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小規模自治体における自治の拡充に関する研究

 事業名 小規模自治体における自治の拡充に関する研究
 団体名 地方自治研究機構 注目度注目度5


2 生活利便性の確保と向上
 
 魅力あるむらづくりにとって都市とのたんなる生活格差を解消するのではなく、農山村ならではのゆとりと豊かさのある生活を維持・実現することが大切である。つまり、都市的な生活様式を再現するのではなく、今日的な農村的生活様式を享受できるようにすることが重要である。
 その一方で自然と共生するといった新たなライフスタイルとの調和を図りながら、生活基盤施設の整備や生活環境を整えていくことも必要である。
 こうした観点から、村民のニーズなどを踏まえ、生活の利便性の確保―生活の質の向上を図る施策として、次の5つの取組メニューを挙げる。
 
(1)交通環境の改善
(2)買い物環境の改善
(3)教育環境の充実一学校の再編
(4)子育て支援
(5)芸術・文化・芸能に対する取組と継承
 
(1)交通環境の改善
 JRの駅と村を結ぶ広域的な路線バスが運行されているが、2路線で8本と少ない運行本数、ニーズにあわない運行時間、不十分な交通ネットワークなどの問題がある。こうしたことを反映して「公共交通の利便性」についてはマイナス評価が高くなっており、交通環境の改善が必要である。
 全国的にみると乗合バス事業の経営環境は厳しく16、都市部でもそして本村のような中山間地域にある小規模自治体などでも、利用者の減少、収益の悪化などからバス路線の廃止が続いている。このため自治体では様々な形で公共交通機能を確保してきている17。具体的には、「広域連携による運行」、「乗合(ジャンボ)タクシー活用」、自治体所有の「スクールバスなどの活用」、住民参加あるいは住民による「住民運行」、「福祉タクシー運行」などがある。
 
図表3-5 公共交通の運行形態事例
運行方式 事例地 概要
広域連携型 島根県安来市・広瀬町・伯太町 3市町が組織する安来能義広域行政組合(一部事務組合)が車両を所有し、運転業務受託者に委託して運行
乗合タクシー
活用型
静岡県袋井市 交通空白地帯の解消、交通弱者の公共施設への交通手段確保を目的に運行。地元タクシー2社にジャンボタクシー(愛称:フーちゃん)の運行を委託
スクールバス等活用型 三重県宮川村 バス路線廃止の代替及び交通空白地帯の解消を図る目的から、村所有のスクールバスの空き時間と貸切バス事業者の貸切バスを活用して運行
住民運行型 三重県四日市市 路線バス廃止に伴う新たな公共交通機関として、地域住民が主体となって運行している(NPO法人「生活バス四日市協議会」)。地域企業の協賛を得ながら、地域が求める公共交通を、自らの手で企画・運営
運転代行
福祉タクシー型
愛知県津具村 交通弱者のため、ボランティアが運行代行を行い、高齢者等の生活支援、社会参加の促進を図る。平成14年4月から運行。ただし、村が社会福祉協議会への運行を委託している
資料:愛知県企画振興部交通対策課の資料より作成
 
 本村は集落が点在し、各集落の人口も少ないことから、根本的に需要(量と密度)が期待できない。このため単純に一般乗合バスのサービス拡充を目指すことは難しいと考えられる。
 そこで手軽な、乗合タクシーや福祉タクシー、村所有のバスなどの活用などのほか、平成16年度から認可される「有償移送ボランティア」制度の活用などによって交通環境を改善することが考えられる。
 
<有償移送ボランティア>
 平成16年度から、現在構造改革特区で試験的に運用されている有償移送ボランティアを国土交通省が認可するという運びになっている。これは、例えば村民で車の運転ができる人が運転者登録しておき、ニーズがあったときには手のあいている人が自分の車で乗客を移送するというものである。運賃の受け渡しの煩雑さを避けるためには、「地域通貨」による決済を行い、運転者は必要とするほかのサービスを受けるという仕組みも考えられる。
 
 このほか、本村全体の総合的な交通環境改善の方法の1つとして、村所有のバスとデマンドタクシーを組合せ活用した「デマンド交通システム」の構築を図ることも考えられる。
 
【事例】石川県志雄町の「デマンド交通システム」(平成15年度試験的導入)
 交通弱者対策として、朝夕の通勤・通学時間帯は巡回バスとデマンドタクシー、それ以外の日中はデマンドタクシーを運行している。
 巡回バスは、7〜8時30分、15〜18時運行。市街地巡回路線のほか、路線バスが運行されない時間帯の運行、羽咋市までの連絡バスの運行を行っている。このバスは、町所有のマイクロバス3台と中型バス1台(42人乗り)を緑ナンバーの登録替え(本章脚注(4)・3)から2)に)したもの。
 デマンドタクシー(ジャンボタクシー)は、巡回バスが運行していない小集落を中心に8〜15時運行。平坦地1日6便、山間地9便運行。1回300円。利用にあたっては登録が必要であり、実際に利用する際は30分前までに予約を行えば、自宅前まで迎えに来るシステムとなっている。
 
(2)買い物環境の改善
 本村の極めて低い地元購買率は、都市で購入することが普通であるファッション製品などの買い回り品はもとより、「最寄り」商店で購入していた最寄り品も村外で購入していることを物語るものである。これはまた、村内での買い物にこだわらなければ、本村の買い物環境は便利であるということを意味している。その背景の1つは、高い自家用車普及率に示される移動費用の低減であると考えられる。
 これはつまり、自家用車交通に依存した購買行動であり、自家用車交通に頼ることができる人だけの恩恵である。その恩恵を受けられない子どもや運転が大変になった高齢者にとって、買い物環境は整っているとはいいがたい。これがアンケートで最も低い評価につながっている要因と考えられる。
 生活の質の向上を図るには、急に必要になる生活必需品などを含めて最寄り品を中心に、近所(近隣)で購入できる商業環境を整えることが必要である。その一方、商業は経済活動として採算性・収益性を確保することが必要であり、交通弱者のための商業といった<地域福祉>とでもいうような側面との調和・両立を図ることが重要になる。
 この両立を図る方法として、地域の商店全体で、あるいは共同で買い物環境の充実を図ることが考えられる。具体的な方法の1つは、個別の商店が共同経営でコンビニ、プラス若干の専門商品を並べる店をつくるなど、地域の商業力を結集して店を出す−地域共同経営型店舗づくり(維持)である。また、商店街あるいは村内の商店が連携して「ご用聞き事業」を展開することも考えられる。いずれの場合も、村内の人ができるだけ村内で買い物をするという運動などにより、みんなで村内の商業を維持するという心構えを涵養することが重要であり、必要である。
 
【事例】長野県飯田市の事例
 60世帯ほどの山村集落で、おばあちゃんの引退で閉店する予定だった万屋の経営を、近所の主婦に受け継いでもらい、その代わり集落の人たちがなるべくその店で買い物をするということを集落の住民が自分たちで決めて実行している。
【事例】ご用聞き事業
 愛媛県大洲市肱広商店街や神奈川県三浦市三崎銀座商店街など多くの商店街で取り組まれている事業。典型的なモデルは、商店街の事務所が電話やファックスで注文を受け、各店から必要なものを集めて(共同)配送するサービスを行うものである。
 
<ご用聞き事業のイメージ>
 
(3)教育環境の充実
 教育−人材の育成はまちづくりの根源であり、大切な手段である。また、「子供の養育・教育」を理由に転居する人も岩手県内で3%(全国では4%)いるなど、教育は人口移動要因の1つとなっている。
 
図表3-6 転居理由(岩手県)
資料)総務省「平成14年就業構造基本調査結果 岩手県」より作成
 
 本村では少子化などから児童数が減少し、複式学級を余儀なくされている小学校もある。こうした現状を背景に、ヒアリング調査においては、社会性が育ちにくいこと、集団活動や球技もできないということなどから、早く統廃合を進めるべきであるという意見が相当あることが窺える。
 「子供の今だけの教育を捉えた視点」からは、統廃合による学校の規模拡大という方向は、教育環境の充実の1つと考えられる。
 その一方、地域における学校は、多くの地域住民にとっての象徴、誇りであり郷土愛を育むものであろう。校舎などは子供が成長しても心に残る原風景の1つである。また運動会や学芸会は、子どもの有無に関係なく、住民総出のイベントとして地域で楽しまれ、コミュニティ形成に大いに役立ってきた。さらに様々な知識をもつ学校の先生が地域内に居ることが有形無形の効果を地域にもたらしてきたであろう。
 「地域における学校の役割の視点」あるいは「教育を永い期間でとらえる視点」からみると、地域に学校を存続させることも意義ある選択と考えられる。
 これらから、2つの選択肢が想定される。
 
(1)学校存続の選択
 「児童数の増加」による教育効果を高めて村民の不安を解消する方法として、山形県小国町の事例のように、例えば衣川小学校の児童を北股小学校に連れて行き共同授業を行うなどの方法が考えられる。
(2)統廃合の選択
 地域の教育力など地域の力を結集する拠点として、学校がもつ機能を残す。
 
【事例】山形県小国町の学校改築の事例
 19人しか児童の居ない小学校を通常の8倍の10億円をかけて再建した。ここでは本来の学校の機能に加えて、町内の他の学校のセカンドスクールとして、この学校の児童と集団授業を行ったり、地域住民の活動の拠点として活動が行われている。子どもの数はその後35人にまで増えている。
 

16国土交通省の「平成14年度乗合バス事業の収支状況について」によれば東北地方の乗合バス事業は全て赤字である。
17有償を前提するバス事業の枠組みは3つある。1)一般乗合の路線バス(一般乗合旅客自動車運送業)。2)ジャンボタクシーなどによる乗合旅客運送(一般貸切旅客自動車運送業による乗合旅客運送。自治体バスによることも可能)。3)自治体所有のバスなどによる有償運送−白ナンバー(「自家用自動車による有償運送」)。なお、自治体バスの運行は乗合バス事業者による運行が期待できない場合に可能とされている。







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