第3章 実証実験
1 実証実験の枠組み
(1)目的
本市では、そのHPにおいて地図情報提供サービス「とよなかわがまち」を運用しており、保健や福祉、防災といった28種類の行政情報を地図データに載せて提供している。まちづくり支援の分野においても「まちづくり協議会マップ」が運用されており、まちづくりの成果やイベント、保存建築物などの情報を紹介している。
本市では、この「とよなかわがまち」に、行政との協働のもとに各地域の住民が自分たちの地域を歩いて収集した情報を自らがインターネット上の地図に登録(入力)することにより作成するバリアフリーマップ等地域コミュニティマップを加えて、福祉や道路整備などの行政施策に活用するとともに住民自らがその情報を共有することで、まちづくり活動などの市民活動や個人の生活の中で幅広く活用してもらうことを目指している(図表3-1)。
本実験では、地域住民等まちづくりの活動団体が主体となってバリアフリーマップを作成していく過程において発生する問題点や課題を把握し、今後、こうした団体がバリアフリーマップ等地域コミュニティマップを作成するにあたってのポイントや行政の支援のあり方を検討することを目的としている。
図表3-1 将来の活用イメージ
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(2)実証実験全体の流れ
実証実験は以下の流れに沿って実施された。
実証実験の流れ
(3)対象地と実験協力団体
(1)対象地
今回の実験対象地である曽根地区は阪急宝塚線曽根駅の西側にあたり、曽根西町と原田元町からなっている(図表3-2)。地域内には原田小学校や原田保育所などの公共施設や医療機関が多数立地しており、商業地3割に対し、住宅地が7割となっている。
またこの地域は西側に府道大阪池田線が通っており、ここへ向かう通り抜け車両が地域の重要な課題となっている。
図表3-2 調査対象地域
(2)実験協力団体
今回の実験では、地域住民自身による情報の収集・入力作業が中心となるため、対象地である曽根地区の地域住民の協力が必要不可欠である。そのため、曽根地区住民の多くが主体的に関わりを持っているまちづくり協議会「そね21の会」と、紙ベースであるが既に地域マップを整備した実績をもつ「原田校区福祉委員会」に協力を依頼し、両団体の呼びかけにより両団体及び原田小学校PTA、原田校区公民分館、女性防火クラブ、日赤防犯の各地域組織が参加した原田校区小地域ネットワークに協力をいただいた。
ア まちづくり協議会 そね21 の会
i 団体概要
本調査協力団体であるまちづくり協議会「そね21の会」は、平成15年7月に豊中市まちづくり条例に基づき認められた市内で3番目のまちづくり協議会である。本実験対象地である阪急宝塚線曽根駅の西側(曽根西町、原田元町)を活動エリアとしており、協議会の認定を受ける以前からの活動課題である「駅前・商業」、「道路交通」、「住環境」、「地域コミュニティ」を中心に、住民、商業者双方にとって望ましい安全で快適な魅力あふれるまちづくりを目指して活動している。
活動の歴史は古く、平成7年に市で開催された「まちづくり実践大学」を受講した商店街の有志による呼びかけにより結成された「曽根西まちづくりの会」が基になっており、約2年後の平成9年11月に豊中市まちづくり条例に基づく「まちづくり研究会」となり、協議会認定までの5年間研究会活動、コミュニティ活動、広報活動を続けてきた(図表3-3)。
図表3-3 活動経緯
平成7年 |
11月 |
「(仮称)曽根西まちづくりの会・研究会」設立 |
平成8年 |
1月 |
正式名称を「そね21の会」に決定 |
平成9年 |
11月 |
「まちづくり研究会そね21の会」設立 |
平成10年 |
1月 |
条例上の「まちづくり研究会」として認定 |
平成11年 |
6月 |
活動成果「ほほえみ坂のあるまち・そね」発行 |
平成12年 |
3月 |
まちの課題をテーマに井戸端会議がスタート |
9月 |
第1回通過交通調査 |
平成13年 |
9月 |
第2回通過交通調査 |
平成14年 |
6月 |
協議会設立を呼びかけるパンフレットを発行 |
9月 |
第3回通過交通調査 |
まちづくり協議会設立準備部会結成 |
平成15年 |
1月 |
商店街通りの愛称を「そね坂通り」に決定 |
まちづくりシンポジウム開催 |
3月 |
そね坂通りシャッターペインティング実施 |
6月 |
「まちづくり協議会 そね21の会」設立総会 |
7月 |
条例上の「まちづくり協議会」として認定 |
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組織の構成としては、構成員が平成15年7月現在で330名おり、年一回の総会を最高議決機関としてその下に運営委員会、企画調整会議、そして各地域課題ごとに8つの部会を設けて(図表3-4)、住民全てが住み良い住環境づくりに向けて活動している。
特に交通関係の取り組みには積極的で、平成15年(2003年)度は歩行者・自転車優先の道路環境整備を目指す国土交通省の「くらしのみちゾーン」の実施地区に応募、全国42地区の1つとして指定された(図表3-5)。現在、国土交通省の支援制度を利用して様々な角度から道路の安全を検討している。そのほかにも小中学生による商店シャッターのペインティングによって楽しい商店街を創出しようという活動が本市の都市デザイン賞を受賞するなどユニークなまちづくり活動が行われている。
図表3-4 まちづくり協議会「そね21」の会組織図
図表3-5
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国土交通省 「くらしのみちゾーン事業」
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ii 選定理由
調査協力団体が活動する阪急宝塚線曽根駅西側地域は、小学校の通学路があり、大半が狭い生活道路となっていて、以前から近くを通る幹線(府道大阪池田線)に出る車の抜け道として利用されることが多く、平成12年から毎年通り抜け車両を調査するなど地域の重要な課題となっていた(図表3-6)。また駅周辺には病院や老人福祉センターなどが位置していることから、体の不自由な方がこの地域を利用することもありバリアフリー対策が必要かつ急務のことであった。
こうしたことから、長年にわたる自主的な地域活動の実績があり、活動に取り組む素地があるまちづくり協議会「そね21の会」に実験への協力を依頼したものである。
イ 原田校区福祉委員会
i 団体概要
校区福祉委員会とは、(社福)豊中市社会福祉協議会がより地域に密着した住民本位の福祉を実践するために概ね小学校区単位に結成された民間の自主的団体で、全41校区に38の福祉委員会がある。その中で、原田校区福祉委員会は本実証実験対象地を含む原田小学校区を活動エリアとしてふれあいサロン事業や子育てサロン事業、ミニデイサービスなど地域に密着した福祉活動を展開している。
ii 選定理由
日々の生活の中で地域に密着した福祉活動を行っており地域情報に精通している。また平成12年度には、原田校区小地域ネットワークを構成する原田小学校(5年生)やPTA、当時はまだ研究会であった「そね21の会」、公民分館、女性防火クラブ、日赤防犯の協力を得て防災・通学路・医療機関・公共施設の情報を盛り込んだ「ふれあいマップ」(図表3-6)を作成、発行している。
こうした実績が今回の調査と多分に重なりあうことから、原田校区福祉委員会に本実験への協力を依頼したものである。
図表3-6 原田校区の「ふれあいマップ」の一部
防災・通学路 (2001.3.3作成)
原田校区福祉委員会 原田校区小地域ネットワーク 平成12年度原田小学校5年生
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