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2003/03/29 毎日新聞朝刊
[クローズアップ2003]イラク戦争、後半国会にズシリ 有事立法、急ぐ与党
 
 03年度予算が28日成立したが、後半国会では、イラク戦争の行方が大きな影響を与えそうだ。北朝鮮への対応と合わせて、「危機バネ」が与党を有事立法へと駆り立て、4月中旬の衆院通過を目指す動きが出ている。戦争長期化による経済悪化や復興費用負担増への懸念が高まり、与党内から補正予算要求が強まるのは必至だ。一方、自衛隊派遣を可能にする復興支援新法は政府・与党内で意思統一ができておらず、法案提出の行方は不透明だ。
 自民党の中川秀直国対委員長は28日、「有事立法は今度で3国会目、個人情報保護法案は5国会目だ」と記者団に語り、成立に強い意欲を示した。
 政府・与党は昨年の通常国会から継続審議となっている有事法案について「すでに70時間以上審議した」として、短時間の審議後の採決を主張。武力攻撃事態の定義の明確化や、テロ・不審船対策などの整備を盛り込んだ修正案を4月の第2週に衆院特別委に再提出し、18日ごろの衆院通過を目指している。
 イラク戦争や北朝鮮の弾道ミサイル発射実験再開の可能性などで強まる「有事」の気分が法案審議を急がせている。統一地方選の年は4月を「政治休戦」にするのが通例だが、自民党は「今年は平時ではなく戦時下の国会」(国対幹部)として、週末を除いて、選挙期間中も本会議を実施する方針を打ち出した。
 一方、民主党は有事法案の対案作りに入っているが、旧社会党系議員を中心に異論が根強いため、意見集約が進んでいない。対案を準備する民主、自由両党と強い反対姿勢の共産、社民両党まで野党間の足並みもそろっていない。
 一方、個人情報法案は来週の本会議で趣旨説明を行う。野党側は対案を用意しており、審議に応じる姿勢を見せている。 大島理森農相の元秘書を巡る献金疑惑は、引き続き焦点になりそうだ。衆院予算委員会で4月1日に予定されていた参考人招致は先送りになったままだ。自民党国対幹部は「国会の与野党の約束は重い。出席拒否すれば証人喚問要求にまで発展する」と述べており、与党内でも大島氏の進退を危ぶむ声が出ている。
【大塚卓也、浜名晋一】
◇長期化すれば、補正の公算大
 小泉純一郎首相は28日の会見で「(予算の)執行でカネが隅々まで行き渡ることが大切」と述べ、03年度予算が成立したばかりの段階で、補正予算は考えていないことを強調。塩川正十郎財務相も同日、「(イラク)復興資金の問題はまだ先のこと」と指摘した。しかし、戦争が長期化すれば、経済悪化に拍車がかかり、復興費用が膨らむことも予想され、復興支援と景気刺激の両方をにらんだ補正予算編成を余儀なくされる可能性が高い。
 戦争開始後も、株、為替、原油の各市場は比較的落ち着き、模様眺めの状態が続いている。
 ただ、戦争が長引く兆候が見え始めれば、一気に株安、ドル安・円高、原油高に転じる危険性が残っている。先行き不透明感が強まれば、個人消費や設備投資意欲が一層冷え込み、景気が再び悪化に向かうのは必至だ。
 復興支援について、政府は「現段階では当初予算の枠内で対応可能」(財務省)と見るが、戦争長期化は復興費の増加を招く。戦費がかさめば、米国財政をさらに圧迫する。米政府は日本に戦費負担を求めることはしないと説明しているものの、方針が変更されないとは言い切れない。
【川俣友宏】
◇03年度予算成立
 参院は28日午後の本会議で03年度予算案の採決を行い、与党3党などの賛成多数で同予算案は可決、成立した。 一般会計の総額は81兆7891億円で、政策的経費の一般歳出は今年度当初予算比0・1%増の47兆5922億円。
 
 
 
 
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