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第II章 長崎県における港湾の観光レクリエーション機能と運営管理の実態
1 港湾・関連地域(市町村)の観光レクリエーション振興における港湾の位置づけ
 古来、海と共にある長崎県では、港は生活・産業の重要な媒体であり、多くの人々のライフラインの結節点であった。県内にある何百という港のうち、港湾法に基づく港湾は83港であり、これを有する市町村は全市町村の約7割にのぼる。
 ここでは、今回実施した「市町村アンケート」(回収票:市町村全体票39件、港湾個票53件)の結果を軸とする整理を行う。
 
(1)市町村における観光地づくりのテーマ
・ 「観光振興のテーマ」では、海や植生などの「自然」、国際交流を含む「歴史」を活かし、「やすらぎ」や「文化」、「交流」、「体験」の言葉を盛り込んだフレーズが目立つ。
・ 過半数の市町村が「海」に関わるフレーズをテーマに盛り込んでいる。「港湾」や「港」という言葉を挙げているケースは極めて少ないながら、港の利用を介して育まれた産業や歴史・文化を観光地づくりの柱にしていることが読みとれる。
 
■市町村における観光まちづくりのテーマ(【市町村全体票】問1(1)(1))
市町村名 記述内容
大村市 花と歴史の町 おおむら
福江市 椿の島づくり、食の島づくり、癒しの島づくり、歴史とロマンの島づくり
平戸市 「健康で活力に溢れ文化の薫りがする観光保養都市」大航海時代の城下町 歴史とロマンの島 平戸
松浦市 人と自然が生きる、住み続けたい活力の町
伊王島町 きれいな海と四季旬味、やすらぎ伊王島
高島町 潤いと人情のある和の町づくり
野母崎町 スコーレ観光・資源を活かした観光、体験型観光、滞在型観光
時津町 自然や歴史・文化遺産などの地域資源の活用基盤を整備すると共に、各産業間の連携、民間との連携、広域的な連携など多様な連携体制による観光・交流の推進に努める。
琴海町 琴とのハーモニー・自然、人、まち、歴史、豊かな大地とやさしい海風が育んだやすらぎと文化のまち、琴海町
大島町 四季折々の美しい花を見る事ができる島づくり
大瀬戸町 清流と紺碧の海の町おおせと
小長井町 のんびり交流のまち
西有家町 そうめんの町、みそ五郎の里
富江町 太陽に愛された、楽しさの楽園、富のある風景
田平町 里山の自然の中に潮風香る昆虫の里。
福島町 自然を利用した観光振興
鷹島町 元寇ロマンの島「鷹島」
鹿町町 「自然との共存」自然を生かした観光の推進
小佐々町 海光るまち こざさ
玉之浦町 人と自然がやさしい町づくり
三井楽町 「西のはて万葉の里・三井楽町」自然と歴史をいかしたまちづくり
岐宿町 豊かな大地と澄んだと美しい夕日の町
奈留町 「来る人にやすらぎを発つ人に幸せを」「暮らし、自然体験ツアー」
若松町 の香、人の和、いにしえロマン
新魚目町 椿の香り豊かなと歴史文化を育む自立する島
有川町 人々が働き、集い、憩い、遊ぶ「・ありかわ」
厳原町 豊かな自然と人情味あふれる日韓交流の町
美津島町 第1次産業と観光の融合を目指す町づくり、日韓交流拠点を核とした国境の新しい「街」づくりをめざす町
豊玉町 、山、自然を生かした体験型観光地づくり
上県町 自然美と歴史のふるさと
上対馬町 国境の町
峰町 自然と文化が調和する町
*平成16年2月末日現在の市町村区分による(以下同様)。**網掛け:「海」にまつわるフレーズ
 
(2)主な観光対象
・ 多くの市町村が、「海」にまつわる資源を挙げている。「水産資源」、「水産加工品」の多さが特に目立つ。
・ その中で、「水軍」、「日韓交流」、「教会」など固有性ある資源の存在が眼を引く。これらは、港湾を介して育まれた、長崎県ならではの歴史を物語るものとして注目される。
 
■主要な観光対象(「売り」とする観光対象)(【市町村全体票】問1(1)(2))
市町村名 記述内容
長崎市 体験学習、2006アクションプラン、長崎ブランド
諫早市 諌早公園眼鏡橋と高城回廊、白木峰高原、うなぎ・すっぽん料理
大村市 大村寿司、ゆでピーナツ、なまこ・いいだこ
福江市 教会、椿、自然体験
平戸市 松浦資料博物館、亀岡城、川内峠等、歴史と海山の自然(西海国立公園)、温泉、活魚、干し魚物、南蛮菓子、南蛮料理
松浦市 松浦市物産館(H17 完成予定)、あじ・さば、松浦おさかな祭り、松浦水軍まつり
伊王島町 公共の宿「長崎温泉やすらぎ伊王島」
高島町 海水浴場、飛島磯釣り公園、ふれあい多目的運動公園、海水温浴施設(いやしの湯)、風力発電、陸上養殖場
野母崎町 海の健康村、県立亜熱帯植物園、田の子総合運動公園、水仙、野母んあじ、煮干、かまぼこ
時津町 鯖くさらかし岩、巨峰、みかん、時津まんじゅう、時津なまこ
琴海町 ゴルフ場、長浦すいか
大島町 大島大橋、大島トマト、焼酎
大瀬戸町 昔浴博物館、尻久砂里海浜公園、魚、アラ(クエ)
小長井町 山茶花高原ピクニックパーク、ハーブ園、カキ焼き
西有家町 島原手延そうめん、有明海産「蛸」、みそ五郎海鮮市場
有家町 島原手延そうめん、有明海産「ナシフグ」
大島村 漁火館、大賀キャンプ場、鯛茶漬、ウニの塩辛
富江町 さんさん富江キャンプ村、富江温泉センター、たっしゃかランド、サンゴ、海産物、かん
田平町 カトリック田平教会、たびら昆虫自然園、道の駅「昆虫の里たびら」
福島町 車エビ、温州みかん、イロハ島、棚田
鷹島町 鷹島モンゴル村、モンゴル温泉、日本一の養殖トラフグ
鹿町町 長串山公園、鹿町温泉やすらぎ館、ふぐ
小佐々町 日本本土最西端、西海国立公園、煮干いりこ生産量日本一
玉之浦町 大瀬崎灯台、荒川温泉、頓泊海水浴場(サンドレクリエーション)
三井楽町 高浜海水浴場、遣唐使ふるさと館
岐宿町 魚津ヶ崎公園、コスモス、風力発電所
奈留町 千畳敷、前島のトンボロ、江上教会、宮の森総合公園(キャンプ場)、水産加工品、活魚
若松町 若松瀬戸、若松ディアパーク、竹炭製品
新魚目町 椿油、番獄温泉、水産物、五島うどん
有川町 五島うどん、捕鯨文化・歴史、教会とキリシタンの歴史
厳原町 豊かな自然、大陸との交流の歴史・文化遺産の宝庫、日韓交流
美津島町 浅茅湾(壱岐・対馬国定公園)、真珠の湯温泉、湯多里ランドつしま、対州ソバ
豊玉町 長崎県水産加工展、イカコロッケ
上県町 そば道場(あがたの里)、対馬野生生物保護センター、風力発電所
上対馬町 釜山市が展望できる「韓国展望所」、天然記念物の花木「ヒトツバタゴ」、紅玉、銀太、てっぺんアジ
峰町 峰町ファミリーパーク、いりやき、するめ、しいたけ、アスパラ
網掛け:「海」にまつわるフレーズ
 
(3)観光レクリエーション振興における港湾の位置づけ
(1)観光レクリエーション振興における港湾の位置づけ
・ 地域の観光振興にとって、港湾の最も主要な位置づけは「玄関口・乗換基地」(54%)としての役割である。次いで「イベントの会場」(44%)としての位置づけも大きい。
・ 「海洋スポーツ・レクリエーションの基地」(23%)、「観光情報の提供の場」(21%)との回答もみられるが、同率で「観光レクリエーションとしての活用はない」(21%)との回答もみられる。
 
■観光レクリエーション振興における港湾の位置づけ(【市町村全体票】問1(2))
選択肢(複数回答)
01 観光交通の主要結節点(観光客の玄関口・乗換基地) 21 53.8
02 観光客向けの飲食・買い物の場 6 15.4
03 観光情報の提供の場(観光案内・宿泊斡旋等を含む) 8 20.5
04 観光イベントの会場になる場所 17 43.6
05 港湾自体が主要な観光地の一つ 6 15.4
06 海洋スポーツ・レクリエーションの基地 9 23.1
07 観光レクリエーションとしての活用はない 8 20.5
08 その他 2 5.1
無回答 1 2.6
集計対象票数(N=39)    
※「%」は、回収した票数(39港分)に対する比率。以下同様
 
(2)港湾の観光レクリエーション利用に対する市町村の評価
・ 「港湾の観光レクリエーション利用」を市町村がどう評価しているかについて、メリット感・デメリット感からみてみると、まず、メリットとして「観光産業の振興につながっている」(34%)を挙げる市町村が約3分の1みられる。次いで「地域のイメージアップにつながっている」(28%)、「住民のいこい環境に寄与している」(28%)、「海運の利用促進」・「港湾施設の有効利用」・「地域産業の活性化」につながっている(各26%)なども少なくなく、多岐にわたるメリット感が挙げられている。
 
■市町村からみた、港湾の観光レクリエーション利用のメリット(【港湾個票】問5(1))
選択肢 〜比率の高い順〜 (複数回答)
観光産業の振興につながっている 18 34.0
地域のイメージアップにつながっている 15 28.3
住民のいこい環境に寄与している 15 28.3
海運の利用促進につながっている 14 26.4
港湾施設の有効利用につながっている 14 26.4
地域産業の活性化につながっている 14 26.4
地域間の交流促進に寄与している 13 24.5
地域活動の場所や機会を提供している 12 22.6
青少年の教育・遊び環境を担っている 10 18.9
港湾のイメージアップにつながっている 8 15.1
住民の健康づくりに寄与している 6 11.3
港湾環境の美化につながっている 5 9.4
地元に雇用の機会を提供している 5 9.4
スポーツ振興につながっている 3 5.7
地域文化の醸成に貢献している 3 5.7
その他 2 3.8
特にない 11 20.8
無回答 5 9.4
集計対象票数(N=53)
 
・ 一方、デメリット感については、約4割の港湾が「特にない」と回答しているが、「港湾環境を汚している」(15%)、「違法駐車など周辺への迷惑がみられる」(13%)などの指摘もがみられる。
・ 総合すると、メリット感がデメリット感を大きく上回っており、港湾の観光レクリエーション利用に対して前向きな市町村が多いという状況を把握することができる。
 
■市町村からみた、港湾の観光レクリエーション利用のデメリット(【港湾個票】問5(2))
選択肢 〜比率の高い順〜 (複数回答)
港湾環境を汚している 8 15.1
違法駐車など周辺への迷惑がみられる 7 13.2
風紀や治安の問題につながっている 4 7.5
港湾管理面での負担を増幅させている 4 7.5
市町村財政を圧迫している 4 7.5
他の港湾利用の障害となっている 1 1.9
水難や海上事故が増えている 1 1.9
交通事故など陸上の事故が増えている 0 0.0
住民の快適ないこい活動を阻害している 0 0.0
その他 3 5.7
特にない 21 39.6
無回答 11 20.8
集計対象票数(N=53)







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