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II 研究の内容
 
1. 研究の進め方
 
 
 本調査研究の基本方針は、水生生物の移動防止効果に加え、処理後の排水時では環境への影響を極力押さえ、運用性、経済性等においても優れた実用性の高いバラスト水処理システムを開発することである。 また、国際的な容認を得るための活動を行うとともに、規制内容及び各種論議への参考資料を提供する。
 
 
 研究の対象範囲は、スペシャルパイプのプロトタイプ実機(処理能力:100トン/時間レベルの試作機)を用いた実船実験を行い、バラスト水処理効果を評価するとともに、実船での搭載性、運用性等の実用面の有効性を検証し、本処理技術の有用性を国内外に周知することである。 また、実船実用機であるカスタマイズ実機搭載に関する、情報収集と側面支援も対象範囲とする。
 
 
 実船実験は、実験船であるコンテナ船の就航航路、中国−日本−北米西海岸(平成15年11月)で実施した。 なお、本実験は、バラスト水処理技術の暫定承認プログラムを平成16年7月1日より開始する米国ワシントン州魚類野生生物局と協議しながら実施した。
 研究の成果は、平成14年度以前の研究成果と合わせて、IMO/MEPCでの国際会議、各種シンポジウム等で発表し、本装置の周知及び国際的な容認活動を行うとともに、マスメディアにも積極的に公表した。
 さらに、国際会議等でバラスト水性能(排出)基準等の情報収集を行い、それらの情報を基に、開発メーカー、ポンプメーカー、船社、造船所等と共同で実船搭載機であるカスタマイズ実機の制作、搭載に関する協議・検討を行っている。
 なお、本実験は、学識経験者及び専門技術者からなる作業チームを組織し、調査方法並びに結果の検討を行いながら調査研究を進めた。
 図II.1.3-1には、本事業の調査研究構成フローを示した。
 
図II.1.3-1 調査研究構成フロー
 
 
 
 プロトタイプ実機を搭載する実験対象船は、平成15年5月までに収集した実験対象船候補の中から、船種、就航航路、運航船社、建造造船所、寄港地の協力体制等を検討し、11月就航予定の新造コンテナ船を実験対象船として決定した。 また、検討過程において学識経験者及び専門技術者より、実験時期と寄港地から予想されるバラスト水の動き、生物分布状況等について検証・評価を受け、多角的に選定作業を進めた。
 
船名:MOL EXPRESS(エム・オー・エル エクスプレス)
総トン数:53,822総トン
就航:平成15年11月12日
運航:株式会社 商船三井
船種:パナマックス,フルコンテナ船
就航航路:上海→寧波→香港→神戸→東京→ロサンゼルス→バンクーバー→シアトル→東京→名古屋→神戸→上海(1航海約35日)
 
写真II.2.1-1 実験対象船
 
 
 実験対象船 MOL EXPRESSへのプロトタイプ実機の搭載は、三菱重工神戸造船所において、8月29日から9月5日にかけて本船の建造中に実施した。
 図II.2.2-1には、搭載工程を示した。 また、図II.2.2-2〜4には、搭載工事風景を示した。
 
図II.2.2-1
プロトタイプ実機の搭載工程
 
 
写真II.2.2-1
右舷側アンダーデッキ・パッセージの
Fire-Lineから実験システムへの配管工事
 
 
写真II.2.2-2 実験システムの補機台工事
 
 
写真II.2.2-3 実験システムの据え付け工事







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