日本財団 図書館


2.3.4 実験結果
 
 
 表II.2.3.4-1及び2には、実験時(装置の稼働時だけで、港湾の原水を採水するための無処理漲水は含まない。)の流量、スリット部流速、圧力、閉塞対策の作動状況等を示した。
 流量は、80m3/hr強から90m3/hrの範囲であった。 港湾毎の総処理量で、最も少ないのは第1航海のバンクーバーの42m3で、最も多いのが第1航海のシアトルの302m3であった。 なお、第1航海と第2航海を通じた全実験では、総量1,200m3強のバラスト水を処理した。
 スリット部流速は、26.9m/sec〜28.4m/secと推定された。
 装置上流側と下流側の圧力差は、549kPa〜611kPaを記録した。
 実験の基本条件は、流量100m3/hr、スリット部流速30m/sec及び圧力差500kPaとした。
 スリットの目詰まりによる閉塞対策については、第1及び第2航海ともに各1回の作動が見られた。 作動は速やかに行われ、装置は目詰まり解消後も順調に稼働した。このことから、目詰まりを圧力で検知し自動制御により、スリット板及び衝突板を反転して、目詰まり原因物質を下流に流出させて解消する、本方式による閉塞対策は有効であると判断された。
 
表II.2.3.4-1 第1航海におけるプロトタイプ・スペシャルパイプ稼働時の物理条件
港湾名 実験日 実験内容 採水
時期
流量
(m
3/hr)
総処理量
(m
3
スリット部流速*
(m/sec)
装置
上流側
圧力
(kPa)
装置
下流側
圧力
(kPa)
装置上流側と下流側との
圧力差
(kPa)
閉塞対策
装置稼働
状況
ロスアンジェルス 12/1 洋上交換水の排水時処理 初期 83.2 124 26.9 903 314 589 稼動せず
(閉塞せず)
中期 82.5 26.6 893 314 579
末期 82.7 26.7 873 314 559
バンクーバー 12/5 ロスアンジェルス海水の排水時処理 初期 83.7 42 27.0 893 313 580 稼動せず
(閉塞せず)
中期 83.6 27.0 892 312 580
シアトル 12/6 漲水時処理 初期 83.5 302 27.0 622 41 581 稼動せず
(閉塞せず)
中期 83.7 27.0 611 38 573
末期 83.8 27.1 606 40 566
東京 12/15 シアトル漲水時処理海水の排水時再処理 初期 84.0 127 27.1 853 304 549 稼動せず
(閉塞せず)
中期 85.0 27.4 873 314 559
末期 85.0 27.4 863 304 559
名古屋 12/16 シアトル海水の排水時処理 中期 86.5 43 27.9 912 324 589 稼動せず
(閉塞せず)
神戸 12/17 漲水時処理 初期 87.4 87 28.2 628 44 584 始動直後1回稼動
中期 86.4 27.9 654 44 610
*スリット部流速:スリットでの砂等による詰まり状況が不明なため、スリットでの水の流入面積を算出することが不可能である。このため、スリット部流速は推定値である。
 
表II.2.3.4-2 第2航海におけるプロトタイプ・スペシャルパイプ稼働時の物理条件
港湾名 実験日 実験内容 採水時期 流量
(m
3/hr)
総処理量
(m
3
スリット部流速*
(m/sec)
装置
上流側
圧力
(kPa)
装置
下流側
圧力
(kPa)
装置上流側と下流側との
圧力差
(kPa)
閉塞対策
装置稼働
状況
神戸 12/27 香港海水の排水時処理 中期 89.0 91 28.7 903 343 559 稼動せず
(閉塞せず)
ロスアンジェルス 1/7 東京海水の排水時処理 初期 87.6 132 28.3 909 327 583 稼動せず
(閉塞せず)
中期 87.6 28.3 909 327 583
洋上交換水の排水時処理 中期 87.9 28.4 919 331 589 稼動せず
(閉塞せず)
シアトル 1/11 漲水時処理 初期 86.5 107 27.9 642 36 605 初期採水後1回稼動
中期 85.9 27.7 647 36 611
東京 1/21 バンクーバー海水の採水時処理 初期 85.4 85 27.6 868 313 555 稼動せず
(閉塞せず)
中期 84.5 27.3 870 313 557
名古屋 1/22 シアトル漲水時処理海水の排水時 初期 85.2 87 27.5 858 309 549 稼動せず
(閉塞せず)
中期 84.7 27.3 854 311 543
*スリット部流速:スリットでの砂等による詰まり状況が不明なため、スリットでの水の流入面積を算出することが不可能である。このため、スリット部流速は推定値である。
 
 
 
 
 濁り物質に関しては、長期間の航海(日本−北米間)において、主にバラスト水排水初期に排出される傾向にあった。 これは、漲水海水中に含まれる濁り物質が、排水時までにバラストタンク底層に沈降し、タンクからバラスト水を吸引するサクション部(ベルマウス:写真II.2.3.4-1)より初期に排出されるためである。 このことから、バラスト水洋上交換は、これら濁り物質を低減する(希釈する)効果が明瞭であると言える。 溶存酸素に関しては、航海中に溶存酸素量が上昇する現象が観測された。 この現象は、本実験を実施した低温期において、暗黒環境下のバラストタンク内でバクテリアによる分解作用は進行せず、航海中の船体動揺による攪拌等によって、空気中から溶入すると考えられる。
 
写真II.2.3.4-1
 
(漲水時に処理し、排水港で未処理排出ケースも含む)
 
 表II.2.3.4-3及び図II.2.3.4-1には、第1航海のシアトル(漲水時処理)から東京(排水時処理)と第2航海のシアトル(漲水時処理)から名古屋(排水時処理)における水質測定項目毎の変化を示した。 なお、複数回測定(初期、中期、末期等)している場合は、それらの平均値を表示している。
 測定結果の中で注目すべき変化は、濁度(NTU)である。 濁度は、両航海ともに、シアトルでの漲水時では低かったものが、東京及び名古屋(図II.2.3.4-1(1)と(2))での排水時には高くなっている。 この理由は、漲水海水(港湾海水)中の濁り物質(海水中の生物等の様々な粒子状物質)が航海中にバラストタンク底部に沈降し、排水時の初期試料に高濃度の濁度として観測されたものと考えられる。 また、排水時処理後では、処理前に比べて低濃度となっている。 これはスペシャルパイプの粒子粉砕能力によって、濁り物質が細粒化され光りの透過率が上昇したためと考えられる。
 溶存酸素(DO)は、両航海ともに上昇していた(図II.2.3.4-1(1)と(2))。 通常、バラストタンク内のような暗黒環境下では、植物による生産活動が行われずバクテリアによる分解が進行し、溶存酸素は低下に向かうと考えられる。 しかし、本実験は、比較的低温の時期・航路で実施したため、分解が進行するには至らず、むしろ航海中の船体動揺による攪拌作用によって、空気中の酸素がバラスト水に溶入して上昇したと考えられる。
 
表II.2.3.4-3(1)漲水時と排水時の2回処理したケースの水質メータ観測結果
(第1航海:シアトル→東京)
実験日
時刻
実験港
対象タンク
2003/12/6
10:20
Seattle
No.2WBT(S)
2003/12/15
9:00
Tokyo
No.2WBT(S)
シアトル原水 シアトル漲水時処理後 東京排水時処理前 東京排水時処理後
水温(℃) 11.0 11.2 15.2 15.7
塩分(%) 3.4 3.4 3.4 3.4
pH 7.6 7.6 7.6 7.8
溶存酸素量(mg/l) 9.2 8.6 9.9 9.9
濁度(NTU) 2 2 9 7
導電率(S/m) 5.2 5.3 5.2 5.2
密度(σt) 26 26 25 25
注)表中のデータは、3回測定の平均値
 
図II.2.3.4-1(1)
漲水時と排水時の2回処理したケースの水質メータ観測結果
(第1航海:シアトル→東京)-1
 
第1航海,シアトル−東京 水温(℃)
 
 
第1航海,シアトル−東京 塩分(PSU)
注)図中のデータは、3回測定の平均値
 
図II.2.3.4-1(1)
漲水時と排水時の2回処理したケースの水質メータ観測結果
(第1航海:シアトル→東京)-2
 
第1航海,シアトル−東京 pH
 
 
第1航海,シアトル−東京 溶存酸素(mg/L)
 
 
第1航海,シアトル−東京 濁度(NTU)
注)図中のデータは、3回測定の平均値
 
図II.2.3.4-1(1)
漲水時と排水時の2回処理したケースの水質メータ観測結果
(第1航海:シアトル→東京)-3
 
第1航海,シアトル−東京 導電率(S/m)
 
 
第1航海,シアトル−東京 密度(σt)
注)図中のデータは、3回測定の平均値







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION