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1987/10/22 毎日新聞朝刊
FSXはF16をベースに日米共同で開発することを正式決定
 
 防衛庁は二十一日、航空自衛隊の次期支援戦闘機(FSX)を米ゼネラル・ダイナミックス(GD)社のF16をベースに、日米共同開発することを正式決定した。今月二日の日米防衛首脳協議でF16と米マクダネル・ダグラス(MD)社のF15Jの二機種に絞られていたが、日米官民専門家協議に基づく最終検討作業の結果、F16改造型はF15J改造型に比べ防空・着上陸阻止能力で若干劣るものの自主開発案の要求性能は満たし1)所要経費2)費用対効果3)レーダーに捕そくされにくいステルス性−−などで優れている、と判断した。経費は開発費が千六百五十億円と自主開発案の千八百−二千億円を下回り、一機当たりの単価は五十一億五千万円で自主開発案の約五十億円とほぼ同額。防衛庁は六十三年度予算に基本設計費を追加要求するが、計画どおりに推移すれば六十八年夏に試作機が初飛行し、六十九年度に量産の予算要求、七十二年度に初号機が納入されることになる。
 ワシントンでの栗原防衛庁長官とワインバーガー国防長官との首脳協議をうけ、今月十二日から十七日までの間、防衛庁で国防総省関係者も加わりGD、MD両社と三日間ずつ行われた専門家協議では、F16は性能向上のための大幅改造、F15Jはコストダウンが最重点となった。MD社はF15Jが日本でライセンス生産されている技術や生産ラインを活用することや、ライセンス・フィーなどを大幅に減額することで、開発費を約千九百億円、単価も八十億円を切るところまで歩み寄ったといわれる。
 しかしGD社側はF16の機体改造を大幅に認め、主翼、尾翼、さらに機体そのものにも日本の最新技術が活用されることになり、機体が軽量化、これまで難点とされた離着陸性能が解消されるうえ、ステルス性などはF15J改より優位に立った。さらに開発費、単価ともはるかに安く、費用対効果ではF15Jを上回り、自主開発案とほぼ同等の結果となった、としている。
 F16と比較した場合、FSXのF16改は機首部分の形状が変更され、自主開発案の“目玉”だった多目標に同時に対応出来るアクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーやコンピューターを駆使した統合コックピットが組み込まれる。また操縦席の下部にはCCV機能(運動性向上システム)を発揮する垂直カナードが付き、主翼にはステルス性を向上させる電波吸収材を使用するとともに一体成型の新しい複合材が用いられる。全般に自主開発案が備えていた日本の最先端技術は、ほとんどすべて組み込まれることになり、防衛庁は「自主開発と内容的に変わりない」と述べている。
 エンジンは現在、米国で新たに開発中のものが使用される見通しだが、F16の最大の弱点ともいわれていた単発エンジンであることについて、防衛庁は「事故率は十万飛行時間当たりF16は五・九件。F15の三・六件に比べると高いが、かつて航空自衛隊が使用したF104の二十五件などに比べるとはるかに低く、F16を否定する材料にはならない」としている。ただ今後の問題として、F16改に限らず一層、安全運用の工夫をする必要があることは認めた。
 同庁がF16に決定したことは、同日午後二時から開かれた自民党の国防関係三部会合同会議(国防部会、安保調査会、基地対策特別委)で了承され、二十三日の政府の安全保障会議に報告される。
 防衛庁はこの決定に基づいて早急に六十三年度予算に概算要求の枠内で、基本設計費を追加要求、七十二年度の初号機納入から五年がかりで現在の支援戦闘機F1との交替を図る方針だ。
 日本側にとっても「自前の戦闘機をなぜ作れないのか」という不満は一部に残るものの、日米防衛協議を機に米側がベース機の改造について大幅に譲歩した結果、防衛庁、空幕内部には「自主開発以上の優秀な戦闘機になる」という声さえ出ているほど。慢性化した貿易摩擦に加えて東芝機械のココム(対共産圏輸出統制委員会)規制違反事件で米国の対日不信を増幅させたという環境の中では、「今の日米間でとりうるギリギリの妥協の線(栗原防衛庁長官)という評価が、客観的にも、一応認められる。
 
 
 
 
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