日本財団 図書館


通釘
 いろいろと呼名が有る様です(島角、いちょう、丸釘)当地では 通り釘と呼び、舳や戸立の取付部(海具との)に使用するものは登り釘と云い頭部も角張って大きく、板目を良く掴む様な形となっております。一般の通釘は細目の両端を打込の最終時に金槌で内面に多少折曲げて打込みます。
 
 
 海具用と無玉、敷用の2種が有り、仮締め用が亜鉛渡なしでした。
 海具用は厚さも薄く爪の長さも短く、敷用は(無玉も)爪も長く厚さも有るものです。
 
 倉庫より出したものは爪が直角ですが用うるときはやゝ開き気味とします。
 
 海具の場合は表面より3m/m程度埋込んだ形で打込みます。敷や無玉は内面は海具と同じですが、下面(底部)は12m/m程、埋込みます。之は底の磨耗を考えての事です。
 
升釘
 手持ちの記録にありますくぎと読むと思いますが、私の記憶には使用したことが無いので不明です。
 
凾金
 之は使用した事が有りませんが、一般的に使われるものですので記します。
 船の大きさで色々の寸法が有ります。中には銅製のものまであります。
 
 
 和釘は使用個所に依り亜鉛渡したものも有りますが、之は釘を長持ちさせたい所に・・・と考えられますが、実際を申しますと、職人言葉で云えば利きが悪く打込みは滑らかで良いのですが、表面がメッキのため滑らかでもあるが木部と良く密着しない感じで、修理時を見ますと、亜鉛華の作用で釘の周りが粉で覆われており、すぐに抜けて終まうものもあります。戦中后期(S-18年頃)には地元の鍛冶工が居なくなった故か、本州からの和釘が多く入って来ましたが、釘の形が少々違い太さも厚く、機械鍛造のため、先端部の薄い個所が無く、釘の先端を曲げて収める海折釘や通釘などは非常に困ったものでした。
 さて、下棚の通り前、登り、上棚の登りなど 釘止めの話をします。下棚は中央辺からや・へ順次、通り釘で止めます。棚板が傾斜しており、常に中心側へ寄らうとしておりますから下部からのつかせで充分に密着状況にあり、通り釘の孔をツバノミで探りを入れ、一度通してから通り釘を孔に向わせて打込み、根元近くなれば釘締めという道具を使って釘を最終までシッカリと打込みます。低い船底部ですから、金槌の振廻しも、なかなかの要領が要ります。上棚は前記の通りです。それぞれの通釘の使用個所には頭を彫ると称し、角形の釘頭部埋込用の孔を彫ります。之はそれぞれの個所で違いますので図解します。
 
下棚の通り前
 
無玉の場合
 
 敷の場合、敷への先ツバ孔は水平に、海具の方はやゝ傾斜しており、敷の先ツバ孔の深さは約75〜90m/mですから180m/m位の通釘は充分に利きが良い訳です。通り釘は亜鉛渡のものを使用し、釘頭に漆などは塗付しません。無玉の場合は上図の如く外面に亜折が付くので釘頭は彫りません。
 敷の通り前に使う通釘の頭部は登り釘の頭より多少小さく、登釘と一般通釘の中間の様な形です。登釘の頭部は柾目に直角近く、またがり、やゝ堅目の柾目をしっかりと押える様、巾も厚さもあり、丈夫に出来てます。又一般通釘の如く、頭部の両肩を曲げて打込むという事は無く当初より半円形に近いRがあり、之等のため、釘頭の彫込んだ凹面一ぱいの釘頭となります。
 
 外板の接手も嵌接です。当時の70尺級の船は海具6〜7枚の矧合せですから40尺少々の海具長さでは、必ず接手が必要となります。1ヶ所に集中しない様、組合せを程良い接手配分とします。各棚板の上縁は25m/m位の余裕をつけて仮削で仮仕上とし取付后、それぞれを仕上ます。(詳細次頁に)通り前は先に申した先ツバを行って釘孔を開けますが登りは現場に依り、孔開けとします。之は場合に依って長さのズレも出るからの事です。戸立と舳の接面となる棚板はその部を定規を当て平滑に均します。之は海具にも幾分の厚味の違いもあり内面は段々形状の多少の凹凸が有ります。各棚の接面の仕上げは次頁図の様になりますが、舳の部などに変った工作方法もありますので図で説明します。土海船(磯舟も同じ様な形)の棚板も少し説明しましょう。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION