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(2)港湾の観光レクリエーション普及・利用促進の地域的展開方策
 (1)を受けて、以下、港湾の観光レクリエーション普及・利用促進の地域的展開方策を次のように展開する。
 
 
<展開方策>
 
A 港湾・周辺地域(陸地・海域)の観光レクリエーション魅力の発掘・再発見
 
・ 観光レクリエーション利用の観点から港湾をみると、「港湾それ自体の魅力化」と「周辺地域との連携」で活用することが基本となる。
・ アンケート調査結果によると、「港湾での観光魅力」についての認識は「固有の自然」と「固有の歴史」をはじめ「マリンスポーツ等への適地性」などが挙げられているが、「資源が活かしきれていない」という認識が強い。ただ、ここでいう「固有の資源」、「固有の文化」や「マリンスポーツ等への適地性」が、成熟度を増す新たな観光レクリエーションニーズ、住民の憩いの場の充実や個性を発信するための地域ニーズと照合して答えられたものかどうかは定かではない。
・ アンケート調査結果全体の基調からすると、市町村の回答は「施設観光」的ニュアンスが強く、港湾が育んだ歴史や文化を含めた「地域観光」的な視点は強くない感じを受ける。関連して、観光関連産業を見る視点も、割りに規模の大きな従来型の観光事業に傾いている感じで、半島や離島など県内でもローカルな町村に立地する小規模ビジネス、コミュニティビジネスのような特化した客層に対応する地域資源活用型のマリンスポーツや体験学習旅行などのニュアンスがそれほど出ていない感じである。
・ 以上の現状把握を踏まえ、みなとを活かした観光まちづくりの姿勢に沿って港湾・関連地域における観光レクリエーション魅力の発掘・再発見を進めることが重要である。
○港湾・関連地域の観光レクリエーション資源再発見調査の実施。
・ 各種マリンレジャーの適地検索(ヨット、ボート、シーカヤック、スキューバダイビング等)や海洋性観光レクリエーション適地調査(潮流等海洋現象、海岸洞窟等海岸奇勝、朝日夕日の展望適地、臨海動植物や珊瑚・熱帯魚・イルカ・鯨・海藻等海中棲息動植物等の体験・観察適地)。
・ 港湾の歴史文化(歴史的みなと・船・蔵等の遺構)や交流の縁資源(大陸を含む交易等)の発掘。
※推進方式として、「外の眼」(観光レクリエーション利用者、事業者等)と「内の眼」(地域住民)からの複眼的な地域資源再発見ワークショップ(住民、事業者、ユーザー、専門家等による実査と住民手作りによる情報化等)の実施。その一環として、住民参加による資源マップや電子情報化を進めてHPや観光案内に使うことをゴールとする作業方式の導入の検討も一案である。
・ 港湾関連産業(交通・流通・製造業、水産業等)の観光魅力の発掘と観光レクリエーションとの連携方式の開発。
○塩水浴(タラソテラピー)、温暖な気象に海洋性レクリエーション活動を加味した複合リゾート適性(滞在保養適性)の検索。
○港湾の海陸交通機関の観光レクリエーション的魅力づくりの検討(乗り物の快適性の向上や話題性ある演出、交通結節点への観光PR機能の付加等)。など
 
B 港湾のイベント・コンベンションへの広域観光・域外交流の視点の導入
 
・ アンケート調査結果によると、港湾の観光レクリエーション利用では釣りとイベントが最も盛んであるが、イベントには地域内完結のものが多く、広域交流や広域観光レクリエーションの視点が弱い。
・ みなとを活かした観光まちづくりを促進する観点からは、港湾のもつ多面的な魅力や縁を掘り起こし、域外との地域連携による観光・交流を促進して地域活性化を図ることが重要である。
○単一団体ではなく、地域関係者の結集によるイベントの開催。
○港湾・関連地域の資源発掘とからめた既存イベントヘの広域的魅力の投入。
○広域的な訴求力のある新規のイベント・コンベンション(会議、スポーツ&文化イベント、見本市・物産市等)の企画、そのためのイベント専門会社等との連携や共同企画の推進。
○港湾関連公共用地等の駐車場への活用やトイレ等の充実。
○港湾でのイベント・コンベンションの開催に関する規制や手続きなどの理解を深める案内窓口機能の充実と港湾利用情報の提供。
○目的外使用を含めた港湾管理・手続きの簡素化等の検討。など
 
C 港湾の地理的立地・機能等を活かした広域連携・交流ネットワークの強化
 
・ 長崎県内の港湾・関連地域では、観光関連事業者(マリーナ、観光船等)を含めて、個々の領域や地域だけで事業を展開している傾向がみられる。それでは需要規模が大きく事業者の参入が多い中核都市周辺の港湾などは利用が進むが、半島や離島などの港湾は発展性が期待できにくい。
・ 観光レクリエーション需要の誘発及び拡大吸収を図るには、(1)中核都市や広域観光地にある観光・交流の拠点港湾(例えば、長崎港、佐世保港周辺)と周辺の港湾が個性を活かした機能連携を促進、(2)半島や離島などの人口や経済活動が小規模な地域に立地する港湾も、立地制約の中で共同宣伝・PR等情報連携などを工夫し、港湾の観光レクリエーション機能の普及や利用を促進する事が重要である。
○観光レクリエーション需要の地域分布や流動ルートを背景に、港湾・関連地域などの観光レクリエーション機能特性(観光、学習、マリンスポーツ、食、滞在等)と港湾の地域分布をミックスした視点から関連主体の広域連携づくりの促進。
○上記の組織づくり・機会づくりを土台にみなと及び周辺地域を組み入れた広域観光レクリエーションのルートイベント、みなと間リレーイベントやツーリングなどの商品化を検討(例えば、長崎港周辺、佐世保港周辺等での観光レクリエーション・クルーズネットワークの商品化、日帰りから数泊までの海の滞在型・拠点型マリンスポーツ等体験プログラムの商品化、海の体験学習旅行等)。など
 
D 港湾魅力(Aの発掘・再発見資源等)の情報化と宣伝・PRの促進
 
・ 県内市町村や事業者などのHPをみると、港湾や関連地域の観光レクリエーション情報の提供はこれからの面が強く、空間的にも個々の港湾・関連地域に限定されている面が強い。また、県外からみると、港湾・関連地域へのアクセス情報や広域的なリンクなどが今ひとつ不足している面があり、例えば長崎−ハウステンボス−九十九島・平戸などの著名な広域観光ルート以外のローカルな港湾・関連地域の旅行計画がたてにくい面がある。観光情報提供の一般的問題ではあるが、地域別の動態情報(釣り、海象、地域イベント等)の提供やリンクにも充実の余地がある。
・ 特に、独自の港湾魅力の情報化はあまりされていないので、固有の港湾がらみの魅力を発掘して情報化するとともに、広域連携による情報提供を強化することがきわめて重要である。
○「一港湾一魅力」の発掘と港湾固有のイメージづくりの促進
※1 「一港湾一魅力」の例:古来のみなとを含めると、最西端のみなと、珊瑚のみなと、シーカヤックのみなと、イルカウオッチングのみなと、遣唐使のみなと、ルイスフロイス上陸のみなと、朝鮮通信使のみなと、松浦水軍のみなと、鄭成功のみなと等。
※2 「港湾固有のイメージづくりの例:愛称等ネーミング、CIマーク、みなと祭りの固有魅力や話題性あるネーミング、CIイベント等)の促進
○港湾のターミナル機能と複合した観光案内機能の付設・充実と案内情報の相互提供をはじめ周辺観光案内所等との総合的情報ネットワーク化やHPリンク等の強化。
○港湾の観光レクリエーション機能の普及・利用促進のためのノウハウ、県内及び全国事例などを情報化した「ソフトウェア情報バンク」の設置
○港湾の個性的な「話題づくり」とマスコミのパブリシティ活用
○受入体制の整備を前提とした広範な魅力周知のためのマスコミ宣伝PRの強化
○著名な釣り名人やヨットマンなどを「(仮称)みなと観光大使」として任命するなど口コミによる宣伝PRの重視。など
 
E 港湾関連の観光レクリエーション活動と他分野との海域利用等の調整(航路、漁業等)
 
・ 港湾の観光レクリエーション機能の充実にとって基盤的な問題は海域等の利用調整である。これは港湾(海陸)自体の目的外使用から港湾を基地とする海域利用まで幅が広い。
・ 内容的に問題となるのは、他産業と観光レクリエーション利用との連携と調整、とりわけ海洋性観光レクリエーションと漁業との調整が重要である。
・ 港湾関連産業(流通・造船・漁業等)にとって観光レクリエーションは違う分野であるが、うまく仕組みをつくれば産業PRにつながりうる。しかし、現場見学などは、作業の支障になったり、ものによってはノウハウなどの流出の機会となる。また、見学や学習などに危険を伴うものもある。一方、観光レクリエーション客や事業者側からすると、港湾関連産業や構築物などとの接触は、港湾産業の学習や体験、漁食や海産物等特産品の買物などを含めて生きた産業資源や生産活動に出会う魅力を有するので新たな商品化につながる。このような観点から、可能な限り相互のニーズや活動環境を活かす仕組みづくりがポイントである。
○港湾の水域利用については港湾管理者等との調整を密にし、状況に応じて観光レクリエーション利用水域の設定等を検討
○港湾物流や造船等の工程、進水式等への見学参加など関係者との調整による見学体験・疑似体験の仕組みづくり(例えばPR施設や映像での学習、見学路整備、案内人つき現場視察、疑似体験等)
○漁業と海洋性観光レクリエーションの調整組織の設置と協定締結の促進
※1 漁業権と抵触する海域では、公的な介在を背景に、海洋性観光レクリエーション事業者やエンドユーザと漁業関係者(漁業権者等)との「協議組織づくり」と「海域利用協定」の締結及び遵守が必要。
※2 前提は海の生産者・生活者でかつ慣行的な地先の管理・利用調整者でもある漁民の生活の理解と相互の信頼性の確立。その上での利害調整を含めた海の観光レクリエーション利用者と漁民との相互ニーズの補完等。
※3 連携をスムーズ化する留意点の一端として、ア 調整組織を立ち上げ、海域使用料ほか相互にメリットある事業連携や情報疎通、イ 漁業権をもつ漁協当事者がマリーナやスキューバダイビングの事業主体となる、ウ 漁協組合員がマリンスポーツの事業主体を構成して組合への一定額の収益環流を行う、エ 漁協の第3セクター等海洋性観光レクリエーション開発事業主体への資本参加など。
※4 「連携の下地づくり」として、海底清掃などでマリンスポーツ団体と漁協が連携し、漁業民宿を使った、例えば宿泊型の海底清掃イベントを企画。ダイバーはゴミや釣り仕掛けなどの除去で海底を清掃しながらダイビングを楽しむ、漁業者は海底の清掃ができ、漁業民宿の利用で収入も入る、といった相互メリットの享受等。
○その他不法係留や海域の環境保全等多面的な問題を調整する関係者参加の共同的な組織づくり(例えば、海業公社等)の促進など
 
F 海洋性観光レクリエーションを支える人材育成、安全管理等共同支援システムの充実
 
・ 長崎県の港湾では、一部を除いて、まだ海洋性観光レクリエーションの需要や事業への取り組み経験が浅いが、安全管理、環境保全への取り組みは幅広く行われている。
・ それに対してマリンレジャーなどの指導者等各種専門人材の本格的な育成や活動団体の支援体制づくりはこれからといってよいが、海洋性観光レクリエーションを普及させていく過程でより必要性が増大するとみられる。
○海の自然、歴史、航海技術などを体験的に学習できるB&G財団の海洋センターの利用促進、既存の資料館や博物館の海の科学・情報センターとしての基地化、関連施設間の情報ネットワークの強化及び利用促進の機会開発等
○マリンレジャーの専門人材の育成、海に親しむ文化を定着するための海事関係者や観光レクリエーション事業者などによる「(仮称)海とみなとの学校」立ち上げ、それを核とした体験学習や指導者研修などによる人材育成
○事業者、住民団体、「ユーザーの資源」の観点からの利用者参加の重視、その一環としての活動、グループなどへの港湾管理運営委託の検討(みなとの環境管理アダプションシステムの導入等)
○民間事業者、関連団体の主体的参加と地元行政のコーディネート機能を両輪とする海の安全、環境保全、防災訓練、利用調整等の共同連携・支援の組織づくりなど
 
G 港湾の観光レクリエーション利用マネージメント機能の確立
 
・ 現状では、港湾の観光レクリエーションの役割についての認識が弱く、前提的に観光レクリエーションが地域の総体と連携して成り立つといった理解もまだ定着していない。
・ そのため、他産業と観光、暮らしと(生活)と観光、といったこれまでの観光レクリエーション領域からみると別の分野と考えられていた領域との連携や結びつけが重要な課題となっている。しかし、現状では、業界、行政もまだ縦割りがつよく、他分野とのコネクションや連携の下地づくりをはじめ、連携の組織づくり、調整の仕組みづくりのノウハウや専門的な人材育成もこれからである。
○まず観光レクリエーション振興の在り方をはじめ、その総合的な性格についての基本認識を喚起するための港湾管理者、市町村、事業者など関係者の観光レクリエーション研修の強化
○観光行政サイドなどにおける行政の部門横断的な企画調整などの取り組みにおいて、みなとを活かした観光まちづくりの促進に関する港湾サイドからの基本方針や新たな取り組みなどについての情報提供の強化
○既存の官民連携による総合的な観光レクリエーション振興の組織的な取り組みにおける港湾を含めた企画マネージメント機能の強化及び企画・調整・プロデュースに関する専門人材の育成(総合的なポートセールスとの連携、広域交通機関との連携、港湾を活かした各種観光レクリエーション利用の企画と推進に伴う他分野との調整機能と観光プロデュサー的な専門人材の育成と導入)







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