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1997/06/09 読売新聞朝刊
日米防衛協力指針見直し中間まとめ決まる 臨検・掃海など有事法制、政府検討へ
◆日本周辺40項目
 【ホノルル7日=飯塚恵子】日米両国政府は七日午前(日本時間八日未明)、米ハワイ・ホノルル市内で局長級の日米防衛協力小委員会(SDC)を開き、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)見直しの中間とりまとめを決定した。それによると、焦点の日本周辺有事の際の日米協力として、〈1〉米軍に対する補給・輸送支援〈2〉機雷掃海〈3〉経済制裁に伴う船舶検査(臨検)〈4〉非戦闘員退避活動――など計四十の検討項目を新たに明記。今後の対応として、日本有事における「日米共同作戦計画」と、周辺有事における「日米相互協力計画」を検討、策定する方針を明確にした。また、「法的・政策的な検討」を盛り込むことで、事実上、有事法制の整備を促しており、日本政府は、近く具体的な検討作業に入る方針だ。(中間まとめ要旨とポイント4面、関連記事2・3・5面)
 指針見直しは、昨年四月の橋本首相とクリントン米大統領が合意した「日米安保共同宣言」に基づき、冷戦後の新しい日米防衛協力のあり方を検討しているもの。日本有事から周辺有事に重点を移しているのが最大の特徴で、今秋に新ガイドラインを最終決定する予定だ。中間とりまとめは、具体的な日米協力について〈1〉平時〈2〉日本有事〈3〉日本周辺有事――の三分野について検討しており、平時協力では、国連平和維持活動(PKO)や、国際救援・緊急援助活動にも協力の対象範囲を広げた。
 焦点の周辺有事では、〈1〉人道的活動〈2〉捜索・救難〈3〉米軍支援――など六分野について、具体的な検討項目を列挙している。このうち、補給、輸送、整備、医療などの米軍への後方地域支援では、活動範囲を「日本領域と、戦闘地域と一線を画した日本周辺の公海とその上空」に限定した。ただ、臨検や公海上の機雷掃海、米軍への補給・輸送支援や情報提供などについては、政府の憲法解釈が禁じる「集団的自衛権の行使」との関連で合憲・違憲の判断が難しい「グレーゾーン」があり、今後の課題となっている。
 中間とりまとめの決定を受け、政府は、長年の懸案となっている有事法制に本格的に取り組む方針で、来年の通常国会にも関連法案を提出することが検討されている。
 日本有事については既に、八一年に自衛隊法など防衛庁所管の法令、八四年に道路、建築基準、医療法など他省庁所管の法令の研究が終了した。周辺有事では、避難民輸送に自衛隊艦船を使用するための自衛隊法改正や、補給・輸送支援のための日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定などが対象となる見通しだ。
 しかし、有事法制については今後、政府部内や各政党間で激しい論議を呼びそうだ。
〈日米防衛協力指針=ガイドライン〉
 日本への武力攻撃や日本周辺地域での有事に対し、日米両国がどう協力して対応するかを定めた基本構想。両国の防衛面の役割分担や自衛隊と米軍の作戦面の協力などの大枠を示すもので、具体的な内容は、指針に基づいて策定する共同作戦計画などで別に定める。
 指針は、国会承認を伴う条約や協定のように法的拘束力は持たない。しかし、今回の中間とりまとめは、「立法、予算、行政上の措置を義務づけない」との現行の「義務なし規定」を残しながらも、「具体的な政策や措置に適切に反映されることが期待される」との表現を追加し、両国政府に指針の具体化を求めている。現行指針に基づき、日本有事の共同作戦計画の研究が行われたが、抜本的な法整備には至っていない。
 
 
 
 
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