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2000/12/20 産経新聞朝刊
【主張】20人授業 教師の質向上も忘れるな
 
 小中学校の基本教科について、一クラス二十人の小人数授業を実現するため、五年計画で教員を増やしていくことが決まった。ただ教員数を増やすだけでなく、教員の質の改善も忘れてはならない。
 今回の教員定数増は、小学校で国語・算数・理科、中学校で英語・数学・理科の学力を向上させるための措置だ。いずれも学力低下が懸念されている基礎科目で、そこへの重点配置をはかろうとする文部省の姿勢は評価できる。同省が基礎学力向上策に本腰で取り組み始めたものと受けとめたい。
 しかし、もっとやらなければならないことがある。
 現在、勤務評定は多くの都道府県で形がい化している。三重県では、ABC三段階評価で一律Bに固定されていた。広島県では、五段階評価で上から二番目の「優良」に統一されていた地域がある。こうした教員社会の悪平等が、指導要録の未記入など児童生徒の成績評価の悪平等にもつながり、学力低下の一因になっていた。
 意欲と能力のある教員が報われるような評価システムが必要である。
 地域や学校の学力到達度を見る全国学力テスト(学テ)も、昭和四十一年に中止されたままだ。「学校のランク付けにつながる」などと、日教組が反対したためである。これにより、学力のデータが得られなくなり、文部省は学力低下の指摘に対し、有効な答えができないでいる。
 来年からは、全国の小中学生四十八万人に限って、学力テストが再開されるという。将来は一〇〇%に広げ、都道府県・学校別の成績も公表したうえで、教員や学校の評価にも反映させてほしい。
 一部の自治体に残っている教員の勤務時間に関する悪しき労使慣行も、廃止すべきだ。北海道では、夏休みや冬休みの期間中、遠隔地の実家に帰省していても「勤務中」として扱われる。東京都には、教員が午後四時に帰宅できる労使の了解事項がある。こうした旧弊を改めなければ、教員定数増への納税者の理解は得られないだろう。
 明らかに指導力が不足し努力もしない教員を授業から外し、再研修や配置換えを命じる措置も必要だ。
 教育改革国民会議は九月の中間報告で、こう書いている。「問題解決や改革に取り組んでいる学校はあるが、全体として、国民の期待にこたえているとはいえない。特に公立学校は、努力しなくてもそのままになりがちで、内からの改革がしにくい」。公立学校に改革の努力を促すには、適正な評価による競争原理の導入しかない。


 
 
 
 
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