第6分科会/討論
【レポート(1)】
「聾重複児の就学と教育環境に関する実態調査から見えてくるもの」
中野聡子(東京大学先端科学技術研究センター)
菊池(茨城) 地域の学校の中でインテグレーション、難聴学級を立ち上げて活動している。聾重複の中でも自閉や多動の子が増えつつあるが、普通学校の中で、特殊学級で関わったらよいのか、難聴学級で関わったらよいのかお伺いしたい。
中野(レポーター(1)) 普通学校に2人入っている例がある。1人は普通の学級、1人は特殊学級、難聴か普通の特殊かわからない。入学と共に学級ができたケースと、障害が軽い場合自閉などがあっても普通学級に入るケースがある。
【レポート(2)】
「学校選択とろう教育に望むこと」
阿部直子(埼玉県立大宮ろう学校第2どんぐりを作る会)
【レポート(3)】
「教え子との再会から中学時代の教育を検証する」
村上栄子(特定非営利団体法人つくし代表)
林(福島) 自閉症の意思をどのようにして先生は読みとっているのか、どのようにして一日のスケジュールや行動の見通しをしているのかお聞きしたい。
林(福島) 自閉症の意思をどのようにして先生は読みとっているのか、どのようにして一日のスケジュールや行動の見通しをしているのかお聞きしたい。
息子は1人で入学し1人の担任だが、1人担任では足りないように感じる。よその学校では何人に対して、何人の先生がついているのかお聞きしたい。
細野(埼玉) 自閉といって、加配はない。重複学級と同じで、3人で1学級。宿泊行事の場合には加配の要求を県に出すことができるので、交代で指導にあたる。
村上(埼玉) 1対1はむずかしい。学校の中で調整している。3人の子どもがいますが、私と介助の先生で1人の自閉症の子にかかり切り。
立藤(香川) 同じく3人に1人の教師。副担が必ずつくので自閉症の子を担当している。音楽や体育を普通学級と合同にして、他の先生が見るようになっている。
駒井(座長) 堺ろうの様子について。多動、自閉の子どもが動き回って大変なのでマンツーマンで、他の子どもに1人の先生がつく。2人の話の他にないか。林さんの質問に対して村上先生どうか。
村上(愛知) 名古屋ろうでは10年ぐらい前、調査を行った。オウム返しと、答えてほしい言葉だけを知っていて答えていた。自分から要求を出す言葉を知らないということは、この人たちの生活はいままでどうだったのだろうか。中学部の聾重複には、要求の手話をたくさん教える。「ほしい」、「お願い」とか。こちらの手話は、「待って」とか。
阿部(埼玉) 一番大切なのは、先生の集団での話し合い。たくさんの目でみて相談できることが大切。その時間が現場では取れないというのが問題。1人の教員の力は小さい。集団で討議する事に意義があるので、お母さんからも言ってほしい。
針田(栃木) 私の息子は、ろう学校幼稚部のとき、栃木は同時法なので理解が難しく、息子と自分が通じるサインを担任に渡した。自分の要求を出すのに「来る」「来ない」など変わるのが難しいので、変わる書葉はやめて「書く」「終わる」などと身振りの組み合わせを作ってコミュニケーションをとってきた。ところが小学部では重複学級なので、教育方針が変わってしまった。
金沢(群馬大) 小学部に入って方針が変わったとは?同時法と身振りか。認めてもらえない点を話せる範囲で話してほしい。
針田(栃木) 幼稚部の頃の先生は経験が長かった。小学部は4人のうち3人が新しい先生なので、同時法の手話を勉強したばかり。こちらが要求を出すまで、達してないという段階のようだ。
林(福島) 息子は3歳、自閉も最近わかった。最近ティーチとか学んでいる。家庭では、カードを使っている。学校でもカードで対応、トイレ、隣の教室などのカードをみると行動ができる。自閉の前に生まれてすぐ難聴はわかっていたので、手話を使っていたが入らなかった。視界がそれる子どもに対しては、手話より目の前によけいな物を省いたカードの方がわかりやすかったようだ。
中野(レポーター(1)) 県の中に聾学校が1つあるいは2つの学校しかないので、学校の教育方針が大きな要因になる。コミュニケーションは、手話がわかりやすいかが大事で、知的障害や自閉は、身振りや手話がわかりやすい。キュード、口話法、指文字中心では知的障害自閉が重い時は合わないと思う。奈良ろう、広島ろうは、単一障害でも重複障害でも、コミュニケーション手段は手話。先生も子ども同士でも手話。それだと一緒に活動できる。小学部までなら単一障害の子と一緒にやれる。
佐藤(司会) 息子は手話の方が入りやすかったし、良いと思ってきた。「この絵をまねして」というとそっくりに描ける。手話も少しずつ入っていって、指文字は彼にはあわなかったのかな。その人にあった方法が必要。
中野(レポーター(1)) 養護学校、聾学校の専門性を合わせていくことは大事。使い易い手段も選ぶ。他の子どもとのコミュニケーションの手段として、放課後子ども同士の刺激がはいることが大事だと思う。
西村(埼玉) 栃木のお母さんは立派だと思った。重複学級の場合、1人1人違うコミュニケーション手段が必要なので、その子を理解するきっかけになるようにしたい。コミュニケーションが分からないと、学習につながらないので、カード、手話、何でもかまわないので教えて欲しい。自分の子にあった方法を先生に教えてほしい。知っている自閉の子は、カレンダーがコミュニケーションの方法。カレンダーを指さして手話はできないが、「ここは映画、ここはスキー」といろいろ話をしてくれる。
新垣(沖縄) 先生が、お母さんから「普通の単一障害のクラスに行かせて欲しい」と言われた。どのようにお母さんに言ってあげたらいいか。
(コミュニケーション手段はどうしているのかの質問に対して)沖縄は、小学部は指文字。手話は中・高になってから。
渡邊(愛知) 私は、健聴の学校の難聴学級で学んでいた。4人のクラスで先生は、口話で一方的に話していた。3人は先生の話が分からなくて、私が身振りで通訳した。先輩2人は、中学は健聴の特殊学級に行った。同級生は、障害はないので聾学校に変わった。先生方もお母さんも、身振りや手話を身につけて欲しい。
金沢(群馬大) 聾者にとって、普通学校とは単一のクラスをさす。聴者学校をさす人もいる。そこを、あらためて確認したかった。LDかどうか確認をしたい。沖縄で普通クラスに入りにくい理由は、その子に合わせて手話中心で授業ができないからか。
駒井(座長) 私の事例として中学の女子だが、幼稚部に3年いてキュードでつまずいて学校を変わった。手話になって、話が続くようになり私の話を「けれども」と切り返してくれるようになった。
新垣(沖縄) 説明が足りず申し訳ない。一緒に担当している先生が、重複の子は、補聴器をかけて、後ろから話しかけてわかる位耳がいいと。養護学校からきた先生なので、耳がいいのに手話を教えたら声を出さなくなるのではないかという。沖縄ろうの友達は、手話や指文字ができるので先生の言うことには抵抗がある。
菊池(茨城) 茨城も聾重複の作業所を建てたいと声があがっている。難聴学級は、筑波短大から学生に来てもらって、週一回手話で話をしてもらっている。
中野(レポーター(1)) 養護学校で、聾重複の子どもと私が会って1時間くらいでコミュニケーションがとれた。視覚的コミュニケーションは大切だ。
鶴見(茨城) うちの子は、呼吸器[補聴器?]を使っている。聾重複の子が聞こえがいいというのは、敏感だから。重複はクラス編制で縦割り交流はあるけれど、耳だけの子どもの交流は少ない。聞こえだけの子どもとの交流を要望しているが、難しいようだ。
金沢(群馬大) 聾学校は学校の教育方針でちがう。奈良、広島など昔から手話を使っている学校は、教員を加配、形として重複クラスがないと思った方がいいと思う。単一障害と重複でコミュニケーション手段が違うと、一緒のカリキュラムはむずかしい。
佐藤(司会者) 福島は、重複と単一クラスの壁を感じず幸せ。
駒井(座長) 3つのレポートの中でいくつか勉強になったことがある。中野先生のレポートについて聾重複の生徒が養護学校に行くのがいいのかについては、地域の特性によって状況はまちまちである。村上先生の7つのポイントは、よい経験を学んだ。
質問の中にもあったが、どんなに重い子でもキュードや指文字だけでは息詰まる。手話が大切。
【レポート(4)】
「ろう重複障害者の施設作りの経過と課題」
大内幹雄(福島県ろう重複障害者の生活を支える会(なのはな会))
金澤(群馬) 補助金の問題はどうなったのか。また作業所を立ち上げるにあたって専門家の意見はあったのか。
大内(レポーター(4)) 補助金は全くない。バザーの売り上げなどでまかなっている。
佐藤(司会) 今後NPO法人を取得して支援費制度を利用したり、デイサービス事業をして国から補助金をもらったりしてやっていきたい。協力していただいたのは、聾学校の先生や賛助会員の方、ろうあ協会の方、通研の方、手話サークルの方。
【レポート(5)】
「つくし会の取り組みと課題」
波邊健二(つくし会)
菊地(茨城) スタッフの3人の身分保障についてはどうなっているか。
渡邊(レポーター(5)) 職員は成人のデイサービスの中に3人いて、2人がパートで1人はつくしの会の正職が一人。児童のデイサービスに4人。
針田(栃木) 作業所から遠い人は通所の方法はどうしているのか。母親がスタッフに入るのと、入らないのとのメリット・デメリットについて。
渡邊(レポーター(5)) 通所の方法については、地域性があり、名古屋の場合だと交通の便が良いので、みんな30分くらいで通ってくる。入所は今のところ必要がない。支援スタッフは主婦や大学生が多い。親はやっていない。親が一緒にいるといろいろな人とコミュニケーションを取ることが難しくなるので、一緒ではない方がいい。
中野(レポーター(1)) なのはな会は親がスタッフになっているが、いつ親から離れるのか。
佐藤(司会) ずっと手伝うつもりはない。今は資金的に苦しいので、親が無償で手伝っている状態。いずれ親は手伝わないようにしていく予定。
中野(レポーター(1)) NPO法人を取得することのメリットは。
佐藤(司会) NPO法人を取得すると障害者に対する居宅サービス事業をすることができるようになったり支援費制度を使える。また社会法人を取るよりも条件が厳しくないので、取得しやすい。
金沢(群馬) それぞれの地域ごとに通所がいいのか。入所がいいのか。
佐藤(司会) 福島県は広いので通うのが難しいため、聾学校のすぐ隣に小・中学生が入る児童施設と高校生が入る寄宿舎がある。
田中(奈良) 聾学校が県内に1つあり、学校の隣に盲・聾児の施設と寄宿舎がある。卒業後は、聾者の専門の施設が県内にないため県外の施設へ入所することが多い。例えば作業所を作ったとしても通える人を探すことは難しい。まずは1つ、作業所なり情報の拠点となる場所を作っていきたい。
久保(和歌山) 聾学校の隣に寄宿舎がある。聾学校には専攻科があり、重複学級からも進むことができる。ろう重複を受け入れる施設があまりない。また県内は広いので通うのは大変である。
阿部(レポーター(2)) 埼玉には聾学校は2つあるが、寄宿舎はない。施設もなるべく入所施設ではなく、通所の施設を作ろうとしている。
駒井(司会) 大阪では、『なかまの里』のグループホーム、堺市の作業所、老人ホームの施設の作業所などが立ち上がっている。
福光(北海道) 北海道ではまだまだろう重複に対しての実態がつかめていないのが現状である。北海道は広いので7つ聾学校があるが、重複児はまだまだ養護学校に通っていると思われる。今後、重複児の数を調査していきたい。
沖本(広島) 『アイラブ作業所』ろう重複の作業所で1999年に設立。立ち上げる前は、広島ろう学校の空き教室を借りて作業をしていた。現在は16名、うち盲・聾が5人、職員は3人でやっている。年齢層は、27〜80歳。基本的には通所で、作業所は広島市にあるが、となりの町からも通ってくる人もいる。補助金は広島市だけでなく隣の町や市からももらっている。将来的にはもうひとつ作業所、グループホームを持ちたい。
渡邊(レポーター(5)) 北海道の状況について知りたい。ろうの老人ホームの隣にろう者のための福祉工場があったと記憶している。そのことについてお聞きしたい。
福光(北海道) わかふじ寮と作業所と思う。かなり高度な技術を持った作業所でろうの単一障害の施設で、重複の方を受け入れているとは聞いていない。北海道では情報提供施設を作ろうという運動がある。関連団体が集まって盲ろうの方へ情報提供の必要性を訴えているが道職員の理解は低い。道としても、ろう重複の実態をつかんでいない。
金澤(共同研究者) お金の問題で親が作業所のスタッフになるという話があったが、たとえば障害児教育を学んでいる学生にボランティアとして要請してはどうか。親とだけかかわるよりも広がる。
神(奈良ろう) 大阪の重複のサマースクールでの東京のたましろの里の花田所長の話。栃木で地域の他の障害の作業所で、ろう者3人スタッフ1人計4人で入ることで支援が可能と聞いたが・・・
針田(栃木) 今の話は初めて聞いた。本当なら嬉しいが・・・
【まとめ〜共同研究者より】
中野(共同研究者)
教育の立場から感想を述べたい。VTRで大内さんのお子さんが楽しそうに紙すきをしている姿を見て成長し、生き生きと働く姿をモデルとしていければいいと思う。その為に大切なのはコミュニケーションだと思う。
21世紀の特殊教育の在り方に大切なことが2つある。
就学時に親の気持ち、意見が反映されるように変わってきている。聾学校には幼稚部があり、重複の子どもが集まる可能性がある。そこで、卒業した親とのネットワークを作れないか。先輩の親、ろう教育経験養護の経験のあるスタッフなどから広く情報を集めることが親の立場として大切。
特別支援教育に変わり、盲ろう養が一本化になる中で、障害の壁を乗り越えることが大事。重複の場合はそれぞれの障害の中だけでは考えにくいため、障害の枠をとることで理解を求めることが必要。
阿部(共同研究者) 福祉の立場から、感想をまとめた。地域の情報を交換できる場が大切。ろう親の会が広まりつつあるが、そこへ積極的に参加し、地域の活動に生かして欲しい。今日参加していない人にも呼びかけて欲しい。
ろうあ協会、手話通訳サークル、聾学校教員など連携しあっていると思うが、他の障害との対立はいけない。実際ろう教育だけで進めていくのは難しい。地域でどうしていくかの方向性を考えたい。来年はこうした取り組みについては話し合えるといい。ろう重複は理解されにくいが広く理解を得て、地域で生活できるための取り組みが必要。
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