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(7)衣川村にとっての合併問題
 ここで本村についての合併問題をまとめておこう。
(1)地方交付税の減額や村内産業の低迷などから財政見通しは厳しく、このままでは行政を維持できない。
(2)村民の日常生活は、すでに都市化、広域化しており、行政界に対する意識は薄れている。
(3)現在の村の一人当たりの事業費は大きく、合併をすれば大幅な減少が予測される。
(4)合併するにせよしないにせよ、将来本村の歳入の増加は期待できない。
(5)村の公共施設の整備水準は周辺自治体と比べすでに高く、合併をしたら村内の整備に資金は回ってこない可能性がある。
(6)地方制度調査会の示した人口1万人の基準を大きく割り込んでおり、合併しないでいると特例的団体として、自治体としての権能を剥奪される恐れがある。
(7)合併をすれば新しい基礎自治体の役場が遠くなる。また、議会における発言力が低くなることも予想される。
(8)どこと合併しても自治体名として「衣川」の名称が残ることは考えにくい。ただし、合併した場合も、大字名のような形で衣川の地名を残すことは可能である。
(9)合併に伴う広域化は、村内の企業にとってビジネスチャンスになるが、一方で村外の企業との競合が厳しくなる。
(10)合併の枠組みとしては、水沢市、江刺市を中心とする胆沢広域での合併、隣接する平泉町との合併を軸として前沢町や胆沢町を視野に入れた合併など様々な選択肢がある。歴史的背景や生活圏、県の方針や関係する各主体の政治的思惑などが多様に絡み合い、枠組みを決めきれない状況にある。なお、合併の枠組みを決める際の条件の一つとして岩手県の地方振興局管内の合併を優先する方針がある。しかしこれについては、昨年11月の地方自治法改正案で、県境を越える合併の可能性が拡大されたことから、再考される予知が広がるとみることができよう。
 このように、合併については様々なメリットとデメリットが複雑に絡み合って存在し、一概にどちらが良いか、どことの合併が良いかは言いがたい。そこで本調査では、本村民の自治と福祉の向上を前提として考え、そのためにはどういう行政形態が良いかを検討するという手順で進めることとする。







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