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 (5)広報・啓発活動事業
ア. 香取保健所ホームページに、ネットワーク構築事業の一環として、高次脳機能障害相談窓口開設を掲載。
 
 香取保健所管内市町村広報誌、タウン誌に、ネットワーク構築事業の一環として、高次脳機能障害相談窓口開設を掲載。
 
 香取保健所管内、学校保健養護教員研修会で、高次脳機能障害についての説明とネットワーク構築事業の一環として、高次脳機能障害相談窓口開設の紹介実施。
 
 調査実施に当たって、高次脳機能障害に関するパンフレットを作成。各市町村・保健センター・福祉施設・病院に配布。
 
 海匝保健所管内、市町村保健師研修会で、高次脳機能障害についての説明とネットワーク構築事業の一環として、高次脳機能障害相談窓口開設の紹介実施。
 
 第一回さわやかネット講演会で、高次脳機能障害についての説明とネットワーク構築事業の一環として、高次脳機能障害相談窓口開設の紹介実施。
 
 千葉県千葉リハビリテーションセンター公開講座、パネルディスカッションで、香取・海匝圏域社会福祉施設等全数調査結果発表。 
 
イ. 市民公開講座の実施
・開催日時 平成16年2月7日 13:00〜16:30
・会場 千葉県東総文化会館小ホール(旭市)
・特別講演 「高次脳機能障害ってなぁに?」
・パネルディスカッション 「地域で生きる」
コーディネーター 細渕宗重(21世紀健康福祉戦略検討委員会委員)
             (新・千葉県障害者計画策定部会長)
             (社会福祉法人 ロザリオの聖母会専務理事)
各パネリストレジュメ(敬称略 報告順掲載)
(1)野村隆司(千葉県健康福祉政策課政策室)
1. 対象者横断的な施策展開と高次脳機能障害者への支援
 千葉県は今、施策の推進手法として「健康福祉千葉方式」を活用しています。これは、(1)子ども、障害者、高齢者といった対象者横断的な施策展開を進める、(2)施策の企画段階から当事者を含めた民間と行政が協働する、という二つの特徴を有しています。
 この「(1)対象者横断的な施策展開」の目的は何でしょうか。個々の対象者別の施策を軽視し、共通の施策のみにを推進していこうとするものなのでしょうか。「答」は「No」です。対象者横断的な施策展開は、高次納期脳障害をはじめとして、障害者や高齢者向けの個別の重要課題への取り組みを疎かにするものではありません。
 「健康福祉千葉方式」の考える対象者横断的な施策展開は、「誰もが地域で生活できること」を主な目的としています。地域に存在する既存の対象者毎のサービスや資源を全て明らかにした上で、制度の垣根を越えて、地域に住む一人ひとりに最も適したサービスや資源を活用できるようにしていくことが目指す目的と考えています。そのことを通じて、各種福祉制度の対象者であるか否かを問わず、みんなが地域で暮らすことができると考えています。
 
2.「(1)誰もが、(2)ありのままに・その人らしく、(3)地域で暮らす」
 千葉県では、「健康福祉千葉方式」の手法を用いて、「地域福祉支援計画」を策定中(平成16年3月策定予定)です。この計画素案では、「(1)誰もが、(2)ありのままに・その人らしく、(3)地域で暮らすことができる」を「新たな地域福祉像」として、人の福祉力(ちから)、地域の福祉力(ちから)を活用し、民間と行政が協働して新たな地域社会を築いていくことを内容としています。
 子ども、障害者、高齢者にかかわらず、もちろん高次脳機能障害の方を含めて、誰もが地域で夢と希望を持って暮らしていける「新たな地域福祉像」の実現に向けて、個別施策と対象者横断的な施策を進めていくことが必要です。さらに、その前提として、行政担当者はもちろんのこと、地域住民、特にコーディネータの役割を担う者が、様々な障害等の特性を把握するとともに、各種福祉制度やサービス内容等を十分に周知しておくことが不可欠です。
 対象者横断的な施策展開は、決して対象者毎の問題や制度を軽視して成立しうるものではなく、それらの十分な理解と把握があってはじめて成功するものと考えています。
 
(2)吉田吉弘(高次脳機能障害者の家族)
 1999年3月29日、息子の乗ったバイクは大型ワゴン車と衝突しました。千葉県救急医療センターで脳挫傷、肺挫傷、足の骨折と診断され、緊急手術を受けました。手足の形が変わり、なんだか全身が固くなっている感じで、その日の朝見送った息子とはとても思えない様な変わり様でした。意識の無い日が続き「わかるか」という言葉にうなずくまで60日かかりました。その日5月29日息子と2人で抱き合い泣きました。そしてその日から高次脳機能障害という聞きなれない障害を持った息子大祐の新しい人生が始まりました。意識が戻り、話し始めたときはひどい「どもり」でした。体は右足の甲はそり返ったまま、右手首は内側に丸まり、指はしっかり開くことが出来ませんでした。しかも右側に障害が多かったので、なかなか笑う事が出来ませんでした。やはり笑うのも左右の筋肉が均等に働く必要があるのかもしれません。10日間は泣くだけで初めて笑ったのはタッ、ツッ、と実に簡単で、笑っているのか心配になるほどでした。ター、バッ、ツーとかになるまで3ヶ月、アハアハアハ、アハハアハハになるまで1年かかりました。その代わり泣くことに関しては意識が戻って10日目ごろから今日まで一度も有りません、完全に忘れてしまった様です。意識が戻るまでの2ヶ月間で11kg痩せましたが、元に戻るのに一年ばかりかかりました、現在は戻りすぎて腹が出ています。
 体の回復はとても早く、1年後に高校に復学し、70mで転倒はしましたが、体育祭で100m競争に出場しました。卒業前の10キロマラソンも毎日昭和の森で練習したかいが有り、ちょうど真中当たりの183位という順位でしたが完走する事が出来ました。その当時彼の右足はまだ完全に曲げる事が出来なくて蹴る事を続けて走るという走り方でした。しかし、一度も歩くことも無くゴールし、彼のゴールする姿を見て涙を拭う何人かの先生を見た時、よくやったなとほめて上げました。足首は今も引き上げることは出来ないので蹴る力をつけている状態です。手首はほとんど元に戻り、野球も出来るようになりましたし、ゴルフはドライバーで240ヤードは飛ばせるようになりました。現在記憶がないことが彼の一番のネックになっていますが、意識が戻ってから10日ほどは覚えていて10分程度、千葉リハに入院してからの1ヶ月ぐらいまでは覚えていて30分ぐらいまで、2ヶ月後には1時間ぐらいまでというように、記憶時間が延びていくのですが5分で忘れることもあるわけで、千葉リハを退院する頃には一日前、二日前の事を覚えている時も有るんですが、翌日には覚えていた事も覚えていないという状態でした。さらに1年もたつと、Jリーグやプロ野球などの試合結果を2〜3日後に答えるようになりましたが、ゴールした選手の名前は移籍した選手だったり、負けているのに勝ちになったり、野球の場合だと、出ていない選手がホームランを打ってたり、リリーフした投手が完投していたり、内容はメチャメチャでした。それも翌日にはさらに内容が変わり、翌々日には覚えていませんでした。このことは今もまったく同じで今日までに完全に覚えていることは、ジェフから中西がいなくなった事とヤクルトから高津がいなくなった事ぐらいです。最近では、雨の日にバックに傘が入っているのにずぶ濡れで立っていたりするような事はなくなりました。
 自転車は今でもどこかに置いてきます。先日も自転車をなくして2週間ぐらいになるのでそろそろと思い買いに行かせました。自転車に乗って帰ってきて、スーパーに買い物に行かせました。家に帰るなりドアをバタンと閉め、こんな重い物両手に持って手がちぎれそうだとかなんとか毒舌を吐いているので、自転車にカゴをつけてもらわなかったのかと聞くと、忘れてきたらしくあわててスーパーに自転車を取りに戻りました。昨年の9月10日から、湯楽の里市原店の清掃作業をしています。朝5:45〜8:30までの約2時間半です。障害の事には一切触れず飛び込みで面接を受けた所、OKになりました。通い始めて10日、話が有りますと言うので、もしかしたら首かなと思いながら連絡しましたところ、当初予定していた賃金は払えないので少し下げさせてもらいますという事でした。彼の意見を聞くまでもなく、私はそれでお願いしますと言いました。もうすぐ5ヶ月になります。同じく9月12日より林工業という会社の足場材の片付作業をしていました。これは朝10:00〜夕方5:00までで、風呂屋さんと合わせると丸一日仕事をしているようなものでした。林工業では資材のネジ部分に油を差したり、サビ取りをしたり要するに単純な作業でしたから、朝5時に起き5時40分に家を出て、夕方は6時半頃にならないと家に帰ってこられないという少しハードなスケジュールでしたが、特に疲れた様子もなく、事故後の4年半の中では一番楽しそうに見えました。私も彼もこのまま続けられる事を望んでいましたが、残念ながら林工業のほうは昨年末でリストラになりました。
 人が職業につく時、中学や高校、大学を卒業しはじめて職に就く時、アルバイトで仕事につく時、最初はみな、わずかながら身の引き締まる思いがするものです。なぜかというと、それぞれの職業にはセオリーがあり守らなくてはいけない決め事が有ることを教えられるからです。これは必ずしなくてはいけません。ここまではしてあげなくてはなりません。最低でもこれだけはやっておいてください。反対にこれ以上はやってはいけません。こんな事は絶対にしては駄目です。この先は絶対に行ってはいけません。絶対に超えてはいけない線が有る事を面接の時や職業訓練や社員訓練の場で教えられます。
 そして身を引き締めて始めての仕事にかかります。しかし人は1つ作業をし、1つ用事を終わらせ仕事の数が増えれば増えるほど、いつの日かその線を飛び越えていきます。
 早く終わらせる為、上手く終わった用に見せる為、いい仕事だったと言われたい為、周りの人によく思われたい、攻撃されたらなんとかかわして自分を守りたい。
 私の息子もいつかその線を飛び越え、上手に世の中を渡って行くだろうと思っていました。しかし、今の彼の頭はその線を越えようとしません。越えることを考えません。越える術を考えようともしません。
 風呂の清掃、単純作業の繰り返しです。もうすぐ5ヶ月が終わります。「吉田君それだけ拭けばいいよ次の所を拭こうよ」「大祐くんそんなに丁寧にやってたら時間がなくなるから次をやろうよ」「大ちゃんそのくらいのゴミ拾ってないで水で流しちゃいなよ」同じ事を何度も繰り返し時間が無くなってもほとんど気にしようとしない彼は、人から見たらどんくさいとかとろいとか言われても仕方ないことも十分わかってます。
 しかし悲観なんか全然していませんし、もちろん絶望もしていません。彼は人に良く思われたいと考えていますし、風呂屋さんで大祐君は一番背が高いから高い所を拭く時は助かるね。と言われるとその事を素直に喜びます。期待されているんだなと思います。将来彼が「あいつ仕事速いよな」とか「あいつ要領いいよな」とか「あいつ世渡り上手だよな」とかそうゆうことを言われることは無いかもしれません。しかし、何かの事で「あいつ結構きれがいいよな」ぐらいは、言われるときが来るかもしれません。
 私は彼によく反則すれすれはテクニックだと教えています。スポーツだって何だって反則は駄目、反則は絶対良くない。しかしすれすれは技術だし、技!
 どんぐりの背比べの中から強い人とか巧い人とか上手な人だと言われるのは、そのすれすれの技術を身に付ける事にたけた人なんだと教えています。だからと言ってこんな事を毎日言って聞かせていて、とんでもない場違いな所で発揮してもらっても困りますが、とにかく私は彼と2人の今の生活を結構気に入っていて楽しんでいます。
 トロイと言う言葉も耳にします。ドンくさいと思われているかもしれません。しかし情けないとも歯痒いとも思いません。だからといって純情な奴だからとか無垢な奴なんだからとか言ってほしいとも思いません。息子は「とおちゃん俺いったいどおしちまったんだろうな、これからどうなるんだろうな。」思い出したようにポツリと私に語りかけます。答えが浮かんできません。ポツンと言った息子の悩みは余りにも大きく、余りにも沢山で答えようが有りません。
 こんな私達親子と似たような悩みを抱え、答えの無いまま生きていくことを余儀無くされている人が居るとしたら一人でも多くの人とお話がしてみたいと思います。息子はこれからもいくつかの職業を経験してみることと思います。そして、先程話した線の手前で立ち止まり皆から多少の批判を受ける事になるでしょう。しかし、その線の手前でないと生きていく事のできない、そういう頭を持たなくてはいけなくなった青年なんだという事を一人でも多くの人に分かってもらいたい。そして沢山の同じ境遇の人がこの国の至る所に居るんだなという事を多くの人に知って頂きたいと思います。
 最後に今日このような公開講座を開催して頂いた事、心から感謝致します。
(3)松石大司(高次脳機能障害者本人)
1、私は、小学校5年生の頃から難治性側頭葉てんかん発作があり、病院の通院、薬の服用、検査入院の繰り返しで、21歳の頃に脳の左の側頭葉と左の海馬などを切除手術しました!それからは大きな発作は少なくなりました。両親や自分の将来のことを思い千葉障害者職業センターや障害者職業総合センターにて訓練をしてきました。そして自分に新たに高次脳機能障害があることが分かり、私には記憶力障害と注意力障害と遂行機能障害と行動と情緒の障害があることがわかりました。
2、私自身以前は、自分の障害に対して暗い日々を過ごしてきましたが、障害者職業総合センターなどの職業訓練にて周りの同じ高次脳機能障害者と訓練することにより明るい自分が見えることができました。そして職業訓練を終えてから、障害者として初めは仕事探しをしてきましたが、正直自分が思うには、まだ家族は私を高次脳機能障害者と認めたくないのか、父の方は少しずつではありますが、私の障害に対して少しずつ前向きに考えてきていますが、母は看護師のせいか私の事を障害と認めてくれようとはしません。また姉はさらに何度か高次脳機能障害について話をしましたが、やはり姉には一般の方々と同じように高次脳機能障害のちがいを分かってもらえてないのが私の今の状況です。しかし障害者本人の私と両親や姉だけには自分の今の高次脳機能障害などについてわかってもらいたいのが私の真実です。そして私はなかのいい友達には高次脳機能障害のことについてオープンにして話していますが、やはりこの障害は難しい障害なので確実にわかる人は同じ高次脳機能障害者の友達だけです。実際に本人の高次脳機能障害に対する考えと家族などの間での障害に対する理解、認識が不足し本人一人が悩み、考え落ち込むケースが多いし、家族や障害者と関係を持つ方々とのコミュニケーションをじゅうぶん取れるような高次脳機能障害の理解を深めるような方法を考えていただきたいと思います。
3、少しでも早く私たちの高次脳機能障害を国や行政で認めてもらい、また私自身の精神障害者であることや障害とも認められていない高次脳機能障害もあるということで障害をオープンにして仕事をするにはまだ世の中では難しいことが分かり、それでは自分の障害をクローズにして仕事探しをすることにしました。そして私の場合は、表向きは普通の方とあまり変わりはないので面接に合格し、一般の方と同じ仕事をできたらいいのですが実際私は、一般の方のスピードについていけなかったり、上司の私に対してのアドバイスが私には、全然ついていけないことがわかりました。私は少しでもついていけるようにとメモリーノートやICレコーダーなどを利用して仕事をできればと思っていましたが、障害者としてでは仕事中でも利用できることは分かりましたが、一般の方ということではICレコーダーやメモリーノートが使えないこともわかり、結局仕事は3日ぐらいしかもたないことがわかりました。
4、そして、この自分自身の状況を知り私の今の生活ですが、仕事をすることができず一日中家にいる生活を送っていては、いつまでもこの生活では生きていけない思いなどから、私たち高次脳機能障害者が働けるような施設が私は今の千葉県にはとても必要だと思っています。少しずつではありますが、東京都や神奈川県や埼玉県などでは高次脳機能障害者の施設がだんだん増えてきています。しかし残念なことに私たちの住んでいる千葉県では高次脳機能障害者の作業所などはまだないと聞いています。ですから少しでも早く千葉県でも作業所などを少しでも早く作ってもらいたいと思っています。そして、今までは私たち高次脳機能障害者と家族の方で話し合いやイベントなどがあると思いますが、私は、これからは高次脳機能障害者だけのイベントを行なうことも必要だと思います。確かにご両親にとってみればかなり心配なことかもしれません!しかし私たち高次脳機能障害者だけの会話のときはとてもみなさん元気があるように見えます。確かに私たち高次脳機能障害者だけの集まりは難しいと思います。ですから少しの人数でも構わないと思いますので千葉リハビリテーションセンターの方々に協力してもらって、時にはいろいろな所へみんなで遊びに行くことも大切だと思います。そして少しでもみんなの気分がよくなるといいと思います。いろいろな所へ行く計画などは私たち自身で行なうことが大切だと思います。少しでも高次脳機能障害者のみんなの気分が良くなったらいいなあと思っています。
5、そして、最後に私たちの高次脳機能障害を国や行政の障害者認定の1つに少しでも早くみとめてもらうのが私の目標でもあり夢でもあります。私たち高次脳機能障害者や家族及び関係する方々が笑って生活できる世の中になるように皆様のご協力よろしくお願いします。
 
(4)小山浩永(総合病院国保旭中央病院リハビリテーション科部長)
 医療の立場から、旭中央病院リハビリテーション(以下リハ)科脳卒中患者様の動向、評価治療、問題点、今後の展望など述べたいと思います。
 
1. 旭中央病院・・・1000床余の急性期中核病院、診療圏は香取海匝地域を越え半径50km、対象人口は100万人、平均在院日数は14日前後、老人保健施設、特別養護老人ホーム、ケアハウス養護老人ホームを併設
2. リハ科・・・専門医1名、理学療法士15名、作業療法士6名、言語聴覚士2名、総合施設I基準。1日の診療件数は入院外来計300件を超える。超急性期リハを中心に、在宅復帰、復職など社会復帰まで行う。
3. 平成14年度脳卒中(頭部外傷を含む)患者様のカルテ調査・・・理学、作業、言語、3療法計の新患患者様延べ数1139件は疾患別で最多。うち理学500件、作業350件。
[方法]250件を対象に、疾患分類、年齢、性別、高次脳機能障害の有無とその種類と程度、リハ開始時FIM、リハ終了時FIM、転帰、復職の有無についてカルテ調査した。当院では、失語症は標準失語症検査WAB、重症失語症評価は失行失認BIT、視知覚機能検査は記銘力WMS-Rリバーミード、注意障害はPASAT訓練としてはAPT、遂行昨日検査はTMT BADS WCST Stroop Test、痴呆はHDSR SDAS、日常生活動作はFIM Barthel Indexを使用。
[結果]男性62%、女性38%。平均年齢72.8歳。脳梗塞65%、脳内出血28%、くも膜下出血7%、頭部外傷4%。平均在院日数43.6日で当院平均在院日数の3倍以上。(在宅復帰群だけでは、平均入院期間35日とさらに短い)転帰は在宅復帰46%、リハ病院36%、施設および療養型病院18%。在宅復帰群の退院時FIMは96、当院外来フォローは46%、うち40%が復職。高次脳機能障害の重症度を検査とFIMにより分類し、さらに重症度別のFIMを比較すると、高次脳機能障害なし群は25%を占め、退院時平均FIM99、軽度群は22%を占めFIM89、中等度群は27%を占めFIM77、重度群21%を占めFIM48と明らかに低下を示した。在宅復帰した重度高次脳機能障害群の退院時平均FIM78で部分介助レベルだが、転院した重度高次脳機能障害群の退院時平均FIM43、全脳卒中重度高次脳機能障害は退院時FIM48と介助レベルを示した。運動と認知面のFIMにわけると、在宅復帰群は転院群と比較して、運動面のFIMの改善が良く、認知面の改善よりも日常動作が改善し可能になれば自宅退院できることがうかがえた。全脳卒中患者様の高次脳機能障害の種類は、なしが30%、失語17%、失行10%、失認22%、記銘力障害17%、注意障害32%、遂行機能障害9.7%、その他15%。在宅復帰群は、なしが30%、失語10%、失行10%、失認13%、記銘力障害16%、注意障害10%、遂行機能障害4%。在宅群では、失認、注意、遂行機能障害などが少なかった。
[今後]高次脳機能障害に対する評価や治療として、機能的MRIやPETなど進歩した画像検査を利用して適切な予後予測や治療効果判定を行う。電気生理学検査として、経頭蓋磁気刺激や事象関連電位も治療効果判定に利用を検討。APTなど訓練バッテリーの標準化に努める。記銘力障害におけるアリセプトや認知障害に対するドーパ剤など薬剤の進歩に注意する。情緒面や問題行動への取り組み。情報のデータベース化を検討。
[問題](1)回復期リハ専門病床の不足・・・患者様の受け入れ先が少ない。福祉との連携において機能の欠如。(2)リハ専門医や専門職員の不足・・・リハ知識や情報の遅れ。標準化されたテストバッテリーが普及しない。(3)患者様やご家族が急性期から十分に障害受容する機会が少ない・・・障害受容されない状態が継続される。(4)FIMなど日常生活動作の評価だけではなく、情緒面や問題行動の評価などQOLを重視する必要がある。
[まとめ]平成14年11月より、県より地域リハビリ広域支援センターの指定を受け、支援センター事業に述べ1500人の方に参加いただいた。今後も、治療の進歩の追従に努力し、診療圏内の医療福祉関係者との連携や患者様やご家族との連携を図りたい。







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