2001/10/05 毎日新聞朝刊
米国同時多発テロ 変だよ小泉さん「自衛隊になぜ固執」−−アジアから疑問と反発
◇やっぱり・・・変だよ小泉さん
同時多発テロに対する米国の報復攻撃の緊張が高まる中、自衛隊の派遣を含む「テロ対策支援法案」が5日、閣議決定される。自衛隊を「活用」し、従来より踏み込んだ支援を始めようとする日本政府の姿勢は、アジアの中でどのように映っているのか。日本の国会審議に熱い視線が注がれようとしている。
【亀井和真】
「反テロの国際協調を全面支持する政府の姿勢は分かる。でも、なぜ自衛隊にこだわるのか」。韓国の日刊紙・朝鮮日報東京特派員の権大烈(クオンデヨル)さん(33)は疑問を感じる。「韓国は、ベトナム戦争の米国支援のため国軍を派遣して死傷者が出た苦い記憶がある。後方支援とはいえ、日本も戦闘に巻き込まれかねない。また、派遣の理由を説明できないと、アジア各国から大きな誤解を招く」と話す。
アジア最大のイスラム国家、インドネシアの総合ニュース誌「ガンマ」の大川誠一・東京支局長は「日本が加担した場合、イスラム教徒から反発を招く恐れがある」と話す。同国では、イスラム原理主義者だけでなく知識層の間にも、日本の姿勢に反発が出ているという。「メガワティ大統領は米国支持を表明したが、アフガニスタンへの攻撃で市民が巻き込まれた場合、邦人に危険が及ぶ可能性もある」と危惧(きぐ)する。
山口県・岩国基地の監視を続ける市民団体メンバーの田村順玄さん(56)は先月21日、神奈川県の横須賀港から米軍空母「キティホーク」が出航した際、海上自衛艦2隻が「護衛」を行ったことが気になってならない。「法律をつくろうがつくるまいが何でもできてしまう。そんな懸念をもたれないか心配だ」と話す。
◇懸念示す論調も
アジアの中で、韓国とフィリピンは、日本に次いで米軍とのかかわりが深い。両国の事情をみる。
●韓国
【ソウル澤田克己】韓国には、約3万7000人の在韓米軍が展開する。韓国政府は先月24日、医療支援団と輸送手段の提供など「非戦闘要員」に限定した米国支援策を決めた。「現時点で戦闘要員の派遣は検討していない」と説明する。与野党は、現段階での支援策について「適切なものだ」と評価している。世論からも、強い反発はない。
だが、韓国と同レベルともいえる日本の支援策に対する評価は複雑だ。韓国紙には「テロ事件を契機に自衛隊の活動の幅を広げようとの意図がうかがえる」などと、日本の動きを警戒する社説も掲載された。
●フィリピン
【マニラ井田純】フィリピン政府は、アキノ政権時代に返還されたクラーク、スービックの両元米軍基地の米軍使用を認めたほか、アロヨ大統領は国軍の派遣にも言及している。世界貿易センタービルでは、100人を超すフィリピン人がテロに巻き込まれた。
対米軍事協力の強化は以前から目立っていた。日本に対しても、大統領自身がアジア太平洋地域での「軍事的役割への期待」を表明、自衛隊派遣をめぐる懸念は示していない。中国をけん制する意図があるとみられる。
ただ、民意は揺れている。最近の世論調査では「米国の報復支持」は31%で、7割近くが「犯人の特定が先決」などと慎重姿勢だ。協力内容も「国軍の参加」は17%で、「医療スタッフ派遣」など後方支援が多数を占める。世論に影響力を持つカトリック教会が報復に否定的で、ウサマ・ビンラディン氏との関連が指摘される国内イスラム過激派「アブ・サヤフ」による「報復」への不安もあるようだ。
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