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1993/11/13 産経新聞朝刊
【主張1】世界が期待する日本PKO
 
 カンボジアとモザンビークにおけるわが国の国際平和維持活動(PKO)の実態はどうなっているのか。どれほどの国際評価を受けているのか。今後の問題点はどこにあるのか。
 日本PKO本部、つまり総理府国際平和協力本部は十二日、カンボジアPKOが終了し、モザンビークPKOの八カ月延長が決定したことで、国際平和協力法に基づき、これら二つのPKO活動の実施状況について、国会報告を行った。
 同報告は、まずカンボジアPKOについて、(1)停戦監視(2)選挙(3)文民警察(4)道路、橋などの修理を中心とする後方支援の四分野にわたって行われた結果、カンボジア和平の基礎が構築されたとし、こうしたわが国の貢献は誇りであり、国際的に高い評価を得たばかりでなく、国内的にも国民の理解と支持を深めていると強調。今回のPKO活動で文民警察の高田晴行警視と国連ボランティアの中田厚仁さんが犠牲になったことは誠に痛ましく残念だが、今後は安全確保を最大のテーマとして検討したいと結んでいる。
 モザンビークPKOについては、本年十月三十一日までの活動期間が八カ月延長されたことに基づいて、司令部業務と輸送業務に携わる日本PKO五十三人の活動状況が報告されるとともに、今後は新たに航空自衛隊も加わって、C−130H輸送機を駆使し、空からの平和協力業務を展開することが表明された。
 しかし、日本PKOの今後の活動に課題がないわけではない。むしろ課題は多いと言える。想像もしない危機に直面した際に、どう対処したらいいのか。武器使用の問題も含めて、検討・研究をしていかねばなるまい。わが国の指揮と国連の指図の問題をどう調整していくか。この「二君に仕える」というPKOが抱える構造的問題をどう解決するか。あるいは、通信手段を充実することによって、要員の状況を常時把握できるシステムをつくることも必要だろう。
 問題は日本PKOのこれからの展開ではなかろうか。米国のアジア専門家グループは「日本のカンボジアPKO参加はアジア諸国の日本への警戒や敵意を大幅に後退させた」と評価している。総理府が行った調査によると、カンボジアPKOに対する評価は国内でも非常に高くて、六三・一%が「協力してよかった」と答えている。
 自信を持って活動し、「世界に貢献する日本」の使命感を持って、世界の期待にこたえてもらいたい。
 
 
 
 
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