〜学力低下が心配〜
(参加者) 私の2番目の子は小学2年生だが、3クラスある。1クラス目の先生は手話が上手なので勉強の進みが早い。2番目のクラスは口話なので、子どもたちもなかなか手話でのコミュニケーションが出来なく、進み方が遅いという状態。3番目のクラスはまあまあ何とか進めている状態。1組、2組、3組と比べるとだいぶ進み方が違う。私の娘は2組にいるのですが、教科書の内容を省いて進めているという現状で1組、3組はやったけど、2組はこのページはやっていないということがある。ですが、最後にはテストの時はなぜか、うちのクラスだけテストがないときがある。学力の面、が1番心配。これと似たような話はないか。
(静岡県) 私の上の子は2年生で、10人いる。3年生も1人、1年生も1人。なので、低学年は4クラスに分かれている。3年生と2年生が一緒のクラス、2年生だけのクラス、2年生と1年生のクラス、重複のクラスと4クラスに分かれている。3年生と2年生のクラスは勉強も活動も一緒にやる。国語と算数のときは別れる。3年生は1人だけということもあって、学力の遅れが心配されるので、一緒に勉強するときもある。活動も全部一緒。幼稚部までは能力に合わせてクラス分けをしているが、小学部からは、その子の持っている能力を十分に発揮して欲しいので、学年ごとのクラス分けではなく、いろんな子が一緒になっている。それで、学力にも差がなくなってきている。
(山梨県) 小学5年生で8人います。1人は重複です。その子は学力的にはちょっと遅れている状況です。残りの7人は、国語のときに3クラスに分かれ。算数も同じく3クラスに分かれます。ですが、進め方は同じ。つまり、授業の内容が難しいとき、わかる子は進むし、わからない子はわかるように説明するなどして教えている。勉強が遅れたときには、放課後の補習とか、復習するとか、プリントの宿題を出すとか、いろんな方法でやっている。
(神奈川県) 小学部のほうで今、重複の子もろうの子と一緒に授業を受けている。そうしたら、健聴者の親やろうの親から、重複の子達と一緒に勉強するのは不満だということで要求が出された。学校の先生たちは、平等にやった方が良いと言うが、どうか。
(宮城県) 私の息子は高校1年で重複クラス。息子は幼稚部のときから3人重複がいたので、いつもクラスを別にしてもらっている。それで、みんなと一緒に出来ることは一緒に。出来ないこともある。それはやはり、重複の子どもにとっても一緒にいたら苦痛なので、そういう場面では離してもらったほうが重複の子どものためにもなると思う。小学2年生は4人いて、重複の女の子が入っている。男の子2人、女の子2人で、女の子2人のうちの1人が重複。女の子と男の子に良く出来る子が2人いる。やはり、算数と国語はクラスを別にしてどんどん進めている。1人は、情緒的にちょっと落ち着きがないために、時々重複の子と一緒に勉強している。重複の親にとっても、ちょっと一緒じゃない方が良いのではないかな、と思うし、男の子のお母さんも、重複の子と一緒なの?という場面もある。ただ、ケンカをしながら勉強することもあるので、まるっきり別というのも重複の子どもにとって刺激が足りないので、一緒にしてほしいときもある。
〜特別支援教育〜
(助言者) 「特別支援学校」について課題にしたいと思う。学校便り等で特別支援学校の説明があったか。
(静岡県) ろう教育の明日を考える会の会報で知った。先生から「特別支援学校に変わります」「名前だけで内容変わらない」「相談室は、ろうの子だけではなく、盲ですとか、いろいろな障害の子どもが相談する場になると言うことで、特別支援学校になるんだ」といわれた。ろう学校の親たちで話し合ったのだが、特別支援学校に変わる場合、子どもたちが大きくなって会社に入るときに履歴書を書くときに、特別支援学校卒業と書いて落されないかということ。ろう学校なら、はっきりわかるが、特別支援学校では内容もわからないから不安になると思う。
(千葉県) 先生たちの話としても「あまり変わらない」とか「名前が変わるだけ」ということで、十分な情報がない。PTA総会のときもこれからどうなるのか、実情と比較してのお話があった。それが4月にあったきりで、今進めている状況の説明などまったくない。親の立場としては、途中経過でも良いから何か教えてもらいたいと思っている。そのような中で、特別支援学校が始まって、盲とか、いろんな子どもが入ってきたらどうなるのか。先生の数は何人になるのかなど、わからないことが多数ある。ほかの学校もそういう点で、ろう学校にいろんな障害の子どもをどんどん受け入れていくのか、また難聴の場合にもほかの学校と比べて立場的に違うと思う。とにかく情報がほしい。先生たちも何もわからない、何も考えていない親もいる。国が決めた方針をそのまま受け入れればよいのではないかと考えている親たちも多いようである。
(司会) 特別支援学校という言葉を聞いた事のある人?ほとんどですね。内容は良くわからないという人?三分の二位。助言者に説明していただきたい。
(助言者) ろうの子どもの数は減っているわりに重複の子が増えている状況。また一般の小・中学校では、LD、ADHDという子どもが、大体6%という形で増えている。LDとかADHDの子どもに対応する先生が求められている。インクルージョンは1994年、スペインでサマランカ宣言が出されたが、身体的・知的・環境的・社会的・言語的な問題には関係なく、普通の学校で子供たちを受け入れるのをインクルージョンという。その宣言の影響で障害別の学校は今の時代ではなじめない。東京や大阪のような大都会は統廃合されることはないと思うが、子どもの少ない地方の学校は特に影響がある。盲学校、養護学校、ろう学校が1つの校舎に入るというような形も予想される。障害児を持つ親御さんは、特別支援学校(仮称)が家の近くにあることを望む。しかし、ろう児同士のコミュニケーションの場がなくなってしまう、つまり手話を使う場所がなくなってしまうことが懸念される。特別支援学校(仮称)は、そのようなさまざまな問題が出てくると予想されるが、きちんと問題意識を持ち、情報を集め、各県の教育委員会と協議していくことが求められる。
(司会) 今、話があったように特別支援学校にはプラスの面とマイナスの面といろいろあると思う。疑問を持ち、情報を集め、学習を進めてほしい。
最近のインテグレーションされた子どもの様子について、わかっている範囲で情報があれば教えてほしい。
〜インテグレーション〜
(福岡県) 近所のろう者の家には娘さんが2人いる。上の子はろう学校へ、下の子は普通学校へそれぞれ自分たちの希望で入った。しかし下の子は、インテグレーション先で中学校でいじめにあった。親の見栄で、ろう学校でがんばって健聴学校へ通わせていたが、ろう学校へ戻ることになった。姉妹仲良く最初からろう学校へ入れば良かったと、また、自分もろう学校に通っていたのだから無理に普通学校へ通わせなくても良かったと聞いている。
(岩手県) 岩手の問題は一関ろう学校で、幼稚部から高等部まで18人で小学部全部で2人しかいない。小学部にはインテグレーションしている人がたくさんいる。インテグレーションした子が、運動会とか文化祭とかの行事に来たときに様子を見ると、表情が暗い。今、中学3年の男子でインテグレーションした子がいるが、戻ってくる予定がある。で、聞いてみるとやはり、学校の勉強がわからないままになっている。親の考え方で普通校に入れたのだが、自分の意見をはっきり言えない子どもだった。私は娘が2人いる。上の子は幼稚部から中学部まではろう学校に通っていたが、娘の考えで、普通高校に通い、大学に入った。そんな経験を持っている私に、ほかの親御さんが何か聞いてくることもない。
特別支援学校が始まるということで、一関ろう学校は5年後にはなくなる予定だと言われた。養護学校とろう学校を統合して、一緒に勉強とか授業を進めていくという話になっている。ろう学校の子どもたちに「どうするの?」と聞くと、一関ろう学校から盛岡ろう学校や宮城ろう学校に行くと、ほかのろう学校に行くと言っている人たちが多いようである。
(司会) インテグレーションした子どもにうつ病が実際に増えているらしい。病気に対しての早期治療が必要だが、健聴のお母さんは見栄のために子どもを良く見ていない。皆さんもろう学校の問題だけではなく、インテグレーションした子どもは関係ない、ではなく、将来的にそのままで大丈夫なのか、心のケアの部分で責任が持てるかどうか、そういう面を見ていって欲しいと思う。その部分を含めてきちんとインテグレーションした子どもたちの状況を強く訴えて、働きかけていく必要があると思う。北海道は広いですので、もし札幌1つだけでそこに集まるとすれば、電車で通うとしたら、お金がかかるので地域に残して欲しいという願いを持っている。ろう学校についての問題を、いろいろと情報を持ちながら支援していくことが必要だと思う。
まだ、十分な話し合いをもっとしたいのだが、残念ながら時間の都合もあり、この課題については、今日話し合った内容、聞いたことなどを地域に持ち帰り話をして、来年また広島で出し合い、話をしたいと思う。最後のまとめとして、ろう教育について、全日本ろうあ連盟理事の立場からまとめをお願いしたい。
(助言者) 今日は家庭的で暖かい雰囲気でとても良かった。このように忌憚のない意見交換は大切なことである。
今、討論した中で思ったことは、ろうの子どもを人間としてどのように見て育てていくのか?キーワードだったと思う。教育には社会に寄与できる子どもを育てる役割があると思う。手話は人間として伝え合うための言葉であり、人間として成長を育むことができる。そして、特別支援学校(仮称)へ変わっていく中でも、ろう児童・生徒の集団性や手話のコミュニケーション手段を共有するコミュニティの確保を考えていかなければならない。
このろう両親分科会に参加して思うことは、年毎に実りのある内容になってきている。ろう両親交流会だけで留まるのは如何なものか?そろそろ分科会へ昇格してもよいのではないかと感じる。
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