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3章 今後の課題
1. 調査結果から
(1)サービスの利用状況について
高齢者は要介護度3、障害者は全身性障害者の状況にある人を主要な対象としてアンケートを行ったが、介護サービスの平均利用時間は高齢者が39.5時間に対し、障害者は284時間であった。日常生活動作を寝返りや排泄などの5項目について聞いた結果を見ると、障害者のほうが高齢者より日常生活動作の困難さの数値が高いということもあるが、それを差し引いても障害者のサービス利用時間がかなり多いことがわかる。
居住形態での関連でみると、高齢者は単身者の障害は比較的軽く、サービス利用は家族同居で主に他人介護を受けている人よりも少なかった。一方、障害者は単身者のほうが親族同居の人にくらべて圧倒的にサービス利用が多い。
この結果は、障害者の支援費制度では単身の重度障害者であっても地域で自立した生活をおくれているが、介護保険制度では単身で家族介護を受けられない人の在宅生活は難しいという実態を浮かび上がらせている。この点は今後の介護保険の大きな課題の一つである。単身の高齢者でも地域で暮らしていけるために現行の要介護認定や支給限度額の仕組みの改善が求められる。
また、サービスの事業者や介護の内容については、高齢者の約4割は家族が決定しており、特に同居家族から介護を受けている場合は家族の意向が介護の内容にも顕著に反映されている。一方、障害者の約8割は本人が決定しており、一人暮らしの年数が長い人ほど本人が決定する割合が高まる。
また、制度についての認知度も介護保険制度について5項目の質問をした結果では、全て理解している人は20%、全く知らない人は27%にのぼった。障害者にも支援費制度について類似の4項目の質問をしているが、全て理解している人は77%にのぼり、全く知らない人はわずか2.4%であった。
このことから、高齢者がサービスを自己決定・自己選択するような状況には至っておらず、高齢者自身の自己決定の力を高めていくためのプログラムが必要とされていることがわかる。
(2)サービス利用の意識について
サービス利用の状況と同じく、意識についても高齢者と障害者では大きな違いがあった。
まず、サービスの利用者負担であるが、介護保険は応益負担であるにもかかわらず、負担感を感じていない高齢者(負担でない・あまり負担でない)は52%であった。障害者の支援費制度は所得に応じた応益負担であるが、それでも負担感を感じる人(負担である・少し負担である)は65%にも登っている。
サービス利用の抵抗感について尋ねた項目については、高齢者の方がやや抵抗感を持っている人が多いものの高齢者・障害者ともに抵抗感がある人は20%前後であり、サービス利用に抵抗感がない人が多い。しかしながら、抵抗感がない理由に関しては高齢者は「サービスを受けることに慣れた」47%、「サービスを受ける権利がある」21%であり、障害者は「サービスを受ける権利がある」45%、「サービスを受けることに慣れた」23%と逆転している。障害者のほうが権利としてサービスを利用している人の比率が高いことがわかる。
また介護者に望むことについて質問した項目では、高齢者と障害者の差が目立つ項目として、「あなたの指示に従う」高齢者81.1%、障害者94.8%、「頼まなくても動く」高齢者76.7%、障害者41.8%、「介護の資格をもつ」高齢者77.6%、障害者55.5%、が挙げられる。高齢者のほうが介護者に対して依存的であり、障害者のほうが介護者に対しても自己決定の尊重を求めていることがわかる。
介護を利用しての社会参加を希望する内容について質問した項目では、買物をあげる人が35.7%いたが、高齢者の傾向として全般的に希望する人の割合は低かった。さらに、「特になし」は35.7%、「迷惑をかけるので望まない」は20%と、社会参加に積極的でない回答もめだった。高齢協の別の調査では、元気な(介護を必要としてない)高齢者の社会参加は意欲は高いことから、介護が必要という要因が社会参加の意欲を阻害していると考えられる。一方、障害者の介護を利用しての社会参加の意欲は「買物」「旅行」などを筆頭に総じて高く、「特になし」「迷惑をかけるので望まない」の回答は10%にも満たない。
介護を利用しての社会参加の意欲については、現行の介護保険制度では外出の介護は散歩程度しか認められていない一方で、支援費制度においては社会参加を目的に範囲の広いガイドヘルプが認められていることの影響も大きいと考えられる。高齢者の意識と制度の両面に課題があると言える。
このように、高齢者と障害者の介護サービスに対する意識は大きく違い、高齢者は「自己決定」「権利性」「社会参加」の視点が弱いと言え、今後のエンパワメントシステムを考える上で重要な鍵となる。
2. 調査協力団体からの感想・意見
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労協センター事業団 ヘルパーステーション 海の風
田中 弓子(福岡県大牟田市)
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高齢者エンパワメント調査研究には、要介護者のアンケート調査に関わったのがきっかけでしたが、その後、高齢協の片山さんから全国自立生活センター協議会の代表中西さんから中村さんと私から話が聞きたいと申し入れがあって2回の検討会議が持たれた。2回目は1回目のデータを元にしての討論が交わされたが今後私共が事業を展開していくにあたって大いに参考にしていきたい。
更に、2004年度は9月か10月にはアメリカヘの研修の予定があると聞いて最初はほんの些細なきっかけで応募したのがこれほどまでの大きなアンケート調査になるとは想像もできなかったので私自身驚いています。しかし、プライベートの事を言わせて頂くと仕事を離れると一主婦である私には10日間も家を留守にするという事は家族の反対もあって大変なことですが滅多にないチャンスなのでなんとか家族の問題をクリアしてこのチャンスを生かせて頂きたいと思っています。
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労協センター事業団 北九州地域福祉事業団 ヘルパーステーション まごころ
中村 多恵子(福岡県北九州市)
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いつかの全国地域福祉事業所長会議の席で、高齢者、障害者のアンケートを依頼された。高齢者達がどのように思っているのかという関心があった。
この度、その結果の報告が出来あがった。高齢者と障害者との違いがはっきり出ていた。もちろん平均年齢の差がある。高齢者は家族の同居が多く、障害者は一人暮らしが多かった。高齢者は一人での可能が多く、障害者は一人では出来ないことが多かった。それでも自立への希望が多く、障害があっても一人の人間としての人格を求めていられるのだと思った。私はまだ学習不足で、全国的にある自立生活センターのことをよく把握していない。恥ずかしいことだと思った。
この検討会議に参加して、代表の中西氏より教わることが多かった。これからはもっともっと視野を広げ、地域に居られる障害者や高齢者達が、尊厳をもって生きていけるような地域づくりに励まなければと思う。
今回の調査で印象的だったのは、一人暮らしをしている障害者の4人のうち3人は、一人暮らしの生活暦が10年以内となっている点である。この10年間で、一人暮らしをする重度障害者が非常に増えている。これは、10数年前は在宅介助サービスや自立支援団体が未整備だったため、自立する重度障害者は少なく、在宅介助サービスが充実し、自立生活センターが各地に設立され重度障害者の自立支援を活発に行うにつれて、施設をでて在宅で一人暮らし(自立生活)を行う障害者が増えてきたからである。
一般的に高齢者と障害者の介助は同じだと考えられているが、実際には大きく異なる。たとえば、高齢者の場合は、生活空間は自宅の中がほとんどであり、外出が非常に少ない。しかし、障害者の場合は、各年代の人がおり、社会参加活動が非常に多いのである。学校・就職・余暇活動など、生活のさまざまな場面で外出し、社会参加する。しかも、それらがほぼ毎日続いているのである。
また、利用時間数も高齢者に比べると非常に多い。最大720時間で、平均でも284時間ある。高齢者の場合は、家族同居がほとんどであり、介護保険の介助者以外にも、同居家族が介助を行っている。障害者の場合は、多くの人が一人暮らしをしおり、さらに、同居する親族から介助を受けている人も、45%が一人暮しを希望している。施設や親元での管理された生活ではなく、自由にあたりまえに生きられる、一人暮らしという生活スタイルを多くの障害者が求めているのである。
ここで重要なのは、自立生活センターの介助サービスに対する満足度が非常に高いということある。昨年から支援費制度が始まり、自立生活センターの介助システムは、支援費制度を利用し、当事者のニーズを尊重して提供されている。このような介助サービス、生活支援が多くの障害者のニーズに答えたものだからであろう。
人間らしい生活をもとめ、多くの障害者が施設をでて、一人暮らしをはじめた。支援費制度での利用者の増加は、この流れを如実に表している。今後もこの流れを断ち切らず、支援費制度を一層整え、障害者の地域での自立生活支援を推し進めていただきたい。
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