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(4)産業の概況
ア 就業構造
 昭和45年(1970年)から昭和55年(1980年)にかけての経済成長期に、第1次産業就業人口割合の急減、第2次産業就業人口割合の急増があった。その後は、第1次産業の漸減、第2次産業の横ばい、第3次産業の漸増という傾向にある。
 国や岩手県の就業構造(平成12年)と比較すると、第1次産業の割合が高く、その分第3次産業が低い。特化係数4でも、この状況は裏付けられる。
 就業人口割合は減少してきているが、第1次産業が重みをもつ村ということができる一方、若者に魅力のある第3次産業の就業の場は少ない。
 
図表1-15 就業構造の変化
資料)衣川村「村勢要覧(資料編)2002」及び総務省「国勢調査報告」より作成
 
図表1-16 特化係数表
  対国 対県
第1次産業 5.21 1.87
第2次産業 1.13 1.14
第3次産業 0.61 0.71
資料)総務省「国勢調査報告」
 
イ 農業
(ア)農家・農業就業者
 農家戸数(販売農家と自給的農家の合計)は882戸5、農家率は67.1%6である。また農家人口は4,177人、農家人口率は79.0%である。今なお多くの村民が農業とかかわりをもっているといえよう。
 
 販売農家793戸のうち、専業農家は64戸(8.1%)に過ぎない。78.3%にあたる621戸は第2種兼業農家である。農業就業人口は1,233人であり、このうち65歳以上の高齢者が55%以上の675人を占めている。つまり、兼業農家と高齢者が村の農業の主な担い手ということができる。
 
図表1-17 主な指標
  農家率 販売農家率 専業農家 第2種兼業農家 農家人口率 農業就業人口 うち65歳以上
実数 882戸 793戸 64戸 621戸 4,177人 1,223人 675人
比率 67.1% 89.9% 8.1% 78.3% 79.0%   55.2%
 
(イ)生産
 耕地面積1,460haの80%に近い1,150haは水田である(水田率78.8%)。畑は310ha、その80%・249haは牧草地となっている(農林水産省「平成13年作物統計調査」)。
 平成13年(2001年)の村の農業産出額は17億5千万円であり、全国約3200市町村のなかほど1,541位に位置する。農業産出額の内訳をみると、米が58%を占める約10億円、次いで「花き」(2.3億円、13%)、「肉用牛」(2.0億円、11%)の順となっている。
 村の農業の基幹は、水田農業にあり、その基盤に立って花き栽培や肉用牛などの畜産農業が展開されている。この基幹である水田農業について、国は「米政策改革大綱」などを示して米政策を大きく転換し、平成22年度までに「米づくりのあるべき姿」を実現しようとしている。水田農業に大きく依存する村の農業経営環境は厳しさを増すものと考えられる。
 
図表1-18 農業産出額の内訳
資料)農林水産省「平成13年生産農業所得統計」により作成
 
ウ 林業
 村の8割、12,875haが林野という「山村」という側面をもつ。林野面積の半分以上が人工林であり、その6割(3,884ha)には杉が植栽されている。林家は433戸あるが、そのうち410戸は農家林家である。
 こうした人工林を中心に、林業の構造的な不況や高齢化などによって間伐が進まないなどの問題が生じてきている。このため現在、村では森と共生する新たな取組として「木質バイオマスエネルギー」によるエネルギーの地域供給を進めようとしている。バイオマスについては、わが国の持続可能な発展にとって不可欠であることから、平成14年(2002年)12月に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されるなど、これから発展が期待される分野である。
 
図表1-19 林業に関する主な指標
  林野面積 保安林 レクリエーション森林
  国有林 民有林等 人工林 天然林
実数(ha) 12,875 4,203 8,672 6,495 6,246 9,825 99
構成比(%) 100 32.6 67.4 50.4 48.5 - -
資料)農林水産省「2000年世界農林業センサス」より作成
 
エ 商業
 地元購買率1.3%が示すように、本村の小売商業環境は厳しいものがある。店舗数は減少傾向を示し、平成14年(2002年)村内の小売店舗は40店舗である。年間販売額は15億円〜20億円の幅で増減しており、1店舗あたりの平均販売額は3,500万円〜4,200万円程度となっている。
 なお、県全体の年間小売販売額に占める市町村の同販売額の割合を県人口に占める市町村の人口割合で除した「小売吸引力」をみると、本村は0.28となり村外への流出顕著である一方、前沢町は1.40と水沢市や一関市を上回る吸引力を示している。
 
図表1-20 商業に関する主な指標
  単位 平成9年 平成11年 平成14年
小売商店数 47 46 40
小売業年間販売額 100万円 1,645 1,940 1,468
販売額指数   100 118 89
県小売業年間販売額 100万円 1,529,828 1,494,263 1,395,991
販売額指数   100 98 91
資料)経済産業省「商業統計表」、総務省「平成14年住民基本台帳人口要覧」より作成
 
平成14年小売吸引力
衣川村 0.28
水沢市 1.30
一関市 1.08
前沢町 1.40
 
オ 工業
 事業所(工場)数は22〜24事業所で安定していたが、平成13年(2001年)に16事業所にまで減少した。このため、40億円台で推移していた製造品等出荷額も18億円台に大きく減少した。これらの額は県全体の出荷額の0.2%にも満たず、対県人口比率0.3%台より低く、必ずしも工業は盛んではない。
 なお、製造業の海外生産比率が高まるとともに7、岩手県内への産業立地8が低下しているなかで、村への工場誘致はかなり困難な局面にあると考えられる。
 
図表1-21 工業に関する主な指標
  単位 平成9年 平成10年 平成11年 平成12年 平成13年
事業所数 23 23 22 24 16
製造品出荷額等 万円 468,104 400,956 417,854 404,045 184,228
対県シェア % 0.19 0.17 0.18 0.16 0.08
資料)経済産業省「工業統計表」より作成
 
カ 観光・交流
(ア)主な観光資源
 本村の主な観光資源は、「国見平スキー場」や「東北ニュージーランド」などである。
 
図表1-22 主な観光資源(宿泊・学習施設を含む)
スポーツ施設 レジャー施設 温泉施設 自然体験施設 宿泊施設 学習施設
国見平スキー場 東北ニュージーランド村 黒湯温泉 ふるさと自然塾(旅行村) 衣川荘 歴史ふれあい館
温水プール   国見平温泉   民宿 太平洋戦史館
ゴルフ場       オートキャンプ場  
注)ゴシック文字は宿泊可能な施設
 
(イ)入込客数
 日帰入込客数は平成8年(1996年)を除き客は35万人〜40万人で推移しており、宿泊客数は4万人を超えていたが、近年は減少する傾向にある。施設別にみると、平成12年(2000年)の全日帰客368,239人の半数以上53%が「東北ニュージーランド村」への入込客であり、以下「国見平温泉」、「黒滝温泉」の順となっている。
 
図表1-23 入込客数の推移
資料)衣川村「村勢要覧(資料編)2002」より作成
 
図表1-24 日帰入込施設
資料)図表1-15に同じ
 
(ウ)農業体験修学旅行
 昭和63年(1988年)から「心と心」の教育交流を目標に農業体験修学旅行生を受け入れており、平成15年(2003年)までに延べ7,426人が参加した。この受け入れのために、約60世帯で「衣川村グリーンツーリズム協議会」を設けている。
 農業体験などに対する都市市民のニーズが高く、「日本一の星空」など本村の自然資源を考えれば、農を核とする「グリーンツーリズム」の振興を図るとともに、自然の保全などを視野に入れた「エコツーリズム」などによる都市市民等との交流、それによる地域活性化も期待できよう。
 
図表1-25 都市住民の農村交流等に関する意識調査
項目 A.平成2年 B.平成11年 B-A
自宅の家や近くの市民農園で家庭菜園をしてみたい 59.5% 63.3% 3.8
体験的なものであれば田や畑などの農作業をしてみたい 45.5% 63.0% 17.5
もっと気軽に農家の手伝いができれば協力したい 45.0% 57.0% 12.0
自分の子どもや孫達に農作業を体験させたい - 81.3% -
もっと気軽に農村と行き来がしたい 54.0% 68.5% 14.5
もっと気軽に農家の人たちと交流をもちたい - 72.8% -
注)首都圏居住の非農業者400名対象のアンケート調査
資料)(株)博報堂生活総合研究所「食と農業に関する意識調査」より作成
 

4特化係数は地域特性を把握するためのものであり、図表1-13は「本村の就業人口構成比/国(県)の同」で計算した。
5農林水産省「2000年世界農林業センサス」による。以下、本「農業」に関して特に断りがない場合はこのセンサスによる。
6882戸/総世帯数1,315世帯×100。農家人口率は平成12年の村の国調人口5,290人で除した数値。
790年度6.4%→95年度9.0%→01年度16.7%と10ポイントも上昇した。
8平成10〜14年では平成12年の20件を最高に11〜16件となっている。







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