(5)生活環境の概況
ア 医療・福祉
診療所を核として保健・福祉・医療を一体運営する総合健康管理システム−「衣川方式」を構築し、その具現化として平成11年度に「星空ヘルスパーク」を整備している。この「ヘルスパーク」は、機能の多様性や医療機関をはじめ村で唯一の施設(例えば診療所)が立地していることなどから、村の保健・医療・福祉の拠点となっている。
保健 |
保健福祉センター |
医療 |
診療所(第1次医療機関)
衣川村国保衣川診療所
同歯科診療所 |
福祉 |
高齢者等生活福祉センター
在宅介護支援センター
指定訪問介護事業所
社会福祉協議会 |
行政 |
村民福祉課 |
・特別養護隻老人ホーム「羽衣荘」
・ディサービスセンター |
|
イ 教育・子育て
村が設置した「へきち保育所」2つを含む3保育所、2幼稚園がある。幼稚園に関しては、「送迎がない」、「帰りの時間が早い」などの問題も指摘されているが、基本的に教育費用が無料など、極めて子育てにとって有利な環境が用意されている。
小学校は4校、中学校が1校ある。小学校は各学年1学級を維持する規模であり、北股、南股の2校は、児童数の減少から複式学級を導入している。人口の推計からすると、さらなる人口減少・少子化が続くことが予想されることから、学校のあり方や活用などを検討する必要があると考えられる。
高等学校や大学等の高等教育機関はない。このため図表1-9に示したように一関市をはじめ村外の学校等に通学しており、公共交通の利便性が低いため、親が送り迎えするなど通学の負担が重いといった問題がある。
ウ 生活基盤施設
(ア)道路
道路は、国道から林道まで総延長282kmあり、国・県道の舗装率は100%である。村道は約150km、舗装率は87%となっている。
図表1-27 道路に関する指標
区分 |
路線数 |
延長(m) |
舗装延長(m) |
舗装率(%) |
国道 |
1 |
891 |
891 |
100.0 |
主要地方道 |
2 |
31,104 |
31,104 |
100.0 |
一般県道 |
2 |
3,062 |
3,062 |
100.0 |
村道 |
118 |
149,228 |
129,948 |
87.1 |
農道 |
177 |
60,822 |
17,588 |
28.9 |
林道 |
17 |
37,288 |
19,373 |
52.0 |
合計 |
317 |
282,395 |
201,966 |
71.5 |
|
|
資料)衣川村「村勢要覧(資料編)2002」より作成
|
(イ)上下水道
上水道は、衣川、北股簡易水道事業により供給されている。平成12年(2000年)の計画給水人口は5,580人、普及率は90%となっている。
生活排水の処理は、農業集落排水事業と合併浄化槽を組み合わせて対応しており、平成14年度末現在の普及率(人口)は64%になっている5県の「下水処理施設の整備率」9により県内市町村との比較をすると、本村は68.7%となり、県平均56.6%より10ポイント、周辺市などよりも15〜25ポイントも高い。村の土地利用状況などを勘案すれば、生活排水の処理環境−下水道は相当整っていると考えることができる。
図表1-28 浄化槽・集落排水普及率(平成15年3月31日現在)
区分 |
区域内普及人口 |
導入人口 |
農業集落排水事業処理区域内人口 |
2,792人 |
2,091人 |
合併浄化槽処理人口 |
610人 |
610人 |
合計 |
3,402人 |
2,701人 |
行政区域内人口 |
5,308人 |
普及率 |
64.1% |
50.9% |
|
|
資料)衣川村「広報 ころもがわ」(平成15年8月号)より作成
|
図表1-29 汚水処理施設整備状況(平成15年3月31日現在)
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汚水処理施設
整備率(%) |
|
汚水処理施設
整備率(%) |
|
汚水処理施設
整備率(%) |
衣川村 |
68.7 |
一関市 |
43.2 |
水沢市 |
52.7 |
胆沢町 |
43.3 |
金ケ崎町 |
77,0 |
前沢町 |
68.5 |
平泉町 |
46.4 |
|
|
岩手県 |
56.6 |
|
資料)岩手県下水環境資料により作成
エ 交通
JR駅と村内を結ぶバス交通が唯一の公共交通である。
しかし、村の1世帯当たりの乗用車保有台数(軽自動車を含む)は1.85台(平成13年3月末、東洋経済調べ)となっており、岩手県平均の1.29台、水沢市1.35台、一関市1.21台、胆沢町1.83台、平泉町1.57台などに比較しても多い。このため、例えば通勤・通学者で交通利用手段が1つの村民2,169人のうち1,809人、83%は自家用車で通勤しているなど、本村は自家用車交通に大きく依存している。
こうした交通形態が生活圏の拡大、生活の広域化を促し、購買力の流出や職住の分離などをもたらしている。つまり、日常生活で行政界は大きな意味を持たなくなってきている。
なお今後、高齢化の進展で自動車の運転が困難になる人も多くなることが予想される。こうした交通弱者対策が一層必要になると考えられる。
図表1-30
|
|
通勤・通学の利用交通手段(平成12年利用交通手段が1種類の村民)
|
|
利用交通手段が1種類 |
うち村外への通勤通学者 |
実数(人) |
構成比(%) |
実数(人) |
構成比(%) |
総数 |
2,169 |
100.0 |
1,312 |
100.0 |
徒歩等 |
66 |
3.0 |
0 |
0.0 |
鉄道・電車 |
14 |
0.6 |
14 |
1.1 |
乗合バス |
21 |
1.0 |
18 |
1.4 |
勤め先のバス |
92 |
4.2 |
27 |
2.1 |
自家用車 |
1,809 |
83.4 |
1,156 |
88.1 |
オートバイ |
82 |
3.8 |
65 |
5.0 |
自転車 |
56 |
2.6 |
16 |
1.2 |
その他 |
29 |
1.3 |
16 |
1.2 |
|
|
資料)総務省「平成12年国勢調査報告」
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(6)財政・行政経費の現状と見通し
ア 財政の現状
村の現在の予算規模は約40億円である。
一般的に税源等を含めて、地方自治体の財政的な自治はほとんどなく、財源は国に依存せざるをえないのが、わが国の現状である。このため、本村でも歳入に占める自らの権能で調達することができる住民税・固定資産税等地方税や手数料などの財源−自主財源割合は、近年は15〜19%程度である。つまり、事業等に必要な経費のうち8割以上が、自らの権能では調達できないのである(依存財源)。そして、依存財源の6割近くを占めるのは、地域経済の不均衡を調整する普通地方交付税であり、全歳入の4割以上を占めている。
歳出に関しては、義務的に支出しなければならない人件費等の割合が1/3強、を占めている。施設整備等に使う投資的経費は、事業によって大きく変動するが、歳出の1/4前後を占め、残りが「その他経費」という構造になっている。
図表1-31 財政の現状
単位:千円(構成比:%) |
平成12年度(決算) |
平成13年度(決算) |
平成14年度(決算) |
平成15年度 |
2000 |
構成比 |
2001 |
構成比 |
2002 |
構成比 |
2003 |
構成比 |
歳入 |
4,122,274 |
- |
4,111,755 |
- |
4,029,861 |
- |
3,865,599 |
- |
|
自主財源 |
637,974 |
15.5 |
735,763 |
17.9 |
802,313 |
19.9 |
650,054 |
16.8 |
|
うち地方税 |
310,116 |
7.5 |
300,734 |
7.3 |
308,488 |
7.7 |
295,096 |
7.6 |
依存財源 |
3,484,300 |
84.5 |
33,759,992 |
821.1 |
3,227,548 |
80.1 |
3,215,545 |
83.2 |
|
うち普通交付税 |
2,041,135 |
49.5 |
1,927,790 |
46.9 |
1,803,812 |
44.8 |
1,682,515 |
43.5 |
うち国庫支出金 |
129,823 |
3.1 |
127,188 |
3.1 |
175,489 |
4.4 |
125,781 |
3.3 |
うち県支出金 |
565,270 |
13.7 |
438,662 |
10.7 |
441,409 |
11.0 |
434,198 |
11.2 |
歳出 |
4,070,277 |
- |
4,057,498 |
- |
3,972,654 |
- |
3,767,447 |
- |
|
義務的経費 |
1,498,860 |
36.8 |
1,541,688 |
38.0 |
1,481,829 |
37.3 |
1,482,511 |
39.4 |
投資的経費 |
1,072,734 |
26.4 |
978,669 |
24.1 |
838,126 |
21.1 |
675,881 |
17.9 |
その他の経費 |
1,498,683 |
36.8 |
1,537,141 |
37.9 |
1,652,699 |
41.6 |
1,609,055 |
42.7 |
歳入歳出差引 |
51,997 |
- |
54,257 |
- |
57,207 |
- |
98,152 |
- |
|
資料)衣川村作成資料
イ 行政経費(人口1人当たり)の現状
本村の平成12年度の歳出決算額を人口で割ると、本村の人口1人当たりの決算額、つまり行政経費(コスト)は約77万円である。
一般的に、人口規模が大きくなるほど医療や福祉などの(民間)機能が集積し、これらの機能に依存することができることなどから、1人当たりの行政経費(コスト、投資)は低くなる傾向を示す。
岩手県内でもほぼ同様の傾向を示している。本村とほぼ同規模の人口を抱える村は人口1人当たり60〜70万円台、人口1万人台の町は50万円前後、人口5万人を超える都市では30万円台となっている。
図表1-32 人口1人当たりの行政経費の現状
|
|
人口(平成12年国勢調査) |
平成12年度歳出決算額 |
人口1人当たり決算額 |
単位 |
人 |
100万円 |
円 |
|
衣川村 |
5,290 |
4,068 |
768,998 |
周辺市町 |
水沢市 |
60,990 |
21,891 |
358,928 |
一関市 |
63,510 |
22,899 |
360,557 |
江刺市 |
33,687 |
21,612 |
641,553 |
金ヶ崎町 |
16,383 |
8,071 |
492,645 |
前沢町 |
15,438 |
7,360 |
476,746 |
胆沢町 |
17,651 |
9,761 |
553,000 |
平泉町 |
9,054 |
5,428 |
599,514 |
参考 |
盛岡市 |
288,843 |
94,519 |
327,233 |
北上市 |
91,501 |
34,122 |
372,914 |
宮守村 |
5,427 |
4,154 |
765,432 |
野田村 |
5,195 |
3,162 |
608,662 |
|
資料)総務省「統計でみる市区町村のすがた 2003」より作成
ウ 財政の見通し
村の見通しによると、地方税の落ち込みによる自主財源額の減少や地方交付税の減少などによって、基本的には歳入は減少すると予測している。その結果、平成22年度は平成15年度より5億円減少した34億円弱の歳入規模を予測している。ただし、自主財源割合は14.5%ないし16.6%とほぼ一定率であり、財政における国への8割依存は変わりがない見通しである。
歳出に関しては、義務的経費を概ね横ばいと見通し、「その他経費」は漸減を予測などした結果、平成22年度歳出は平成15年度より3.5億円減の34億円強と見通した。
つまり、平成22年度に歳出が歳入を5千万円上回る見通しである。しかし、例えばこの見通しでは、投資的経費割合を現在の約20%前後10億円程度から14%−5億円に圧縮することが前提となっているなど、実際はもう少し厳しい状況の面もあると思われる。
図表1-33 財政の見通し
単位:千円 |
平成16年度 |
平成17年度 |
平成18年度 |
平成19年度 |
平成20年度 |
平成21年度 |
平成22年度 |
2004 |
2005 |
2006 |
2007 |
2008 |
2009 |
2010 |
歳入 |
3,760,214 |
3,753,670 |
3,598,011 |
4,020,059 |
3,968,968 |
3,433,203 |
3,360,270 |
|
自主財源 |
623,051 |
596,723 |
602,476 |
584,165 |
576,386 |
569,660 |
542,452 |
|
対歳入比% |
16.6 |
15.9 |
16.7 |
145 |
145 |
16.6 |
16.1 |
地方税 |
293,621 |
292,152 |
290,692 |
289,238 |
287,792 |
286,363 |
284,921 |
依存財源 |
3,137,163 |
3,156,947 |
2,995,535 |
3,435,894 |
3,392,582 |
2,863,543 |
2,817,818 |
|
普通交付税 |
1,920,715 |
1,880,380 |
1,840,892 |
1,802,233 |
1,764,386 |
1,727,334 |
1,691,060 |
対依存財源比% |
61.2 |
59.6 |
61.5 |
52.5 |
52.0 |
60.3 |
60.0 |
対歳入比% |
51.1 |
50.1 |
51.2 |
44.8 |
44.5 |
50.3 |
50.3 |
歳出 |
3,685,920 |
3,671,164 |
3,532,362 |
3,960,743 |
3,914,949 |
3,404,949 |
3,410,600 |
|
義務的経費 |
1,493,621 |
1,450,528 |
1,459,126 |
1,420,218 |
1,411,121 |
1,408,805 |
1,422,126 |
|
対歳出比% |
40.5 |
39.5 |
41.3 |
35.9 |
36.0 |
41.4 |
41.7 |
投資的経費 |
631,126 |
669,676 |
525,000 |
1,000,000 |
1,000,000 |
500,000 |
500,000 |
|
対歳出比% |
17.1 |
18.2 |
14.9 |
25.2 |
25.5 |
14.7 |
14.7 |
その他の経費 |
1,561,173 |
1,550,960 |
1,548,236 |
1,540,525 |
1,503,828 |
1,496,145 |
1,488,474 |
|
対歳出比% |
42.4 |
42.2 |
43.8 |
389 |
38.4 |
43.9 |
43.6 |
歳入歳出差引 |
74,293 |
82,506 |
65,649 |
59,316 |
54,019 |
28,253 |
△50,330 |
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資料)衣川村作成資料
9下水道、農業集落排水事業、漁村同、合併浄化槽等、コミュニティプラント各整備率の合計であり、岩手県下水環境課が整備人口から算出した数値。
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