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1990/12/20 毎日新聞夕刊
政府、次期防衛力整備計画を正式決定 総額22兆7500億円、伸び抑制3%に
◇ポスト冷戦、量より質
 政府は二十日午前、安全保障会議と臨時閣議を相次いで開き、九一―九五年度の五カ年を対象とする次期防衛力整備計画(次期防)を正式決定した。ポスト冷戦時代の新計画は、「量より質」の防衛力整備を目指し、装備の更新・近代化を基本方針にすえている。この中で新規に空中警戒管制機(AWACS)と新多連装ロケット・システム(MLRS)を導入するなど、引き続き「洋上防空」能力の確保などに力を入れる一方、自衛隊員の処遇改善や指揮・通信など後方部門の充実も図る方針だ。しかし、所要経費は二十二兆七千五百億円で、年平均伸び率が現在の中期防衛力整備計画(中期防)より二・四ポイント下回る三・〇%に抑制されたため、減耗補充が追いつかず、期間中に総数で戦車が六十九両、護衛艦は四隻減少する計算だ。さらに、懸案の陸上自衛隊の充足数を十五万三千人を上限としたうえで定数削減についても検討、期間中に結論を出す方針を示しており、わが国の防衛力整備も緊張緩和の波に押され、大きな転換点を迎えている。(2面に計画の概要)
 次期防の正式名称は「中期防衛力整備計画」で(1)計画の方針(2)主要事業内容(3)整備規模(別表)(4)所要経費(5)計画の見直し等――の五項目から構成されている。
 計画の方針では、平時における防衛力の整備水準を定めた「防衛計画の大綱」(七六年閣議決定)を踏まえ、「効率的で節度ある防衛力整備に努める」としている。
 また、情勢の変化に対応するため計画を三年後に見直すが、その際、所要経費の総額の範囲内で修正を行うとしている。
 防衛の基本としては、従来通りシーレーン(海上交通路)防衛や着上陸侵攻対処、防空能力などを重視する考えを示している。
 主要装備は「大綱」の整備水準が、今年度で終わる現在の中期防衛力整備計画(中期防)でほぼ達成されるため、更新と技術の進歩に合わせた近代化を図る方針だ。
 具体的には、航空自衛隊は低空侵入に対処するため管制・指揮機能を持つAWACS四機を新たに導入するのをはじめ、主力戦闘機F15を四十二機調達。調達機数は中期防の六十三機に比べると大幅に減ったが、次期防完成時には二百四機体制になる見通し。
 海上自衛隊は、現中期防で洋上防空の強化のため二隻調達した多目標同時対処能力を持つイージス艦をさらに二隻導入。シーレーン防衛の主役である対潜哨戒機P3Cも八機導入、百機体制を目指す。しかし、期間中、護衛艦十四隻が一線から退くのに対し、導入は十隻で、六十二隻の護衛艦が五十八隻体制になる。
 陸上自衛隊は、着上陸対処の目玉としてMLRS三十六両、90式戦車は百三十二両導入するが、61式戦車の退役で総数が千二百五両から、千百三十六両に減少する。
 懸案の三幕、内局の情報部門を一元化する情報本部構想の設置方針を決め、次期防で導入を見送った空中給油機、OTH(超水平線)レーダーは今後の検討課題とし、ポスト次期防に含みを残した。
 経費内訳は正面装備費五兆一千億円、後方支援整備九兆一千五百億円、人件糧食費八兆五千億円。正面装備の新規契約額は五兆円で、現中期防に比べマイナス二・三%となり、九六年度以降の後年度負担は一兆九千九百億円となっている。
◇計画の骨子◇
▽五カ年の総額 22兆7500億円(90年度価格)
▽正面装備費   5兆1000億円
▽後方整備費   9兆1500億円
▽主要調達兵器
 【陸】 90式戦車132両、新多連装ロケット・システム36両(2個隊)
  地対艦ミサイルSSM40基
 【海】 護衛艦10隻、潜水艦5隻、P3C対潜哨戒機8機
 【空】 F15要撃戦闘機42機、早期警戒管制機(AWACS)
  4機、地対空ミサイル(ペトリオット)1個群
 
 
 
 
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