、曳航装置等の事故例がOCIMF/IMPA(NAV49/6,11件)、IHMA/IAPH(NAV49/INF.3,170件)より報告され、テークノートされた。本件はDE小委員会が中心となって検討されているが、DEはIACSの提案待ちもありターゲットデイトを2005年に延期するようMSCに要請した。これに併せ本小委員会も同じく延長を申請し、加盟国、団体に対しこれらの事故の船のオペレーションに対する影響について、具体的な提案をNAV50に提出するよう、また事故例に挙げられた船の船齢のデーターがあればこれも提出するよう要請した。
 
(5)現存貨物船へのVDR搭載のフィージビリティ・スタディ(議題7関連)
 VDRのフィジビリティースタディーの審議は、プレナリーで簡単な説明があった後以下の意見表明があり、詳細は英国キム・フィッシャー氏を議長とするWG2を中心に行われた。
(1)プレナリーでの議事
 提案文書の紹介があり、これに対して、以下の国が支持した。
 シンガポール、バハマ、ギリシャ、パナマ、サイプラス、バングラディシュ、ロシア、トルコ、カナダ
 また、以下の国が、NAV49/3で示された搭載要件案を支持した。
 ギリシャ、バングラディシュ、イタリア
イ 最終記憶メディアについての主張
A オランダは、フロートフリーを最終記録メディアとし、リムーバブルハードディスクをこれに加えて容易なデータ供給用に加えるべき。
B サイプラスはポータブルだけというのもあっても良い。
C 日本は、オランダ案に、2つの記憶機能を持たせる必要は無いと反対。
D カナダはFixカプセルも選択肢に加えるべき。
E ドイツが多くのオプションがあるので、もっと安い提案があれば検討をする。
 フィジビリティースタディーの中のコスト削減予測についての議論
F 日本は、コストリダクションはS-VDRの価格が現在のFull VDRの25%になると言う事かと質問。
G ドイツ(コレポングループの代表)が、カプセルの他全ての可能な低価格化をすると25%になると表明。
ロ 搭載要件の例外事項についての議論
A ロシアは、搭載用件について例外事項を慎重に検討することを主張し、インターフェースがマッチしないもの、廃船まじかな船の適応免除を例示した。
B インタータンコも賛同。
C 日本は、搭載用件について、例外、適用サイズ、タイムフレームの再考の検討が必要であり、政治的な判断も必要なので、最終判断はMSCで行うべきであると結論付けた。
D サイプラスは搭載要件は、製品が市場に出る予定が決まってから検討すべきである。また、最終形態は、1つに統一すべきであると主張した。(検査や理解が国によって違ってくる可能性がある。)
E 日本は、今年の末までに、EPIRBを組み合わせたフロートタイプS-VDR作る。この後製造業者がどの位で市場に出るかを見積もる。このため、明らかな予定は分からない。このため、2007年までに製品が市場に出るか分からない。との表明をした。
(2)浮揚式VDRカプセルの回収実験の講演
 浮揚式VDRカプセルの回収実験についての講演を行い、40名位の参加者を得る。
 シナリオとして、EPIRB、RT、発光体を組み合わせることで、有効に捜索できることを示した。
 討議では、EPIRBだけではなく、新しい通信手段についてもその利用を考慮すべきとの指摘があった。EPIRBとSARTの他、他の衛星通信を使用したロケーション、ホーミング機能も利用できる。第2世代EPIRBやインマルサットE+の利用
(3)ワーキンググループでの検討
イ フィジビリティースタディーについて
 フィジビリティースタディーの検討では、コストリダクションに話題が集中した。CIRMは、ソリッドメモリー等材料費の価格が低下し、設置コストも設置時間の短縮の努力で低下しているので、来年には$60,000(US)になると思われることを表明した。さらにパラグラフ75の結果については詳細な説明が無く、根拠が無いと指摘し、75%のコスト削減は、適切ではないので、再評価することとなった。
ロ 性能基準案について
 英国から、できるだけ、従来の規格に合わせて作成し、必要なことだけ一部を変更したいので、変更点を日本案に組み込んだのでこれを基に作成を進めたいとの表明があり、ドイツのコレポングループのDr. バルドを中心に小グループを作りフルVDRの性能基準の章立てに基づいて性能基準の作成を行った。
 リムーバブルについて、インタータンコが低価格の選択肢として、リムーバブルを残すことを主張した。しかし、カナダ、オランダから、「船員が持ち出すのは困難なため、リムーバブルは残すべきではない。」との主張があった。日本は、コレスポンダンスグループのフィジビリティースタディーの結果に則り、性能基準の中にはリムーバブル単独も選択肢として残すことを主張した。これについて提案国の英国がさらに詳細は性能基準を作る準備が無いことを表明し、この結果、性能基準から削除された。
 記録データについて、フルVDRの規格を基に話が進められ、日本案に付け加えてCommunication Audio及びデジタルインタフェースがある場合のデータ記録の強制化があったので、日本からCommunication Audioについては、記録データの削減のため、オプションにするよう提案したが、賛同が得られなかった。この2つは、フィジビリティースタディーで必要とされており、カナダ、ドイツから事故解析での有効性を盾に強硬な反対意見があった。
 プレーバック機能についての記述は日本案に無かったが、フルVDRの規格から持ち込まれた。しかし、VDR設置船に搭載する必要は無いとのフットノートつきになったため、あえて反対しなかった。
 S-VDRの固定タイプのカプセルについて、当初、現行のままのカプセルの利用を考えていたが、耐衝撃性、耐圧性等の緩和を行い、低価格化を図ることとなった。
 S-VDR浮揚式VDRのカプセルについて、当初日本の性能基準案に沿って、EPIRB、レーダトランスポンダ、発光体の装備で話が進んできたが、WGの3日間の朝になって急にEPIRBのみの性能要件を最低限持てば良いと言う性能基準となった。これに対して、カナダ、CIRMからの船長経験者、日本から、発光体による視認性向上とホーミング機能を残すように提案した。しかし、オランダから、フィジビリティースタディーの結果、ほとんどの場合沈まないし、沈没は沿岸域で起こることが多いという意見が出て、発光体による視認性向上とホーミング機能の基準は残せなかった。ただし、EPIRBのストロボライトはつく予定。また、これに伴い、運用時間も7日から2日になった。
 本来のEPIRBとS-VDRのEPIRB機能により、2つの信号が出ることによる問題点とその対策についてはCOMSARで検討する。
 イタリアが、貨物船安全証書にVDR或いはS-VDRの記述を含めるため、その書式を改正することを提案し、了承された。
ハ 搭載要件について
 オランダから、ECですでにEC指令として搭載用件を規定しており、それまでにS-VDRを市場に出したいので、IMOの搭載要件をこれにあわせて欲しい旨表明があった。廃船間近による例外規定等の検討も必要と表明があり、ポーランドとオランダが、搭載要件の検討を行った。
 韓国から、SOLAS V章20規則パラグラフ3において、S-VDRの規定を適用すると現存一部の客船が例外規定を用いて固定型VDRの搭載を緩和されており、例外規定の無い現存貨物船にS-VDRの基準が適用されると、客船より厳しい規定となる。このため、RoRo船でない既存の客船にも、S-VDRを搭載させることとしたいとの提案があったが、議長よりこれはS-VDRの新しい適用なので、プレナリーで提案するよう指示された。
 ドイツより、20規則はHSCで規定される高速船に対しても適用されるのか?との質問があり、議長よりHSCはSOLASとは違うので、HSCへの項目の追加がなされなければならない。HSCの改正は、NAV50とCOMSAR8の議題になっているので、このことを報告する。と表明した。
 搭載要件については、ここで作成された案をMCS78に送り承認を求める。このため、特別ドラフティインググループが篠村氏を中心に構成される。
(4)プレナリーでの検討
 S-VDRの報告事項について、以下の意見表明があった。
 ノルウェーは、今後もっと良い製品の開発を考慮して、コンバインドユニットの可能性を残すため、5.1.3.3の修正を求めると主張し、代替案を提案することとなった。
 米国より、EPIRBはCOMSARの事項なので、COMSARに先に検討させるべきとの指摘があり、COMSARも検討を依頼することとなった。







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