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聴覚障害教育の充実と発展をめざして!
<明日へ向けての集会アピール(その15)>
 2003年8月2日から3日までの2日間、うねめ祭りで賑わう緑濃い都市、福島県郡山市において第15回ろう教育を考える全国討論集会が開催されました。この集会は、ろう学校を取り巻く激動、すなわち文部科学省の特別支援教育構想に伴う聾学校の統廃合、新生児聴覚検査事業の開始、子どもの人工内耳手術とインテグレーションの急激な増加・親の手話・バイリンガル教育の要望など、ろう学校の存在意義と専門性が問われる社会的な背景の中で開催されたものです。
 
 参加者は、北は北海道から、南は沖縄まで、計966名が集い、8つの分科会・基礎講座・ろう両親のつどいに分かれて熱心な討議を行いました。
 
 全体会の記念講演では、全日本ろうあ連盟の大杉豊所長を迎えて、「ろう学校への手話導入の成果と課題」をテーマとして、お話いただきました。現在、手話で教育を受ける権利を求めて、日本弁護士連合会へ人権救済の申し立てを行う動きが見られる中で、ろう学校へ手話を導入するだけではなく、ろう児の生活環境での手話を活用することの大切さを示され、これからの活動の貴重な道標(みちしるべ)となりました。
 
 8つの分科会では37本のレポートが提出されました。全国ろう児を持つ親の会の関係者からの手話で教育を受ける権利に関するレポートなど、ろう教育で手話を活用することを主張するレポートが多数提出されました。そして、手話の使用と聴覚口話法の関連、ろう教育の改革にむけての運動の進め方などをめぐって、熱心に論議されました。教わる立場の側からの主張も大事ですが、教える立場からのレポートも多数提出されることを、期待したいと思います。これは現場の現状を認識することによって、よりよい教育を目指すための検証材料となるからです。
 
 レポートの内容につきましては、ろう学校における教育問題だけではなく、インテグレーションや高等教育における情報保障の必要性、さらには重複障害者の教育問題、卒業後の就業教育など幅広く提出されました。聴覚障害児の教育環境問題は重要ですが、社会へ巣立った後のケアも重要です。そういう意味では、学校と社会の一連の流れの中で考察していかなければなりませんし、教育関係者と親、成人聴覚障害者の連携した取り組みが求められます。集会に先だつ8月1日の連絡協議会総会では、そのために都道府県単位の「ろう教育を考える会」を組識し、地域におけるろう教育への取り組みを発展させていくことが確認されました。
 
 福島県立聾学校では、10年以上前から演劇・身体表現教育で大きな成果をあげており、その一端が基礎講座で披露されました。
 
 安藤代表世話人の「日本の聴覚障害教育構想プロジェクト」中間報告の中では、ろう学校の少人数化に対して、ろう学校の存続を主張するだけでなく、集団の保障と教育の質の向上を実現し、費用の面でも社会的な合意が得られるべきであると、提案がありました。
 
 この福島集会で得られた貴重な成果を、ろう教育のさらなる発展に結びつけるために、地域へ持ち帰り、積極的な取り組みを行っていきましょう!
 
 ろう教育の明るい未来を目指して頑張ろう!
 
2003年8月3日
 
第15回ろう教育を考える全国討論集会







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