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5 展開方向の具体的検討
 3つの“ぷからすストーリー”は、相互に関わりを持ちながら、ステップアップのストーリー展開が図られていくものとなる。手わざ体験観光をモデルとした検討からスタートして構築した全体のストーリーは、以下のとおりである。
 
(1)ぷからすストーリー1:参加と情報共有・発信のしくみづくり
ア ステップアップストーリー
 観光のまちづくりの「協働」のコアとなるしくみの立ち上げ→参加の広がりづくり→活動の広がりづくり→持続展開へと結ぶ。
 
イ ストーリー展開の提案
(1)「宮古市民フォーラム(仮称)」
・本調査への市民参加メンバーをコア(中心)に、関心あるメンバーを集めて「宮古市民フォーラム(仮称)」を立ち上げる。
・事務局は民間におき、行政は支援にまわることが望ましい。
・「手わざ体験観光(案である。別なものにしても可能。メンバーの総意で決めること)」を実践のモデルテーマとして取り組む中で、活動メンバーの強化を図り、NPO結成をめざす。活動を先行させることを重視した取り組みとする。
・活動は定例化(月1〜2回)し、「手わざ体験観光の試験的展開」を実施に移すことを短期的な目標におく。そのための「メニュー企画」「手わざ人の確保」「支援体制の確立」「実践場所の確保」「実施資金の獲得」をクリアしていく活動をする。
 
(2)「ぷからすクラブ(仮称)」
・「手わざ体験観光の試験的展開」に取り組んでいる状況を情報発信していく。
・活動メンバーの活動報告や意見発信を中心としつつ、インターネットで関心ある人が自由にアクセスできるしくみが望まれる。
・「宮古市民フォーラム(仮称)」の活動に賛同支援していただけるメンバーを広く「ぷからすクラブ」に組織していく。
・「宮古市民フォーラム(仮称)」がNPOに発展的に吸収される段階では、「ぷからすクラブ」もNPOの活動の一環として吸収されていくものとする。
 
図表3−3 体験メニューづくりの素材表―各種提案からのイメージ―
場所 工房コーナ 研修室コーナー 屋外ツアー
時間帯 10:30-12:00
13:30-15:00
15:30-17:00
10:30-12:00
13:30-15:00
15:30-17:00
9:30-12:00
14:00-17:00
陶芸コース
カップづくりや絵つけ
歴史体験コース
講話や映像資料
ガイド付歴史ツアー
染色コース
シャツやハンカチの染め実習
自然体験コース
講話や(台風などの)映像資料
ガイド付エコツアー
織物コース
コースターなど小物づくり
食文化コース
そば、オトーリ体験
郷土料理実習
そばづくりやヘルシー料理、黒糖、島豆腐づくり
まぐコース
かごなど小物づくり
ミャーク唄三線コース
指導や実演
アートコース
漂着物等を使った創作体験
アダン葉・ソテツ民具コース
小物づくり
クィチャーコース
指導や実演
石工コース
石積技法の講習と実習
たこづくりコース
たこづくりと遊び実習
農芸コース 収穫体験、うえつけ体験
こまづくりコース
こまづくりと遊び実習
漁人コース 引き網漁や釣り体験
 
・試験的な展開として1〜2時間の体験メニューを設定→将来は半日コースや1泊2日コースも可能としていく
・当面は気軽さを重視した内容を企画→将来は本格的に楽しめるものまで幅広く企画していく
・当面は場所の制約が大きいと考えられるが、仮設テントやプレハブ、間借り等の柔軟な方策によって「工房コーナー」「研修室コーナー」の確保を想定する
・日替わりで多彩なメニューづくりも可能。上表は一週間の単位で考えてみたもの
・1日3サイクルとすることで、1日に2〜3の体験が可能となるよう設定する
 
 
【事例紹介 −自然文化体験型ツアー「島の学校@久米島」(沖縄県島尻郡久米島町)】
 
1 久米島町の概要
 久米島町の久米島は、沖縄本島那覇市の西方94kmの東シナ海に位置し、人口約9,300人(平成12年度国政調査)、面積58.82km2(硫黄鳥島2.50km2、奥武島0.63km2、0.37km2を除く)の島である。古くは「球美」と呼ばれ、貿易の中継点として栄え、中国や古琉球の影響を受けた習俗や文化、珍しい動植物、豊かな自然、素朴な人々の暮らしなどが今なお残された貴重な島である。現在、島では島内に残る自然や素朴な島の生活に触れてもらおうと自然文化体験型ツアー「島の学校@久米島」を企画・運営している。以下、その活動内容を紹介する。
 
2 「島の学校@久米島」
 「島の学校@久米島」は、久米島町が地元で運営・提供する「島人発想」の島旅の体験型ソフトである。島の“暮らし”や“自然”“文化”といったかけがえのない宝物のものを大切に守り、育みながらその魅力を旅人に体験してもらうための企画として誕生したもので、自然と人の共生する「島」という環境そのものを舞台に、島のありのままの姿を体験してもらい、その体験を通して大自然と人間の関係、人を取り巻く歴史や文化、大地や海に秘められた謎、そして地球の鼓動を幹事、考える機会を作ることを目的としている。こうした目的を具現化するものとして、この島で生活し、島を愛して止まない島人達を案内役とした様々なカリキュラムが設けられている。
 
図表3−4 島の学校@久米島 全コース(2004年版)
分野 コース名 内容 時間 1回
人数
費用(円) 対象
カルチャー やちむん教室 (素焼きのシーサーづくり) 久米島の土を使ってオリジナルシーサーを作る。乾燥・焼き上げ後、郵送します。 2
(通年)
1〜 60 一般
3,000
小学生
〜一般
沖縄料理教室
1.おやつ教室
沖縄のお菓子の定番サーターアンダギーや紅イモを使ったおやつ、軽食を作る。※お土産つき。 2
(通年)
10〜 30 2,500 中学生

一般団体
沖縄料理教室
 2.郷土料理教室
豚肉や昆布、沖縄独特の野菜を使った郷土料理。久米島ならではのレシピを伝授。※昼食付き。午前のみ開催 3
(通年)
10〜 20 4,000 中学生

一般団体
三線教室 地元の音楽家から、沖縄の三味線「サンシン」を習う。沖縄民謡を1曲弾けるまでミッチリ指導。 2
(通年)
10〜 30 1,500 小学生

一般団体
エイサー教室
曜日・時間に制限あり。
太鼓を持って飛び回る勇壮な沖縄の伝統芸能、エイサー。地元の創作太鼓集団がカッコイイバチさばきを指導。 2
(通年)
20〜 100 1,500 小学生

一般団体
歴史 歴史教室
[素焼きのシーサーづくり〕
かつて風葬の行われていた全長800mにも及ぶ洞窟「ヤジャーガマ」この洞窟を中心に様々なスポットを巡り、島の文化・歴史、それらにまつわる伝説を探る。※歩きやすい靴、汚れてもいい服装で。 3
(通年)
10〜 40 2,000 小学生

一般団体
平和学習
[沖縄戦サイドストーリー〕
多くの悲しみを残した第二次世界大戦。本島以外の離島にも、多くの悲しみがあった。久米島での第二次世界大戦(沖縄戦)のサイドストーリーを追う。 3
(通年)
10〜 40 1,500 小学生

一般団体
自然 イノー(珊瑚)観察 潮の引いたイノー(珊瑚礁の内海)に生息する小さな生き物の生態系(ミクロの世界)の観察・周辺の環境も含めた学習的要素も取り入れて紹介します。※干潮時に限る。濡れても良い靴要。 2
(通年)
30 2,000 小学生

一般団体
シーカヤック 波打ち際を離れ、沖合いの海域での海洋観察。離れ小島に上陸しての散策や、水中眼鏡を使った水中観察などを環境と伴わせて紹介。 3
(通年)
10〜 20 6,000 小学生

一般団体
自然林散策
〔だるま山公園周辺コース〕
緑豊かな木々と木漏れ日に囲まれ、多種多様な植物群・久米島固有の生物が生息する久米島の自然林散策。また、自然と人間と暮らしの密接なつながりも交えて紹介する。※歩きやすい靴・雨具持参 2.5
(通年)
10〜 20 2,000 小学生

一般団体
自然海岸散策
[タチジャミ周辺コース〕
外洋と切り立った断崖に沿ったトレッキングコース。海岸性植物からイノーの生物まで幅広い生態系が詰まっている。異国の地からの漂流物も多く、様々な観点で散策する。 2.5
(通年)
10〜 20 2,000 小学生

一般団体
産業系
プログラム
体験漁業
追いこみ・刺し網漁体験
満潮時にしかけた網に入った魚を干潮時につかみ取りする漁法を体験。魚のおろし方も指導。 (※潮位や天候によって実施日時が限定されます。着替・マリンブーツ等要) 2.5
(6〜11月干潮時)
30〜 100 2,500〜 小学生

一般団体
体験農業
サトウキビ刈り体験
島の基幹作物のサトウキビ刈りを体験。また、キビの刈り取りから圧搾、そして黒糖が出来るまでの過程を体験することもできます。できたての純粋かつ濃厚な味を体験できます。 3〜6
(1〜3月)
10〜 30 体験農業
 1,500
体験農業
&黒糖作り
 2,500
中学生

一般団体
伝統工芸体験[久米島紬〕 
(1)草木染め体験
(2)織り体験
紬織り発祥の地「久米島」で、繭からの糸つむぎを体験後、草木染めもしくは織りの2つのコースで伝統工芸を体験。 2 10〜 20 2,500 小学生

一般団体
出典:久米島観光協会(但し、メニューについては更新検討中(平成16年3月現在)
 
【事例紹介 −長野県小布施町(住実主体のまちづくりと街並み修景事業)−】
1 小布施町の概要
 小布施町は、長野県の北部、長野市の北東部に位置する人口約12,000人、世帯数約3,300世帯の小さな農村である。江戸時代には5つの街道が交わる交通の要衝としで栄え、豪農、豪商が誕生した。幕末には地元豪農・豪商の招きで葛飾北斎が滞在し、北斎画が多数創作された。現在では北斎をテーマとした美術館と地場産業である栗菓子をセットにした街並み修景事業によって土壁や和風瓦屋根など伝統的な雰囲気の漂うまちとなっており、年間120万人もの観光客が訪れている。こうした布施町の街並みは、約20年かけて造られ、それを現在でも発展・継承させている。ここでは基本的な修景が完成するまでと、現在でも住民主体で進められているまちづくりの取り組みに分けて紹介する。
 
2 住民主体のまちづくりの取り組み
(1)株式会社ア・ラ・小布施
 現在、小布施のまちづくりは、第3セクターとして平成5年に設立された「ア・ラ・小布施」が担っている。「ア・ラ・小布施」は、町(行政)からの出資は4%、残りは全てさきの修景事業で中心となった栗菓子業者がリーダーシップを執り、1口50万円で出資を募り、住民52人を中心に56名、計2,600万円の出資金を得て設立された民間主導のまちづくりを目指す会社である。その証拠に出資者への配当は行わず、まちの発展がその見返り、というユニークな考えで事業が進められており、年間売上げ約6,000万円の収益は全て音楽祭や映画祭などのまちづくりイベントへ還元されている。
 
<主な事業内容>
1 宿泊関係
プチホテル小布施 4部屋(ツイン3部屋・スウィート1部屋)
2 喫茶関係
飲み物、軽食、手作りケーキ、和菓子、宿泊者の朝食提供
3 ガイドセンター
観光案内、講演、視察対応、レンタルサイクル
4 イベント関係(企画運営)
コンサート、音楽祭、演劇、映画祭
5 新規活動
EM菌による安心・安全な農業振興と環境保全、地域通貨研究所として学習活動の拠点
屋台(和風ワゴン)の製造販売及びレンタル事業、古寺巡り冊子の作成と販売
小布施クラブの設立と地域活動の拠点、森を造ろう会の設立と環境づくり
6 駐車場の運営管理(100台)
7 商品販売
地元商品・「古寺巡り」・「遊学する小布施」等の雑誌販売
手作り作品、町指定ごみ袋、その他
8 2階オープンスペースの活用
各種展示会の開催
学集会の開催(ヴァイオリン・パッチワーク・押し花・連句の会・版画教室・健康教室等)
9 その他の事業
信金ギャラリー展示スペースの管理・運営
10 事務局関係
小布施国際音楽祭、北信濃小布施映画祭、小布施国際交流クラブ、森を造ろう会
地域通貨研修会、混声合唱団「アンダンテ」、ふる里を愛するネットワーク
 
(2)オープンガーデン事業
 オープンガーデンとは、元々英国で、個人の家の庭(プライベートガーデン)をチャリティーとして公開する習慣のこと。町では、これを参考にして、町に登録した一般家庭や商店、学校などの庭を公開している。取り組みのきっかけは平成元年のふるさと創生1億円事業を原資に町が実施した行った欧州の花によるまちづくりの視察で、平成元年から10年間、毎年20人ずつ視察に派遣した。ここで特徴的なのは、参加者20名のうち15名を一般家庭の主婦等にしたことで、これにより町内のおよそ150件の家庭が花を活かしたまちづくりを学習できたことにあった。こうした取り組みは、現在、着実に実を結び、町のいたるところで植栽をみることができる。そして、このことが観光客をまた小布施の街へと引き寄せる原動力となっている。
 
3 街並み修景事業
 小布施町の街並みは、北斎をテーマとして美術館の建設から始まっている。昭和51年、町にゆかりの深い北斎の絵の流出を防ぐために、当時の町長が私財(土地)を提供し、「北斎館」を開館させた。開館の目的は、北斎という文化を通じての新旧住民の交流と、北斎の肉筆画という文化遺産の流出を防ぐということにおかれ、観光は二の次であった。
 この美術館の開館によって町民は小布施町の住民であることに誇りを持つようになり、文化活動や地域づくりに積極的に取り組み始め、同時にいくつかの美術館が建設されるようになった。その後、北斎館前の私有地に造園を作り一般へ開放した地元栗菓子業者が中心となって修景事業が進められた。事業実施にあたっては、住民との間に建築家が入って何十回と話し合いを行い、地域活性化のために必要ということで、「外は皆のもの、内は自分のもの」という計画理念のもと修景事業に取り組んだ。修景事業では、土地の売買は一切行わず、それらを組み替えて賃借などで再配置を行った。その結果、住民は、日当たりのいい、落ち着いた住環境を手に入れることができ、店舗や金融機関はゆったりした駐車スペースを確保することができるようになった。その後も、美術館をつなぐ裏路地に栗木煉瓦を敷き「栗の小径」として情感出すなど修景事業を進めた。
 修景の動きは、中心部から周辺部へと広がり、新聞販売店や呉服店など観光とは直接関係しない様々な業種の店舗に広がり、店舗は看板を最小限に抑えるなど景観維持に取り組んでいる。
 
図3−4 街並み修景事業対象地域
(拡大画面:90KB)
 
 
【事例紹介−NPO法人“鞆まちづくり工房”(広島県福山市)−】
 
1 鞆町の概要
 鞆町は、広島県福山市の南部、瀬戸内海に面する人口約6,000人、世帯数約2,300世帯の港町である。古くから港町として栄え、現在でも伝統的な本瓦屋根の街並みが残るなど中世の港町の雰囲気の漂うまちとして伝統的建造物郡保存地区の対策調査が行われている。
 
2 目的
 NPO法人“鞆まちづくり工房”は、鞆町の歴史的景観の保存活動に取り組んできたメンバーを中心に、鞆の浦の歴史的環境の素晴らしさを引継ぎ、まち並みやそれと一体となった港湾施設、伝統的な産業など歴史的遺産を活用したまちづくりを住民や行政に対し、提案、実践し、その魅力を探っていこうという趣旨のもとで、平成15年6月に設立された。
 
3 取り組み
 事業ごとに責任者を決め、歴史的文化的遺産の保存と継承及びそれらを活用したまちづくりという基本スタンスのもと、以下のような取り組みを行っている。
(1)歴史的文化・土木遺産を活かしたまちづくりの提案
 鞆町の現存する港湾施設の歴史的、文化的価値を調査するとともに、これを後世に引き継ぐための勉強会やシンポジウムの開催を行っている。
 
(2)空き家プロジェクト
 高齢化や住宅の老朽化に伴い発生している空き家を活用するため、“空き家バンク“の創設に取り組んでいる。
 また、町の中心部にある一軒の空き家を情報発信の場すなわち『情報交差“店”』として改修し、蘇らせる“四つ角の家再生計画”を実行中である。完成後は、鞆の町と暮らしに関する事柄やこれまで行ってきた数々の調査の資料等を展示するとともに、観光案内や休憩スペース、貸しギャラリーなどの機能を持たせ、鞆に住む人、訪れる人誰もが立ち寄ることができ、自然に交流が生まれるような空間となることを目指している。
 
(3)オリジナル商品の開発、販売
 鞆町を知ってもらうため鞆町にちなんだオリジナルの商品を開発、販売している。
・「龍馬のわすれもの」(鞆町産の薬味を漬け込んだ保命酒とその薬味を材料にしたケーキ)
・「手ぬぐい」(鞆の港をモチーフにしたてぬぐい)
・鞆街並てづくりマップ(“とも学校”の活動を通してできた町の地図)
 
(4)龍馬ゆかりの家(旧魚屋萬蔵宅)の購入、再生
 龍馬率いる海援隊の船と紀州藩の船が鞆沖で衝突した『いろは丸事件』の賠償交渉の舞台となった家屋を街並み保存の観点から購入した。今後、生活の匂いの漂うような民宿として活用することを目指して活動中である。







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