1. 救命艇
1.1 耐火救命艇の構成
FRP製耐火救命艇は国際条約に基づき、設計・建造・試験を行い、救命艇の要件の外、救助艇の要件も満足するものもある。
本艇は丸型の船型の艇体に操縦塔を有する固定覆いを装備し、艇内は乗員の居住に十分な広さの座席を設け、艇の推進機関、散水ポンプ、空気供給装置並びに関連機器を所定の位置に設けている。艇中央部内舷側に出入り口ハッチと艇首尾部に各々の離脱フック用のハッチを設け、艇尾部の甲板はレスキューデッキとし、艇首尾部には十分な強さの離脱フック(一斉離脱装置)を設ける外、規則で要求される備品並びに、操船に必要な艤装品を適正な位置に配置装備した構成としている。
FRP製耐火救命艇について概要を述べると以下のような構造要件を備えている。
全閉囲型救命艇として、
・艇体及びキャノピーは難燃性材料
・積み付け位置からの降下、離脱作業が艇内作業により可能
・乗艇者を外気から保護するための覆い
更に、海面火災から乗艇者を防護するための具体的な措置として、
・救命艇を冷却する散水装置
・乗艇者を火災、高温及び煙から保護するため、艇内圧を外気圧より高く維持する装置
・乗艇者及び機関駆動に必要な吸気対策を考慮する
一般的にみて、タンカーに搭載される救命艇は、火災海面において人命の安全を維持するためには、通常の救命艇よりも過酷な要件を具備することが要求されている。したがって、通常の救命艇に必要となる性能のほかに、
・乗艇、降下及び船側離脱の一連の作業を通じて、人体を火災から安全に保護しつつ、迅速性及び確実性が期待できること
・乗艇者の安全と保護のために、艇内温度の上昇及び有毒ガスの艇内への侵入や酸素の欠乏などを防止し、予想される火災海面を通過中に、艇体の火災暴露に対して人命の安全が図れるものであること
等のための具体的な性能が必要とされている。
耐火救命艇の全体配置の1例を次に示す。
(拡大画面:95KB)
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(2)一斉離脱装置略図
各部名称
(1)テレフレックス ケーブル
(2)離脱フック
(3)離脱ハンドル
(4)運転席操作盤
(5)水圧センサー
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離脱フックユニット詳細

保守対象 |
点検 |
点検要領 |
保守計画 |
備考 |
週毎 |
月毎 |
年次 |
艇体外面 |
外観 |
変形等異常のないことを確認
再帰反射材の剥がれ等の異常のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
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キャノピー外面 |
外観 |
変形等異常のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
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救命索 |
外観 |
異常のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
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天幕構造 |
外観 |
天幕の損傷等異常のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
部分閉囲型救命艇の場合に限る。 |
艇内構造物 |
FRP部 |
外観 |
変形等異常のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
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木部 |
外観 |
割れ、腐食のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
金属部 |
外観 |
腐食のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
離脱装置 |
外観 |
リセット状態の確認
可動部にゴミ、異物等の付着のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
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過度の遊びが無いかどうか確認 |
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○ |
作動 |
作動が良好であることを確認 リセット状態の確認 |
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○ |
5年毎に開放点検及び1.1倍荷重での作動確認 |
水圧インターロックの作動確認
コントロール及び離脱ケーブルの作動確認 |
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○ |
ペインタ離脱装置 |
外観 |
リセット状態の確認
可動部にゴミ、異物等の付着のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
スケーター離脱装置も同様に行う。 |
作動 |
作動が良好であることを確認
リセット状態の確認 |
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○ |
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全てのハッチ |
外観・作動 |
開閉の容易なことを確認
パッキンの状態確認 |
○ |
○ |
○ |
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採光装置 |
外観 |
ガラスの割れのないこと
ガラスの清拭 |
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○ |
○ |
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操舵装置 |
外観 |
舵板、舵柄、応急舵柄に異常のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
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作動 |
作動が良好であることを確認
応急舵柄の接続の確認 |
○ |
○ |
○ |
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船尾管 |
外観 |
シール(水漏れ)状態の確認 |
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○ |
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プロペラ及び
プロペラガード |
外観 |
損傷等異状のないことを確認 |
○ |
○ |
○ |
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自動呼吸弁 |
作動 |
作動することの確認 |
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○ |
○ |
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散水装置 |
散水ポンプ |
作動 |
作動確認 |
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○ |
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クラッチ
V・ベルト |
外観 |
ベルトの張り具合が良好であることを確認
ベルトに異常のないことを確認 |
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○ |
○ |
作動 |
嵌脱確認 |
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○ |
○ |
散水管 |
外観 |
腐食等異状のないことを確認 |
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○ |
○ |
散水ノズル |
外観 |
塩分付着物、目詰まり除去 |
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○ |
○ |
散水試験後、清水による洗浄を行うこと |
作動 |
散水が正常であることを確認 |
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○ |
空気供給装置 |
高圧配管 |
外観 |
異常の無いことを確認 |
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○ |
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圧力調整器 |
外観 |
異常の無いことを確認 |
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○ |
作動 |
良好に作動することを確認 |
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○ |
高圧空気容器 |
外観 |
発錆のないことを確認 |
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○ |
圧力確認 |
容器圧力の確認 |
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○ |
水圧試験 |
所定の圧力に耐えられることを確認 |
船籍国政府の要件に従って定期的に水圧試験 |
5年毎に水圧試験 |
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表中○印は保守点検の実施を示す
保守対象 |
点検 |
点検要領 |
保守計画 |
備考 |
週毎 |
月毎 |
年次 |
機関全般 |
外観 |
ボルト・ナットのゆるみのないことを確認 |
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○ |
|
現状が良好であることを確認 |
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○ |
○ |
作動 |
始動試験及び運転
スロットルレバーの作動
クラッチの嵌合 |
○ |
○ |
○ |
|
潤滑油 |
エンジン潤滑油 |
外観 |
潤滑油の油量を確認 |
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○ |
○ |
該当する場合はクラッチ潤滑油も点検 |
性状 |
指で粘度を確認 |
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○ |
○ |
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燃料 |
燃料タンク |
外観 |
取付状況に異常のないことを確認 燃料が規定量あることを確認 |
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○ |
○ |
|
燃料油配管 |
外観 |
接手等に油漏れがないことを確認 |
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○ |
○ |
冷却水 |
清水クーラー |
外観 |
清水が規定量あることを確認 |
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○ |
○ |
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冷却水配管 |
外観 |
水漏れ等の異常のないことを確認 |
|
○ |
○ |
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清水ポンプ |
外観 |
異常のないことを確認 |
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○ |
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作動 |
良好に作動していることを確認 |
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○ |
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海水ポンプ |
外観 |
異常のないことを確認 |
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|
○ |
|
作動 |
良好に作動していることを確認 |
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|
○ |
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計器盤 |
キースイッチ |
作動 |
良好に作動することを確認 |
○ |
○ |
○ |
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グローランプ |
作動 |
予熱時点灯することを確認 |
○ |
○ |
○ |
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回転計 |
作動 |
指針は適切に動いていることを確認 |
○ |
○ |
○ |
|
油圧警報ランプ
チャージランプ |
作動 |
点灯、消灯が正常であることを確認 |
○ |
○ |
○ |
|
ストップワイヤ |
作動 |
機関が停止することを確認 |
○ |
○ |
○ |
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工具及び予備品 |
外観 |
発錆等の異常はないか
数量は揃っているか |
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○ |
工具及び予備品表 |
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保守対象 |
点検 |
点検要領 |
保守計画 |
備考 |
週毎 |
月毎 |
年次 |
蓄電池等 |
外観 |
接続電線の点検 |
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○ |
○ |
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測定 |
電圧計測 |
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○ |
○ |
電圧低下が認められた場合は所定電圧まで充電する |
室内灯 |
作動 |
正常に点灯することを確認 |
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○ |
○ |
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キャノピー灯 |
作動 |
正常に点灯することを確認 |
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○ |
○ |
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探照灯 |
外観 |
正常に点灯することを確認 |
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○ |
○ |
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電気配線 |
外観 |
電線に異常の無いことを確認 |
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○ |
○ |
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接続部 |
接続部に緩みや腐食のないことを確認 |
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○ |
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