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g. 全動物プランクトン
 
 全動物プランクトンに対する処理効果は、サイズ区分で異なる結果であった。 80μm以上のサイズ区分では、漲水時あるいは排水時の1回処理のみで、多くのケースで100%の殺滅率が得られた。 一方、80μm未満10μm以上のサイズ区分では、生物の死骸を餌として増殖する原生動物の存在が処理効果に大きな影響をおよぼしており、90%を超える高い効果が得られる一方で、逆に漲水港の原水よりも増加する場合もあった。
 
(漲水時に処理し、排水港で未処理排出ケースも含む。)
 
 表II.2.3.4-22及び図II.2.3.4-21には、第1航海におけるシアトルから東京及び第2航海におけるシアトルから名古屋の実験結果を示した。
 全動物プランクトンに対する処理効果は、80μm以上と80μm未満10μm以上のサイズ区分とで異なる結果となった。
 80μm以上の区分では、その構成生物がカイアシ類と底生動物の幼生である。これらは、いずれも高い殺滅率を記録する生物群である。
 その結果、漲水時処理のみ(排水時未処理)でも100%の殺滅率となる。 一方、80μm未満10μm以上のサイズ区分では、2回の実験で全く異なる結果となった。 第1航海のシアトルから東京の実験(表II.2.3.4-22(1)と図II.2.3.4-21(1))では、シアトルでの漲水原水よりも多くの正常個体が観察され、処理することによって反対に動物プランクトンを増やす結果となっている。 この理由は、生物の死骸を餌として増殖する原生動物が存在するためであると考えられる。 つまり、漲水時処理の効果等で死滅した生物が増えることが、原生動物の好適環境を形成することになり、長い航海中に繁殖し、結果的に排水時に多数存在するようになったと解釈できる。 第2航海のシアトルから名古屋の実験(表II.2.3.4-22(2)と図II.2.3.4-21(2))では、原生動物の増加が認められるものの、その増加は顕著でなかったため、排水時に再処理することによって100%の殺滅率が得られたと考えられる。
 
表II.2.3.4-22(1)漲水時と排水時の2回処理したケースにおける
全動物プランクトンの変化
(第1航海:シアトル→東京)
実験港 Seattle Tokyo
実験日 Dec.6 Dec.15
分析検体数 3 3
サイズ区分(単位)\試料名 シアトル原水 シアトル漲水時処理後 東京排水時処理前 東京排水時処理後
80μm以上(inds/m3 1533 300 <100 <100
80μm未満−10μm以上
(inds/ml)
0.001 <0.001 0.04 0.033
 
図II.2.3.4-21(1)漲水時と排水時の2回処理したケースにおける
全動物プランクトンの変化
(第1航海:シアトル→東京)
 
80μm以上(inds/m3
 
 
80μm未満−10μm以上(inds/ml)
注)図中の数字は、原水に対する減少率
 
 
表II.2.3.4-22(2)漲水時と排水時の2回処理したケースにおける
全動物プランクトンの変化
(第2航海:シアトル→名古屋)
実験港 Seattle Nagoya
実験日 Dec.6 Dec.15
分析検体数 3 3
サイズ区分(単位)\試料名 シアトル原水 シアトル漲水時処理後 名古屋排水時処理前 名古屋排水時処理後
80μm以上(inds/m3 100 <100 <100 <100
80μm未満−10μm以上
(inds/ml)
0.004 0.001 0.001 <0.001
 
図II.2.3.4-21(1)漲水時と排水時の2回処理したケースにおける
全動物プランクトンの変化
(第2航海:シアトル→名古屋)
 
80μm以上(inds/m3
 
 
80μm未満−10μm以上(inds/ml)
注)図中の数字は、原水に対する減少率
 
 
 表II.2.3.4-23及び図II.2.3.4-22には、排水時処理ケースの実験結果を示した。
 排水時のみの処理は、イ. 漲水時と排水時の2回処理のケースと同様に、処理効果は、80μm以上と80μm未満10μm以上のサイズ区分とでは異なる結果となった。
 80μm以上のサイズ区分の構成生物は、カイアシ類と底生動物の幼生であり、経験的に、いずれも高い殺滅率を記録する生物群である。
これらは、排水時に処理するだけで、一部の実験では正常個体が残存するものの、ほとんどの実験では100%の殺滅率となる。 一方、80μm未満10μm以上のサイズ区分では、生物の死骸を餌として増殖する原生動物の存在によって殺滅率は大きく影響され、漲水港の原水よりも増加したケース(表II.2.3.4-23(6)と図II.2.3.4-22(7))から90%を超えるもの(表II.2.3.4-23(2)と図II.2.3.4-22(3))まで様々な結果となった。
 
表II.2.3.4-23(1)排水時処理ケースにおける
全動物プランクトンの変化
(第1航海:ロサンゼルス→バンクーバー)
実験港 Los-Angeles Vancouver
実験日 Dec.1 Dec.5
分析検体数 1 2
サイズ区分(単位)\試料名 ロサンゼルス原水 バンクーバー排水時処理前 バンクーバー排水時処理後
80μm以上(inds/m3 9500 1250 <100
80μm未満−10μm以上
(inds/ml)
0.035 0.024 0.02
 
図II.2.3.4-22(1)排水時処理ケースにおける
全動物プランクトンの変化
(第1航海:ロサンゼルス→バンクーバー)
 
80μm以上(inds/m3
 
 
80μm未満−10μm以上(inds/ml)
注)図中の数字は、原水に対する減少率
 
表II.2.3.4-23(2)排水時処理ケースにおける
全動物プランクトンの変化
(第1航海:シアトル→名古屋)
実験港 Seattle Nagoya
実験日 Dec.6 Dec.16
分析検体数 3 1
サイズ区分(単位)\試料名 シアトル原水 名古屋排水時処理前 名古屋排水時処理後
80μm以上(inds/m3 1533 300 <100
80μm未満−10μm以上
(inds/ml)
0.001 0.006 0.001
 
図II.2.3.4-22(2)排水時処理ケースにおける
全動物プランクトンの変化
(第1航海:シアトル→名古屋)
 
80μm以上(inds/m3
 
 
80μm未満−10μm以上(inds/ml)
注)図中の数字は、原水に対する減少率







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