【事業報告】
1. 受け入れ施設サポート事業
(1)施設実態調査
平成15年度実質活動している140ヵ所すべての社会福祉施設の実態調査を実施。当該圏域の社会福祉資源の全体を表1に示す。
表1
施設の種類 |
規模 |
形態 |
入所 |
通所 |
その他 |
高齢者 |
10未満 |
2 |
|
|
30未満 |
3 |
20 |
|
50未満 |
5 |
4 |
|
50以上 |
33 |
2 |
|
知的障害 |
10未満 |
7 |
3 |
|
30未満 |
1 |
6 |
|
50未満 |
2 |
2 |
|
50以上 |
11 |
|
|
精神障害 |
10未満 |
3 |
|
|
30未満 |
1 |
5 |
|
その他 |
|
1 |
|
身体障害 |
30未満 |
|
3 |
|
50以上 |
2 |
|
|
その他 |
5未満 |
|
|
1 |
30未満 |
1 |
3 |
7 |
50未満 |
2 |
|
2 |
50以上 |
5 |
1 |
2 |
合計 |
|
78 |
50 |
12 |
|
高齢者施設、知的障害者施設では、入所型が通所型の倍近い施設数あり、その規模も50人以上の大規模型が多いのが特徴である。しかし、知的障害者施設入所型は、グループホームのように10人未満のものも多い。その他の施設の中では、養護施設などは50人以上の大規模型である。入所・通所いずれでもないものは、ここに訪問看護ステーションなど訪問形式の施設を分類したためである。
ネットワーク構築という観点で見ると、通所と入所の違いだけでなく、大規模入所施設で必要とされる援助内容と、グループホームなどの小規模入所施設では必要とされる援助内容は異なってくる。とくに高次脳機能障害者の社会生活適応の困難さは施設処遇においては排除されやすく、不適応行動がすぐに目立つグループホーム形式の小規模入所型の施設への援助も必要とされることも予測される。
表1に示した140施設のうち、現在高次脳機能障害者の処遇をしているか否かについて表2に示す。知的障害者施設と精神障害者施設での、高次脳機能障害者処遇割合が低いことが目立つ。このことが、受け入れ施設側の理由によるものなのか、利用する高次脳機能障害者側の理由によるものなのかは明かではない。
表2
施設種別 |
いない |
3人未満 |
6人未満 |
10人未満 |
10人以上 |
総計 |
高次脳機能
障害者処遇率(%) |
高齢者 |
22 |
18 |
6 |
3 |
20 |
69 |
68 |
知的 |
24 |
8 |
0 |
0 |
0 |
32 |
25 |
精神 |
8 |
1 |
1 |
0 |
0 |
10 |
20 |
身体 |
|
1 |
2 |
|
2 |
5 |
100 |
その他 |
12 |
4 |
3 |
1 |
4 |
24 |
50 |
総計 |
66 |
32 |
12 |
4 |
26 |
140 |
53 |
|
高次脳機能障害を持つ利用者がいる場合、処遇困難なじたいに対して相談する機関を持つかどうかの結果を図1に示す。高齢者関係の施設で「ある」と答えた施設でも、処遇困難の内容的を尋ねると、身体的な対応に関するものが多く、相談機関も医療機関が多い。「なし」と答えた施設に、困難な事態が起こった場合どうするかを尋ねると、家族や利用保証人が、個別問題解決すべく対応してもらっているというものが多かった。「空白」のなかには、これまで困ったことに出くわしていないというものもある。高次脳機能障害のように、日常行動の適応困難などに関する処遇は、その内容把握さえもまだまだ進んでいないことをうかがわせる。
図1
|
処遇困難な高次脳機能障害者に対して、相談する機関の有無について
|
|
|
高次脳機能障害者が「いない」と答えた高齢者施設が22。ケアハウスなどがあるとしても少し多すぎる感はある。しかし、書面と口頭両方で説明した結果であり、一応現段階での高次脳機能障害の理解ということになる。
昨年度(平成14年度)に、全県下の社会福祉施設・学校における高次脳機能障害者処遇実態調査を実施したので、同一圏域での全数把握との比較を図2に示す。
高次脳機能障害者処遇率は、総数においては全数把握と昨年度実施した32%回収把握で、結果にそれほど大きな違いはない。しかし、個々の施設によってはかなり結果が異なっている。身体および精神障害者の施設は、絶対数が少ない。前年度調査では回答施設がなかったために今年度のみの結果となった。高齢者施設での処遇率の向上は、高次脳機能障害そのものに対する理解が深まったため、これまで処遇していた利用者の中の当該障害該当者の判断が可能になったためと思える。
図2
|
高次脳機能障害者処遇率(%)に関する全数調査と
回答率32%調査との比較
|
|
|
今回の全数調査で把握した、処遇人数分類別施設数を、施設の種類別に示したものが図3である。高齢者施設において10人以上処遇している20施設のうち、50人以上の大規模入所型の施設で受け入れているのが15施設を占める。残りの5施設はすべて通所型で処遇されている。高齢者施設における利用者症状の多様さと同時に、ケアの困難さが推測できる。
図3 高次脳機能障害者施設別処遇人数(全数調査)
調査は香取保健所、海匝保健所管内にある25ヶ所の病院の中から、福祉施設の機能を併せ持つ2ヶ所を除いた23ヶ所の病院を対象に調査を実施した。
表3
地域 |
病院数 |
香取保健所管内 |
10 |
海匝保健所管内 |
9 |
八日市場地域保健センター管内 |
4 |
|
調査の方法:10項目にわたる調査用紙をリハビリスタッフ、ソーシャルワ―カー、または病院長宛に送付
回答数: 15医療機関(65.2%)
ア、病床規模別に見た高次脳機能障害者の利用状況を表4に示す
表4
定床数 |
高次脳機能障害者の有無 |
|
いない |
1〜3人 |
4〜6人 |
7〜10人
未満 |
10人
以上 |
総計 |
100床以上
20床以上100床未満 |
1
1 |
2 |
2 |
1
1 |
6
1 |
10
5 |
総計 |
2 |
2 |
2 |
2 |
7 |
15 |
|
大まかではあるが高次脳機能障害者を10人以上受け入れているのは100床以上の大規模病院がほとんどであった。
イ、高次脳機能障害者支援で困っている内容
高次脳機能障害者支援で困っている内容とPTやOTなどのリハスタッフの職種数との関係を図4に示す。
図4 在職職種数と支援困難を感じている項目の種類について
困っていることが「ある」と回答した病院に対して、「医療」「生活・介護」「社会参加・就労」「経済」「権利擁護」「その他」の5つの領域からなる11の予想される困難な内容についての質問に対し、リハスタッフがいない病院では困っていることはあがらなかった。医師や看護師のみだけでは困っていることを相談できる場面が少ないのではないかと思われる。
しかし、リハスタッフが1〜3職種の病院では困っている内容がいくつもの領域から挙がっている。またソーシャルワーカーを含む全ての職種がそろっていると、医療の問題は比較的解決しやすい反面、生活や社会復帰の問題は発見できても、支援の限界があることが窺える。
ウ、高次脳機能障害者支援に関する連携先
困っていることに対してどのような機関と連携を取っているかを「医療」「生活・介護・経済」「就労」「その他」の4つの領域からなる13の具体的な機関を挙げ、ソーシャルワーカーが「いる」「いない」の別で比較した。
図5 ソーシャルワーカー在職の有無と、連携先の種別について
ソーシャルワーカーのいないところでは他の医療機関との連携が最も多く、次いでは介護保険や福祉施設に関するものであった。これはシステムとして成り立っていれば、連携は取りやすいのではないか。またソーシャルワーカーのいる病院では地域で暮らしていくのに必要な、医療から生活・就労に関する全ての機関とシステムのあるなしにかかわらず連携していることがわった。
高次脳機能障害の実態は未だ良く知られておらず、病院が問題の第一の発見の場と思われる。また、当該障害者の支援は、生活・介護のみならず、就労や権利擁護など多岐にわたっている。その支援のためには保健・医療・福祉のみならず、多種類の機関との連携が不可欠である。その連携のためにはソーシャルワーカーを始めとする、多職種のリハスタッフが重要な役割を果たしている。
高次脳機能障害者が医療から福祉や社会参加、就労など次のステップに進んでいくための支援は医療からそれ以外の機関へいかにつなぎ、連携するのかにかかっている。それには広い視点で支援を展開することが出来るソーシャルワーカーが重要な役割を果たすことが出来る。
また医療と地域生活をつなぐシステムとしては地域リハビリテーションが有効である。それには多職種がかかわるが、それらをつなぐ役割としてソーシャルワーカーを位置づけることが、システムを有効に機能させる手段であるといえる。
今回ケースの高次脳機能障害に関する評価、結果報告も含めて検討したのは、身体障害者療護施設(入所)1事例、知的障害者更生施設(通所)1事例、知的障害者更生施設(入所)1事例、知的障害者授産施設(通所)1事例の4施設4名であった。家族が参加できなかった1事例を除いて、結果報告は本人・家族を中心に行った。施設職員が参加したのは3施設であった。
評価のための実施検査は、WAIS-Rを使用した。
−施設非利用者の評価と相談ケースの問題別、支援施設の検討−
今回7事例の相談があった。これまで高次脳機能障害に関してどの機関窓口にもかからず、当相談事業に直接依頼があったのが事例である。非施設利用者の場合は、評価と同時に検討会も含め問題解決のためのスケジュールを立てたこと、地域で支援できる機関にいる人たちと必ず連携をとって方向性を検討したこと、本人の了解を得て市町村の保健または福祉行政窓口担当者も結果報告に同席してもらったことである。同席できない場合は、地域コーディネーターとともに、市町村の保健または福祉行政窓口担当者にも結果を報告した。とくに障害者相談センターとは市町村相談事業の位置づけで本事業に協働で取り組めたこともあり、千葉リハビリテーションセンターという医療機関、障相センターという県の福祉行政機関に加えて地域支援の実態を把握するコーディネーターが市町村健康福祉事業の支援をすることで、具体的で連続的な情報の共有が可能になった。そのため、支援内容も具体性が増したと思える。
通番号 |
氏名 |
受傷時
年齢 |
原疾患 |
ワンストップ
機関 |
救急受け付け
医療機関 |
年齢 |
現所属 |
疑われる
高次脳機能障害 |
中心問題 |
日常的施設利用者 |
1 |
T. T |
6 |
脳挫傷 |
|
旭中央病院 |
28 |
みんなの家 |
言語障害
構成力障害
注意障害
記憶障害 |
福祉作業所での対人関係トラブル |
2 |
O. S |
12 |
脳腫瘍 |
|
千葉県がんセンター |
34 |
聖家族園 |
失語症 |
自立生活準備支援プログラム |
3 |
O. M |
16 |
頭部外傷 |
|
旭中央病院 |
20 |
聖家族園作業所 |
注意障害 |
家庭内での自立生活支援に向けての準備 |
4 |
K. M |
46 |
交通事故 |
|
松戸市立病院 |
51 |
聖マリア園 |
失語症
感情失禁 |
施設生活の充実のためのプログラム |
日常的施設非利用者 |
居住地 |
1 |
I. M |
7 |
脳挫傷 |
市役所
福祉課 |
県立佐原病院 |
31 |
佐原市 |
注意障害
構成力障害
知的障害 |
福祉的就労困難 |
2 |
K. J |
|
アスペルガー症候群? |
保健所 |
|
|
旭市 |
高次脳機能障害としては非該当 |
社会不適応
引きこもり気味 |
3 |
K. K |
24 |
脳腫瘍 |
地域療育
支援コーディネーター |
旭中央病院 |
36 |
大栄町 |
言語障害
遂行機能障害 |
自立生活維持 |
4 |
K. M |
13 |
脳挫傷 |
高次脳
相談窓口 |
旭中央病院 |
|
蓮沼村 |
記憶障害
遂行機能障害 |
一般就労
職場不適応 |
5 |
H. S |
35 |
脳挫傷 |
市役所
福祉課 |
旭中央病院 |
55 |
旭市 |
失語
遂行機能障害 (?) |
自立生活維持 |
6 |
A. X |
21 |
脳挫傷 |
高次脳
相談窓口 |
旭中央病院 |
|
波崎町 |
記憶障害? |
社会生活復帰不安 |
7 |
Y. T |
17 |
脳挫傷 |
町保健
センター |
成田日赤 |
42 |
山田町 |
構成力障害 |
社会生活不適応 |
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施設費利用者の支援の中で、今回最も時間がかかったのは、一般就労者の職場での不適応状態に関する環境調整であった。WAIS-R、TMT、PCRS、BADS、WMS-Rの検査を実施し、そのつどご本人に結果を返しながら障害の自覚をしてもらう作業にかなりの時間を費やした。初めの評価検査実施が10月9日で、最終評価検査であるWMS-Rの結果報告が3月20日時点でまだできていない。しかし、この間、検査を実施しながら障害を指摘していくことで、これまでのような「バカにしている」とか「相手のいうことは事実無根である」といった感情的な拘りはかなり薄れてきた。現段階では、障害者手帳取得に関しても否定的な感じではなく受け止められるようになっており、万が一離職という事態になっても、障害者職業センターで、職能判定およびより適切な職業選択、ジョブコーチによる支援などを利用する気持ちになっている。
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