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2001/09/20 読売新聞朝刊
米同時テロ、海自イージス艦派遣へ 政府が対応7項目決定、後方支援を明記
◆避難民対策盛る
 政府は十九日夜、首相官邸でテロ対策関係閣僚会議を開き、米国の同時多発テロ事件に対する「基本方針」と、米軍によるテロ報復攻撃への支援策を中心とする七項目の「当面の措置」を決定した。小泉首相が同日夜、緊急記者会見し、発表した。首相はこれを踏まえ、情報収集を目的に海上自衛隊のイージス艦を九月中にもインド洋に派遣する方向で検討に入った。米軍などの後方支援を可能にする新法案が臨時国会で成立し次第、直ちに後方支援できるよう準備活動に着手する狙いがある。〈首相会見の要旨4面、関連記事2面〉
〈政府の米同時テロ対応骨子〉
▽安保理決議で「国際平和と安全への脅威」と認められたテロへの措置を取る米軍に、自衛隊が医療、輸送・補給などで支援できるように措置を講ずる
▽国内の米軍施設や国の重要施設の警備を強化するための措置を講ずる
▽情報収集のため自衛隊艦艇を派遣する
▽出入国管理で国際協力を強化する
▽周辺、関係諸国に人道・経済支援をする。パキスタン、インドに緊急の経済支援を行う
▽自衛隊による避難民支援を行う
▽経済システムが混乱しないよう各国と協調する
 
 政府は十九日夜のテロ対策関係閣僚会議で、米国での同時多発テロへの対応について、「米軍の報復攻撃への自衛隊の後方支援を可能にするため所要の措置を取る」「情報収集のため自衛艦を速やかに派遣する」――など七項目の支援策を決定した。基本方針として、「テロとの戦いを我が国の安全確保の問題と認識して取り組む」「同盟国の米国を強く支持し、世界の国々と一致結束して対応する」などを明記し、自衛隊の後方支援などのほか、〈1〉出入国管理などでの国際協力強化〈2〉インド、パキスタンに緊急経済支援〈3〉避難民の発生に対し、自衛隊による人道支援の可能性を検討する――ことなどが盛り込まれている。
 首相は関係閣僚会議に先立ち、与党三党首会談を開催し、基本方針と具体的措置を確認した。首相は同日夜の記者会見で、「今回のテロは、世界人類、民主主義に対する攻撃だ。米国はじめ関係諸国と協力しながら主体的な取り組みをしたい」と強調した。
 首相がインド洋への海自イージス艦派遣の検討に入ったのは、調査、研究などを定めた現行の防衛庁設置法に基づく。政治的には日の丸を掲げて目に見える形でテロ組織と戦う姿勢を示すと同時に、新法案が成立した段階でアフガニスタンなどを攻撃する可能性が高いとされる米軍への後方支援がどの程度できるか探る目的がある。
 防衛庁では、神奈川県横須賀基地を母港とする米空母キティホークが硫黄島での夜間離着陸訓練(NLP)を経て、二十六日にもインド洋に向けて移動するのを踏まえ、海自第一護衛隊群(横須賀)所属のイージス艦「きりしま」を派遣することを検討している。
 米軍などへの自衛隊の後方支援を可能にする新法案は、国連安保理が十二日、「テロリストの攻撃に対応するため、あらゆる手段を講じる」と決議したことを受け、今回の事態に限り、自衛隊が武力行使と一体化しない範囲で、医療、燃料などの補給、人員・物資の輸送などを実施する。内閣が二十七日開会の臨時国会に提出する方針だ。
イージス艦
 対艦ミサイルなど、多方向から飛来する十以上の目標に同時に対処できる「イージスシステム」を装備した護衛艦。コンピューターにより目標の捜索、探知、迎撃ミサイル発射などを自動で行う。海上自衛隊では九三年に「こんごう」が初就役し、以後、「きりしま」「みょうこう」「ちょうかい」と続き、現在は四つの護衛隊群に一隻ずつ配備されている。中期防衛力整備計画(二〇〇一―〇五年度)で、さらに二隻の導入が予定されている。
 
 
 
 
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