図表3-13 住民から見た自治体の規模によるメリット・デメリット
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【事例】熊本県小国町の「町民プランニングシステム」
熊本県小国町は、昭和61年から旧村の単位で、役場職員と住民による「町民プランニングチーム」を立ち上げ、地域活性化の方策を検討している。その中から出てきた事業提案を、町が実際に事業化するという流れで、地域の企画力を活かしている。現在までに過疎集落の高齢者による「孫が来ても安心なトイレが欲しい」という要望に応えた集落排水事業や、農村都市交流施設「木魂館」の建設と住民による運営など、先進的な成果を多数重ねている。
小国町の木魂館
住民によるワークショップ風景
資料:熊本県「くまもと 地域づくり図鑑 住民参加編」 |
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【事例】福島県只見町「地域のまちづくりの核としての地区センター」
福島県只見町は、旧町村の役場を地区のまちづくりのための「地区センター」と位置づけ、住民の意見を聴いてまとめることのできる人材を配置するという方策を5年前から実施している。地区センターに配置された役場職員は、公民館職員を兼任しており、住民側も公民館運営委員会を解散して地区運営委員会を組織し、まちづくりに向かう姿勢を整えている。これも実効性がある地域自治支援の仕組みである。
只見町只見地区センターにおけるまちづくりワークショップ
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【国の施策動向】
総務省は、合併市町村に限り一定期間、旧市町村単位で設けられるよう法制化する、法人格をもつ地域自治組織「合併特例区」を、改正合併特例法が施行された平成11年(1999年)7月以降の合併分から認める方向で検討している。同省は住民自治充実のため、2タイプの自治組織設置を検討しているが、合併特例区は区の名称に旧市町村名を使えるほか、地域の公共施設を所有・運営できるなど、法人格のない「地域自治区」より強い自治権を持てるようにする。
同省は合併関係法案(地方自治法改正案、合併特例法改正案、合併推進法案)の今国会提出に向け、詰めの作業を急いでいる。行政と住民、民間非営利団体(NPO)が協力して安全なまちづくりを進めるなど、住民に身近な事務を担う地域自治粗織については、合併特例区と、法人格を持たないが合併に関係なくどの市町村でも設置できる地域自治区の2タイプの規定を設けている。
合併特例区には区長を置くほか、合併市町村が旧市町村ごとに地域自治区を設けることを選択した場合も区長を置けるようにする方向である。一方、合併しない市町村が地域自治区を設けるケースでは、住民代表が意見調整に当たる地域協議会の長や事務所長がいれば足りるとして、区長を認めない方針である。
地域自治区については、市町村が条例で同区の区域、協議会の権限などを定める。住民自治を確保するため、市町村長に対し、各区にかかわる市町村の重要施策を実施する前に協議会の意見を聞かなければならない事項を、条例に明記するよう義務付ける方針である。
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(3)広域的連携・対応、アウトソーシング(外部委託)、行政のスリム化
ここまで繰り返し述べてきたように、本村のような小規模町村においては、今後とも厳しい行財政環境におかれるものと思われる。しかし、だからといって、住民福祉の最大化の追求を放棄できないことは当然である。将来予想される合併への対応はさておくとしても、限られた人材と財源で最大の効果を生む取組を、行政のみでなく、住民や各種団体も巻き込んで、早急に行う必要がある。
そうした取組に着手する場合、とかく短兵急に、行政職員の人減らしや賃金カットに論議が集中してしまうのが今日の全国的風潮である。しかし、こうした拙速な考え方や手法のみに取組が陥っては、本村の未来を考えにくい。
本村での取組の基本は、序章の2で述べたように、今後の村づくりの重点事業を明確にした後、「村単独」、「広域的連携・対応」、「外部委託」の3つの視点から、事務・事業の処理方式を検討、決定することである。このことにより、個々の事務・事業ごとによりよい効果をうむためにはどういった処理方式がベストであるか、すなわち、最大の効果をうむためにどうしたら人材や財源の無駄を省けるかが明確になる。そして、同時に、人材や財源の有効活用への途がひらかれ、行政のスリム化の方向を具体化できよう。
【事例】長野県栄村の「行政スリム化」、「田直し事業」、「道直し事業」
長野県栄村では、村の将来を「自律」と定め、その可能性を検討している。その中で作られている「将来像モデル」では、特別職の報酬30%削減、助役の収入役兼任、教育長の非常勤化、職員の7%削減と給与の15%カット、村議会議員数の1/4削減と報酬3割減、水道料金の倍額値上げなど、きわめて厳しい行財政のスリム化が提起されている。
一方で、公共事業実施上の工夫も多様かつ効果的に行われている。小規模の圃場整備や道路整備を進めるため、あえて国の補助事業を導入せず、村単独事業として行う、「田直し事業」、「道直し事業」を展開している。国が求める各種の建設規格の制約を受けず、建設業者が現場で地権者などと打ち合わせをして、時には図面も描かずに工事を行うという、新しい公共事業の方式である。この方式により、工事費用を国の基準で行う場合の1/3程度に縮減し、その分、受益者負担を軽減して中山間地における生活や農業を維持できる水準を保つという努力をしているのである。行政がこのようなきめ細かい対応を行うことにより、公共事業に絡む住民の利害関係の調整を、住民の側が自分たちで行うという副次的効果も現れている。
「田直し事業」
「道直し事業」
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(4)税源の確保
地方分権の流れを受け、自治体の課税自主権が注目されている。すなわち、国が提唱する三位一体の改革の中で、国から地方への税源の移譲が図られ、また独自の税源を開拓することが求められている。しかし、企業の事業所が少ない農山漁村地域では、消費税には大きな期待がもてず、また独自の税源といっても課税客体を見出すことは難しい。入村者に環境利用税を課すなどの、種の観光税も考えられるが、全国的な競争の中での誘客にはマイナスに働く公算が高い。水源や森林を守るための費用を都市住民から徴収する環境税の考え方もあるが、他の自治体の住民に課税することはできないため、県や国による課税と分配を待つしかない。最近、県レベルでは、森林保全を目的として県民税均など割の超過課税を実施する動きなどが出始めている。
今後の本村で考えられる新税源としては、バイオマス関連事業、世界遺産に登録された際の史跡観光税などが考えられる。いずれもまだ、税源になるかどうかは流動的であるが、今から検討しておくべき課題である。
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