政府の総合規制改革会議は今回の第一次答申で、公立小中学校の選択制の導入を求めた。通学可能な範囲で、子供や親が学校を選べる制度である。日本の公教育に適正な競争と特色ある学校づくりを促す効果が期待される。
現在、児童生徒の通学区域は細かく分けられ、その区域内に住む家庭の子供は私立を選ばない限り、指定された公立の小中学校に通わなければならない仕組みだ。たとえ、その学校に学級崩壊やいじめがあっても、また適切な指導をしない問題教員がいても、それを避けることができない。
しかし、選択制が導入されれば、事前に学校の教育方針などを知り、子供をよりよい環境の学校に通わせることができるようになる。学校も、生徒指導や授業の工夫などに一段と力を入れなければならなくなるだろう。
親によっては、「学力よりも運動能力を鍛えたい」「絵や音楽の才能を伸ばしてほしい」という要望もある。そうした子供の才能を伸ばす学校も必要になろう。それぞれの学校がどんな特色を出せば、子供が来るようになるか、切磋琢磨(せっさたくま)するようになる。その結果、入学者数が減り、廃校に追い込まれる学校があっても、それはやむを得ないのではないか。
東京都内では、すでに一部で学校選択制の試みが始まっている。昨年度から選択制を導入した品川区内の小学校では、早くも人気校と不人気校の差がつき始めている。来春からは、子供の学力や教師の指導力を保護者や地域住民がチェックする外部評価制が導入され、各校とも学校改革に懸命だ。
英国では、サッチャー保守党政権以来、親の学校選択幅の拡大が教育改革の柱の一つとされてきた。これと並行して学校監査も行われ、一定期間内に改善が見られないため閉校になった学校もかなりある。このやり方は、ブレア労働党政権にも修正を加えながら引き継がれている。米国でも、州によってさまざまな学校選択制が実施され、学校活性化が図られている。
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