(2)ぷからすストーリー2:手わざ人づくり
ア ステップアップストーリー
・手わざ人の発掘→認証→活用への展開(子ども達の手わざ活動と高齢者の手わざ活動を結ぶ展開を図る他、手わざ人の多面的な育成)
・手わざ商品開発アイデアや地域資源を活かすアイデアの発掘→評価→事業化へと結ぶ。
イ ストーリー展開の提案
(1)手わざ認証制度・登録制度
・手わざ認証機関を平良市の公の機関としてきちんと立ち上げる。
・各市民団体や経済団体他の長の推薦により、認証する役割を担うメンバーを決め、「物をつくり出すわざ」「人を指導するわざ」の両面で評価し認証する。
・年1回、自薦他薦で数多くの推薦をいただき、これを認証していく。認証と登録は原則として連動させておく。
・登録者が年に1回程度は必ず、そのわざをもって地域に貢献できるような機会を設定するものとする。そのための場として、次の人材育成機関を提案する。
(2)人材育成機関「平良市ぷからす学校(仮称)」
・「平良市ぷからす学校(仮称)」を設立する。(ハードではない。ソフトな形態としての提案)
・市が行政内外の各部署で取り組んでいる手わざ学習・体験・後継者育成等、すべての人材育成プログラムをこの学校に統合する。
・各種の人材育成プログラムはそれぞれ専門コースとして生かされるものとし、学習プログラム内容等についての情報の一貫性をつくるとともに、新たに「職人コース」を位置づける。
・理事長は平良市長、校長以下は民間人を登用する(兼務をよしとする)。
・入学式、修了式を実施し、建学の意図を明確に伝えるとともに、職人コースへ多くの人材が進んでいけるようステップアップを図る。修了者名簿を整備し、整備した情報を活用して、地域社会に貢献する場面をつくり出すため、行政・民間が共同してこれにあたる(この重要な場面のひとつが、NPOの活動場面となるはずである)。
【事例紹介 −真壁町土蔵左官技術者養成講座(茨城県真壁町)−】
1 町の概要
茨城県真壁町は、県都水戸市から西南西に約45kmに位置し、つくば山の北部に広がる面積63.40km2、人口は約2万1千人の町である。古くから城下町として栄えてきており、町内には江戸末期以降の古い土蔵や白壁など歴史を忍ばせる古い建物が数多く残っていて、そのうち45棟が国の登録文化財として指定されている。主な産業は、石材業で、墓石や燈籠などの加工製品は全国に出荷され、生産額は日本一を誇っている。現在は、岩瀬町および大和村と法定合併協議会を設置、合併に向け検討を続けている。
2 検討の経緯
真壁町は、町に現存する土蔵の保存・修復を図るために、その職人を養成する「土蔵左官技術者養成講座(真壁土蔵左官学校)」を平成14年度から開講している。開講の経緯、目的、取り組み等について紹介する。
3 開講の経緯・目的
真壁町には、江戸末期から明治、大正にかけて建てられた土蔵や長屋門が多数存在し、江戸の雰囲気を醸し出している。町では、それら歴史的建造物郡をまちづくりに活かそうと取り組んでいたが、土蔵等は築造から百年余りを経過し漆喰が剥がれ落ちるものもあって早急な手当てが必要であった。しかし、手当てしようにも漆喰の剥がれを修繕できる技術を持った職人が地元にはいなかった。そこで町では、自分たちの文化を保存・継承していくのは自分たちの手でという考えのもと、他所から修繕のできる職人を呼んできて補修するのではなく、自分たちで職人を養成することを目的に、平成14年度、伝統文化の保存継承を図る文化庁の『ふるさと文化再興事業』の一環として「まかべふるさと創り」実行委員会を設置し、その事業として「土蔵左官技術者養成講座」を開講した。
4 取り組み
講座の講師には、その道では日本一と言われている方を新潟県から迎え入れるとともに、受講生を地元に限定せず広く全国から募集を募り、京都府、三重県から関東全域までの20代〜60代の男女約80名の参加を得た。講習終了時には文化財の修復が可能なレベルになることを目標に受講期間は2年間とし、初年度(全6回、延べ7日間)は基礎技術と知識を学び、次年度(全10回、延べ23日間)は実際の土蔵を教材とし手技能習得をはかった。平成15年9月末に最終講座が終了し、第1期生が卒業した。町では、卒業生たちの技術が土蔵の修復・保存に役立つことを期待すると同時に、技術保存と職人の育成を目指し、今後も本事業の継続を検討中である。
図3-5 左官教室のカリキュラム
年度 |
平成14年度 |
平成15年度 |
目的 |
基礎技術と知識の習得 |
技能の習得 |
内容 |
8月 |
開校式・土搬入・水合わせ |
4月 |
樽巻き |
9月 |
竹割り・竹編み・縄掛け |
5月 |
縦縄入れ |
9月 |
小舞下地完成作業 |
6月 |
横縄入れ |
10月 |
荒土塗り作業 |
6月 |
中塗り |
10月 |
中塗り作業 |
7月 |
中塗り |
11月 |
上塗り作業 |
7月 |
漆喰練り |
|
− |
8月 |
上塗り |
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− |
8月 |
上塗り |
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− |
9月 |
上塗り(漆喰磨き仕上げ) |
|
− |
9月 |
上塗り |
|
(3)ぷからすストーリー3:手わざが活きる空間づくり
ア ステップアップストーリー
・観光者の体験交流機能・手わざ活動の担い手づくり機能・手わざを集大成した魅力空間機能(展示博物館機能)・情報交流機能等を集約した拠点づくりをめざすプラン(Plan)→ドゥ(Do)→シー(See)→アクション(Action)。
・宮古全体の風景・風情を保全し創造する市民活動のステップアップストーリーを描く。
イ ストーリー展開の提案
(1)拠点づくりにむけたビジョン
・将来の展望として、「平良綾道(ピサラアヤンツ)」(P35)のルート近くに、「ぷからすプラザ」を、また、「健康ふれあいランド公園に「ぷからす村」を提案したい。
・「ぷからすプラザ」は「ぷからす村」からのアンテナショップ(ショーウィンドウ機能)として、宮古の手わざにすぐれて特化した総合発信拠点をめざす。伝統的な民家の景観を再生し、ここでは、いつでも手わざ情報を総合的に入手でき、手わざ商品やサービスの注文予約ができる。一部には楽しめるコーナーをつくる。当初は手わざ体験観光の試験的展開の場としてスタートさせる。
・「ぷからす村」は手わざ体験交流・手わざ人育成・展示博物館機能を集合させた21世紀の村づくり(伝統的な景観の再生)を行う。NPOがその主体となることをめざす。オーナー制度(建設資金・運営資金の調達)や体験参加(石積み)による村づくりなど、知恵に富んだ建設事業・運営事業を行う。
(2)宮古全体の風景・風土を保全し創造するためのルールづくり
・個性ある地域景観の保全や創造は、世界に共通したテーマである。本市においても狩俣や久松などの伝統集落景観が失われつつあり、個性や魅力に乏しい市街地景観など課題は多い。今後、本市の自然景観や市街地・集落景観を「健康的なまち」の姿として誇れるよう、市民性を育てていくことに取り組む。
・わが国では、20年来景観づくりが行政課題のひとつとされてきた。現在、景観保全や創造にむけた新しい法制度が準備されている段階である。20年先、50年先の子や孫の時代に、個性と魅力あふれるまちの姿を実現していく、今が行動をおこすタイミングである。
・宮古の素材である石や貝・さんご、亜熱帯の木々や花々のつくる景観には個性がある。行政がリードして、市民の景観への関心を惹起する取り組みをおこし、その集大成としてのルールづくりにむけて、段階的に取り組む。
【事例紹介−「真鶴町まちづくり条例」と“美の基準”(神奈川県真鶴町)−】
1 町の概要
神奈川県真鶴町は、相模湾に突き出た小さな半島に位置し、小田原市と湯河原町の囲まれた面積は702ha、人口約9千人の町である。平成16年1月現在、隣町の湯河原町と法定合併協議会を設置し、両町合併、新市誕生に向け協議中である。
2 検討の経緯
真鶴町では、平成5年(1993年)6月にまちづくりの計画やまちづくりの方法、開発・建築の際のルール、まちづくりを進めるに当たっての議会の役割や住民参加の方法について定めた「真鶴町まちづくり条例」を成立させ、翌年1月から施行させている。町は、この条例の中で、“美の原則”という町自身が考える“美”についての基準を定め、この基準に基づいて、まちとして統一的な街並み・景観を形成・維持していこうとしている。
ここでは、その“美の原則”及び規則で定められている“美の基準”を中心とした「真鶴町まちづくり条例」について紹介する。
3 真鶴町まちづくり条例
この「美の原則」を中心とするまちづくり条例は、自然発生的に生まれたものではなく、バブル期の開発ラッシュから町をいかにして守ればいいのか、その規制手段を考えていく過程で、自分たちのまちをどうしていきたいのかという思いに行き当たり、作成されたもので、町長を中心に役場職員10名、専門家(法律家、建築家、都市プランナー)を加えたプロジェクトチームが素案を作成し、11回の住民協議会を経て、約2年の歳月をかけて作成されたものである。
条例は、第1条で“豊かで自然に恵まれた美しいまちづくりを行うため、建築行為の規制と誘導に関し基本的な事項を定めることにより、町民の健康で文化的な生活の維持及び向上を図ることを目的”としており、建築行為の規制と誘導をとおして町として美しい景観の維持・形成を図ることを目指している。
その建築手続きについては、近隣関係者等との協議、町との事前協議を経て合意形成・協定書の締結がなされなければ建築確認申請や開発許可申請が出来ないようにしている一方で、合意形成がなされない場合には、公聴会等で意見を表明できる機会が設けられ、住民、建築・開発業者双方にとって公平・公正に手続きが実施されるように定められている。(図表3-6、7)
4 美の原則・美の基準
町では、歴史・自然・生活環境等全ての環境の中で、時を越えて作られてきた“質”、特に後世に引き継ぐべき“質”を保存・維持していくべき“美”と捉え、それを8種類に分類((1)場所、(2)格付け、(3)尺度、(4)調和、(5)材料、(6)装飾と芸術、(7)コミュニティ、(8)眺め)し、“美の原則”として、条例第10条に掲げ、規則でその基準となる“美の基準”を69のキーワードとともに定めている。(図表3-8)
町では、この美の基準を体現するものとして、コミュニティセンター「コミュニティ真鶴」を2年の月日をかけて完成させている。この建物の設計にあたっては、美の基準の考え方に則った詳細な「美の基準仕様書」が作成され、それに基づいて地元の建材や植物が利用された。また、建築にあたっては、多くの地元の職人が携わるなど町全体が一体となって建設が進められた。現在では、憩いの場としてまた、町のシンボルとして町民に広く活用されている。
図表3-6 建築行為の手続き
図表3-7 住民参加の手続き
図表3-8 美の基準の総括表
|
美の基準I |
美の基準II |
美の基準III |
基準
(原則) |
手がかり |
基本的精神 |
つながり |
キーワード |
場所 |
(場所の尊重)
地勢
輪郭
地味
雰囲気 |
建築は場所を尊重し、風景を支配しないようにしなければならない。 |
私たちは
場所
を尊重することにより、その
歴史、文化、風土 を町や建築の各部に |
聖なる所 斜面地 豊かな植生 敷地の修復 眺める場所 生きている屋外 静かな背戸 海と触れる場所 |
格付け |
(格づけのすすめ)
歴史
文化
風土
領域 |
建築は私たちの場所の記憶を再現し、私たちの町を表現するものである。 |
格づけ
し、それらの各部の
|
海の仕事山の仕事 転換場所 見通し 建物の縁 大きな門口 壁の感触 母屋 柱の雰囲気 門・玄関 柱と窓の大きさ |
尺度 |
(尺度の考慮)
手のひら
人間
木
森
丘
海 |
すべての物の基準は人間である。建築はまず、人間の大きさと調和した比率をもち、次に周囲の建物を尊重しなければならない。 |
尺度
のつながりを持って
青い海、輝く森と言った自然、
美しい建物の部分、
の共演による |
斜面に沿う形 部財の接点 見つけの高さ 終わりの所 窓の組み子 跡地とのつながり 段階的な外部の大きさ 重なる細部 |
調和 |
(調和していること)
自然
生態
建物各部
建物どうし |
建築は青い海と輝く緑の自然に調和し、かつ町全体と調和しなければならない。 |
調和
の創造を図る。
それらは
真鶴町も大地、生活が生み出す
|
舞い降りる屋根 日の恵 木々の印象 覆う緑 守りの屋根 北側 地場植物 大きなバルコニー 実のなる木 ふさわしい色 少し見える庭 青空 階段 格子棚の植物 ほどよい駐車場 歩行路の生態 |
材料 |
(材料の選択)
地場産
自然
非工業生産品 |
建築は町の材料を活かして作らなければならない。 |
材料
に育まれ |
自然な材料 地の生む材料 活きている材料 |
装飾と芸術 |
(豊かな細部)
真鶴独自の装飾芸術 |
建築には装飾が必要であり、私たちは町に独自な装飾を作り出す。芸術は人の心を豊かにする。建築は芸術と一体化しなければならない。 |
装飾と芸術
という、人々に深い慈愛や楽しみ
をもたらす真鶴町独自の
質に支えられ、
町共通の誇りとして |
装飾 森、海、大地、生活の印象 軒先、軒裏 屋根飾り ほぼ中心の焦点 歩く目標 |
コミュニティ |
(コミュニティの保全)
生活共域
生活環境
生涯学習 |
建築は人々のコミュニティを守り育てるためにある。人々は建築に参加するべきであり、コミュニティを守り育てる権利と義務を有する。 |
コミュニティ
を守り育てるための権利、義務、
自由を生きづかせる。
これらの全体は真鶴町の人々
町並、自然の |
世帯の混合 ふだんの緑 人の気配 店先学校 街路を見下ろすテラス さわれる花 お年寄り 外廊 小さな人だまり 子どもの家 街路に向かう窓 |
眺め |
(眺めの創造)
真鶴町の眺め
人々が生きづく眺め |
建築は人々の眺めの中にあり、美しい眺めを育てるためにあらゆる努力をしなければならない。 |
美しい眺め
に抱擁されるであろう。 |
まつり 夜光虫 できごと 眺め 賑わい いぶき 懐かしい町並 |
|
資料:真鶴町「美の基準・デザイン」より
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