四月から始まる学校完全週五日制の実施を前に、文部科学省は学習塾に自然体験や社会体験学習を行ってもらうよう協力を求めている。体験学習は大切だが、それを塾に求めるのは筋違いではないか。
もともと、旧文部省は塾を敵視していた。平成元年から三年にかけての第十四期中央教育審議会では、私立中学とその進学塾が偏差値競争をあおる存在としてやり玉にあげられ、塾は子供の個性をつぶす“武器商人”と非難された。平成五年、文部省が業者テストを禁止したさいも、その問題が埼玉県で塾帰りの女子中学生が殺されたことをきっかけに表面化したことから、同省は塾を批判していた。
文部省が塾を認知したのは、平成十一年六月に生涯学習審議会が学校と塾の共存を認める答申を出してからである。答申は「塾の指導によって子供たちが『学校の授業が分かるようになった』とか『勉強に興味・関心をもつようになった』などの評価を受けているものもある」と書いていた。
要するに、学校で十分に教えられない分を塾で補ってほしい−というものだ。塾はあくまで、国語や数学、英語など主要教科の学習を補完する存在として認知されたのである。しかし体験学習はやはり、学校側が四月から新設される「総合学習の時間」などを活用して行うべきであろう。
同省の調査によれば、塾に通う子供の割合は昨年、小学五年生で39%、中学二年生で50%と、以前より増えている。今の塾は、中教審などで批判された私立校受験のための進学塾だけでなく、補習塾や不登校児のためのフリースクールなどもかなりある。
本来、学校が十分な指導を行っていれば、これほど塾が繁栄することはなかったはずだ。現実は、授業すら成り立たない学級崩壊が増え、塾への依存度はますます高まっている。日教組はかつて、学力テストや補習授業に猛反対した。これが今日の子供たちの学力低下を招いた面も否定できない。
遠山敦子文部科学相は今年一月に発表した「学びのすすめ」と題するアピールで、学校に宿題や補習授業を求めた。こんなことは、言われなくても当然やるべき学校の先生の務めではなかったのか。塾に協力要請する前に、公教育の立て直しが急務である。
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