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1995/12/16 産経新聞朝刊
【主張】論議の方向が違った中期防
 
 防衛庁の新しい中期防衛力整備計画(五カ年計画)が、十五日の閣議で決定された。防衛庁の原案より、五千七百億円少ない総額二十五兆一千五百億円、正面装備費は四兆二千八百億円(現中期防より一千六百億円減)になった。最後まで調整がもつれた主要装備のFSX(次期支援戦闘機)は、機数を防衛庁要求より十一機削減して百三十機調達、空中給油機は先送りされることで決着した。来年度末の国債発行残高は約二百四十兆円、その利息が十四兆円に上り、来年度予算のほぼ二割を占める深刻な財政状態では、防衛力整備も格別の工夫が求められるところである。
 こんどの中期防は、さきの防衛計画の大綱で示された効率化、コンパクト化路線をいかに実践するかにあるが、このふたつは相反する条件になる。大綱が目指しているコンパクト化は、防衛費の削減と、若年人口の低減という防衛庁・自衛隊にとっての大敵を防ぐう回作戦だっただろう。しかし、組織をスリムにしても、戦力レベルが下がるのでは国防をまっとうできない。コンパクト化は効率化を伴わなくてはならないが、効率化は近代化なくして達成を見込めない。よって防衛費は相対的に増えていくという矛盾を内在する傾向に向かうのである。
 そのひとつの象徴的兵器システムが空中給油機だった。わが国のはるか沖合から発射される長距離機上発射ミサイルを防ぐのがその主な目的だが、わたしたちは、空中給油機導入を論じることによって、将来の自衛隊のあるべき姿を描いてほしいと願っていた。方角違いの論戦で導入が先送りされたのはまことに残念だった。
 空中給油機導入に反対する急先ぽうだった社会党は、「近隣諸国に脅威を与える」と、その主たる反対理由を挙げていた。果たしてそうか。同じような論は、昭和四十八年のF4ファントム戦闘機導入をめぐる国会論議でも聞いた。ファントムについている空中給油装置と爆撃照準器は近隣諸国に脅威を与えるから取り外せ、と社会党が迫り、多大な手間をかけて外してしまったのである。安全保障論議は二十年以上、一歩も進歩していないのか。
 
 
 
 
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