ごあいさつ
平成13年度からはじめた、厚生労働省補助事業「高次脳機能障害支援モデル事業」を展開していく過程で、当該障害者の地域での生活を支援していくシステムの整備とネットワーク化の必要性を、ヒシヒシと感じる毎日でした。そんな中、日本財団さんのご好意により、助成事業の対象として採択していただき、香取・海匝障害保健福祉圏域をモデル地区として、支援システムの確立と同時にシステム間のネットワーク構築を試行することができ、深く感謝いたします。
この事業を通じて、知的および身体障害者更生相談所である千葉県障害者相談センターの皆さまと協働で事業に取り組むことができたこと、地域での中核地域生活支援センター等のコーディネーターの皆さまとの連携が図れたこと、そして海匝地区で高次脳機能障害者の支援のための研究会を、関連施設の方々と継続して開催することができるようになったことが、なによりの収穫でありました。
高次脳機能障害ということば自体になじみがなく、ご本人・ご家族はもとより、こうした方々を支援する専門の機関においでの方々でも、ご理解いただくことが困難です。しかし、今回の事業の中で、スタッフが香取・海匝障害保健福祉圏域の140ヵ所全ての社会福祉関係施設にお邪魔して、高次脳機能障害の具体的な特徴も含めお話しさせていただく機会を得ることができました。全ての市町の保健・福祉関係機関の皆さまから、実態把握の個人票に関するアンケート調査にご協力いただきました。
本当に多くの皆様方のお力を得て、今回の事業を一応まとめることができましたことは、感慨無量です。
なお、日本財団の担当者である外海様には、励ましと温かいご配慮をそのつどいただきまことにありがとうございました。
拙い事業報告ではございますが、スタッフが精一杯の気持ちを込めて創りあげたものです。ご一読いただき、ご指導、ご鞭撻いただければ幸いです。
2004年3月
千葉県千葉リハビリテーションセンター
センター長 北原 宏
★高次脳機能障害者への支援事業の背景
近年交通事故や脳出血等による後遺症として、身体障害の問題が改善しても、失語や記憶障害など高次脳機能に後遺障害を持つ方々も増加していると思われる。しかし、高次脳機能障害という診断基準さえ共通の合意がなされていない状況であり、医療機関においてもこうした障害に対応できるところは、全国的に見てもごくわずかである。平成13年度より、厚生労働省も高次脳機能障害支援モデル事業を開始したところであるが、内容的には診断基準の確立と症状やニーズに応じた訓練プログラムのモデル化の試みが緒についたばかりである。
★当事業を立ち上げたきっかけ
我々は平成14年度、県内教育・福祉・医療施設への当該障害者存在の有無に関するアンケート調査を実施した。今後、当該障害者が地域生活を営むための支援をするにあたって、各人の生活圏内にある支援施設を育成していく課題が残されている。前述したように、平成13年度より、厚生労働省も高次脳機能障害の標準的な「評価基準」の確立と「医療的・社会的・職業的リハビリテーション訓練プログラム」の体系化および「社会復帰・生活・介護支援プログラム」のシステム化を目的として、10道府県および政令市において支援モデル事業をスタートさせた(平成14年度には12道府県および政令市に拡大された)。
千葉県においては、当該事業の取り組みは始まったばかりであり、現段階ではモデル事業で可能な事業も地方拠点病院である千葉リハビリテーションセンター完結型である。今後当該モデル事業で得られた成果を活かし、高次脳機能障害者の地域在宅生活を安定したものにしていく必要がある。それには、障害者が生活する地域での支援を受け持つ施設に、必要とする情報や技術を共有化するための援助をしながら、地域特性に応じたネットワークを生活圏内の支援施設間で構築していくための手がかりを作る必要がある。全県下で同時にこうした取り組みを始めるには、当センターの実績もなく、千葉県の体制も整ってはいない。まずは香取・海匝というモデル地区のネットワーク構築が手がけられれば、今後一般施策への弾みがつくと考えられる。
★当該事業の長期的展望
こうしたネットワーク構築が県内各地域で確立できれば、当該障害者のみならず、福祉・教育・医療のサービスを必要とする多くの障害者にとっても、より住みやすい地域環境整備が進むのではないかと考える。中核地域生活支援センター構想にあるように、障害や年齢の違いに拘らず、地域在住生活者からもたらされた相談を受け付け、ニーズに応じた支援を具体的に提供できるための地域ネットワークの構築をしていくための一助となれば、そこでの実績の蓄積は、横断的・複合的な支援の展開に弾みをつけることになる。
当センターが平成14年度実施した病院調査からの推計では、香取・海匝圏域における高次脳機能障害有病率は74.8/10万人とされる。今回の調査対象になっていない、施設処遇のみの方や在宅で医療機関を利用していない方も考慮に入れると、当該圏域での高次脳機能障害有病者数は、300人前後と推測される。
第1の柱:受け入れ施設サポート事業
(1)平成14年度当センターで実施した学校・社会福祉施設等調査において、香取・海匝圏域の総施設数264施設。そのうち高次脳機能障害者がいると答えた施設数27施設である。
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学校 |
知的障害 |
児童福祉 |
身体障害 |
老健施設 |
訪問看護 |
精神障害 |
その他 |
有回答(数) |
80 |
10 |
3 |
|
20 |
3 |
|
1 |
高次脳機能障害者がいる |
10
(13%) |
3
(30%) |
1
(33%) |
|
10
(50%) |
3
(100%) |
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|
興味ある |
8 |
3 |
1 |
|
7 |
3 |
|
|
高次脳機能障害者がいない |
70 |
7 |
2 |
|
10 |
|
|
1 |
興味ある |
54 |
3 |
|
|
10 |
|
|
|
無回答 |
69 |
16 |
2 |
2 |
42 |
10 |
6 |
|
対象施設数 |
149 |
26 |
5 |
2 |
62 |
13 |
6 |
1 |
|
少なくとも、上記27施設はすべて訪問して、実態聞き取り調査を実施する。必要に応じて、支援困難対象者の適応行動および認知評価も実施し、支援プログラム作成に際しての参考にできるようにする。
(2)上記調査無回答施設147施設に対し協力依頼をした上で、再度実態調査を実施。実態把握率を6割以上とする。
(3)要請があればケース検討会を開催。その際すべての関係施設に開催を案内する。ケース検討会には、必要に応じて当センター専門職員も出席する。
第2の柱:広報・啓発活動事業
圏域保健所管内研修会における、当該障害と事業の説明。
圏域内社会福祉施設研修会での当該障害と事業の説明。
12/6千葉リハビリテーションセンター公開講座
シンポジウム「地域ネットワーク(仮題)」開催。
年度末をメドに、香取・海匝地域で市民公開講座開催予定。詳細未定。
対象:本人、家族、一般市民、学校関係、市町村窓口職員、保健センター関係者、企業(事業所)担当者、各社会福祉施設職員等
第3の柱:ニーズの掘り起こし事業
相談窓口開設
実施期間:平成15年8月21日〜10月31日
香取保健所管内→保健所に相談窓口を開設(毎週木曜日10:00〜12:00)
受付は当センター相談室にて予約。ただし、飛び込みの場合も受け付け可能な場合は即時対応。
海匝保健所管内→未定
中核地域生活支援センターにて相談窓口開設できないか?
毎週木曜日午後2:00〜4:00ではどうか?
受付は当センター相談室にて予約。飛び込みの場合も受け付け可能な場合は即時対応。
(1)当該障害者の地域での支援施設・機関の拡大(精神・知的・身体に拘らない)と、学校・事業所などへの指導援助の体系化。
(2)中核地域生活支援センター指定申請中のロザリオの聖母会と地域リハビリテーション支援センターである旭中央病院とが、地域リハビリテーション総合支援センターである千葉リハビリテーションセンターとの共同事業として繋いき、医療と福祉の連携・協働のモデルづくり。
【委員会の構成と役割】
事務局(案)
1. 構成
委員長1名 副委員長1名 事務局委員5名
2. 役割
(1)第1の柱:受け入れ施設サポート事業
実態聞き取り調査の結果検討 ケース検討会の開催
(2)第2の柱:広報・啓発活動事業
公開市民講座開催の計画および広報
公開市民講座の開催
(3)第3の柱:ニーズの掘り起こし事業
相談ケースの問題別、支援施設の検討
(4)ネットワーク構築に関する検証
(5)事業報告書作成
3. その他
委員の交通費は支給
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