カンボジアPKO(国連の平和維持活動)の実施計画などが八日の閣議で決定された。一千八百人以上の大掛かりな組織が、海外で人助けのために働くのは初めてである。新しい国際貢献へのスタートでもある。派遣隊員が職務を果たし、無事帰国されることを願ってやまない。
わが国はこれまでも国連を通じた国際貢献に寄与はしていた。たとえば、国連分担金は全体の一二・四五%を負担して世界で二番目。フランス、英国、中国を合わせた額よりも多くを受け持っている。それなのに「顔が見えない国」などといわれるのは、肉体を投入した貢献がほとんどなかったからである。国際貢献は、カネと心と筋肉の掛け算、三条件のどれが欠けても、結果はゼロになるのである。
いま国連の役割は急速に増大している。湾岸戦争での指導力は周知のとおりだが、東西冷戦構造の崩壊によって、ローカルな紛争が多くなり、その後始末のために、去年と今年だけで八つのPKOが組織された。わが国としても、憲法をたてに危険をともなう国際作業をさぼり続けるわけにはいくまい。遅ればせながら、目に見える貢献で手助けに乗り出そうというのである。この意味でも来年十月末まで、十三カ月余りにわたる派遣はぜひとも成功させたい。
派遣される隊員にはご苦労さまというほかない。破傷風、コレラ、狂犬病、日本脳炎、ポリオ、A型肝炎、B型肝炎、マラリアなどの予防注射が必要な土地柄、と聞くだけでおよその察しがつく。そんなところで天幕生活を六カ月。蒸し暑い気候のなかで、道路補修や架橋といった重労働が続くのである。病気と不慮の作業事故がもっとも心配される。
わずか八人だが、停戦監視要員の幹部隊員はもっと苛酷な任務になる。タイ国境十カ所、ラオス国境三カ所、ベトナム国境十カ所のチェックポイントは、人里離れた環境の悪い僻地。そんなところで丸腰のまま、はじめて顔を合わせる諸外国の隊員と共同任務につくのである。
こうした困難な仕事におもむく自衛官らが、持てる力をフルに発揮するにはなにが必要か。いうまでもない。健康とともに高い士気がかれらに活力を与えるのである。そして、その士気は国民から期待されている、とかれらが感じるときに引き出されることは、昨年のペルシャ湾への掃海艇派遣、雲仙岳、ことしの九州・風倒木派遣で見せた自衛隊員の活躍が示している。
スウェーデンのPKO待機軍の応募倍率がつねに十倍を越え、その高い士気と活躍ぶりが注目されているのも、政府が待機軍の社会的地位を高めることに意を注いでいるからである。
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