日本財団 図書館


第3章 生活ホーム・グループホームの現況
 第1章でみたとおり、平成15年現在で千葉県内には生活ホーム74ヵ所、グループホーム35ヵ所が整備されている。生活ホーム・グループホームでは、指導員、世話人等の職員を配置し、入居している知的障害者に対し、生活上の自立支援・援助を行うこととなっているが、年齢や生活自立度の異なる入居者の生活状況に対応するため、体制、業務内容等が多様化している現状にある。
 このため、現在の千葉県内の生活ホーム・グループホームの体制や業務内容の現状を把握する必要があり、平成15年10月、生活ホーム連絡協議会等の協力を得て、千葉県内の生活ホーム・グループホームに対して悉皆調査を実施した。本章各節における生活ホーム・グループホームの現況については、その結果をとりまとめたものである。また、平成12年に千葉県生活ホーム連絡協議会が「千葉県生活ホーム・グループホーム実態調査報告書」(以下、「生連協・生活・グループホーム実態調査報告書」という)をとりまとめており、今回の調査で十分に捕捉できない事項等については、同報告書結果も参照する。また、本章以降の本文中、単純に「ホーム」という表現する場合は、生活ホーム・グループホームの総称・略称として用いるものである。
1 概況
(1)運営主体
 社会福祉法では、社会福祉事業として、第1種社会福祉事業と第2種社会福祉事業の2つを規定しており、グループホーム(知的障害者地域生活援助事業)は、第2種社会福祉事業に位置づけられている。また、知的障害者福祉法では、グループホームは「指定居宅支援事業」とされている。社会福祉法では、第1種社会福祉事業と異なり、第2種社会福祉事業の運営主体は特に制限されていないが、知的障害者福祉法では、指定居宅支援事業者は法人であることを義務づけている。「知的障害者地域生活援助事業実施要綱」(以下、「国要綱」という。)では、グループホームの運営主体は、地方公共団体及び社会福祉法人等であって、(1)知的障害者援護施設等(知的障害者福祉ホームを除く)の施設を経営する者、(2)他の関係施設の機能を活用すること等により、支援体制が確立できると見込まれる者、のいずれかとされている。
 一方、生活ホームの運営主体については、「知的障害者生活ホーム運営事業実施要綱」(以下、「県要綱」という。)では、市町村を単位とした知的障害者育成会(手をつなぐ親の会)又は当該団体(未設置市町村にあっては、当該管内の知的障害者相談員)の推薦を受けた者(個人又は団体)であって、居室等が提供できるもの」としている。
 平成15年現在の千葉県内の生活ホーム・グループホームの運営主体をみると、生活ホームの場合は社会福祉法人5ホーム、特定非営利活動法人(NPO法人)3ホーム、任意団体(知的障害者育成会等)8ホーム、個人58ホームで個人立のホームが多数を占めているのに対して、グループホームの場合は社会福祉法人32、特定非営利活動法人3で社会福祉法人立が多くなっている。
 
図表3-1 運営主体の状況
 
(2)定員
 入居者定員については、生活ホームの場合は「1カ所当たり原則として、4名以内」(県要綱第8条)とし、定員の上限を規定している。これに対して、グループホームの場合は、厚生労働省令「知的障害者福祉法に基づく指定居宅支援事業者等の人員、設備及び運営に関する基準」(以下、「国省令」という。)において、定員を「四人以上七人以下」と規定している(国省令84条)。生活ホームの定員は原則規定で、実際には定員5名以上の生活ホームも設置されているが、グループホームは4人未満の定員は認められていない。
 調査したホームの定員状況については、生活ホームが平均4.7人、グループホームが平均4.6人となっており、両ホームとも4〜5人定員が多くなっている。生活ホームについては、最大ホームは6人、最小ホームは2人、グループホームについては、最大ホーム7人、最小ホーム4人の定員状況となっている。
 入居者数については、生活ホームが平均3.7人、グループホームは4.4人となっており、生活ホームには約1人分の空きがあるのに対して、グループホームはほぼ満員の状況にある。
 
(3)入居者
 入所者については、生活ホームでは「県内に居住する満15歳以上の知的障害者」で、(1)就労している者、(2)知的障害者援護施設若しくは心身障害者福祉作業等へ通所している者、(3)家庭では十分な養護、監護等のサービスが受けられない者、のいずれかと規定している(県要綱第6条)。グループホームについては、国省令では「満一五歳以上の知的障害者」で、グループホームの入居を必要とする者(入院治療を要する者を除く。)としている(国省令第85条の1)。つまり、生活ホーム、グループホーム両者とも15歳以上であることを入所要件としている。
 調査したホームの入居可能な障害の程度(療育手帳の障害程度区分)については、特に決めていない(あるいは分からない)とするホームが、生活ホームの56%、グループホームの73%を占めており、何らかの基準を設けているホームより多くなっている。基準を設けているホームについては、A1(重度)までとするところが、生活ホーム21%、グループホーム12%で高い割合を示した。また、最も障害の程度が重い(A)(最重度)の受入が可能と回答したホームは、生活ホーム8%、グループホーム8%となっている。
 
図表3-2 要綱上の入居者の要件
区分 生活ホーム グループホーム
根拠 知的障害者生活ホーム運営事業実施要綱
(昭和61年7月1日)
知的障害者地域生活援助事業実施要綱
(平成元年5月29日)
年齢・居住地 15歳以上の千葉県内の居住者 15歳以上の者
入居要件 下記の条件のいずれかを満たした者
(1)就労している者
(2)知的障害者援護施設若しくは心身障害者福祉作業所等へ通所している者
(3)家庭では十分な養護、監護等のサービスが受けられない者
グループホームの入居を必要とする者
(入院治療を要する者を除く。)
 
(4)職員
 常勤職員の平均的な配置状況については、生活ホームが1.3人、グループホームが1.0人となっており、両者とも1ホーム1職員体制で運営されているホームが大半を占めている。非常勤職員の確保については、ホームによって差異がみられ、生活ホームが1.8人であるのに対して、グループホームは1.4人となっている。また、ボランティアについては、生活ホームは2.6人に対して、グループホームではボランティアを確保しているところはなかった。
 
(5)施設
 生活ホーム、グループホームともに、省令、要綱等では建物の広さ、設備、間取り等については厳密な基準は設けられていない。
 生活ホームの施設要件としては、「生活ホームの運営主体は、(中略)居室等が提供できるもの」で、居室については「日照、採光、換気等入居者の保健衛生及び安全面について十分考慮されたもの」と規定されている。広さや居室の定員については特に明示されていない。
 一方、グループホームについては、「原則として、当該運営主体が建物の所有権又は賃借権を有する」施設で、設備について具体的には、(1)日常生活を支障なく送るために必要な設備を有し、世話人が入居者に対し適切な援助を行うことができる形態、(2)入居者の居室は原則として個室、(3)居間、食堂等入居者が相互交流することができる場所の確保、(4)保健衛生及び安全が確保の4条件が示されている。
 調査したホームのタイプをみると、生活ホーム、グループホームともに戸建住宅タイプが多く、生活ホームは70%、グループホームは81%となっている。ただし、生活ホームは、グループホームと比較して集合住宅タイプも多く30%を占めている。
 土地・建物の所有率は、生活ホームとグループホームとでは大きな乖離がみられた。生活ホームは自宅等を活用した施設が多く、所有率が46%であるのに対して、グループホームな賃貸物件の利用が多く、所有率は19%にとどまっている。
 居室数については、生活ホームが平均3.7部屋、グループホームが4.6部屋となっており、グループホームの1施設当たりの居室数が多い。また、生活ホームの個室率が67%であるのに対して、グループホームの個室率は97%と、個室の完備に違いがみられる。
 
図表3-3 ホームの概況
 
2 体制
(1)世話人
 生活ホーム、グループホームでは、入居者の自立支援、生活支援を図るため、専任の職員として、生活ホームは「主たる指導員」、グループホームは「世話人」を配置することが、国省令及び県要綱上義務づけられている。なお、生活ホームの専任職員の名称は指導員であるが、一般的には生活ホームにおいても世話人と呼称されているため、本節では「世話人」の名称で統一的に記述する。
 
ア 配置数
 国省令では、グループホームの場合には、生活援助専従者としての世話人1人以上の必置を求めている。「運営ハンドブック」では、世話人は他の職業をもたない専任職員であり、かつ、入居者が6〜7人の場合であっても、入居者の混乱をさけるため1人の世話人が年間を通じて活動することを想定しており、複数の世話人の交代制の場合でも世話人は2人までにとどめるべきであるとしている。
 生活ホームの場合は、県要綱では、職員配置数は特に明示されていないが、代表者とともに「主たる指導員」の氏名を所管の市町村長宛に申請することとなっているため、1人以上の世話人を配置することが制度上想定されている。
 調査したホームでは、生活ホーム、グループホームともに、世話人は1名配置のところが多くなっており、1名の世話人が入居者全員の食事、入浴、洗濯、清掃、金銭・物品管理等の生活援助を中心に、自立のための支援・援助、ホームの管理等を行っている。前項でみたとおり、入居者数は生活ホーム3.7人、グループホーム4.4人であることから、1人の世話人が対応する入居者数は、生活ホームが3〜4人程度、グループホームは4〜5人程度といった状況にある。
 
イ 性・年齢
 世話人の性別の状況をみると、男性が22%、女性が78%となっており、女性の世話人の占める割合が高い。世話人の業務は入居者に対する生活援助が中心となるが、食事の提供を中心とした家政的な業務が多いため、女性が就任するケースが多いことが考えられる。
 世話人の年齢については、要綱上は年齢制限がないため、あらゆる年齢の人が従事可能であり、調査したホームの世話人のうち、最年少は22歳、最高齢は80歳となっていた。年代別でみると、50代、60代の人の割合が高く、この両者で世話人全体の半数以上を占めている。ホーム別にみると、世話人の平均年齢は、生活ホームが46.8歳、グループホームが49.8歳となっており、生活ホームの世話人が約3歳若くなっている。
 
ウ 雇用・勤務形態
 世話人の雇用形態については、生活ホームでは要綱上特に規定がないが、グループホームについては、国要綱上、運営主体と委託契約又は雇用契約を結んだ者であることとされている。また、ホームの代表者と世話人の兼務も可能であるため、個人立、任意団体立などの小規模事業者のホームでは、世話人を代表者が兼務することも行われている。
 調査した世話人の雇用形態については、ホームの代表者(設置者・経営者等)が世話人を兼務するホームが全体の22%を占めており、ホーム別でみると、生活ホームが27%、グループホームが16%のホームで、代表者自身が世話人となっている。また、生活ホームでは、代表者の家族・親族が世話人に就任するケースもあり、これを加えると39%の生活ホームでは世話人を代表者又は代表者の家族・親族が世話人となっている。これに対して、委託又は雇用契約にある世話人(家族・親族が代表者となっている世話人を含まない)は、全体の約6割を占めており、ホーム別にみると、生活ホームが56%、グループホームが64%となっている。
 勤務形態については、施設内に入居者と同居(自宅開放、住み込み等)している世話人は、生活ホームが50%、グループホームが39%、施設に通勤勤務している世話人は、生活ホームが33%、グループホームが54%となっており、生活ホームは同居勤務型の世話人が多く、グループホームは通勤勤務型の世話人が多い状況にある。
 世話人の勤務日数については、月当たりの休日が8日未満の人の割合は、生活ホームでは60%、グループホームでは55%となっており、半数以上の世話人が週休2日未満の状況にある。「生連協・生活・グループホーム実態調査報告書」をみると、決まった休暇を取得できる世話人は67%、取得できない世話人は33%となっており、休暇の取得についても、不定期な世話人が多い状況にある。
 
図表3-4 雇用形態の状況
 
エ 経験・資格
 生活ホーム、グループホームともに、世話人の勤務経験・資格等の条件については、要綱上規定されていない。ただし、県要綱では、「生活ホームを運営しようとする者は、入居者の状態、能力等を把握し、指導方針を定める」ことが明示されており、世話人に対して知的障害に対する一定の理解や指導力を求めるものとなっている。グループホームは、国要綱では、世話人は「知的障害者の福祉の増進に熱意があり、数人の知的障害者の日常生活を適切に援助する能力を有する者であること」とされており、障害の理解、家事処理能力、受容的態度等の業務遂行能力が求められている。
 調査したホームの世話人の勤務経験については、生活ホームが平均4年3ヶ月、グループホームが平均2年2ヶ月となっており、生活ホームのほうが世話人の経験年数が長い。生活ホーム、グループホームからの聴取調査や「生連協・生活・グループホーム実態調査報告書」を参照すると、世話人の多くは、ホームの開所時に初任した人が多く、経営年数が長いホームほど、勤務経験が長期の世話人が勤務している傾向がみられる。制度の創設年をみると、生活ホームは昭和61年、グループホームは平成元年に発足しており、両ホームの制度化の時期の違いが、世話人の勤務経験年数の差異としてあらわれていることが考えられる。
 世話人が取得している保健福祉系の資格についてみると、世話人の66%が何らかの資格を有しており、回答が多かった資格としては、社会福祉主事、ホームヘルパー、保育士、介護福祉士の4つがあった。ホーム別でみると、生活ホームでは、ホームヘルパーが33%と最も多く、グループホームでは社会福祉主事が26%と最も多くなっている。
 
(2)支援休制
 グループホームの設置にあたっては、国では、「指定地域生活援助事業所は、利用者の身体及び精神の状況に応じた必要な支援を行うことができるよう、知的障害者援護施設等との連携その他の適切な支援体制を確保しなければならない。」(省令第93条)として、いわゆるバックアップ施設等の確保を義務づけている。これに対して、生活ホームについては、バックアップ施設等の確保は義務づけられていない。
 支援体制の確保状況については、今回の調査結果では、生活ホームでは約4割、グループホームでは全てのホームで、バックアップ施設を確保していた。バックアップする機関・法人については、千葉県社会福祉事業団、千葉県内の社会福祉法人等が設置する知的障害者援護施設等となっている。
 支援体制の確保が義務づけられているグループホームにおいても、支援体制の具体的な内容は示されていないが、「生連協・生活・グループホーム実態調査報告書」によると、千葉県内の生活ホーム・グループホームがバックアップ施設から受けている支援は、大別すると(1)入居者に対する支援、(2)施設・世話人等に対する業務支援、(3)世話人等の施設職員の安全管理確保のための支援の3つがあった。(1)については、入居者の施設内での生活支援・相談、日中の就業・通所先の確保、社会参加活動の支援・相談、医療体制の確保、年金・預貯金の管理等が、(2)については職員研修等の職員への技術支援、補助金・利用料等の財務管理支援、入居者の職域・職場開拓などの業務支援が、(3)については、世話人等職員の休日・休暇時の代替要員の派遣、相談等の受付、社会保険・年金等の福利厚生の確保などが、主たる内容となっている。
 生活ホームとバックアップ施設との関係は、一つの生活ホーム、グループホームを一つのバックアップ施設が支援する「1ホーム1バックアップ施設」の状況にあり、こうした生活ホーム、グループホームへの支援が負担となっているバックアップ施設もみられる。「生連協・生活・グループホーム実態調査報告書」によると、負担と感じるの内容については、派遣職員の確保、緊急時の対応が困難なことなどがあげられている。
 
図表3-5 ホームの体制
 







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION