第5分科会/討論
【レポート(1)】
「安全な生活を送るための指導−単独帰省を通して」
細井トモ子(福島県立聾学校寄宿舎)
正富(福岡) 家庭でのコミュニケーションのフォローはどうしているか。
細井(レポーター(1)) 寄宿舎では、家庭でのコミュニケーションの方法については把握してはいない。毎週帰省する時に1週間の生徒の生活様子や今後の連絡をノートに書いて持たせている。また、家庭での生活の様子を保護者に書いてもらっており、これをもとに親子間での会話のきっかけにしてもらいたい。
野沢(共同研究者) 高等部になって家に帰るのが楽しみになっているのは心の成長に問題があるのではないか。
細井(レポーター(1)) 幼・小・中学部まで「光風学園(施設)」で生活し、家庭へ帰省することが少なく、親との交流も少ない。高等部になって親との交流を楽しんでいる生徒もいる。また、帰省・帰寮時に時間を考えながら友達と遊んだり買い物を楽しんでいる生徒もいる。
森(徳島) 生徒が一人で帰るのに練習期間があるのか。また、バスの場合は路線やバス停がたくさんあるので間違いや心配はないのか。
細井(レポーター(1)) 帰省の実践と練習は一緒である。間違いや心配はある。
T(東京) 今までどんな失敗があったか。
細井(レポーター(1)) 3年前にJRの災害(大雨)で、途中で不通になり代替バスで輸送された。携帯電話を所持していなく、不明瞭な口話で親へ電話をした。本人は親と連絡をとったつもりで安心して待っていたが、親は連絡内容を充分に把握できていなく親と職員が探したことがあった。
折井(東京) 高等部で帰省の指導をすることに問題がある。本人の危機管理(何かあった時の対処の仕方ができない)に問題がある。親が甘すぎるのではないか。
坂上(座長) これは聾者だけの問題ではないが、普段の生活の中で自分で体験して覚えていく必要があるのではないか。
【共同研究】
「聴覚障害者の社会参加と職業教育の見直し」
野沢克哉(東京学芸大学)
T(東京) 聾学校の専攻科に対して訓練手当ては出るのか。
野沢(共同研究者) 専攻科は職業訓練と同じなので、本人にその自覚と知識を与えるためにも手当てを出すべきである。欠席が多いと、手当てを受けられないという厳しい考え方を与えるためにも、手当てを出すべきである。
T(東京) 専攻科は、今の時代に合わないのではないか。
野沢(共同研究者) 読み書きやコミュニケーションがしっかりできていれば、各県などに聾学校の専攻科はいらない。ブロックごとに専攻科を設置すればよいと考える。
正富(福岡) 「専門高校検討委員会報告書」の内容は何か。
野沢(共同研究者) 健聴者の商業や工業などの職業高校についての報告書で、聾学校の専攻科をつくる時の参考になると思う。専攻科は現在2年制であるが3年制があってもよい。
折井(東京) 普通高校で聾者のコミュニケーションに対しての対応がたりない。成人の聾者がもう度勉強する方法はあるのか。
野沢(共同研究者) 刑法の関係がある。アメリカでは通訳をつける義務がある。差別法をなくしただけではだめである。日本の場合は、「〜をするのが望ましい」という段階なのでアメリカと同じようになるにはあと10年はかかるだろう。
大塚ろう学校では、協会のタイアップでろう学校の先生や保護者・卒業生に情報を与える勉強会を行っている。各教育委員会も社会教育に力を入れているので、このようなこともできると思う。
渋谷(千葉) 聾学校を卒業しても手話を覚えないまま大学や仕事に就く人もいる。しかし、その後手話を覚えることになるのはなぜか。
野沢(共同研究者) 仕事のためというよりは、人間として生きるためにコミュニケーションをとる時に便利なので手話を覚えることが多い。
【レポート(2)】
「職場体験実習をとおした職業意識の形成について」
小林譲二(福島県立聾学校)
T(東京) 体験実習の職種と通勤方法について聞きたい。
小林(レポーター(2)) 個人の希望なので、職種はいろいろで、通勤も自宅からなのでさまざまである。
T(東京) 実習後、実習先に採用された例はあるか。
小林(レポーター(2)) 就職採用とは切り離した実習であるが、採用になった例はある。また、企業の情報が得られやすいという利点がある。
野沢(共同研究者) 実習期間の3日間というのはどのようにして決めたのか。また、会社に対する働きかけはあったのか。
小林(レポーター(2)) 今年から総合学習の中の位置づけで行っているため3日間とした。実習がスムーズに行われるように事前打ち合わせ等を行っている。
坂上(座長) 聴覚障害者受け入れ経験がない場合、3日間で理解するのは難しいのでは。
小林(レポーター(2)) 3日間ですべてを理解してもらうのは当然難しい。「少しずつ」と考えている。実習先についても、毎年同じ所だと理想的だが、生徒の出身地が異なるので継続して行うのは難しい。
T(東京) 実習後の生徒の感想はどうか。
小林(レポーター(2)) 自分の考えていた仕事内容とは異なり、がっかりすることもあるが、すべて良い経験と考えている。3日間で目に見える変容はないが、学力や資格取得の他にあいさつの大切さや働くことの必要性・重要性を感じ取っていると思う。
森(徳島) 具体的な職業選択のための啓発方法を教えて欲しい。
小林(レポーター(2)) 生徒の実態(意識の希薄さ)や指導法については福島聾も同じだと思うが、一番有効なのは、聾の先輩の話を聞くことだと感じている。
秋島(千葉) 成人聾者が後輩にもっと職場での問題解決法を教えるべきだと思う。
T(東京) 障害者年金があるから安易に離職するケースもあるのではないかと危倶する。
小林(レポーター(2)) 離職を必ずしもマイナスとは考えていない。さまざまな経験を経て、自立に向けてがんばる生徒を育てることが、学校の役割である。
秋島(千葉) 職場で納得ができないことがある場合、自分で問題解決をする力も学校で育てて欲しい。
坂上(座長) アルバイトは大変良い社会勉強になると思うが・・・、福島聾学校では認めているのか。
小林(レポーター(2)) 長期休業中は認めている。さまざまな体験を通して職業と社会参加に対する意識が向上すれば大変うれしい。
【レポート(3)】
「友達がほしい!仲間の願いに寄り添って」
辻井靖子、渡部泰之、阪田正子
(身体障害者授産施設いこいの村栗の木寮)
T(東京) カウンセリングではどのような支援がなされているか。
辻井(レポーター(3)) 国立病院の精神科の先生に診ていただいているが、手話通訳者と指導員がつき、話を聞いていただいている。最初は、暴力的な言葉が聞かれていたが、今は家族を思いやる言葉が出るようになってきた。
古川(福島) “いじめ”が心配だが、どのような状況かを聞きたい。
辻井(レポーター(3)) 話を聞いたり、状況を説明したりして解決に努めている。
折井(東京) 夫の体のこともあり、ゆとりを持って子育てをすることが難しかったのではないか。親や親子関係修復のためのサポートはどうしているのか。
辻井(東京) 家族会、勉強会、交流会を通してサポートしている。
折井(東京) 聾学校では“いじめ”をどのように解決しているのか。
森(徳島) 徳島聾学校では“いじめ”はないが、普通校の経験から言うと両方の話を聞くが、いじめられる側を守ることが先決と考え指導にあたった。
野沢(共同研究者) 聞こえない人の心の問題が多い。どう援助するか、組織的・専門的なあり方をめざしネットワーク作りをしているところである。大事な問題なのでどう対処するか皆さんも考えて欲しい。
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